エレクトロニクスとは?電子工学の基本と有名企業を解説します

エレクトロニクスは、電子現象に関する理論や応用科学、技術体系のことです。その語源はエレクトロンから来ており、一般的には電子工学と訳されます。

例えば、スマートフォンやパソコンにも、エレクトロニクスが使われています。それらの画面に文字や画像を表示したり、記憶することを可能にするのが、半導体です。エレクトロニクスは、そういった電子部品や内部のプログラム、ネットワークの総称用語としても使われます。このように、エレクトロニクスは私達の生活に身近な存在です。

半導体の場合、近年テレワークやECの増加でデジタル機器やデータセンターの需要が伸びています。そして自動車1台あたりの半導体搭載金額の伸長も追い風になっています。また近年は、半導体戦争が激化しています。TSMCの熊本工場の建設や、ラピダスの北海道進出はその象徴でしょう。まさにエレクトロニクスは、世界の技術競争の主戦場になりつつあります。

本記事では、エレクトロニクスでおさえるべきポイントについて詳しく解説します。

 

1. エレクトロニクスとは

1-1. エレクトロニクスの意味

エレクトロニクス(英:electronics)は、電子による現象に関する理論や応用科学技術の体系です。一般的には、半導体や小さな電子部品、その中の内臓プログラムやネットワークの総称として使われています。例えば自動車やスマホ、テレビ、工場の産業用ロボットなど、あらゆる分野でエレクトロニクスは使われています。

1-2. エレクトロニクスの歴史

トーマス・エジソン

トーマス・エジソン(※Wikipediaより)

エレクトロニクスの歴史の歴史は、半導体の歴史といってもいいでしょう。その起点は、生涯で1,300の発明と技術革命をしたトーマス・エジソン(英:Thomas Alva Edison)の電球の発明です。エジソンは、当時直流だった白熱電球の研究中に、もう一方の電極にプラスの電圧をかけた時だけ電流が流れることを発見しました。この原理をジョン・アンブローズ・フレミングが実用化し、真空管が誕生しました。

その後アレクサンダー・グラハム・ベルが電話を発明し、グリエルモ・マルコーニは無線電信を開発します。またドイツのカール・フェルディナント・ブラウンは、ブラウン管を発明します。

このように、エレクトロニクスの基礎となる技術は、19世紀の末までに確立されました。そして1990年代には、マイクロプロセッサ技術とアナログ回路技術が発展します。例えば、自然界の音声や電波のような連続的な信号は、アナログ信号です。一方、コンピュータ内での2進数で表現されるのは、デジタル信号です。

近年はAI需要の高まりとともに、NVIDIAに代表される半導体産業の競争激化が進んでいます。熊本や北海道での大型工場の建設など、日本もその最前線にいるといっていいでしょう。そういう意味では、今の日本は世界有数のエレクトロニクス有力国といえるでしょう。

 

2. エレクトロニクス業界について

2-1. GDPは15.9兆円で全産業の2.9%

エレクトロニクス産業の面目GDPは、15.9兆円です。また全産業に占める割合は、2.9%です。(※内閣府の国民経済計算)また業界構造としては、事業者は「製造事業者」「流通事業者」「販売事業者」に分類されます。近年は、ファウンドリー企業やEMS企業などの製造請負企業の存在感が大きくなっています。

2-2. 日本の半導体業界売上ランキング

2022-2023年の半導体業界の売上高ランキングでは、1位はルネサスエレクトロニクスでした。例えばその売上高は1兆5008億円もあります。また車載マイコンについては、世界の30%のシェアを握っています。2位以降は、ソニーグループ、キオクシアHD、東芝、ロームと続いています。

2-3. 自ら設計はしないファウンドリー企業

ファウンドリ企業

製品の設計図を外部から受け取り、半導体を生産する委託企業が、ファウンドリー企業です。つまり、半導体の生産設備は所有しているものの、自ら半導体の設計は行いません。世界のファウンドリー上位企業としては、TSMCやサムスン、Global Foundries、UMCなどがあります。『【徹底解説】TSMCとは 下請けを極めた世界最強のファウンドリTSMC』では、ファウンドリ企業について詳しく解説しています。

2-4. 特許出願が急速に増加した量子コンピューティング

コンピュータサイエンス、物理学、数学などの側面から構成されるのが、量子コンピューティングです。例えば量子力学を活用し、複雑で高度な問題を従来のコンピュータより高速に解決することができます。このような高速に解決するアプリケーションには、機械学習や最適化、物理システムのシミュレーションなどがあります。

 

3. エレクトロニクスに関する人気解説YouTube動画

ここでは、エレクトロニクスに関するYouTube上の人気解説動画をご紹介します。話題のエヌビディアの発表模様や、LSIマイクロエレクトロニクスの説明動画があります。また気になる半導体メーカーの給料事情やソニーの最新事情など、盛りだくさんです。

