JICA作成!バングラデシュの省エネルギー政策の全体像を学ぶ

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今回の企画書は、初登場のJICA(独立行政法人国際協力機構)の作成です。

バングラデシュのエネルギー政策の詳細を知ることで、一国の省エネルギー政策のスキームの立て方から運営体制まで、国家単位のエネルギー政策の全体像が把握できます。

 

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【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2.『バングラデシュ国省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト』から学ぶ
3.表紙
4.目次
5.本プロジェクトの目標
6.本プロジェクトのアウトプット
7.本プロジェクトの成果

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、バングラデシュのエネルギー政策について記載されています。ポイントとなるキーワードを、以下に記します。

・バングラデシュは、2014年1月に「省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト」
・持続・再生可能エネルギー開発庁の組織のあり方と活動内容の明確化
・国民、事業者への省エネ普及啓発
・持続・再生可能エネルギー開発庁と電力・エネルギー資源省電力局の組織・人材育成
・省エネマスタープラン
・エネルギー管理制度
・省エネラべリング制度
・財務支援・インセンティブ制度
・各省エネ制度の経済財務分析
・能力開発・普及啓発
・ITインフラ整備

 

2. 『バングラデシュ国省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト』から学ぶ

では、独立行政法人国際協力機構 (JICA)が作成した企画書を以下具体的に見ていきましょう。

3. 表紙

4. 目次

5. 略語表1

・AC/Air Conditioner
・ACEA/Accredited Energy Auditor
・ADB/Asian Development Bank
・AFD/Agence Française de Development
・APF/Annual Performance Factor
・APP/Asia Pacific Partnership

5. 略語表2

・DC/Designated (Large Energy ) Consumer
・DNCRP/Directorate of National Consumer Rights Protection
・DoE/Department of Environment
・DSM/Demand-side Management
・EC/Energy Conservation
・ECCJ/Energy Conservation Center, Japan

5. 略語表3

・ktoe/Kilo ton oil equivalent
・LDC/Least Developed Country
・LGED/Local Government Engineering Department
・LED/Light Emitting Diode
・LNG/Liquefied Natural Gas
・LPG/Liquefied Petroleum Gas

5. 略語表4

・toe/Tone of oil equivalent
・TOU/Time of Use
・TPP/Technical Project Proposal
・TSL/Two-step Loan
・UNDP/United Nations Development Program

6. 本プロジェクトの目標

バングラデシュ(以下「バ」国)政府は、増加し続けるエネルギー需要に対して、供給力を高めるのみならず、気候変動対策の視点も踏まえ、省エネルギー(以下「省エネ」)推進が重要であることを認識している。

この観点から2014年1月に「バ」国政府は「省エネルギーマスタープラン策定プロジェクト」の実施を宣言し、2015年3月までに以下に記載する4つの成果を取りまとめることとした。

①政府承認されるべき「省エネマスタープラン」(案)の策定と、国全体を網羅する省エネ政策実施に関わるアクションプランの策定

②持続・再生可能エネルギー開発庁(SREDA:Sustainable and Renewable Energy Development Authority)(以下「SREDA」)の組織のあり方と、活動内容の明確化

③国民、事業者への省エネ普及啓発

④本プロジェクトを通しての、SREDA と電力・エネルギー資源省電力局(Power Division,MPEMR:Ministry of Power, Energy and Mineral Resources)の組織・人材育成

「バ」国の主要なエネルギー消費部門は産業、住宅、交通であるが、本プロジェクトでは交通を除いた部門を検討対象とする。工場・ビルの現地診断、家電の市場調査、関係機関との協議等を通して、「バ」国のエネルギー消費実態や省エネ実施の問題点を洗い出し、阻害要因の解決を含めた省エネ推進策を提言した。本プロジェクトにおける主要テーマと課題を表 1.1 に示す。

