雇用契約書とは?お互いが気持ち良く働くための基本認識に!

本来契約というものは、中身が何であれ、当事者同士が合意すれば成立します。それは、雇用契約書についても同様です。

仮に口頭やメールで、「○月○日から、月額○万円で○○の仕事をお願いします。給料は、当月末締めの翌月末支払いで銀行口座に振り込みます」という内容で合意した場合、その契約は成立するのです。

ただし世の中の雇用に関する大部分の問題は、雇用主が何らかの経済条件を順守しないことに起因しています。また一部では、労働者の誤解によるものもあります。

そういった問題が発生することを防ぎ、お互いが気持ち良く働くためには、事前にきちんと各条件を明記した雇用契約書を作成する必要があります。

インターネット上では多くの雇用契約書のサンプルがありますので、そういった雛形を活用することで、早く完成度の高い雇用契約書を作成することもできます。

本記事では、雇用契約書に関して押さえるべきポイントを、わかりやすく解説していきます。

 

【目次】
1. 雇用契約書とは
2. 法律上明示すべき雇用条件
3. 個々の雇用形態に合わせて作成する注意点
3‐1. 正社員
3‐2. パート・アルバイト
3‐3. 契約社員
4. 要チェック!トラブルになりやすい項目
4‐1. 業務の中身に関するトラブル
4‐2. みなし残業に関するトラブル
4‐3. 契約更新に関するトラブル
5.まとめ

 

1. 雇用契約書とは

雇用契約書とは、雇用主と労働者との間で交わされる労働条件が記載された契約書です。契約の中身については、口頭やメールでも、当事者同士が合意すれば成立します。

法律では、以下のように定められています。

雇用契約書とは、民法第623条に基づいて雇用主と労働者との間で交わされる労働条件が記載された契約書です。労働条件通知書との違いは、雇用契約は書面がなくても双方の合意で成立しますが、労働条件通知書は雇用時に交付が必須です。なので、雇用契約書の中に労働条件通知書に記載すべき項目を入れるパターンも増えています。

雇用契約書は、正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象になります。雇用契約書は法律上義務付けられてはいませんが、労働契約法4条では、以下のようにできる限り作成が望ましいとしています。

【労働契約法4条(労働契約の内容の理解の促進)】
1. 使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
2. 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

双方が合意すると、それぞれの署名・記名捺印を行います。2019年4月から、本人の希望があり、かつ書面で印刷できる形式であれば、FAXや電子メール、LINEなどのSNSによる通知も認められています。

 

2. 法律上明示すべき雇用条件とは

雇用者には、労働条件の明示が義務付けられています。企業によっては、内定通知と一緒に雇用契約書と就業規則を送付してるところもあります。

労働基準法第15条では、以下のように「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と労働条件の明示義務を定めています。

【労働基準法第15条】
使用者は、労働契約の締結に際し、労働に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

では、実際に法律的に書面で明示すべき条件とはどういったものでしょうか。以下に記します。

◆法律的に書面で明示すべき労働条件の項目
・労働契約の期間について
雇用開始日を明記します。有期雇用契約の場合、契約終了月日や契約更新の有無も明記する必要があります
・働く場所と仕事内容について
所属部署や事業所などの働く場所や職種と仕事の内容を明記します
・始業時刻と終業時刻について
何時から何時までが労働時間なのかを明記します。また休憩時間や所定労働時間を超える勤務があるのかないのかを、明記します
・休日と休暇について
週休日数や具体的な曜日、1年の有給休暇日数、夏季休暇や年末年始休暇について明記します
・賃金について
給与や報酬金額の仕組み、具体的金額、締め日と支払い日、支払い方法などを明記します
・退職について
退職や解雇に関する内容や定年制の有無やその内容、任意退職に関する扱いについて明記します
※短時間労働者の場合、昇給や賞与、退職手当があるのかどうかも明記します

雇用契約書に労働条件を明示することが、トラブルの抑止力になる

 

3. 個々の雇用形態に合わせて作成する注意点

現在多くの企業では、正社員だけでなく、パート・アルバイトや契約社員といった様々な雇用形態が存在します。雇用契約書を作成する場合、それぞれの雇用形態に合わせて作成する必要があります。その注意点を、以下に記します。

