世界23ヶ国調査!ファッション、コンテンツ、フード分野報告書紹介

今回の企画書は、ドイツ生まれの外資コンサルのローランド・ベルガーの作成です。

アパレルに代表されるファッション産業、アニメやゲームに代表されるコンテンツ産業、外食や飲料に代表されるフード産業の3分野において、世界23ヶ国の調査をベースにした成長性に関する基礎調査です。

非常に興味深い指摘が多くあり、必見の内容です。

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【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2.『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備』から学ぶ
3.表紙
4.目次
5.目標値産出
6.重点対象国・地域における分野別戦略に向けた調査研究

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、ファッション、コンテンツ、食の3分野における2020年の市場規模、2013年からの成長性について記載されています。ポイントとなるキーワードを、以下に記します。

・23ヶ国を対象とした、ファッション、コンテンツ、食の3分野における2020年の市場規模
・ファッション、コンテンツ、食の3分野における2013年からの成長性
・ファッションの対象項目は、アパレル、靴、アクセサリー、化粧品
・コンテンツの対象項目は、放送、ゲーム、映画、アニメ、音楽、マンガ、キャラクター
・食の対象項目は、外食、加工食品、飲料
・コンテンツは、米国が引き続き突出した市場規模
・食では、中国・米国についでブラジルの市場規模が大きい
・アパレル海外展開パターンは、デザイナーズ型、ストアブランドSPA型、カテゴリー特化型の3つ
・コンテンツ海外展開パターンは、コンテンツ力立脚型、ローカライズ作りこみ型、オープンイノベーション型、ソーシャルメディア先行型
・外食の海外展開パターンは、ジャパニーズラグジュエリー型、ジャパニーズプレミアム型、ローカライズ・マス型

 

2. 『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(クールジャパン関連分野における国別・分野別目標の設定に向けた基礎調査)報告書』から学ぶ

では、ドイツ生まれの外資コンサルローランド・ベルガーが作成した企画書を以下具体的に見ていきましょう。

3. 表紙

本節の内容について

◆本節では、23ヶ国・地域を対象に実施した先行調査における参照データ・推計方法を参考にしつつ、ファッション・コンテンツ・食の3分野における2020年の市場規模、及び2013年からの成長性について、推計を行った

◆各分野の推計に際して参考とした先行調査は以下の通り
・ファッション:ファッション業況調査及びクールジャパンのトレンド・セッティングに関する波及効果・波及経路の分析(経済産業省、2014年)
・コンテンツ:コンテンツ分野における商標権、著作権等の管理・活用に関する実態調査(経済産業省、2015年)
・食:クールジャパン(日本食分野)発掘のための産業分析調査(経済産業省、2014年)

◆なお、本節における推計の結果は、「第2章第1節 重点対象国・地域の選定と優先度順の分類」において、各国・地域を基礎的に評価する際にも利用している

【ファッション】
◆アパレル、靴
◆アクセサリー
◆化粧品
2013年~18年の数値を最新のEuromonitorに基づき更新。2019年・20年の予測は13~18年のCAGR1)により推計
【コンテンツ】
◆放送(除アニメ)
◆ゲーム
◆映画(除アニメ)
◆アニメ
◆音楽
◆マンガ
◆キャラクター
2013年~18年の数値を最新のGlobal Entertainment and Media Outlookに基づき更新。2019年・20年の予測は13~18年のCAGR1)により推計
※経済産業省平成26年度知的財産権ワーキング・グループ等侵害対策強化事業(コンテンツ分野における商標権、著作権等の管理・活用に関する実態調査)を参照
【食】
◆外食
◆加工食品
◆飲料
2013年~18年の数値を最新のEuromonitorに基づき更新。2019年・20年の予測は13~18年のCAGR1)により推計

本節の内容について

◆本節では、ファッション・コンテンツ・食の三分野の各々において、我が国産業界が取るべき海外展開モデルの仮説を立てると共に、ファッション及びコンテンツの二分野について、2020年における目標値の算出を行った