7. 本プロジェクトのプットアウト1

2. 本プロジェクトのアウトプット

本プロジェクトのアウトプットを以下に示す。

2.1 省エネマスタープラン(案)の策定

国の省エネ推進におけるマスタープランの位置づけを図2-1に示す。マスタープランは、国の省エネ推進に関わるあらゆる組織、活動、文書の最上位に位置すべきものである。

7. 本プロジェクトのプットアウト2

2.2 エネルギー管理制度の立案

工場(産業部門)やビル(商業部門)の省エネには、適切なエネルギー管理が不可欠である。「バ」国では1次エネルギーの約50%が産業部門で消費されていることから、SREDAは国の省エネ施策として当該分野の省エネ促進に寄与するエネルギー管理制度を導入することを決定した。

エネルギー管理制度は、以下の諸要素から成り立つ。

・大口エネルギー消費者(DCs:Designated large energy consumers)の指定
・エネルギー管理士、診断士、認定診断士の資格認定
・大口エネルギー消費者のエネルギー消費量、省エネ実施状況の定期報告
・ベンチマーク(産業業種や生産プロセスのエネルギー消費原単位目標)の設定

これらの要素を整理し、「エネルギー管理制度骨子案」をまとめた。この制度骨子は関連法令策定の基礎となる。

(1) 大口エネルギー消費者の指定

規制によりエネルギー管理を義務づける対象となる「大口エネルギー消費者」(DC:Designated Consumer)の指定基準を、エネルギー消費量データ及び代表的消費者に対するエネルギー診断結果より決定した。この際、SREDAの当面のリソースを考慮して、制度開始時の管理対象企業数が 100社程度になることを目標とした。

分析の結果、制度開始時におけるDC指定の線引きを対象業種別に、10,000 toe 以上、6,000 toe 以上及び 3,000 toe 以上の 3 種類とした場合、指定される事業者数は合計100超程度で、これらの事業者による1次エネルギー消費は産業部門全体の約31%を占めると想定された。指定された事業者は、定められたエネルギー管理を実施しなければならない。この線引きは、将来見直しして順次規制対象企業数を拡充していくことになる。

(2) エネルギー管理士、診断士、登録診断士の資格認定

DCに義務付けられるエネルギー管理には、国が認定する「エネルギー管理士」の任命やエネルギー診断士によるエネルギー診断がある。これらの資格認定・登録制度には、エネルギー・省エネ専門家の育成と社会的ステータス確保の狙いもある。制度骨子案の中で、資格認定方法の具体案を作成した。計画されている主な関連国家資格を以下に記載する。

・エネルギー管理士:大口エネルギー消費施設に配置が義務付けられる。組織の省エネ活動の牽引役で、(3)に記載する定期報告書類のまとめ役となる。

・エネルギー診断士:大口エネルギー消費者以外の中小の消費者向けエネルギー診断、省エネ普及促進の担い手としての役割が期待される。

・登録エネルギー診断士:大口エネルギー消費者に対する高度なエネルギー診断を実施し、エネルギー管理士に助言を与える。

7. 本プロジェクトのプットアウト3

(3) 大口エネルギー消費者のエネルギー消費量、省エネ実施状況の定期報告

本プロジェクトで定期(年次)報告書書式案を作成し、報告システムをSREDAのウェブサイトに組み入れた。報告書書式案は、大口エネルギー消費者以外の事業者でも自社内のエネルギー管理用として広く使えるものである。

(4) ベンチマークの設定

ベンチマークとは、産業業種別の最高エネルギー効率生産実現ケースを共有化し、エネルギーインテンシティー(工場の単位生産量や建物床面積当たりのエネルギー消費量)を、事業者の省エネ推進の指標として設定するものである。当面、セメント、印刷、紙・パルプ、ソーダ、製鉄、化学肥料等の産業業種・生産プロセスに適用を予定している。ベンチマークは今後SREDAが、対象とする事業者や業界団体の意見を取り入れて、指標値、運用方法を協議の上、導入していく。ベンチマークは国内外のエネルギーインテンシティーを参照しながら随時見直されなければならない。

(5) 制度検討委員会の開催

エネルギー管理制度を発効させるためには、継続して制度検討委員会を組織していくことが必要になる。制度全体について議論する「エネルギー管理制度委員会」と、各種国家資格認定試験内容及び研修の組成にかかる技術的なテーマについて議論する「認証委員会」の2つを組織する。

