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スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)を活用して、農業の省力化や高品質化を実現する手法です。
野菜や穀物の生産量は、どうしても天候に左右されます。そんな不確実性をできるだけ排除し、農作業の効率化と技術継承も行います。
本記事では、スマート農業に関する重要ポイントを解説します。
Contents
1. スマート農業とは
農林水産省は、スマート農業を以下のように定義しています。
■ ロボット技術やICT等の先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、「情報通信技術」のことです。スマート農業は海外では、「スマートアグリカルチャー」や「アグテック」「アグリテック」とも呼ばれています。
1-1. スマート農業の普及の背景
2019年、農林水産省はスマート農業関連予算として、約50億円を計上しました。その背景を、以下に解説します。
1-1-1. 平均年齢67.8歳と高齢化が進む
上記は、日本の農業従事者は136万1,000人で、5年前と比べて39万6,000人減少した2020年のデータです。減少幅は、過去最大となりました。
農業就業者の平均年齢は、67.8歳と高齢化がかなり進んでいます。一方、農業の団体経営体は38,000経営体で、1,000経営体増加しています。家族農業経営が減少し、法人化や規模拡大が進行しています。こういった農業就業人口の高齢化と減少が、生産性が高まるスマート農業の必要性を高めています。
1-1-2. 農業機械開発との違い
従来の農業は、トラクターなどの農業機械の性能向上が省力化に貢献してきました。しかし肝心のノウハウ部分は、熟練者のスキルに頼る部分が大きかったのも事実です。
ところがスマート農業は、センサー技術を活用したIoTで、膨大なデータを収集できます。人間の経験や勘に頼ることなく、データに基づく判断ができる環境が整いつつあります。
つまり、スマート農業はデータで判断できるので、他業種からの新規就農者でも、質の高い農産物を生産できるのです。
2. 無人トラクターが実用段階へ
スマート農業の実用例としては、無人トラクターが導入されています。現段階では、別のトラクターで作業をしながら、無人トラクターを監視する方式が取られています。1台で複数のトラクターを操作でき、大幅な省力化が可能です。
今後の課題は、山間部の自動化技術の開発です。これは、農地面積が狭いため、小回りが利く農業機械の開発が必要です。また野菜や果物の収穫の機械化も重要なテーマです。
3. スマート農業を支える技術
農林水産省が作成した『スマート農業技術カタログ』(2018年8月公表)から、具体的技術を一部紹介します。
技術名 | 内容 |
会計feeee・人事労務feeee他 | クラウド(インターネット)で会計、人事労務のアプリケーション。農業経営を効率化できる |
IT農業栽培ナビ | 生産者だけでなく、流通、小売業など農業関係者に栽培履歴データをタイムリーに共有し、効率的な連携が可能。国際水準GAPの栽培履歴管理にも利用可能 |
agrinote(アグリノート) | 航空写真マップを活用し、センサーと連携し農地の管理や農作業を支援する |
Agri Field Manager | ドローンで撮影した農作物の画像をAIで分析し、異常探知箇所を表示する。また病害虫判定、リスク診断もできる |
Agri Assistant | 農薬や肥料、収穫や出荷など、農業に関わる情報を一括管理できる。ハンズフリー音声入力機能で、作業者と管理者が状況を共有できる |
Agri House Manager | ハウス内に設置したセンサーから、環境データを収集し、多角的に分析できる。スマートフォンで撮影した動画データの解析、作物の収量・収穫期予測、病害虫リスク診断ができる。また陸上走行ロボット「OPTiM Crawler」がハウス内レーンを走行して撮影し、クラウドに送信する。その映像データは、農作物の実の色や形状、熟度を分析・集計する |
Optimal Second Sight | スマートグラス、モバイル端末、PC等を使用し、現場の映像を遠方と共有できます。また赤ペンや指差しなどの書き込み指示機能もある遠隔作業支援サービス。経験値の高い農業従事者が、遠隔地の農業支援や世代間技術継承に活用できる |
4. 『「平成30年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)事業化支援事業」に関する報告書』から学ぶ
表紙
Ⅰ. 事業の目的と概要事業の目的と概要
1. 目的
・北海道経済産業局では、我が国ものづくり産業の基盤的技術を有する中小企業・小規模事業者の技術力の高度化を通じ、ものづくり産業の競争力強化や地域経済の活性化を図ることを目的として、「中小企業のものづくり基盤技術の高度化に関する法律(以下「中小ものづくり高度化法」という。)」に基づいた研究開発を支援してきた。特に、中小ものづくり高度化法に基づく特定研究開発等計画の認定を受けた中小企業・小規模事業者向けには、「戦略的基盤技術高度化支援事業(以下「サポイン事業」という。詳細は別紙参照。)」により、研究開発等にかかる経費の一部を補助し、その取組みを支援してきたところである。
・しかしながら、第4次産業革命が進展する今日においては、市場ニーズを捉えた研究開発に取り組み、新事業展開・販路開拓を図ることは容易ではなく、研究開発成果の事業化が停滞している企業も多い。
・本事業では、北海道の基幹産業の1つである「農林水産業」が抱える担い手の減少・高齢化等の課題を解決するための技術ニーズ調査を実施するとともに、サポイン事業の研究開発成果等の適用可能性を検討する。これにより、サポイン事業の研究開発成果等の事業化促進を図るだけでなく、農林水産業とものづくり産業等の融合による技術革新を実現し、北海道経済のさらなる発展を目指す。
2. 概要
・本事業では、以下の業務を実施した。
①農林水産業における先端技術の活用に向けたニーズ調査農林水産業が抱える担い手の減少・高齢化等の課題を解決する手段の1つとして、ロボット技術やIT、AI等の先端技術の活用が検討されている。本事業では、これらの先端技術を活用する上でのニーズを調査した。
