インドネシア経済とは?その政策動向に関する考察から学ぶ

今回は、久しぶりにアーサー・D・リトル ジャパンが作成した企画書をご紹介します。

テーマは、日本とも繋がりの深いインドネシアの経済政策動向と課題検討です。東南アジア諸国連合(ASEAN)の盟主的存在であるインドネシアは、日本にとっても非常に重要な国であり、2014年に国際協力銀行が日本企業に「海外進出したい国」のアンケートを取った結果、中国を抜いて1位になりました。

そんなインドネシアについて、普段のニュースでは知りえない貴重な情報が満載です。

 

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インドネシア
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【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2.『平成26年度新興国市場開拓事業 相手国の産業政策・制度構築の支援事業(インドネシア:経済政策動向・課題検討)育成施策に係る調査報告書』から学ぶ
3.表紙
4.目次
5.背景と目的
6.インドネシアの経済概況
7.留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変局点
8.インドネシア新政権の方針
9.今後の日イ経済協力について

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、日本とインドネシアのビジネスパートナーシップを築くヒントがたくさん掲載されています。ポイントとなるキーワードを、以下に記します。

・インドネシアは、国益を重視した独立的な全方位外交を理念としている
・ASEANから唯一のG20メンバー
・インドネシアの人口は、世界第4位
・今後は輸出競争力強化に向けて、工業化の推進と人材の育成が課題
・インフラ整備
・法制運用の透明性向上
・労働生産性向上と人材育成
・密漁の取り締まりなど、行政機関の強化が必要
・2070年まで人口は増え続ける
・ASEAN域内での「ヒト・モノ・サービス・カネ」の動きの自由化

 

2. 『平成26年度新興国市場開拓事業 相手国の産業政策・制度構築の支援事業(インドネシア:経済政策動向・課題検討)育成施策に係る調査報告書』から学ぶ

では、アーサー・D・リトル ジャパンが作成した企画書を以下具体的に見ていきましょう。

3. 表紙

4. 目次

5.背景と目的

◆背景と目的
◇背景
・インドネシアは、国益を重視した独立かつ能動的な全方位外交を理念とし、ASEANからの唯一のG20メンバーとして国際社会で存在感を増しており、我が国を含め、米国、豪州、中国、インドといった戦略的パートナーシップを有する国々との協力関係を強化している。
・インドネシア経済は、世界第4位の人口と、長く続く人口ボーナス期が、需要と供給の両面で効果を発揮し、8割弱の中間層が消費を支え、2009年の世界同時不況においても国内消費主導で経済成長し、その後も対外輸出の回復、インフラ事業促進等の景気刺激作による政府支出の増加により高い成長を維持している。2012年後半から、中国等の景気減速から資源価格が低迷したことで貿易収支が赤字化し、インドネシアの為替市場、株式市場、債券市場が不安定になる中、輸出促進、輸入抑制による経常収支の改善、投資促進による景気の下支え等を目的としたインドネシア政府及び中央銀行による包括的な対策が講じられている。
・このような状況の下、国際協力銀行(JBIC)による調査において「中期的に有望と考える事業展開先」としてインドネシアは2013年1位、2014年2位となるなど、我が国企業による投資先としての関心は引き続き高く、過去最高を更新した2014年のインドネシアへの外国からの直接投資額約285億ドルのうち、日本の投資額は自動車などを中心として約270ドル、全体の約9.5%を占め、シンガポールに次ぐ2位となっている。(2013年は1位)
・ 我が国は今後、インドネシアへの投資拡大、交通、物流、電力等の分野に対するインフラ整備支援等を通じ、インドネシアの生産拠点としての発展、市場獲得を共に進めていくこととしている。また、次期政権下おける新しいに日インドネシア間の協力のあり方を検討する必要がある。
◇目的
・本調査では、左記のようなインドネシアを取り巻く経済環境の動向を踏まえ、インドネシアの経済状況と課題、新政権の方針等を調査すると共に、特に新政権か掲げる優先政策における、日イ間の新しい協力関係のあり方について整理・提言する。