2.3 省エネラベリング制度の立案

「バ」国では、1次エネルギーの約30%が家庭で消費されているが、その多くが家電製品の使用によるものであり、省エネラベリング制度は、家庭部門の省エネに非常に有効である。SREDAは国の施策として省エネラベリング制度を導入することを決定した。制度の効率的導入を図るため、「省エネラべリング制度骨子案」をまとめた。この制度骨子は関連法令策定の基礎となる。

制度骨子案作成に際して検討した主なポイントを以下に記載する。

(1) 関係組織の役割分担

「バ」国では当初、BSTI(Bangladesh Standardization and Testing Institute)が UNDP-BRESL(Barrier Removal for Energy Standards and Labeling) プロジェクトにおける省エネラベリング制度構築のリーダー役として、エネルギー効率測定方法に関わるいくつかの BDS(Bangladesh Standard)を定めた。しかし、BSTIはBDSを制定したに留まり、これに依拠した法令を施行するには至らなかった。

今般SREDAが組織され、BSTIの成果を引き継いで、「バ」国の省エネラベリング制度の推進役となったが、SREDAの最も重要な役目は制度に関わる法令を整備し施行することである。BSTIは引き続きBDSの制定とエネルギー効率測定試験に注力する。また、BAB (Bangladesh Accreditation Board) が試験機関のエネルギー効率試験能力の認定を行う。

7. 本プロジェクトのプットアウト4

政府機関以外では、家電メーカーや代理店が当制度の主役となる。ルールを順守しながら制度に積極的に参加することが求められる。また、制度の主要素であるエネルギー効率測定方法やラベル星印基準の新規策定や見直し等の議論に、専門的知見や市場状況等の情報をもって積極的に参加することも求められる。

(2) 省エネラベルの信頼性確保(検証システム)

省エネラベルの取得、製品への添付手続きには、メーカーの自社内でのエネルギー効率試験値を基にした自己宣言方式と、第 3 者試験機関の試験値を基にラベル認証を与える認証取得方式の2通りがある。日本は前者の方式を採用しており、メーカーの順法精神(コンプライアンス)を拠り所としている。後者は前者よりもラベルの信頼性確保が確実な方式であり、東南アジア諸国が採用している。「バ」国でも後者を採用することとした。

(3) 個別機器にかかるラべリング制度骨子案

至近年の省エネラべリング制度の適用が計画されている機器について、制度骨子案を策定した。制度骨子案は、制度全般に関わる共通ルールと、各家電(CFL、エアコン、冷蔵庫、テレビ、ファン、照明安定器、モーター)毎の、主に技術的な内容からなるルールから構成されている。

エネルギー効率測定方法はBDSとして制定されるが、法令がこのBDSを引用することでBDSに法的な力(裏付け)を持たせている。家電のエネルギー効率のランクを決める星印基準についてもBSTIがBDSとして制定する方法とすることもできるが、社会的、経済的な
見地から決定すべきものなので、主に技術的基準であるBDSとはせずに、法令の中で直接規定する方法を採用した。

(4) 義務制度化に向けた試験機関の能力強化

SREDAは、ラベリング制度を任意制度としてスタートし、次に義務制度に切り替えて制度普及を徹底させる意向である。義務制度とする場合には、対象家電メーカーすべてがエネルギー効率試験を受けられるように、行政サイドが試験サービスを提供できるようにしなければならない。このため、BSTIをはじめとする試験機関を早急に整備して試験能力を十分に高める必要がある。

(5) エネルギー効率測定方法に関わる BDS(「バ」国規格)の整備

BSTI が BRESL プロジェクト下で、いくつかのエネルギー効率測定方法に関わる BDSを制定したが、これらの多くが他国基準のコピーである。「バ」国にそぐわない内容も多いので、見直しが必要である。

(6) 制度検討委員会の組織(外国メーカーの招聘)

省エネラべリング制度を発効させるためには、継続して制度検討委員会を組織していくことが必要になる。「バ」国では家電の多くが輸入品であるので、当制度は海外の家電メーカーに

7. 本プロジェクトのプットアウト5

も影響を与え、非関税障壁等の貿易問題となる可能性もある。制度検討委員会は、政府側委員に偏ることなく、海外メーカーの参加も含め、公平な委員構成で実施することが重要である。