◆海外展開モデル仮説の導出に際しては、既に日本発で海外進出を実現している複数の事例の類型化を図り、海外展開モデル仮説として整理すると共に、かかるモデルが成立するための要件(海外展開の鍵)につき整理を行った

◆また各分野において、未だ明確な事例は存在しないものの、今後日本の産業界として目指し得る・目指すべきと考えられる海外展開モデルについても仮説的に導出した

◆目標値の算出に際しては、正確性や再現性等を考慮の上で、対象とする品目毎に適した算出アプローチを採用した

【1. デザイナーズ・ラグジュアリー型】
◆概要
・デザイナーがパリ、ミラノ、ニューヨークコレクション等でそのクリエイティビティを海外メディアに評価され、その後商業的にも一定の成功を収めるパターン
・成功の起点は、デザイナー本人の才能、クリエイティビティによる所が大きい
・但し、評価はされているものの海外事業は苦戦するケースが多く、商業的には国内事業に頼ることが多い
◆具体例
・コム・デ・ギャルソン
・イッセイ・ミヤケ
(以下、成長中ブランド)
・アンリアレイジ
・サカイ
・メゾンキツネ
【2. ストアブランドSPA型】
◆概要
・ストアブランドとは小売業者が作ったブランド。コンセプト・商品もさることながら、リテールフォーマットまで含めて一つのブランドとして認知され成功するパターン
・シンプル、高品質、高コストパフォーマンスをベースに受けいれられ拡大しているが、当初はブランド作りに苦労した経緯あり
◆具体例
・ユニクロ
・MUJI
【3. カテゴリー特化型】
◆概要
・靴、鞄など特定のカテゴリーにおいて、海外でのブランド構築に成功したパターン
・こだわりのジャパンブランドとして、“日本”と紐付けられる形で認知されているケースが多い
◆具体例
・オニツカタイガー
・吉田カバン

【1. デザイナーズ・ラグジュアリー型】
◆アンリアレイジ
・2014年にパリコレデビューを果たし、世界的に高い評価を受ける
・海外取扱い店舗はセレクトショップを中心に既に約20店舗(2014年10月時点)
◆イッセイ・ミヤケ
・一枚の布にはじまるジャポニズムの旗手として海外から高い評価を受ける
・2014年現在、国内134店舗海外91店舗(30ヶ国)で展開
◆コム・デ・ギャルソン
・1982年にパリコレへ出展し、世界的な高評価を獲得した日本最大のデザイナーズブランド
・欧州、米国、中国等の主要市場を中心に32店舗を展開
【2. ストアブランドSPA型】
◆ユニクロ
・海外売上は4136億円、ユニクロ事業全体の約4割を占める(2014/8月時点)
・中国で最も多い300店舗を展開し、海外店舗数は合計約600店舗(2014/8月時点)
◆MUJI
・海外売上高は468億円、前年比64%増と急速に展開を拡大(2014年度)
・255店舗を海外で展開(2014/2月時点)
【3. カテゴリー特化型】
◆オニツカタイガー
・オニツカタイガー売上高の8割以上が海外(2009年度売上高は280億円)
・主にセレクトショップを通じて海外展開。直営店は海外21店舗に展開(2014/11月時点)
◆吉田カバン
・デザイナーがN.Y.デザイナーズ・コレクティブのメンバーに選出されるなど世界的に高評価
・セレクトショップへの卸中心に展開。オンリーショップを台湾、香港で6ヶ所展開(2012/4月時点)

(参考)流行発信の事例(高評価国、ファッション)