②「サポインPRシート」の作成
サポイン事業で研究開発を実施したものづくり中小企業(以下「サポイン企業」という。)の成果及び基盤技術を有するものづくり中小企業(以下「サポイン予備軍企業」という。)の研究開発内容を端的にまとめた「サポインPRシート」を作成した。
③専門家による適用可能性の検討・アドバイス
道内中小企業や農林水産分野における技術開発等に精通する専門家を活用して、農林水産業における技術ニーズに対するサポイン事業の研究開発成果等の適用可能性を検討した。また、サポイン企業及びサポイン予備軍企業に対し、今後の研究開発や事業展開の方向性に関する助言を実施した。
Ⅱ.農林水産業における先端技術の活用に向けたニーズ調査
1. 概要
【調査目的】
農林水産就業者からは人手不足の現状並びに先端技術導入状況を、ものづくり企業からは農林水産分野への技術提供の現状を把握し、ものづくり企業と農林水産業とのマッチング機会の可能性を調べることを目的とした。
【各調査の概要】
①文献調査
<概要・方法>
インターネットでの情報収集を中心として調査を行った。対象としたのは、農林水産省や各省庁の公式ホームページ、公的研究機関・大学等のホームページ、農林水産業関係のポータルサイト、先端的な取り組みを行う企業のホームページ等である。当該ホームページに掲載されている情報や資料を参考に、農林水産業のスマート化における我が国の現状や方向性、先端的研究や取り組み事例を抽出した。
②アンケート調査
<調査対象>
農林水産就業者の調査対象は全698団体であり主に、農業協同組合、農業法人並びに北海道農業法人協会、漁業協同組合、森林組合、道内コントラクターである。 ものづくり企業へは全663団体を調査対象とし、北海道機械工業会会員、北海道農業機械工業会会員、北海道IT推進協議会会員、スマート農業カタログ掲載企業である。
<調査方法>
郵送にてアンケート調査票を送付し、郵送にて回収を行った。
<調査期間>
平成30年11月16日(金)~平成30年12月14日(金)
<実施状況>
回収率目標は20%と設定した中で、全体の回収率は約36.9%となった。
③ヒアリング調査
<調査対象>
農林水産業における現場ニーズや先端技術導入の現状と課題について、農林水産就業者や機械メーカー、各分野の専門家にヒアリングを実施した。調査先は10社程度とし、下記11社に調査を実施した。
◆公的機関専門家
・農林水産業全般/北海道立総合研究機機構 業技術研究本部
・農業/北海道立総合研究機構 農業研究本部十勝農業試験場
・森林業/北海道立総合研究機構 森林研究本部
・農業/農研機構北海道農業研究センター
◆農林水産業就業者
・農業/株式会社けんぶち VIVA マルシェ 他 剣淵町農家2社
・農業/(有)西谷内農場
・水産業/公立はこだて未来大学 システム情報学部
◆機械メーカー
・農業機械/一般社団法人 北海道農業機械工業会
・農業機械/株式会社 ヰセキ北海道
・機械メーカー/積水化学工業株式会社
・機械メーカー/NECイノベーションイノベータ
【本調査の先端技術の定義】
◆AI
AIの定義は研究者によって様々である。総務省が発表した資料(「人工知能の現状と未来」)では、「そもそも人間の『知性』や『知能』自体の定義がないことから、人工的な知能を定義することもまた困難である」としており、そのため、AIの定義は難しく、おおまかに「知的な機械、特に、知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術」と表現されている。
◆IoT
IoT=Internet of Things の略であり、一般的に「モノのインターネット」と呼ばれている。身の回りのモノがインターネットにつながる仕組みのこと。身近なもので例えるとテレビやエアコンがインターネットにつながることで、遠隔から操作したり、モノが相互通信したりすることが可能となる。世界の自動車メーカーが開発を急ぐ自動運転システムなどがIoTの活用事例として挙げられる。
◆ロボット
人間に代わって作業を自動化する装置。人の作業の代替や、危険環境下での作業代行、日常生活支援などで活用される。
◆センシング技術
センサーなどを使用してさまざまな情報を計測・数値化する技術の総称。温度・音量・明るさ・衝撃の強さといった要素を、応用する技術全般のこと。センシング技術のうち、離れたところにある対象を、遠隔操作によって感知して計測する技術をリモートセンシングという。身近な例で言えば、天気予報。人工衛星から雲の様子を調べ、温度を解析するなど、リモートセンシング技術が役立っている。
◆ドローン
無人航空機。乗務員を乗せずに遠隔操作や自律制御によって飛行する航空機。空撮や測量などで多く用いられている。
2. 調査結果1「農林水産業における先端技術の活用に関する動向」
(1)農林水産業を取り巻く現状
→農林水産業においては、就業者の内65歳以上(朱色点枠線)の比率がいずれも25%を超えている。農業・漁業においては就業者全体の人数が減少しており、高齢化・人手不足が顕著である。
→また、農業については、就業者が減少傾向である中、耕地面積が拡大していることから、一軒あたりの農業の大規模化が進んでいることがわかる。
→就業者の高齢化および減少、農業における耕地面積の大規模化の中で、機械化等による省人化・省力化が喫緊の課題である。
(2)農林水産業のスマート化に対する国の方向性
→政府は成長戦略「未来投資戦略2018」を平成30年6月に閣議決定し、1次産業の担い手の高齢化が進む中、世界で戦える1次産業を目指すための「スマート農林水産業の実現」に向けたKPIと具体的施策を示している。
①「未来投資戦略2018」示されているKPI
・2025年までに、農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践
・2023年までに、資材・流通面等での産業界の努力も反映して担い手のコメの生産コストを2011年全国平均比4割削減する
・2019年に、農林水産物・食品の輸出額1兆円を達成する
・2028年までに、私有人工林に由来する林業・木材産業の付加価値額を倍増させる
・2023年までに、全農地面積の8割が担い手によって利用される