2.4 建築物の省エネ促進制度への提言

「バ」国では、建築物のエネルギー消費が急速に伸びており、効果的な建築物の省エネ対策が求められる中、改正建築基準法が、現行の基準に省エネに関する規定を加える形で、新たに発効されようとしている。効果的な制度構築・運用を目的として以下の提言を行った。

(1) 改正建築基準法の制定、運用

「バ」国では改正建築基準法が、まもなく発効されるが、現状では建築基準法の遵法率は極端に低い。「バ」国において、円滑に法の適用を進めていくためには、まず第一段階は 5,000~10,000m2 以上の大規模建物のみを適用対象として、以降段階的に適用範囲を拡大していくのがよい。なお、改正建築基準法の一部条項には先進国の基準をそのままコピーして導入している箇所があり、「バ」国の実態にそぐわない点もあるので、これらは適宜、見直しが必要である。

着実な法の施行のためには、すべての関係者がその役割と責任を果たさねばならない。このために、まず住宅公共事業省(MOHPW:Ministry of Housing and Public Works)は、SREDAの協力を受け、関係者への普及啓発・能力開発を図るべきである。まずは、法施行の実施主体となる地方政府への普及啓発・能力開発を行い、続いて、地方政府から省エネの実施主体となる建築物の所有者、利用者、設計者、建設事業者への展開が図られることが望まれる。

なお、円滑かつ効果的な普及啓発・能力開発のためには、具体的な建築物の省エネ方策の紹介や実施方法を解説したマニュアルを作成し、活用するべきである。

建築基準法に定められた確認申請制度は、設計・建設段階での行政による建築物の確認・指導制度であり、実際にエネルギーを消費する建築物の運用段階での確認・指導はない。建築物使用者が建築物のエネルギー消費量と、建築設備の運転保守状況も含めた省エネ推進状況を報告し、行政がそれを確認(モニター)・指導する運用制度の確保が重要である。

(2) グリーンビルガイドラインの開発と実施

グリーンビルガイドラインは、省エネや水の合理的利用だけでなく、建築物のライフサイクル(建設、使用、撤去)における総合的な環境負荷低減を目的とする任意のガイドラインである。改定建築基準法より高いレベルの省エネと低環境負荷建築物の設計・建設のためのガイドラインとして、2025 年の完成を目指している。

グリーンビルガイドラインは任意制度のため、その普及には、グリーンビルの性能を評価(ランク付け)するシステムの構築が必要である。この評価(ランク付け)システムは、グリーンビルの表彰、インセンティブ付与の基準として活用できる。

(3) 制度開発・実施の確認と見直し
住宅公共事業省は、SREDA と共に、改定建築基準法の実施状況やグリーンビルガイドライ

ンの開発状況を確認し、必要に応じて、行程の見直しや適切な対応策を実施する必要がある。

なお、建築物の省エネ進捗状況の把握のためには、新設及び既設の建築物に関する統計データベースの構築が必要である。住宅公共事象省は、SREDAと協力して、このデータベースの開発・整備を進める必要がある。

(4) 他の省エネ制度との連携

「エネルギー管理制度」と「省エネラベリング制度」は、建築物の省エネ推進にも関係する制度である。大規模ビルには、改正建築基準法以外に、エネルギー管理制度が合わせて適用され、義務的なエネルギー管理が課される。また、ビル内のエアコン、照明器具、天井ファン等の設備には、主に家電を対象とした省エネラベリング制度が適用される。SREDAは、改正建築基準法内の建築設備のエネルギー効率基準とこれら他の制度規定との整合を取る必要がある。

2.5 財政面でのインセンティブ制度の立案

省エネの効果的推進のためには、規制制度だけではなく財政面でのインセンティブ制度(以下、インセンティブ制度)構築も必要である。そこで、各種インセンティブ制度を調査・検討し、「バ」国に適した効果的な制度を提案した。検討内容を以下に示す。

(1) 各種インセンティブ制度の比較と「バ」国への適用性

省エネ設備投資に対するインセンティブ制度として、主に補助金、優遇税制、低利融資の3種類が挙げられる。

省エネ設備投資に対する補助金は、交付対象となる設備や事業にかかる費用を一部ないしは全部を政府が負担することで購入者の経済的負担を軽減させるもので、日本で実施された「エコポイント」のような「ポイント還元システム」や、融資において支払い利子相当額の一部を助成する「利子補給」もこれに含まれる。補助金の支給によって対象機器の購入を促し、普及が加速するという経済効果がある一方で、手続きを行う組織体制の整備も必要となり、補助金交付決定に関わる審査等の業務費用が発生する。