・米国・英国・イタリア・フランスは影響力のあるインフルエンサーや大規模コレクションの開催を通じて流行を発信

【米国】
◆Origamiファッションが世界的インフルエンサーを通じて他国へ波及
・レディーガガが2008年ライブにて折り紙をモチーフにしたドレスを着用し、欧米を中心にOrigami dressという言葉が普及
・ZARAやForever 21″Origami skirt”を発売するなど世界的マスブランドへトレンドが波及
【英国】
◆アメカジテイストに日本の文字デザインを組み合わせた英国ブランドが著名人の着用により他国でも人気に
・英国ブランド「Superdry」は日本の文字・アメリカのテイストが合わさったアパレル商品を販売
・デイビッドベッカム(英)やジャスティンビーバー(米)など国内外の著名人による着用が話題となり他国へ普及
・フランスやドイツなど欧州を中心に米国、韓国などにもSuperdry人気が波及
【イタリア】
◆世界中のバイヤー及びブランドを集める大規模な服飾展示会やコレクションを通じ、各国にトレンドを発信
・イタリアメンズ見本市では、2万人規模のバイヤーが15カ国以上から来場
・700社を超える企業が出展し、うち3割程度は海外ブランド
・各国の芸能人が、ブログ・SNSでコレクションの注目商品が取り上げるなど注目度が高い
【フランス】
◆パリコレは世界中のファッション関係者や消費者の注目を集めるファッションショーであり、その波及効果は広い
・パリコレ出演モデルである松岡モナのSNSフォロワー数は、世界上位10人まで増加
・テキスタイルメーカーの美希刺繍工芸は、パリコレでの商品採用をきっかけに世界中から注文を受注

レディーガガのOrigami Dress

(参考)流行発信の事例(高評価国、コンテンツ)

・米国・中国・フランスは大規模な国際フェアや独自の波及ルートを通じて高い発信力を持つ

【米国】
◆各分野において世界的に大きなフェアを開催し、世界中へ幅広いコンテンツを波及
・NAPTEは世界70カ国からオペレーターや制作会社、代理店、バイヤー等7500人を集客するTV番組フェア
・Licensing International Expoは映像コンテンツからロゴ、キャラクターを展示する、来場者数約20,000人の世界最大の国際フェア
◆ハリウッドに代表される米国ブランドはグローバルに向けた発信力が非常に高い
…日本の書籍・ゲームのハリウッド映画化による、世界的ヒット事例は複数存在
【中国】
◆ネットを通じた映像配信が急速に進み、外国コンテンツの他国への発信が進む
・中国の動画共有サイト「優酷網」はアジアを中心に多くの外国人が利用
・優酷網では中国コンテンツに加えて、日本、欧州、韓国など他国のコンテンツが人気を集める
◆自国だけでなく、外国コンテンツを幅広い国へ発信するアジア最大級の国際フェアを開催
・2014年の香港フィルマートは32ヶ国・地域から770団体、6,750人のバイヤーを集めた
・上海国際映画祭は国内外含め27万人の来場者数を記録し、60以上の国からの作品を展示
【フランス】
◆カンヌ映画際やジャパンエキスポなど、外国コンテンツの発信力が非常に高いフェアを開催
・カンヌ映画祭には約90カ国から1万人を超える映画関係者が集い、世界中の映画を展示する
・ジャパンエキスポは、20万人以上を動員する大型イベントに成長
◆ジャパンエキスポはフランス国外からも来場者が集まり、ヨーロッパにおける日本文化発信に大きく寄与
… 日本アーティストによるアニメ主題歌のライブなど日系コンテンツの新たな発信の場を提供

(参考)流行発信の事例(高評価国、食)
・フランス・米国・イタリア・シンガポールは自国企業による海外進出、メディアや観光客を通じて流行を発信

【フランス】
◆ミシュランに代表されるメディアや国際見本市を通じての発信力は絶大
・ミシュランガイドは世界20カ国以上に年間約100万部販売されるレストランガイド
・シラ国際外食産業見本市は毎年130以上の国から10万人以上集める世界最高峰の国際見本市として食のトレンドを発信
【イタリア】
◆企業の海外進出やメディアを通じて多面的に食を他国へ発信
・セガフレード・ザネッティ やイリカフェはグローバルで200店以上展開する世界的なコーヒーチェーン
・ヴィーニ・ディタリアは、権威あるワイン格付けガイドブックとして世界中のワイン愛好家に読まれている
【米国】
◆発信力のあるメディア、高いレベルの食文化を持つグルメ大国として世界中に食情報を発信
・フード・アンド・ワイン・マガジンなど世界的な食情報メディアを多数保有
・レストラン誌の選ぶ世界レストランランキングでは複数のレストランが米国からランクイン
【シンガポール】
◆アジアの近隣国への発信力が高く、アジアのショーウィンドウとしての役割を果たす
・1000万人以上の渡航者が毎年来訪。アジアからの流入が多く、インドネシア・マレーシアなど近隣国からの観光客が3割程度を占める
・…“観光客を含め多くの人が来訪し、世界への宣伝効果も大きい”(銀座ライオン広報)