②「未来投資戦略2018」に示されている具体的施策
・データと先端技術のフル活用による世界トップレベルの「スマート農業」実現
農業のあらゆる現場において、ICT機器が幅広く導入され、栽培管理等がセンサーデータとビッグデータ解析により最適化され、熟練者の作業ノウハウがAIにより形式知化され実作業がロボット技術等で無人化・省力化される。こうした現場をデータ共有によるバリューチェーン全体の最適化によって底上げする「スマート農業」を実現する。
・先端技術の実装
国、研究機関、民間企業、農業者の活力を結集し、現場ニーズを踏まえながら、バリューチェーン全体を視野に、オープンイノベーション、産学連携等を進め、AI、IoT、センシング技術、ロボット、ドローンなどの先端技術の研究開発から、モデル農場における体系的な一気通貫の技術実証、速やかな現場への普及までを総合的に推進する。
◆各省庁が示すスマート化の方向性
◇スマート農業<農林水産省>
・ロボット、AI、IoT、ドローン、センシング技術などの先端技術の研究開発、技術実証、速やかな現場への普及までを総合的に推進
・農業用ドローンの利活用拡大に向け、利用時における補助者配置の義務等の緩和、ドローンで散布可能な農薬種類の拡大、農薬散布等のための飛行許可・承認に関する取扱いの見直しを行うほか、民間における技術革新やニーズをくみ取るための官民協議会を設置するとともに、ドローンの普及を総合的に推進するための計画を策定
・「農業データ連携基盤」(通称WAGRI)を2019年4月から本格稼働させるとともに、幅広い主体の参画を進め、データの連携・共有・提供の範囲を、生産から加工、流通、消費に至るバリューチェーン全体に拡大
・2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践するため、上記を含め 必要な取組やその進め方等を定めた「農業新技術の現場実装推進プログラム(仮称)を2019年夏までに策定
・食品産業においても、オープンイノベーションによる先端基盤技術の開発と速やかな実装、異業種との連携により国際競争力のある輸出産業への発展を促進
(平成31年2月 農林水産省「スマート農業の展開について」より)
◇スマート水産業<水産庁>
・集約的なデータプラットフォームを構築
水産業に関わる幅広いデータの取得・共有・活用を促進することで、充実した資源評価・資源管理や、関係者の連携によるバリューチェーン全体の生産性向上を実現
・漁業・養殖現場の生産・取引活動のデジタル化
ICT・IoT・タブレットPC・漁獲成績電子報告システムといった技術・ハード・ソフトを積極的に導入し、取得したデータを関係者で共有・分析し、資源管理、効率的な生産活動の実現につなげる。生産・加工・流通の関係者が連携し、バリューチェーン全体で、情報通信技術や先端技術を活用し、低コスト化・高付加価値化等を図る取組を促進する
・集約的なデータプラットフォーム構築への取り組み
漁業者・養殖業者や、公的機関・試験研究機関、市場・加工・流通業者と、それぞれが保有する情報を一元管理し、事業者同士の情報提供や連携を促進する新たな枠組みを構築することで、バリューチェーン全体の生産性向上を目指す
(平成30年3月水産庁「スマート水産業の実現に向けた取組方針について」より)
◇スマート林業<林野庁>
森林施業の効率化・省力化や需要に応じた高度な木材生産を可能にするため、地理空間情報やICT、 ロボット等の先端技術を活用した「スマート林業」の実現に向けた取組を行う
→森林情報の高度化・共有化
・航空レーザ計測等による詳細な森林情報の把握
・森林クラウドによる森林情報の共有化
→高性能林業機械の活用
・ICT等の先端技術を活用した機械の開発
・現場の生産情報を効率的に情報共有する仕組みの構築
→需給マッチングの円滑化
・需給情報を共有する体制を整備
(平成30年3月林野庁「スマート林業の実現に向けた取組について」より)
(3)農林水産業の先端技術研究・導入事例
①農業の研究・導入事例
【自動走行トラクター】
・自動走行トラクターは大きく第三段階に分かれる。第一段階はGPSガイダンスとの直線走行を自動アシストし、第二段階は運転を完全自動化、第三段階は自分の乗るトラクターを操作しながら複数台の無人トラクターを監視する協調作業が可能となる。現在は第1段階の自動操舵トラクターが急速に普及している状態。
・道内でも平成28年までにガイダンスシステムが約7千台、自動操舵トラクターが約3千台導入されており、自動操舵の普及率は約8%となっている。
・開発メーカーは、株式会社クボタ、ヤンマー株式会社、井関農機株式会社、三菱マヒンドラ農機株式会社等が先駆的な開発を行っている。
<株式会社クボタ>
・2017年に、業界で初めて有人監視下での無人自動運転作業を可能とした「アグリロボトラクタ」を発表。2018年12月には、コンバインに自動運転アシスト機能を付加し、オペレータ搭乗のもと自動運転による稲・麦の収穫作業を可能にした「アグリロボコンバイン」を本格販売。
<ヤンマー株式会社>
・2018年10月から無人運転可能な「ロボットトラクター」と最小限の操作が必要な「オートトラクター」を販売。2台のトラクターでの協調作業時における 随伴・伴走する無人トラクターの操作などが可能。
<井関農機株式会社>
・GNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)活用ロボットトラクターを、2018年度中に商品化。有人監視下での無人自動運転が可能で高精度な自動運転作業を実現。
【ほ場水管理システム 】
・農研機構農村工学研究部門が中心となり、SIP※次世代農林水産業創造技術において、スマートフォンやパソコンでモニタリングしながら遠隔操作や自動で給水と排水を制御できる国内初の水田の圃場水管理システムWATARAS(ワタラス)を開発
※SIP:戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-inisterial Strategic Innovation Promotion Program)の略称で、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導して行っている科学技術イノベーション創出のための国家プロジェクト