優遇税制は、高効率機器の購入等の対象事業を行う企業や個人に対し、所得税や法人税等の税金を減免する制度である。加速償却による減税も優遇税制のひとつである。優遇税制は企業・個人を問わず適用対象を幅広く設定でき、制度実施に係る特別な手順や体制の追加が不要という点で導入しやすいと言える。しかしその一方で、減税または免税による税収減をどのように補填するのか、制度効果の評価が困難である、といった課題もある。

低利融資は、対象となる事業や設備投資に対し、銀行等金融機関が市中金利よりも低い金利で貸付を行う制度のことである。主に政府やドナーが特定の政策支援を目的として、譲許性の高い資金を銀行等金融機関に提供することで金融機関の資金調達コストを軽減し、その結果エンドユーザーへの貸付を促進することが可能となる。また、返済を前提とした有償資金支援であるため、政府の財政負担も少ない。

(2) 「バ」国に有効な省エネ推進のためのインセンティブ:円借款を活用した低利融資

省エネ推進を妨げる要因として、「バ」国は現在以下のような状況にある。

・政府によるエネルギー補助金(直接・間接)により、電力・エネルギー料金が市場価格よりも大幅に低く抑えられている。そのため、省エネによる光熱費削減メリットが低めとなり、省エネの必要性が企業・個人に浸透するまでに時間がかかる。

・省エネ推進のため、新たに補助金や優遇税制を導入する財政的な余力が政府にはない。上述の「バ」国の現状を鑑み、前述した 3 種類のインセンティブ制度の中で、政府にとって最も財政的負担が少なく、エンドユーザーが長期にわたり金融支援を受けられる「低利融資」を、「バ」国の省エネ推進において最も効果的なインセンティブ制度として提案する。電力・エネルギー料金の低い「バ」国においては、人々の省エネ意識は総じて低い。そこで、省エネ機器に買い替えることでエネルギー費用をここまで削減できるといった「省エネから得られる経済効果」を見せることで省エネ機器への買い替え需要を喚起することを目指す。そこで、省
エネ促進低利融資制度のフェーズ1として、省エネ効果の高い、特定のフラッグシップ事業に対して融資を行うこととする。フェーズ 1 にて省エネ事業による経済効果がある程度認知されたところで、複数の参加金融機関(PFI)によってすそ野を広げていくことを目的としたフェーズ 2 を展開することが有効と考える。

(3) 国際支援機関による支援活動

「バ」国ではドイツ国際協力公社(GIZ)、国連開発計画(UNDP)等、多くの国際支援機関が省エネ推進のための支援活動を行っている。また、日本政府(JICA)は、アジア諸国でこれまで実施してきた省エネ促進のための円借款事業及び技術協力の知見を「バ」国でも活用し、提供していくことが可能である。SREDA はこれらの活動が重複することなく合理的に進むように、支援機関及び関係政府機関と役割分担を明確にしながら調整を行う必要がある。

2.6 気候変動対策(地球温暖化対策)の考慮

CO2 排出削減も「バ」国では重要な課題である。昨今、国際協力機関による気候変動対策としての各種提言及び資金提供が行われている。「バ」国のインフラ整備は諸外国による気候変動に関係する支援策を無視しては進められない。諸外国による無償援助や低利融資を呼び込むため、気候変動対策を省エネにつなげて考えるべきである。また地球温暖化対策は財務支援制度と経済分析と同じ土俵の上で議論されるべきである。

2.7 エネルギーデータ、省エネ目標・シナリオ、IT 利用の検討

(1) エネルギーデータ
「バ」国のエネルギー消費に関しては、いろいろな報告書が学術界、各種団体、政府機関から出されている。しかし、共通したデータは少なく、ばらばらの状態で統合されていない。そこで、エネルギー消費データの出処を探り確定することが、省エネ推進のための正確かつ継続

