介護は、世界でも稀有な高齢化社会を迎える日本にとって重要なテーマです。例えば2024年時点の日本人の平均寿命は、男性が81.09年、女性は87.14歳です。(※厚生労働省データ)
問題は、平均寿命と健康寿命との差です。男性の場合は10年前後、女性の場合13年前後の差があります。この不健康な期間が、介護が必要になる可能性が高いと思われます。また介護施設で働く介護福祉士の採用難や待遇改善、業務の効率化も緊急の課題です。
以下は、厚生労働省のホームページに掲載されている日本の総人口の推移です。
この中では、「マネジメントモデルの構築」「ロボット・センサー・ICTの活用」「イメージの改善の人材確保」が重要テーマに挙げられています。衝撃的なのは、2040年度に必要な介護職員は約280万人という現状です。
今回ご紹介する企画書は、介護制度を支える介護従事者の現状や諸外国の人材獲得手法、ドイツの事例など、参考になる情報満載です。
作成したのは、外資系コンサルティング会社のマッキンゼーです。正式名称はマッキンゼー・アンド・カンパニーで、1926年シカゴ大学経営学部教授のジェームズ・O・マッキンゼーによって設立されました。
それでは、企画書を具体的にみていきましょう。
Contents
- 1. 『諸外国における介護人材確保の動向確保に向けて』から学ぶ
- 1-1. 表紙
- 1-2. プレゼンテーションの目的
- 1-3. 他の先進国の介護従事者をとりまく環境のまとめ(1/2)
- 1-4. 他の先進国の介護従事者をとりまく環境のまとめ(1/2)
- 1-5. 運営企業に対し、給付制度を通じて高齢者介護の十分なリソース確保を促している
- 1-6. ドイツでは高齢の介護患者が増え続けると予想されている
- 1-7. ドイツでの高齢者介護は親族、家庭内介護サービス、介護施設で行われている
- 1-8. 社会保障制度が230億ユーロに上る長期居住型市場の約66%をまかなっている
- 1-9. ドイツは地方によって介護費用に大きな差がある
- 1-10. 介護施設の費用は介護施設の運営者と社会保険が交渉する
- 1-11. 老人ホームの費用は、老人ホームと利用者間で交渉される4つの要素に基づいて決定される
- 1-12. 各州には、それぞれ独自の規制がある
- 1-13. 介護施設市場は細分化しており、定員875,000人の37%を民間プレーヤーが占めている
- 1-14. 中心的な企業はすべて、幅広い事業で活躍している
- 1-15. 競争が激しく、給与水準が低いため、有資格者が大幅に不足しており、その傾向はさらに強くなるものと予想される
- 1-16. 日本の参考になりうる他国からの学び
- 2. マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンとは
1. 『諸外国における介護人材確保の動向確保に向けて』から学ぶ
1-1. 表紙
1-2. プレゼンテーションの目的
① 他の主要先進国の介護従事者の状況の紹介
② 諸外国における介護従事者確保に向けた施策の紹介
③ ドイツの事例紹介
④ 日本の参考となり得る学びのまとめ
1-3. 他の先進国の介護従事者をとりまく環境のまとめ(1/2)
① 家庭での介護と介護施設での介護の供給が、急増している。今後も需要が伸びると予想されている
② 介護従事者は、概ね経験が浅く低賃金。魅力的な仕事とは思われていない
③ 地域的には農村部、職能としては有資格者の仕事を中心に、労働力不足が指摘されている
④ 有資格者の専門的な労働力確保に向けた体系的な取り組みがない
1-4. 他の先進国の介護従事者をとりまく環境のまとめ(1/2)
①(介護施設の分野では)大手の民間業者が登場し、労働力を惹きつけ質の高いサービスを提供しようと努力している
・需要の予測可能性に着目
・給付側と高い報酬を交渉
② 東欧から移民など、労働力の供給は豊富
③ 医療と異なり、高齢者介護は最重要の政治課題ではない
④ 介護労働者の専門化などを通じて、問題に対処しようという試みが出てきている
1-5. 運営企業に対し、給付制度を通じて高齢者介護の十分なリソース確保を促している
1-5-1. ドイツ
① 保険制度
・ほとんどは保険、一部自己負担
・自己負担には、家族も含まれる
・滞在費と追加料金は、カバーされない
② 提供制度
・所得がある親族がほぼ半分担
・残りは、介護施設と通院
・営利組織と非営利組織の混成
③ 診療法主
・運営企業と給付側の間で料金を交渉
・残りは介護施設と通院
・営利組織と非営利組織の混成
④ 人材確保への意味合い
・保険と料金の規制により需要が予測でき、民間プレーヤーはそれに積極的に対応
・民間プレーヤーは、雇用環境の改善に積極的
1-5-2. 英国
① 保険制度
・本格的な資金調査済み、つまり、介護対象者が無一文にならないと地方自治体はお金を出さない
② 提供制度
・大手民間チェーンが、介護施設のほとんどを運営している
・通院は、非常に細分化している
・労働力の大半は、東欧からの移民
③ 診療法主
・地方自治体が、運営企業とレートを交渉
④ 人材確保への意味合い
・人材を求めて競争するほどの高いレートで、民間セクターに雇用を提供し管理する仕事
1-5-3. フランス
① 保険制度
・大半は民間の支払い、一部の公的資金
② 提供制度
・民間と公的施設の混成
③ 診療法主
・保険で料金が定められるが、民間のレートは異なる
④ 人材確保への意味合い
・保険と料金の規制により需要が予測でき、民間プレーヤーはそれに積極的に対応
・民間プレーヤーは、雇用環境の改善に積極的
1-5-4. 米国
① 保険制度
・自費、民間の保険と公的保険の混成
② 提供制度