6.インドネシアの経済概況1

1. インドネシアの経済状況 – 1.1 経済成長率

2008年に発生したリーマンショック直後にASEANの多くの国の経済がマイナス成長に陥ったのに対して、インドネシアは2004年以降は概ね5~6%のGDP成長率を維持しており、安定的な経済成長を遂げてきた。2004年に初の国民直接選挙によって選出されたユドヨノ大統領の元で政治基盤が安定化し、それを背景にインドネシア経済も堅調な成長を遂げたものと考えられる。

◆背景
・アジア通貨危機後に、32年間続いたスハルト政権が崩壊した。その後短期間で大統領が交代するなどの政情不安があり、その影響で経済も不安定であったが、2004年に初の国民直接選挙によって選出されたユドヨノ政権の元で政治基盤が安定化し、それを背景に経済も堅調な成長を遂げてきた。

・ASEANの他の国が、2008年に発生したリーマンショック後にマイナス成長に陥ったのに対して、インドネシアはプラスの成長を維持した背景には、経済が内需主導であった点があげられる。

6.インドネシアの経済概況2

1. インドネシアの経済状況 – 1.1 経済成長率

ただし、2011年以降はGDP成長率が鈍化傾向にあり、2014年は2009年以来、最も低い伸び率となった。特にGDPの約1/4を占める輸出の伸び率低下のインパクトが大きく、主要貿易国である中国経済の景気減速による対中輸出額の伸び悩み、未加工資源輸出の原則禁止による資源輸出額の減少などが影響した模様。2015年以降に向けて、再び高い経済成長率へと成長回復し、維持していくことが課題である。

・インドネシア経済は底堅い個人消費に支えられており、リーマンショック後の2009年には、外需による落ち込みを内需がカバーしていることから、内需が経済成長を牽引していると言える
・輸出に大きく影響していない需要構造は、輸出主導で経済発展を遂げてきたタイ・マレーシア・ベトナムとは対照的である

6.インドネシアの経済概況3

1. インドネシアの経済状況 – 1.2 経常収支

経常収支は2012年より赤字が続いており、今後の経済成長に向けた課題となっている。その主な原因は貿易収支の悪化によるものである。また、所得収支の赤字幅が年々増加していたが、これは対内直接投資の拡大に伴う利払い・配当支払いの増加によるものだった。ところが2014年は米国の量的金融緩和縮小観測などによって、新興国市場への投資が抑制された結果、所得収支が大幅に改善し、経常収支も改善した。

◆背景
・2012年に経常収支が赤字に転落したが、その最大の理由は貿易収支が大きく悪化したことが要因。(貿易収支赤字の原因は後述)
・構造的に所得収支(外国企業の配当等)が赤字になっている要因は、対内直接投資の拡大に伴う利払い、配当金支払いの増加が主要因
・2014年に経常収支が大幅に回復しているが、これは米国の量的金融緩和縮小観測などを背景に、投資家の新興国市場への投資が抑制された結果、所得収支のマイナス幅が改善されたことによる

6.インドネシアの経済概況4

1. インドネシアの経済状況 – 1.3 貿易収支

貿易収支悪化の背景には、2011年以降の資源の国際価格下落による輸出低迷、及び、国内消費増加に伴う輸入増加があげられる。輸出低迷の背景には構造的な問題として、インドネシア経済における脱工業化(≒資源依存)の傾向が強まった点があげられる。今後は輸出競争力に向けて、工業化の推進が課題。

◆背景
・2012年に貿易収支が赤字に転落した背景には、世界的な資源価格の下落・中国インドの資源需要の減退による輸出の低迷、及び、国内景気拡大に伴う輸入の増加が主な原因である。(特に石油・ガスの輸入量が増加)
・インドネシアはスハルト政権以降、脱工業化・資源回帰の傾向が強まった結果、国際資源価格の影響を受けやすくなった