タイトル 再生回数
1  米エヌビディア開発者会議 次世代AI半導体を発表【モーサテ】 26,000回/月
2  LSI マイクロエレクトロニクスの世界Vlog 4,583回/月
3 【給与明細】半導体メーカーの給料を公開【会社員】 13,333回/月
4 【これがソニーの本気】ついに半導体分野で世界トップシェア 57,000回/月
5 今社会人が知らないとマズい「半導体」について分かりやすく解説します。 28,000回/月

 

4. ルネサスエレクトロニクスについて

4-1. ルネサスエレクトロニクスの株価

ルネサスエレクトロニクス株価

10年間のルネサスエレクトロニクスの株価推移(※Yahooファイナンスより)

自動車1台あたりの半導体搭載額の増加などの好要因で、2022年12月期の営業利益は前期比2.4倍になりました。ルネサスの社長兼CEO(最高経営責任者)の柴田英利氏によると、クラウド向けはDDR5(メモリ技術)への移行の拡大を背景に、大きな伸びを見込んでいます。また2024年度上半期は、AI(人工知能)サーバ向けでパワーステージが立ち上がる予定です。そのことにより、更なるクラウド/データセンター向けの伸びの加速が見込まれます。

4-2. ルネサスエレクトロニクスの年収

ルネサスエレクトロニクス株式会社は、上場企業です。そのため、有価証券報告書で社員の平均年収は公開されています。それによれば、2022年12期の平均年収は874万円(平均年齢47.7歳)です。また役職別の年収は、以下のようになっています。

<ルネサスエレクトロニクスの役職別平均年収額>
① 役職なし(B等級)1~5年目/400~650万円
② 役職なし(C等級)5~10年目/650~800万円
③ 主任・技師(係長クラス)10~15年目/800~1,000万円
④ 課長/1,000~1,200万円
⑤ 部長/1,200万円~

4-3. ルネサスエレクトロニクスの人気解説動画

YouTube上には、ルネサスエレクトロニクスに関する動画が多数アップされています。その中でも再生回数が多く、人気の動画を以下にご紹介します。例えば、ルネサスの歴史に関するものから、経営幹部のM&Aに関するコメントなど広範囲にカバーしています。

タイトル 再生回数
1 【半導体企業研究】ルネサスエレクトロニクスの歴史や業績・年収を徹底解説! 1,500回/月
2 【経営幹部に直撃】“日の丸半導体”ルネサス 次のM&Aの狙いは? 9,250回/月
3  ルネサス 電子機器設計を手がける米アルティウム社を8,900億円で買収 21,500回/月
4  半導体に投資するなら最低限抑えよう! 9,750回/月
5  ルネサスエレクトロニクス(6723)レンジ上抜けの可能性が大。 29,000回/月

 

5. エスケーエレクトロニクスについて

5-1. エスケーエレクトロニクスの株価

エスケーエレクトロニクス株価

10年間のエスケーエレクトロニクスの株価推移(※Yahooファイナンスより)

エスケーエレクトロニクスの業績は、直近2年間の売上高は二期連続の増収で、平均増収率は37.53%です。高精細な回路パターンを転写するフォトマスクに強みを持っています。フォトマスクとは、半導体やディスプレイ、プリント基板などの製造に使われるツールです。同社は、第10世代以上の大型フォトマスクにおいてトップメーカーです。

5-2. エスケーエレクトロニクスの年収

有価証券報告書によると、2021年度のエスケーエレクトロニクスの平均年収は709万円でした。年代別の平均年収について、以下に記します。

<エスケーエレクトロニクスの年代別平均年収額>
① 25~29歳/472万円
② 30~34歳/544万円
③ 35~39歳/620万円
④ 40~45歳/662万円
⑤ 50~54歳/765万円
⑥ 55~59歳/765万円

 

6. まとめ

かつて日本のエレクトロニクス産業は、世界最強といわれていました。しかしアナログ技術からデジタル技術への転換にうまく対応できず、日本のエレクトロニクス産業は凋落しました。

情報通信機器の製造は部品を組み立てるだけなので、新規参入が容易です。そのため製品の価格下落が激しく、利益確保が困難になりました。その結果、エレクトロニクス専門の製造(EMS)企業がIT製品の製造をカバーするようになりました。

また2000年代初頭は3G技術で先行していましたが、ネットワーク作りに失敗し、競争力を失いました。携帯電話分野では、韓国企業は後発であるのにも関わらず、米国クアルコムの通信技術を活用し、世界的ブランドに成長しました。デジタル時代では、独自の技術が優位性を決定しません。つまりネットワーク作りとマーケティング、量産技術で勝負が決する時代が到来したのです。

アメリカのエレクトロニクス産業は、米企業発注・台企業受注・中国生産の国際分業でした。しかし昨今米中の技術派遣競争が激化し、情報機器調達の中国依存を回避する動きが活発化しています。そのためこれを好機と捉え、日本のエレクトロニクス産業復活の動きが加速しています。

半導体は『ラピダスとは?半導体復活象徴の日の丸ファウンドリーを目指して』でも解説しています。

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