本節の内容について

◆本節では、前節において政策リソースを重点的に割くべき最重点国・地域として分類された中国・タイ・インドネシア・米国・フランスの5ヶ国・地域について、現況、課題及び今後の有望性につき、より詳細な調査分析・評価を行った

◇ターゲットの分析
・最重点国・地域における基礎情報の整理
・日本企業として有望なターゲット層の抽出
・ターゲット層の価値観・ライフスタイルの分析、及びそれを踏まえた分野横断的な捉え方の考察

◇有望な海外展開モデルと日本企業の課題抽出
・日系の進出状況の整理・分析
・有望と考えられる海外展開モデルの評価
・日本企業が抱える課題に係る分析(以下に分けて整理)
・海外展開モデルに関わらず共通の課題
・特定の海外展開モデルに固有の課題

◆以上の結果を踏まえた上で、今後政府が当該各国への日本企業の海外展開を促進させるために期待される取組について提言を行った

中国での展開に係るまとめ

◆中国では、消費意欲が高く日系への親近感も強い80年・90年代生まれの一人っ子世代が有望なターゲット

◆食を中心に、ファッションでも日系評価は高いが、今後の成長に向けては課題が存在。コンテンツはアニメ・マンガを中心に人気だが、ドラマにおいては政策的支援も武器に高い人気を獲得する韓国が現在優位にあり、個別企業の取組では打開が困難な状況
・ファッション:日系ファッション全体への評価は高いものの、個々のブランドのブランディング・知名度獲得・チャネル拡大
には改善余地がある。化粧品では、プレステージ市場では早期進出により一定の地位を築いたものの、メガブランドへの集中投資によりブランド力を強化する欧米系との差が拡大する一方、マステージ市場の取り込みには課題が存在
・コンテンツ:アニメ・マンガ人気は高いものの違法流通が多い。新作の正規版放送コンテンツは外資規制により流通が限られ、収益面からコンテンツホルダーの進出意向も乏しい中、ドラマでは近年政策的支援も武器に露出を高める韓国系がターゲット層からの支持を得ており、アパレル分野にも影響を波及させつつある
・食:日本食は既に沿岸都市部の外食を中心に一定程度進出しているが、内陸部への展開と、家庭食含めた日常食への更なる浸透が今後の成長の鍵となる

◆各分野における課題解決に向けた民間・政府の取組の考え方は主に以下の通り
・ファッション:(民間)ブランディング・チャネル開拓の進展とプロモーション
(政府)現地情報・ニーズ取得支援、チャネル確保支援、プロモーション支援等
・コンテンツ:(民間)規制をクリアした上での放送コンテンツ流通増と、資金調達方法の多様化等による収益化
(政府)一時的な補助金等による進出支援、外資規制緩和・違法流通取締強化への支援等
・食:(民間)現地消費者ニーズを捉えた商品展開、内陸部への進出、日本食文化の浸透による日常食への進出拡大
(政府)店舗物件獲得支援、日本食浸透に向けたイベント開催等
・分野横断:ターゲットのライフスタイル・価値観と、現状日系が抱える課題を前提に、例えば「高級百貨店を軸とした総合
ライフスタイル提案型イベントの実施」や「インフルエンサーの養成・起用によるブーム製造」といった取組は有効と考えられる

◆以上、各分野での日系評価は高いものの、韓国がコンテンツ分野への明確な集中投資とアパレル分野への波及に戦略的に取り組む状況下、相対的に日本のプレゼンスが低下しているため、日本としても一層の海外展開支援に取り組む必要性が高い