的なエネルギー消費実態把握及び政策立案・モニタリングの実施には不可欠である。SREDAの定期的なデータの収集・蓄積及び分析作業への取り組みは優先課題である。

部門・燃料別年間エネルギー消費(1 次エネルギー換算)を図 2-3 に示す。最もエネルギー消費が大きいのは産業部門(約 50%)であり、その次は住宅部門(約 30%)である。

(3) 省エネポテンシャル

現状の工場、住宅及びビルにおいて、エネルギー管理・高効率機器の導入、断熱や日射コントロールによるビルの省エネ化等を全国一斉に実施した場合に、期待される省エネ量または率が「省エネポテンシャル」である。市場調査、工場・ビルのエネルギー診断及び関係ヒアリング等より、「バ」国における部門別省エネポテンシャルを、産業部門 21%、家電(住宅)28.8%、ビル10%、農業20%と推定した。省エネ目標を設定する場合には、まず省エネポテンシャルを把握し、ポテンシャルのどれくらいが実現可能かを判断していくことになる。(省エネポテンシャルとしては、経済合理性のある省エネポテンシャルのみを対象とし、経済的に見合わな
いものは除外した。)

(4) 2030 年に向けた省エネ目標の設定とそれを達成する省エネシナリオ
省エネ目標の指標としては、以下のいくつかのものがある。

①エネルギー消費削減量の絶対値(エネルギー消費量の絶対値)
②将来予測 BAU 値に対する削減率または量
③人口当たりのエネルギー消費量の絶対値または削減率
④GDP当たりのエネルギー消費量

このうち、①、②については、根拠となるエネルギー消費データが「バ」国では整備されておらず、かつ②は目標年における目標達成度の確認が難しい。③は、今後経済成長が見込める「バ」国の評価には適さない。今後の経済成長とエネルギー消費効率の向上を合わせて評価できるGDP当たりのエネルギー消費量を指標として採用した。具体的には2021年(中間評価年)及び2030年の省エネ目標を、2013~14 年のGDP当たりの1次エネルギーインテンシティ(toe/GDP:バイオマスを除く)比で、それぞれ15%及び20%と設定した。

これに対し、いくつかのシナリオにおける1次エネルギー消費量予測を行った。表2-1に試算した2030年に向けた省エネシナリオケースの概要を示す。

(5) 電力日負荷曲線の予測
図 2-6 は、現状の年ピーク時の電力日負荷曲線(2014 年 5 月 31 日実測)について、部門別
及び家電別に内訳を推定したものである。この図をもとに 2030 年時点の電力負荷の内訳を作

成して、各産業業種別の省エネや各家電の省エネを実現したとき(省エネ発展シナリオ)にどれくらいのピーク負荷低減につながるかを予測したところ、ピークである夕方の電力を約25%削減できることが分かった。特に夕方のピークを構成する照明やTVの省エネが重要である。

(6) IT 利用・エネルギー消費データ収集メカニズム

国内のエネルギー消費データを収集・集約し、また統計化したデータを公表するにはITインフラを整備することが欠かせない。そのために、本プロジェクトではまずSREDAのウェブサイトのメインフレームを構築した。

次に、このウェブサイトとリンクさせて「エネルギー消費定期報告システム」のプロトタイプを開発した。このシステムを用いて、エネルギー管理制度における「大口エネルギー消費者」がエネルギー消費量や省エネ実施状況をSREDAに報告し、SREDAが分析・統計化した後にシステム上で公開するものである。

昨今、ビッグデータの活用が試みられているが、全国の事業者や家庭のエネルギー消費や省エネ実施例、人々のエネルギーに関係する意識や行動等の膨大なデータの活用を将来的な課題と捉え、IT利用を推進すべきである。

2.8 経済財務分析

(1) 省エネ制度の経済効果

前述の目標シナリオは、BAUケースに対してエネルギー需要を2030年に20%削減するものである。この場合、試算では2015年からの新規電源(開発)を約 2.9%削減することができる。(図 2-7 参照)結果的に、割高な燃料輸入を減らすことで2015年から2030年にかけて BDT2.3 兆(年平均 BDT 1,350 億)の燃料費削減となる。これは国家予算の6%、GDPの1%に当たる。