・民間(家庭内介護で支配的)と非営利(介護施設で支配的)の混成
③ 診療法主
・最も重要な給付機関であるメディアケアとメディケイドが大きな影響力を誇る
④ 人材確保への意味合い
・大手給付機関は、介護のやり方に大きな影響力を持つ
1-6. ドイツでは高齢の介護患者が増え続けると予想されている
タイプ別介護患者のこれまでの推移と将来の動向
1-7. ドイツでの高齢者介護は親族、家庭内介護サービス、介護施設で行われている
① 介護が必要な総数
② 親族による介護
③ 家庭内介護サービスによる介護(通院介護)
④ 介護施設での介護(居住型介護)
1-8. 社会保障制度が230億ユーロに上る長期居住型市場の約66%をまかなっている
<長期居住型介護支出>
① 市場全体
② 社会介護保険
③ 民間の健康保険
④ 公的世帯
⑤ その他
⑥ 社会保障制度
⑦ 民間世帯
1-9. ドイツは地方によって介護費用に大きな差がある
① すべての介護レベルについて、地域間で価格に大きな差がある
② 総じて、ドイツ東部の価格が最も低いのに対し、ノルトライン・ウェストファーレン州は最も価格が高いが、局地的な差もある
1-10. 介護施設の費用は介護施設の運営者と社会保険が交渉する
<社会保険>
① 社会介護保険は還付水準に上限が設けられているため、交渉では給付者ではなく、患者の代表としての役目しか果たさない
② 金銭面のサポートが必要な患者に対しては、社会保障が給付者の役目を果たす
<価格交渉>
① すべての介護施設がそれぞれの価格を交渉する
・介護料と「ホテルサービス」:コスト構造に基づく
・投資コストのプレミアム:不動産の特性に左右される
② 交渉術が結果を大きく左右する可能性
③ 様々な規制要件やコストの透明性要件があるため、社会保険の総合的なアプローチは州によって異なる
1-11. 老人ホームの費用は、老人ホームと利用者間で交渉される4つの要素に基づいて決定される
① 介護料金
② 食事と家事
③ 投資コストプレミアム
④ 補助的サービス
1-12. 各州には、それぞれ独自の規制がある
ケース事例:ノルトライン・ウエストファーレンとバイエルン
1-13. 介護施設市場は細分化しており、定員875,000人の37%を民間プレーヤーが占めている
非営利のプレーヤーのほとんどは運営組織の一部であるが、独立のプレーヤーとして活動
1-14. 中心的な企業はすべて、幅広い事業で活躍している
<事業分野ごとの企業の存在>
① 住宅/アシステッドリビング
② 外来ケア
③ デイケア
④ 老人ホーム
1-15. 競争が激しく、給与水準が低いため、有資格者が大幅に不足しており、その傾向はさらに強くなるものと予想される
シナリオの違いによる、2030年における外来ケアと入院患者治療の人材のギャップ
① 有資格者のギャップは、現在すでに最大の成長の足かせとなっている
② 介護が必要な人の人数の増加によって、この問題は、将来的にはより悪化すると思われる
③ 将来的な主要成功要因
・有資格者を上手く引き付け、維持する能力
・従業員の研修と教育を自前で行う能力
・人員に移民を取り入れ、サポートを提供する能力(例:言語学習コース)
・異なるスキルと支払い分類の最適なバランスの確保(例:医療専門家、介護者、無資格サポート)
1-16. 日本の参考になりうる他国からの学び
① 介護は、さまざまなスキルレベルに細分化でき、それに基づいてサービスの提供も階層化できる
・需要が大きく、高いスキルを必要とする作業はあまりないため、介護従事者の大部分はスキルを持ってない人と規定される可能性がある
・サービス提供者が高い報酬を支払い、よりスキルの高い人材の全体的な需要が満たされ、不足分をよりスキルの低い人材で補うことができる
② 仕事の魅力は、雇用主とその人材獲得の努力に大きく依存している
・もっとも魅力的なサービス提供者は、最もサービス価格の高い患者を狙うが、その実現には最高のサービス提供が必要とされる
・最高のサービスを提供するには、最高の人材が必要となる
・優れた人材を確保および維持するためには、魅力的な労働条件と能力開発機会の提供が必須である
2. マッキンゼー・アンド・カンパニージャパンとは
2-1. マッキンゼー・アンド・カンパニージャパン概要
世界の外資系コンサルティング企業の中でも、トップクラスといわれるマッキンゼー・アンド・カンパニー。その日本支社の概要を、以下に記します。
2-1-1. 商号
マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社
2-1-2. 設立
1971年(日本支社の設立)
2-1-3. 所在地
東京都港区六本木1-9-10アークヒルズ仙石山森タワー
2-1-4. 従業員数
320名
2-1-5. 事業内容
上場企業をはじめとして、非公開企業、政府機関にもコンサルティングサービスを提供
2-2. マッキンゼーの活動内容例
2-2-1. 日本のスキンケアブランドの中南米戦略
消費財メーカーは、グローバルマーケット市場に新規参入する際に、従来とは全く異なる状況に直面します。グローバルな成長を実現するには、それまで以上に現地の消費者の声に耳を傾ける必要があります。
2-2-2. 新薬の売上げを最大化するマーケティング
医薬品は、消費者にとって個人的・限定的なものです。一方、製薬会社の発展にとって必要なのは、グローバルへの展開です。
2-3. マッキンゼーの募集職種
① ビジネスアナリスト
② アソシエイト — ミッドキャリアプロフェッショナル
③ インプリメンテーションコンサルタント
④ デジタル・マッキンゼー
⑤ オペレーションスペシャリスト
⑥ コンサルタント及びリサーチャー/通信・メディア・テクノロジー
⑦ サマーアソシエイト