・ホクレン農業協同組合連合会と農研機構が連携し、JA北ひびき管内の生産者圃場で上記「圃場水管理システム」の実証試験を実施。士別市上士別にある1枚3.4haの圃場に、通信用の基地局(親機)を1台と給水バルブに取り付ける子機5台を設置し、水管理の遠隔制御および自動化による労力削減効果を検証。農研機構が岩見沢市内の生産者圃場で行った実証試験では、10haあたりに要する水管理労力が95%削減される結果を得ている。
・積水化学工業株式会社では、水田の水管理の負荷を大幅に削減する、ICTを活用した稲作の水管理システム「水(み)まわりくん」を開発。2015年度より全国各地で水田での実証実験を行い、2018年1月22日に発売を開始した。これまで水位や水温などの情報をモニタリングできるサービスは販売されているが、ICTを活用して水位をコントロールできるシステムの商品化は日本で初めてだとされる。
・株式会社NTTドコモでも「水稲向け水管理支援システム」を開発。圃場の水位・水温を測定し、タブレットやスマートフォンなどを使って遠隔地から圃場の状況を確認できる。緊急時(水位や水温などが設定した閾値から外れた時)にはメールで知らせてくれる。
【自動収穫ロボット】
<イチゴ収穫ロボット>
・農研機構は、エスアイ精工株式会社、株式会社前川製作所と共同研究を行い「イチゴ収穫ロボット」を開発。画像処理装置の搭載によりイチゴの着色度を自動判別でき、収穫適期の果実のみを選択収穫するため、収穫労力が削減できる。果柄把持切断機構の搭載により、果実に触らず果柄を把持切断することで果実損傷の低減が期待できる。
<フルーツトマト収穫ロボット>
・パナソニック株式会社は、搬送ロボットなどで培った自律走行やセンサー技術などを生かし、フルーツトマトと呼ばれる小ぶりのトマトの収穫に特化したロボットを開発。カラー画像で赤い果実を検出し、次に赤外線画像で茎などを識別。さらに3次元センサーの画像で実の位置を判別する。採るべき実の位置を認識すると、フルーツトマトの収穫に適した「ダメージレスハンド」と呼ぶ装置により収穫する。導入した農家では、現在6秒に1個のペースで収穫可能である。人は 2、3 秒で1個を収穫できるので人の方が速いが、人が作業できるのは 3、4時間程度。一方収穫ロボットは10時間以上連続稼働でき、夜間にも働けるのでメリットは大きいという。
<野菜収穫ロボット>
・神奈川県鎌倉市に本社を置き、自動野菜収穫ロボットを提供するinaho株式会社は、2019年1月に鹿島市と進出協定を締結し、佐賀県と鹿島市の支援を受け、契約農家とのパートナーシップにより自動収穫ロボットの開発と自動収穫サービスを行う。アスパラガスやキュウリ農家と連携し、ロボットを活用した自動収穫サービスを目指す。
【ドローン】
・農業分野では、「農薬散布」「精密農業」「害獣対策」においてドローンの活用が進んでいる。
・農業用ドローンの普及拡大に向けて、農水省は2019年3月18日、農家やメーカー、行政関係者らをメンバーとする初めての官民協議会を設立。協議会は今後、現場での利用ノウハウや必要とされる農薬の情報、安全・事故情報などを交換する場とする。また、農業用ドローンで初となる普及数値目標を示し、2022年度までに土地利用型作物や畑作、露地野菜などの農薬散布面積を延べ100万ヘクタールに広げる。18年度実績(同省推定2万ヘクタール)の50倍に当たる。普及の鍵となるドローンで使える農薬の登録拡大も進め、22年度末に現状の 3割増となる846剤を目指す。
・道内でも導入が進んでおり、女満別の農家では良食味米(うるち)生産を目的に、ミネラル資材の葉面散布を動力噴霧機で行っていたが、作業の省力化や時間短縮のため、平成29年にドローン散布機を導入。これにより作業の省力化、時間短縮が可能となり、動力噴霧約1.5時間/ha であったが、ドローンでは約0.5時間/haに短縮された。また、食味の定量的判定は難しいが、ねばり、食感などが向上したと思われる。病害虫や雑草の防除作業にもドローンを利用しており、葉面散布と同様に作業の省力化、時間短縮になっている。
・「精密農業」への活用については、例えば三重県では、ドローンとマルチスペクトルカメラによる生育診断の研究を開始しており、これまで経験と勘に頼っていた水田の生育状況を的確に診断することで生育ムラの要因を突き止めることに成功している。
【海外事例】
・アメリカでは、スマート農業は「AgTech」(アグテック)と呼ばれる。Agriculture(農業)とTechnology(科学技術)とを組み合わせた造語。AgTechの代表的な例として挙げられるドローンは、適切な農薬散布と、さまざまなデータを収集し農地の状況を分析することに使われている。センサー技術の向上によって、害虫や病気の自動検出も可能に。データ収集に伴い、蓄積したデータを活用してビジネスにつなげる企業も多く、ベンチャー企業のFamLogs社では、衛星画像から収集した土壌や農作物の状態を、蓄積したデータと照らし合わせて分析することで、土壌の状態に合わせた適切な作付量や肥料の分量などを農家にアドバイスしている。このサービスはアメリカの農家の3分の1が活用するほど人気だという。農業用ロボットの活用も進み、3次元画像認識により作物を正確に測定するロボットや、協調作業が可能な園芸用ロボットが登場している。近年は、農業ITベンチャーへの投資も多く集まっている。
・オランダでは、スマート農業により国力を向上させている。オランダの国土面積は約4万1,000平方km で、九州とほぼ同じであり、農地面積も約184万haと日本の約450haに比べて小さい。また痩せた土地も多く農業に適した国土とは必ずしも言えない。ところが、国連食料農業機関(FAO)の統計によれば、2013年のオランダの農産物の輸出額は909億ドル。これはアメリカに次ぐ世界第2位となっており、その起爆剤は最新鋭のICT技術を用いたスマート農業と言われている。オランダでは約8割にものぼる一般農家で、自動制御システムを搭載したコンピューターにより農作物に与える肥料や給水などを制御している。また、植物工場や施設園芸では、土ではなく岩を原料にしたロックウールに苗が植えられ、そこに水や養分などを自動的に供給して栽培。ハウス内の各所に設置したさまざまなセンサーを使って、温度や湿度、光量、光合成に必要なCO2の量、風速などを検知。コンピューターがこれらのデータを解析して、植物の光合成が最も効率よく進む環境を自動的に作り出す。さらに、出荷をした作物の流通・販売ルートを管理できるクラウドサービスも登場。トレーサビリティを確立し、商品の付加価値向上を実現している。こうしたスマート化への先駆的な取り組みが、日本と同様、農業就業者の高齢化が課題となっている現状の打開策となっている。