6.インドネシアの経済概況5

1. インドネシアの経済状況 – 1.4 雇用

工業化推進は雇用吸収という観点からも大きな意味を持つ。インドネシアは失業率が高く、工業化推進がその解決に寄与する。ただし、労働需要の需給がひっ迫していない一方で、最低労働賃金は上昇しており、これは質の高い労働者の人数が限定的であることを示唆するため、工業化推進と同時に産業人材の育成も課題である。また、同時に就学率の低さなどを背景に、インフォーマルセクター(家政婦や屋台の行商)などの就労比率が高く、これは労働力が生産投入要素としての利用が非効率であることを意味するため、長期的な経済成長に向けた課題として捉えることができる。

6.インドネシアの経済概況6

1. インドネシアの経済状況 – 1.5 格差

経済成長の裏では経済格差が拡大しており、ジニ係数は10年間、緩やかに上昇を続けている。これらは地域経済格差とも関連しており、インドネシアGDPに占めるジャワ島の比率は年々上昇しており、その他の島は減少傾向にある。地域格差の大きな要因として、島嶼間の交通インフラが未整備である点が考えられる。今後は各島毎の特性にあった産業振興と同時に、それらの地域産業を連結する海上交通インフラ(物流)の構築によって、地方経済の潜在能力を開花させ、地域格差を是正していくことが課題。

6.インドネシアの経済概況7

1. インドネシアの経済状況 – 1.6 投資

インドネシアに対する海外からの直接投資額は年々上昇しており、日本は2013年に最大投資国となり、日本からの直接投資のうち6割は輸送機器関連産業が占めていた。また、JBIC「海外直接投資アンケート:中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域」によれば、2010年に6位だったインドネシアは、2013年には1位となり(2014年は2位)、日本企業のインドネシアに対する興味関心の高さが伺える。

6.インドネシアの経済概況8

1. インドネシアの経済状況 – 1.7 投資環境

一方で、工業化の推進に向けて海外企業にとっての消費市場としてのみならず、生産拠点としてインドネシアを位置づけてもらうことが重要となるが、そのためには「インフラの整備」「法制運用の透明性向上」「労働生産性向上・人材育成」などの投資環境の改善を実施していくことが課題。

6.インドネシアの経済概況9

1. インドネシアの経済状況 – 1.7 投資環境

外国船籍による密漁など違法行為による年間の経済損失額は約300億ドルに到達すると試算されており、これはインドネシアGDPの約3%強に匹敵する。また、インドネシアの税収のGDP比率はASEAN諸国の中でも低い水準にあり、世界銀行によれば税務監査の強化によって年間250億ドルもの追加収入が試算されている。今後は法整備・実行機関の強化等による違法行為や行政機関の強化が課題である。

・違法行為による年間の経済損失額は309億ドルにも及ぶと試算されており、これはGDPのおよそ3%強に匹敵する金額である
・漁業産業ではインドネシア領海で操業する約90%が外国船籍であり、そのうちの大多数が密漁船である。これらの被害総額は年間約240億ドル
・違法森林伐採による被害総額は少なく見積って年間約20億ドル

7.留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変局点1

2. 留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変曲点 – 2.1 人口ボーナス

海外企業にとってインドネシアの最大の魅力は、市場の大きさ・成長性である。世界第四位の人口を有すると同時に、2070年頃までは人口が増え続け、人口ボーナス期も2025年~2030年まで続くと言われている。人口ボーナス期は経済成長を牽引すると同時に、豊富な労働力を吸収する産業構造の形成、すなわち工業化の推進が必要となる。さらに中長期的には経済成長に伴う労働賃金の増加を生産性向上で補えるような質の高い労働者の供給が課題となる。

7.留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変局点2

2. 留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変曲点 – 2.2 中間層の拡大

中間層拡大、すなわち購買力を持った消費者が増加することで、内需と外需によるバランスのとれた経済成長を実現させることが可能となり、結果として持続的・安定的な経済成長が見込める。一方で、消費市場の拡大に伴い、海外からの投資・輸入も増加していくことが予想されるため、市場拡大の恩恵をインドネシアが受けれるように、国内企業の競争力強化が課題となる。

7.留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変局点3

2. 留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変曲点 – 2.3 ASEAN経済共同体

ASEAN経済共同体とはASEAN域内の「ヒト・モノ・サービス・カネ」の動きを自由化することで、ASEAN地域全体として他の地域・国に対する競争力を向上させていく取組