3‐1. 正社員

<正社員との雇用契約書で注意すべきポイント>
・試用期間の有無
・適用される労働時間
・休日、休暇の設定
・今後の業務内容の変更の可能性
・転勤の可能性
・異動の可能性
・残業の有無
・求人票の労働条件が目安になっていて、正確な数字になっていない

3‐2. パート・アルバイト

<パート・アルバイトとの雇用契約書で注意すべきポイント>
・契約更新の有無
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・短時間就労者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

3‐3. 契約社員

<契約社員との雇用契約書で注意すべきポイント>
・契約期間満了日
・更新の有無
・更新の判断基準
・契約期間の満了後の新しい労働条件
・有期労働契約が通算5年を超えた場合、本人の申し込みで無期雇用契約に更新可能
・有期労働契約を3回以上更新または1年以上継続雇用の従業員に対しては、契約更新しない場合、満了30日前までに告知する必要あり
・従業員から証明書を請求された場合、契約期間満了とは別の理由にする必要あり

 

4. 要チェック!トラブルになりやすい項目

4‐1. 業務の中身に関するトラブル

就職が決まる時、求人サイトに掲載されている仕事内容や面接の時に受けた仕事に関する説明内容と異なる雇用契約書を交わすケースがあります

【事例/一般事務職で募集していたのに営業職に回された】
その企業は、一般事務職を求人広告で募集していました。Aさんはその求人案件に応募し、無事採用されました。ところが、Aさんはなぜか営業部に配属になったのです。実は営業職がなかなか集まらないため、「一般事務職の方が応募する人数が多い」ということで確信犯で求人活動をしていたのです。面接に来た人間を人事部が採用し、入社後本人の同意を得ずに別の職種で働かせた場合、職業安定法第42条の違反行為になります。

4‐2. みなし残業に関するトラブル

みなし残業とは、固定残業代といわれる制度です。雇用側(企業)が、毎月の固定給に加えて、決まった時間の残業代を支給します。

しかし、労働時間がみなし残業代を大幅に上回っても、その差額が支給さず、トラブルになるケースが多発しています。

【事例/営業手当がみなし残業とみなされた】
Bさんは、教育教材の販売会社でテレアポ業務に従事していました。月の残業時間が多くなっても、みなし残業代は支給されず、裁判に訴えました。その企業は、「営業手当という名目で、月35時間分の労働に相当する金銭を支給していたことをで、残業代は支給済みである」と主張しました。しかし裁判所は「営業手当はあくまで営業活動の経費・インセンティブであり、支給時に時間外労働の時間数と残業手当が明示されていない」との判断をし、その企業に対して追加の残業代の支払いを命じました。

4‐3. 契約更新に関するトラブル

雇用に関するトラブルで、契約更新に関するトラブルも切実なテーマです。正社員雇用が減り、契約社員・パート・アルバイトなどの非正規労働者が増加するにつれて、トラブル件数も増加傾向にあります。

【事例/勤務態度不良を理由に、契約社員の契約更新を拒絶】
Cさんは、衣料品会社の契約社員として働いていました。全国に展開する百貨店の売り場で、販売業務に従事する仕事です。Cさんは、各職場のリーダーと位置付けられる販売社員として雇用契約を結びました。過去5回、1年契約を更新してきましたが、今回会社側は契約更新を拒否。Cさんは「販売社員として5回も更新したきたのだから、このまま更新されると思っていた」と主張しました。ただ裁判所は、「一般販売員を指導する立場であるにも関わらず、在庫確認忘れとその隠蔽行為など、会社がそれらを理由として更新拒絶したとしてもやむをえない」という判断を下しました。

 

5. まとめ

雇用契約書は、今後ますます重要になってくると思われます。

雇用する側と雇用される側がお互い気持ちよく働くためには、雇用契約書は必要不可欠な取り決めといえるでしょう。

そういう意味ではトラブルになる前に、事前準備がとても大切です。

実際の運用書面やトラブル事例を参考にして、自分自身の労働環境を快適にするスキルは必須だといえるでしょう。

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