・ヨーロッパでは2016年から「SAGA(Swarm Robotics for Agricultural Applications)」が開始。これはドローンに搭載されたビジョンシステムで農場内の雑草の位置を正確に割り出し、連動する芝刈りロボットが除草するというもの。広大な圃場の場合は、ドローンがリレー形式で作業し、一機が業務を終えて着陸すると、代わって他のドローンが作業を続けていく仕組み。
・韓国では、情報通信技術(ICT)と農業の融合をスローガンとする「スマートファーム2.0」プロジェクトを、政府が推進中。スマホ普及率が85%というIT大国の利を活かして農業改革が進む。成功事例とされている温室栽培農家では、温室の内部と外部にバッジ水分温度測定センサーや温湿度環境センサー、CO2センサー、光量センサー、気象センサーなど数多くのセンサーを設置し、栽培に最も適した環境を構築。農家側は情報を常にスマホやタブレットのアプリでチェックし、万が一環境が整っていなければ、アプリ内にあるボタン一つで調整が可能となっている。ソウル大学の調査では、センサー管理することによって、農産物の生産性は23%増加、人件費とその他コストはそれぞれ39%と27%の削減効果を見せたという。
②林業の研究・導入事例
【地域プロジェクト】
・長野県はドローンや情報通信技術(ICT)を活用して林業の効率化を進める。同県や国立大学法人信州大学、林業事業者などが参加する協議会「スマート林業タスクフォースNAGANO」を設立し、2018~20年度にレーザーやドローンを使った森林資源の把握や木材の需給状況がネット上で分かるシステムを開発する。
・石川県では、2014年から株式会社小松製作所(コマツ)と林業に関する包括連携協定を締結。ドローンで森林を空撮して木の量や種類、本数や長さをデータ化。それに合わせた最新の伐採計画がインターネットを通じて、林業用機械にインプットされる。ハーベスターの運転手はディスプレーに表示されるGPSのルート案内に従って伐採地点に向かう。ディスプレーでは木材価格のデータと、それに合わせた伐採計画が確認できる。伐採計画に基づいた木のみを切り倒し、市場ニーズに合った木材を得ることで過度な伐採を防ぎ、森を守ることも可能となる。
【企業参入事例】
・株式会社小松製作所(コマツ)は、IoTにより林業サプライチェーン(造林から伐採・搬出・運搬・搬入・利用)を見える化を図り、林業の省力化、効率化、安全、持続性を目指すことを掲げ、林業事業の売上高を19年3月期に、17年3月期比25%増の1000 億円と設定している。自社で高性能ハーベストの開発等を行うとともに、2018年以降、スウェーデン、カナダ、アメリカの林業機械メーカーの買収を積極的に進めている。
・株式会社オプティムでは、農業向けマルチコプター型ドローン「OPTiM Agri Drone」、固定翼機型ドローン「OPTiM Hawk」を開発、空撮画像を AIが解析するサービス「Agri Field Manager」を提供しているが、その技術を林業にも応用し、ドローンの空撮画像から資源量調査を行うサービス「Forest Scope」の提供を開始。
・中小企業の参入も始まっている。山林情報のデータ化にも取り組む株式会社ウッドインフォでは、女性でも容易に背負うことができる森林情報をレーザー計測する森林内バックパックレーザーシステム「3Dwalker」という機械を開発。背負って森林内を歩くだけで、山の傾斜や起伏、位置、木の種類や幹の状態などのデータを計測できる。30分ほどゆっくり歩くと1ヘクタール分の計測が可能。
・国産間伐材を有効活用したノベルティグッズ製作・販売などを行うフロンティアジャパン株式会社は、全国の木材・木材製品の売り手と買い手を直接つなぐマッチングサービス「KIBA.com(キバドットコム)」ウェブサイトを2018年1月にオープン。同社の幅広いネットワークにより「売り手」と「買い手」が直接コンタクトできるウェブサイト。これまで日本では、森林に関する情報量が圧倒的に少なく、売り手と買い手のニーズの把握すら難しい状況にあった。「キバドットコム」では、発信ノウハウの乏しい林野産業の川上サイドにプライオリティを置き、製材会社の情報発信やプロモーション支援、製品企画などをサポートするという。
【海外事例】
・スウェーデンでは、輸出額において林業が1位であり年間約130億ドルにのぼる。しかし林業の従事者は約7万人で非常に少なく、一人当たりの生産量は40haと日本の約5倍にあたり、少ない人数で大きな付加価値を生み出している。「1本切ったら2本植える」というルールを設定するなど森林資源を守る施作とともに、高性能機械の導入やIoTによる生産性の向上の成果である。林業会社(森林所有者)、林業機械、需要会社(製材所、パルプ等)がインターネットで情報共有し、StanFordデータ形式(林業機械とのやり取りのための林業データの形式)で、作業指示、作業報告、取引のやり取りを行うなど、サプライチェーンが見える化・効率化されている。
③水産業の研究・導入事例
【IoTブイ 】
・スマートブイとは、ブイの中に各種IoTセンサーと大容量バッテリーを搭載し測定データはクラウドに蓄積する。過去の漁獲量実績や周辺気象データと組み合わせて分析することで、漁獲量のおおまかな予測を実現。出漁判断などに役立て、漁業の効率化を目指すもの。
・株式会社KDDI総合研究所は、従来のスマートブイと比較して軽量化・省電力化した新型のスマートブイを開発。2018年6月から宮城県石巻湾漁場(宮城県東松島市)で実用化に向けて、センサーデータ取得やスマートブイの連続動作実現の実証実験を開始している。
・株式会社NTTドコモでは、水温センサーと比重センサーをブイに実装し、水温や比重などの海洋データをドコモのネットワークを経由して、オリジナルのアプリを活用しスマートフォンなどで確認することができるサービスを提供しており、九州、和歌山、島根の漁業者にすでに導入を進めている。