【単一の市場と生産基地】
・物品貿易の自由化
・サービス貿易の自由化
・投資の自由化
・資本移動の自由化
・熟練労働者の移動の自由化
・優先統合分野
・食品、農業、林業
【競争力ある経済地域】
・公平な競争文化
・消費者保護
・知的所有権
・インフラ整備 (輸送、エネルギー、鉱物、ICT)
・税制
・電子商取引(e-ASEAN)
【公平な経済発展】
・中小企業の発展
・ASEAN統合の取り組み
【グローバル経済への統合】
・対外経済関係に対する一貫したアプローチ
・グローバルサプライネットワークへの参加

7.留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変局点4

2. 留意すべきインドネシア国内・ASEAN域内の変曲点 – 2.3 ASEAN経済共同体

ASEAN経済共同体はASEAN経済全体の競争力向上が目的の一つだが、必ずしも各国にとって同等のメリットがあるとは限らない。ASEAN内最大市場であるインドネシアにとっては、ASEAN地域生産ネットワークを有効に活用することによって、貿易・対内直接投資拡大の機会がある。一方で、各国から様々なヒト・モノ・サービスの流入が加速することが予想されるため、海外企業をひきつけ続けると同時に、国内企業(中小企業含む)の競争力強化が必要となる。

【機会】
◆海外直接投資の拡大
・ASEAN経済共同体によって、ASEANは世界で3番目に大きい市場となり、海外からの投資も加速してくるものと考えられる
・ASEAN内の最大市場の国であるインドネシアは、投資環境を整備することで、海外からの投資を最大限呼び込むことが可能である
◆産業育成の迅速化・輸出拡大
・ASEAN域内の生産ネットワークを活用することによって、高品質な原材料を周辺国から安価に購入することができるようになるため、国内産業の競争力が早期に向上し、結果として輸出競争力も得る
・バリューチェーンのどの部分を周辺国に依存し、どの部分を自国内で産業振興するかについては、リスク・時間軸・雇用・コス
トなど複合的な要素を見ながらバランスをとることが必要
【課題】
◆ビジネス環境整備
・周辺国のマレーシア・タイは市場規模こそインドネシアに劣るが、ビジネス投資環境はインドネシアよりも優れているため、海
外企業の生産拠点としての投資が周辺国に行かないように、魅力的なビジネス投資環境整備が課題
◆中小企業の競争力強化
・周辺国からのヒト・モノ・サービスが自由に流入してくるため、特に中小企業の競争力を強化することで、これらの脅威に対する
備えが必要
◆輸出競争力の強化
・インドネシア経済の成長に伴い、旺盛な内需を満たすために、周辺国からの輸入量一時的に増加する可能性が高く、インドネシア国内の企業は国内需要に加えて輸出競争力を早期に持つことが課題

8.インドネシア新政権の方針1

3. インドネシア新政権の方針 – 3.1 新政権の概要

◆ジョコウィ大統領
・生年月日:1961年6月21日
・宗教:イスラム教
・背景:労働者階級
・学歴:ガジャマダ大学工学学位
・政党:闘争民主党(PDIP)
・政治前のキャリア:家具店のオーナー
・政治キャリア:
・ソロ市長(2005-2012)、
・首都ジャカルタ特別州知事(2012-2014)
・注目功績:
―反腐敗への取り組み。自身の家族の入札プロジェクト参加を禁止
―市の活性化・インフラプロジェクト
―ソロとジャカルタにおける医療保険プログラム
◆強み
◇庶民派大統領
・ジョコウィ大統領は謙虚な人柄で、多くのインドネシア国民と同じように庶民階級の出身である。そのため庶民派大統領として親しまれている
・従って、低所得層や中間層の人々から絶大な人気を誇り、また若くて政治エリートとは深い関係性がないことでも知られている
・市長としての実績・現場主義・クリーン– ジョコウィ大統領は、ソロ市長・ジャカルタ市長として成功した実績を持っている。彼はアポなし視察によって現地の状況を正確に知ろうという努力をしている
・また汚職歴がなく、クリーンな政治家としても知られている
◆課題
◇少数派での議会運営
・ジョコウィ大統領の所属する政党は議会の少数派である。これによって政権運営がスムーズに進まない恐れもある。
・同時に、閣僚人事などにおいて自身が所属する政党から複数任命している点も、彼らが閣僚として十分に機能しなかった際には、他の政党から任命責任を問われかねない
◇政治経験の不足
・ジョコウィ大統領は大統領としての責務を全うするには、政治経験が浅いということがよく言われている。そのため、彼は周囲の政治エリートや専門家の意見に耳を傾けながらの政権運営になっていくことだろう
・特に外交問題に対してどのように対処していくのかは注目されている