【ドローン】
・国立大学法人東京大学とシャープ株式会社では、広島県のかき養殖場に専用の次世代通信インフラを構築している。漁場のブイや養殖用の筏にセンサーを設置し、海水の温度や塩分濃度などを遠隔監視。さらに、ドローンでかきの幼生が製作する場所や潮流などを観測し、クラウドにデータを蓄積し、AIが分析・予測を行う。水中監視センサーも搭載し、食害の原因となる魚が近づいた際も通知する。かき養殖生産の効率化や労働負担の軽減が期待できるとともに、漁業者のノウハウを可視化し、後継者育成にも貢献できる。
・株式会社自律制御システム研究所、古野電気株式会社等では、海外まき網漁業、かつお一本釣り漁業などで乗組員の目視等に依存している魚群探索を、飛行機型ドローンを用いて行う新しい魚群探索システムを開発している。 探索範囲の拡大、探索時間の縮小による省人省力化を図る。
【ロボット】
・ヤンマー船舶システム株式会社等は、マグロ養殖業などにおいて、大規模で人力による潜水作業を必要としている養殖網の清掃作業に対し、自動運転可能な養殖網の清掃ロボットを開発した。リモコンによる遠隔操縦により清掃作業時間・作業人員等省人省力化を促進する。
・日光水産株式会社、株式会社タカハシ・インテックは、乗組員の技術に左右されていたカツオ一本釣りの「しゃくり」の動きを最新の制御プログラムで精密に再現。釣果能力の向上と釣り上げの危険回避を可能にする。
【AI】
・NECフィールディング株式会社は、青森県漁業共同組合に対し24時間365日稼働の監視カメラネットワークを導入し、年間約2億円の被害にあっていたナマコの密漁を防止。AIを活用し漁船と不審船の判別を行い、不審船を県漁連や漁業に通知する。
【水産庁プロジェクト】
<スマート沿岸漁業推進事業>
・国立大学法人九州大学の応用力学研究所が主体となり各県の水産試験場や各種メーカーが共働して福岡、佐賀、長崎など九州北部の沿岸エリアで進めている。漁の合間の時間を使って水温と塩分を簡単に観測できる装置を新たに開発して、漁船に設置。水深別のデータを収集し研究機関に向けてスマートフォンやタブレットなどのデバイスで送信する。漁船の 潮流計や魚群探知機等のデータも送信し、その他の海洋観測情報と併せて多様なデータをスーパーコンピューターで分析して、水深別の潮流や水温、塩分の変化を予測。その結果を他の漁師たちが持つスマートフォンやタブレットに提供するというアプリケーションの開発プロジェクト。2019年から本格的な実証段階に移る。
<ICT 養殖推進事業>
・宮城県女川町でのギンザケ養殖において、生け簀の中の状態をモニタリングしてデータ取得するとともに、リモート操作によって生け簀の魚への給餌作業や、生け簀の深さの調整を陸上から操作できるシステムを作る。生け簀は通常、岸から少し離れた海上にあり、養殖業者は毎日、魚の成長にあわせて大きさ別に選別し、生け簀にいる魚の数を確認することや、網の掃除、水温によって魚が死なないよう生け簀の深度を移動させるなどの作業を、足場の悪い海上で行う必要がある。これらの作業を自動化して省力化して、陸上で生け簀の魚の様子を細かく把握し、何か起きた時には速やかに必要な措置をとれるようにする。そのため、生け簀の中の魚の数や大きさを測定する方法、自動的に餌をやる装置など、できる限り陸上から操作ができるように、漁業機材のメーカーや大学が結集して技術開発を進めている。
【地域・大学プロジェクト】
・公立はこだて未来大学「マリン IT・ラボ」は、いち早く水産業のスマート化の研究に取組み、これまでに水温観測用の「ユビキタスブイ」、「マリンブロードバンド」、「デジタル操業日誌」の開発に成功。漁業者と連携してデータの取得に取組み、数々の実践研究を行っている。
・奥尻島(奥尻町)では、公立はこだて未来大学マリン IT・ラボと協力し、イカ、ホッケなどの回遊漁業からウニ、アワビ、ナマコなどの磯根漁業への転換を目指し、漁船に搭載したGPSセンサーや「うみのレントゲン」「うみのアメダス」によるデータを活用して高収益漁業や海難救助体制、担い手の育成に力を入れている。2017年度に総務省「地域IoT実装推進事業」に採択された「ICT漁業を利活用したリソース・シェアリング実装事業」において、ICTを活用して漁業経営の安定化と安心安全な漁業体制の構築を目指している。
・留萌地区では、ナマコをオリンピック方式(早い者勝ちで漁獲するため資源へのダメージが大きくなるとされる)で獲っていたが、それを廃止することを決め、マリン IT・ラボの協力を得て航路や漁獲量のデータを共有。資源管理のルール化に成功している。
・愛媛県愛南町では、水域情報や赤潮情報などの環境情報をいつでもどこからでも確認できるシステム「水域情報可視化システム」、養殖魚の魚病による被害軽減を図るための魚版電子カルテシステム「魚健康カルテシステム」、漁業後継者育成などの人材育成や愛南町の推進している“ぎょしょく”教育の情報発信のためのホームページ「水産業振興ネットワークシステム」の3つのシステムからなる「愛南町次世代型水産業ネットワークシステム」を構築し、町、漁業協同組合、大学、漁業者が連携して運用している。
・サバ料理専門店の企業が2017年に設立した、養殖を手がける「株式会社クラウド漁業」では、先端技術を駆使した養殖事業に着手。「IoT」を使った自動給餌システムを開発するため、コンソーシアムを発足し、KDDI株式会社や公立はこだて未来大学などと組み、海水温を測定してエサを自動でまく装置を開発中。
Ⅲ. 「サポインPRシート」の作成
1. 概要
・ サポイン事業で研究開発を実施したものづくり中小企業の成果や研究開発内容を端的にまとめたサポインPRシートを作成した。
2. 実施結果
・ 道内でこれまで採択された74のサポインプロジェクトに対し、PRシートの作成を依頼。30のプロジェクトより作成の協力を得た。また、サポイン予備軍企業においては16社に作成を依頼し、3社から協力を得た。
・ PRシートの作成した際のアンケートによると、現時点で農林水産分野への技術展開イメージを有していると回答した企業は25社であった。さらに、食関連産業(生産物の出荷、食品加工、流通、小売、
消費)への技術提供にかかるイメージをもつ企業は11社となった。
【サポイン企業】
1. 株式会社三好製作所/プラスチック成形加工
・デジタルTVチューナー付PC用携帯
・アンテナの小型化を実現するためのプラスチック成形加工技術の開発
2. 株式会社コムテック2000/組込みソフトウェア
・可視光通信に対応した組込みソフトウエア技術の開発
3. 株式会社キメラ/金型
・加工条件の最適化による高機能かつ微細な多極を有する狭ピッチコネクター用成形金型の開発
4. 株式会社産鋼スチール/溶接
・圧力容器製造に適応するレーザ溶接の技術開発
5. 寿産業株式会社/織染加工
・カーシート、カーエアコンフィルター等自動車内装繊維製品の高機能抗菌化技術の開発
6. 札幌高級鋳物株式会社/鋳造
・耐熱鋳鋼複雑薄肉化のための減圧注湯法の開発
7. 北日本精機株式会社/鍛造
・ステンレス製品の冷間鍛造・冷間ローリング(CR)加工技術開発
8. 株式会社メデック/位置決め
・位置決め技術を要したウエハーチップ欠け検査装置の開発
9. 株式会社新聞協同運輸(アテリオ・バイオ株式会社)/発酵
・固体発酵による食品廃棄物の高度再生利用に関する研究開発
10. フォトニックサイエンステクノロジ株式会社/切削加工
・コリメータアレイ用光ファイバ母材の高精度切削研磨加工技術の開発
11. 株式会社iD/組込みソフトウェア
・ファクトリーオートメーション機器用無線インタフェースの研究開発
12. 株式会社倉本鉄工所/溶射
・産業機械、橋梁・鉄鋼構造物を対象とした複合ワイヤ溶射法による粒子分散型金属基複合皮膜作製技術の開発
13. 株式会社ニッコー/組込みソフトウェア
・データトラッキング制御による漁獲物高鮮度保持用オンサイト型海水氷製氷機の開発
14. 株式会社iD/組込みソフトウェア
・無線センサネットワークを用いた次世代工場エネルギー管理システムの研究開発
15. 株式会社菅製作所/電子部品・デバイスの実装
・高速、高純度な金属ナノ粒子ペースト用材料製造法の開発
16.北海道電子機器株式会社/組込みソフトウェア
・形式的仕様記述を用いた高信頼ソフトウェア開発プロセスの研究とツール開発
17. 株式会社アールアンドイー/鋳造
・耐摩耗性・高靭性・溶接性を備えた建設機械用アタッチメント材料の開発
18. 株式会社ノア/組込みソフトウェア
・ユーザビリティ向上、低コスト化を実現するための革新的な3Dスキャニング技術の開発
19. コスモ・バイオ株式会社/電子部品・デバイスの実装
・高いユーザビリティを低コストで達成する革新的な多機能型細胞アッセイ装置の開発
20. 株式会社ホクエイ/塗装
・環境汚染ガスを無害化するための、先進的な光触媒分解処理システムの開発
21. 株式会社燃焼合成/粉末冶金
・新型燃焼合成法に基づく高品質・低価格サイアロン製品の開発
22. 野村興産株式会社/高機能化学合成
・使用済みナトリウム-硫黄二次電池からのナトリウムの電解精製プロセス技術開発
23. 株式会社ヴィッツ/情報処理
・農業機械のさらなる高度化と海外進出に資する次世代電子制御ソフトウェア基盤の開発
24. 株式会社光電製作所/測定計測
・定置網モニタリングシステム高度化のためのユビキタス魚探とクラウド技術の開発
25. 株式会社ソニック/測定計測
・沿岸域の漁場管理を漁業者自ら行うための漁場情報速報システムの構築
26. 岩見沢鋳物株式会社/立体造形
・大型特殊鋳物用メゾスコピック耐熱耐摩耗多合金鋳鉄材料の開発
27. アーク・システム・ソリューションズ株式会社/情報処理
・積雪寒冷地域の交通弱者移動支援のための雪道走行を可能とする自動運転技術の開発
28. 株式会社北土開発/機械制御
・精密水流制御と画像処理技術を統合した農産物運搬用車両洗浄装置の開発
29. 株式会社ディ・ビー・シー・システム研究所/表面処理
・航空機用ジェットエンジン向け遮熱・拡散バリアコーティングシステムの研究開発
30. 北海道ワイン株式会社/バイオ
・ワイン製造残渣を利用した新規機能性素材の研究開発
<議題>
議題①サポイン成果の技術レベル及び事業化状況について
議題②サポイン成果の農林水産分野等における活用可能性について
議題③今後の取組みについて
<ディスカッション>
議題①サポイン成果の技術レベル及び事業化状況について
・サポイン企業の技術レベルは非常に高いといえるが、高い技術力のため高単価になりやすく商品価格とニーズの不一致が生じたり、ユーザーニーズの得られる商品に開発が追いついていないケースも見られ、事業化レベルには達していない状況といえる。
・高度な技術を活用した商品の開発にかかる研究開発費支援の充実などが求められる。
議題②サポイン成果の農林水産分野等における活用可能性について
・サポイン技術の農林水産分野への適用可能性は十分にある。
・サポイン技術を農林水産分野へ適用する上で必要な点として、自社内ではサポイン技術の他用途への活用方法を見出しにくいことから、専門家の視点から、技術の具体的な活用方法を示唆し、商品化に必要な技術をもつ企業や機関を紹介することが求められる。
議題③今後の取組みについて
・企業間連携を進める際に、専門家によるコーディネート役が求められる。異なる技術をもつ企業が連携し、事業化実現に向けた開発を進めるには、企業間の役割を明確することや、正しい情報共有が必要になる。そのため専門家には、各企業の資源や技術を把握した上で役割分担を行い、技術的な専門用語を翻訳して伝えるなど情報共有の支援を行うといった役割が求められる。
・シーズとニーズが合致するような技術分野や対象企業を絞った形式のセミナーの開催
・技術開発者に農林水産分野の現場を見せる機会を設け、技術面でのアドバイスや異業種の視点からのアイディアなど引き出す取組みの実施。
3. 実施結果2「個別企業訪問によるアドバイス」
→各専門家より下記の通り報告を受けた。いずれの専門家も訪問先の企業の農林水産業への参入可能性を示唆しており、参入にかかる課題、課題を解決する支援のあり方について報告を得た。以下の訪問順に報告書を掲載する。
1. 株式会社アールアンドイー 山中文雄氏
2. 北海道ワイン株式会社 伊勢珠樹氏
3. 株式会社太田精器 井上慶一氏
V. まとめ
各方面へのヒアリング、アンケート調査、専門家による検討などを経て、農林水産業とものづくり産業の融合に向けて、今後どのような取り組みを行っていくべきかを「理解促進」、「連携」、「環境整備」の3つの視点から分析を行った。