国民から反発からの反発が予想される燃料補助金の削減や、周辺国との関係性から具体的に実行し難かった密漁船の取締強化を大統領就任早々に実施し、実行力のある内閣としての認知を獲得している。

・新政権は2014年11月17日に、燃料補助金を削減し、それによってガソリン価格は30%以上も上昇した。この政策は国民から反感を買うと予想されていたが、大きな抵抗もなく受け入れられた
・ガソリンに対する燃料補助金は完全に削減されたが、現在は原油価格の世界的な下落の状況下にあるため、ガソリン価格は2015年1月の段階で大きく下落している(レギュラー/7,600、軽油/7,250)
・インドネシアでは今月初め、同国の領海内で違法に操業していたベトナム漁船3隻を軍が拿捕。乗組員を拘束した後、無人の船を爆破して沈没させた。違法操業のせいでインドネシアは毎年240億ドル以上の損失を被っており、その抑止に乗り出したわけだ。ベトナム船の爆破後に別の海域で拿捕した中国漁船22隻についても、中国側の反発を覚悟で沈没させるのかどうかが注目を集めている
・中国船の拿捕を受けて、スシ・プジアストゥティ海洋水産相は、外務省からインドネシアの中国大使館に抗議し対応を協議するようルトノ・マルスディ外相に要請したと語った。しかしその一方で、大統領が許可すれば拿捕した船を破壊することも検討している

9.今後の日イ経済協力について

【インドネシア政府・NGOの声】
◆新政権の方向性・課題
◇新政権の大きな特徴は「選択と集中」
・新政府は重要度の高い海洋国家政策について、地方振興と絡めて、ジャワ島以外に産業を振興する考え
◇中所得国の罠を回避するためには、インフラ整備と同時に生産性向上(産業人材の高度化)が不可欠
・海外投資家にとって魅力的な市場であり続けるためには、インフラ整備に対するコミット・実行性を見せることが重要
・生産性向上に向けて、産業人材の高度化・高等教育機関の質向上が、工業化に向けた大きな課題
◇インドネシアは工業化を推進していくが、高付加価値型の製造業の振興と、ジャワ島以外での展開が重要
・インドネシアは製造業を強化していくが、それは中所得国の罠の回避に繋がらないといけない。すなわち単純な労働集約型製造
業のみ振興すればよいわけではなく、知識集約型のものや、研究開発機能を取り込んでいくことが大事
・製造業には雇用吸収機能もあるため、今後は製造業をジャワ島意外の地域に発展させていくことが重要
◇産業バリューチェーンの構築、それに向けた中小企業育成
・製造業を振興する際に、原材料加工も含めた多くのバリューチェーンを自国で展開したい
・インドネシアは多くの中小企業と一部の大手企業に2極化しており、今後は雇用吸収・AECに対する競争力維持という観点から
も、中小企業を中堅・大企業へと育成していくことが課題
◆日本への期待
◇日本はインドネシアに対して、技術提供・共同研究で多大な貢献が可能。同時に日本にとってもメリットは大きい
・日本はインドネシアを“市場”として捉のみえるのではなく、Win-winスキームの検討が重要
・そのひとつの手段が技術提供で、インドネシアは日本が技術・ナレッジを提供してくれることを強く望む
・– 技術供与は必ずしも日本にとってマイナスにはならず、むしろインドネシアの市場拡大と共に、その技術がインドネシア製品に使われることによるメリットの方が大きい