(1)理解促進
<ものづくり中小企業>
現場ニーズの理解
・農林水産業就業者の現状やニーズに関する情報提供を積極的に行い、理解を深めることで参入意欲を高めることが必要である。農林水産分野に導入されている先端技術が具体的にどのようなニーズを満たしているのか、よりニーズを満たすためのアイディア交流や現場を熟知してい
る専門家による現場ニーズの説明といったセミナーの開催等による情報提供並びに交換を積極的に行う。加えて、現場に出向く勉強会や研究会を開催し、農林水産業就業者との出会いや交流を生み出していく仕組みを構築すべきである。
自社技術の掘り起こし・見つめ直し
・その上で、自社技術を農林水産業の人手不足解消や生産性向上にどのように活かすことができるのか、専門家等による第三者の視点から技術の掘り起こしや見つめ直しの支援を行い、可能性を探ることが必要と思われる。
<農林水産業就業者>
先端技術への興味・理解
・農林水産業就業者に対しては、先端技術導入がどのように人手不足解消や生産性向上に役立つのか、規模や生産作物など個別のニーズに合わせた事例の提示などの情報提供が必要である。
ものづくり中小企業技術に関する情報提供
・現在、自動操舵トラクター等の機器を海外から調達している就業者も多いだけでなく、ものづくり中小企業技術については接する機会も少ないのが現状である。セミナーや交流会、研究会など、ものづくり企業とのマッチング機会を創出し、運用サポート等の利点を理解してもらう
ことが必要である。
具体的取り組み例
→情報提供セミナーや現場視察会の開催
→交流会等マッチング機会の創出
→ものづくり中小企業、農林水産就業者、研究機関等が参加する研究プロジェクトの実施
(2)連携
<ものづくり中小企業>
企業間連携、産学官連携
・道内企業が製品開発から販売までを1社で担うことは、技術、資金、人材等の面でハードルが高いのが現状である。そのため、現場ニーズに応える製品開発のための技術連携や、研究機関との共同研究、専門家による支援等、企業間・産学官の連携が重要である。
農林水産業参入企業との連携
・大手メーカーをはじめとする、農林水産業参入企業との連携も参入の一つの鍵である。農林水産業参入企業に不足する技術の補完や、製品に付加価値をつける付属品の開発など、連携の糸口は多様である。また、北海道市場に大きな魅力を感じる道外メーカーも多く、地元企業には
北海道市場の販路開拓のパートナーとしても期待を持っていることが伺われる。マッチングの機会を作り、志を同じくするパートナーとの出会いを生み出し、双方にとってメリットのある連携方法を探ることが必要である。
<農林水産業就業者>
企業・研究機関との連携
・先端技術を導入しても、地域特性や自社の生産方法等に合わず運用が上手くいかないケースもある。新技術開発(導入)及び実証実験を専門機関や企業と連携して行う共同研究プロジェクトを行い、地域特性や現場ニーズに即した技術開発・導入・運用を実現することが必要である。
地域連携
・行政や組合等が連携して先端技術の検討や実証実験等を行い、農林水産業就業者の先端技術導入への理解を深め、資金面や運用面での課題解決を支援する仕組みが必要である。
具体的取り組み例
→企業の保有技術の強みや可能性を整理・ツール化してPRし、連携候補先の理解促進・マッチング機会を活かす
→展示会・交流会等への積極的な出展、参加を促進
→連携を促進するコーディネーターの育成・派遣
→企業・就業者・支援機関等による共同研究プロジェクトの実施
→行政・組合等への働きかけ(セミナー、支援策の提示、専門家アドバイス等)
(3)環境整備
学びの場の創出
・ものづくり企業においては、参入に興味はあるものの、農林水産業の現場ニーズや先端技術開発・市場開拓についての知識や経験が不足しており、学びの場の創出が望まれる。
支援制度等情報の一本化および提供方法の検討
・国の各省庁が農林水産業のスマート化を積極的に推進しており、今後も様々な支援策が提示されると思われるが、そうした情報がものづくり企業や農林水産業の現場まで十分に行き届いていない。必要とする支援情報が総合的かつ継続的に受け取れる仕組みや体制が必要である。
コーディネーターの育成
・ものづくり企業と農林水産業就業者、あるいは企業間や産学官を結びつけるコーディネーターの存在が重要であり、その育成が急務である。
継続的活用に向けて
・開発技術の販路拡大支援や導入技術の効果的な運用支援など、企業も従事者も導入によりビジネスを継続的に発展させていくための支援が必要である。
【ものづくり企業】
◆理解促進
農林水産業現場ニーズへの理解促進
農林水産業従事者の現状やニーズに関する情報提供を積極的に行い、理解を深め参入意欲を高めることが必要
自社の技術を見つめ直し
保有技術を農林水産業にどう活かすことができるのか、技術の掘り起し、見つめ直しが必要
・セミナー等による情報提供
・勉強会の開催
・専門家による技術アドバイス、個別相談
▼
マッチング機会の創出(交流会、現地視察、研究会等)
◆連携
企業間連携・産学間連携
共同開発、データ共有等、連携による参入検討
大手メーカーとの連携
大手メーカーに不足する技術の補完や製品に付加価値をつける付属品の開発検討、販路開拓の連携
・保有技術の強み整理、ツール化
・展示会、マッチングイベント等への出展
・コーディネーターの育成、派遣
◆環境整備
◇学びの場の創出
◇支援制度情報の一本化・提供
◇コーディネーターの育成
◇継続的活用に向けて
【農林水産業】
先端技術導入への理解促進
人手不足解消等に先端技術がどのように役立つのか、規模等ニーズに合わせた情報提供が必要
道内ものづくり企業の情報提供
道内ものづくり企業の製品やシステムの情報を提供し、運用サポートなどの利点を理解してもらうことが必要
・セミナー等による情報提供
・先端技術に触れる機会の創出
▼
マッチング機会の創出(交流会、現地視察、研究会等)
企業等との共同研究・実証
専門機関や企業と連携した共同研究・実証
地域連携による先端技術導入
行政、組合等地域連携による先端技術導入
・導入にとどまらず、継続的かつ効果的な運用に対する共同研究や実証
・地域特性に応じた効果的な導入方法の検討
◆環境整備
◇学びの場の創出
◇支援制度情報の一本化・提供
◇コーディネーターの育成
◇継続的活用に向けて