レアアースとは?南鳥島沖開発で日本が資源大国になる可能性も

2026年は、日本の資源戦略にとって「夜明けの年」になる可能性があります。その発端は、2026年1月に実施された中国のレアアース輸出規制です。日本は「国産資源開発」「国際連携」「技術革新」で対処し、新しい経済安全保障を追求しています。

例えば片山さつき財務相が主導する、地球深部探査船「ちきゅう」の挑戦。場所は、東京から1,900㎞の南鳥島。ここには、産業が可能な規模のレアアースが眠っているとされます。ここで連続的に6,000mの海底からレアアース泥を船上に引き上げます。この海底資源開発株式会社の海底資源採掘システムが注目されています。

また他の中国依存脱却の動きとしては、2025年10月に双日がオーストラリア産のレアアースを初輸入しました。また2025年7月には旧日立金属(現プロテリアル)が、レアアースを使わない磁石を開発しました。その他にも、都市鉱山といわれるリサイクル技術も進化しています。

本記事では、レアアースのポイントについて詳しく解説します。

1. レアアースとは

レアアース

1-1. レアアースの定義と代表的元素について

レアアースは、一般的にランタノイド15種に化学的性質が近いイットリウム(Y)とスカンジウム(Sc)を含めた総称です。1794年にスウェーデンで発見され、「希少な(レア)土類」として名付けられましたが、一部の元素は地球上に比較的多く存在します。「レア」とされるのは、採掘や精製が難しく、その過程で環境負荷が大きいこと、また特定の地域に偏在していることに由来します。代表的な元素と特徴を、下記に記します。

1-1-1. ネオジム(Nd)

ネオジム(Nd)はレアアースの一種で、金属元素です。磁石の原料として活用されており、多くは原石となる鉱石を精製して使用します。主な産出国は中国で、世界の生産量の6~7割以上を占めるといわれています。例えば中国内モンゴル自治区の白雲鄂博(バヤンオボー)鉱山は、世界最大級の希土類鉱床です。

1-1-2. プラセオジム(Pr)

プラセオジム(Pr)は銀白色の金属です。炭酸塩のマグマが冷えて固まったカーボナタイトというバストネス石に含まれて産出します。合金製造や、光ファイバの増幅器で励起光の波長制御のため添加使用されます。

1-1-3. セリウム(Ce)

セリウム(Ce)は、銀白色の軟らかい金属です。空気中で酸化しやすく、150℃で燃焼するという性質があります。用途としては、ライターの発火石やガラス研磨剤、自動車の触媒コンバーターなどがあります。また電池電極材料や自動車の窓ガラスの紫外線吸収剤にも使われています。

1-1-4. ランタン(La)

ランタン(La)は銀白色の金属で、空気に触れるとゆっくり錆びます。また用途としては、セラミックコンデンサや光学レンズの材料などがあります。ハイブリッド水素電池正極成分や、電子カソード、シンチレーターにも使用されます。

1-1-5. ジスプロシウム(Dy)

ジスプロシウム(Dy)は、明るい銀色で軟らかい性質があります。例えば電子機器の材料や赤外線分野、データ保存応用などに使われます。また原子炉の中性子吸収に関する制御棒の製作にも使用されます。

1-2. レアアースとレアメタルの違い

レアアースとレアメタルは、定義と含まれる元素の種類が異なります。レアメタルは希少な金属の総称で、レアアースはその一部です。具体的にはレアアースは17種類の元素を指し、レアメタルはレアアースを含む31種類の鉱種になります。

2. レアアースの用途

2-1. 永磁体(Nd、Pr、Dyなど)

電気自動車モーター

永磁体とは、外部からの磁場がなくても磁力を長期間維持できる材料です。一般的には磁石の多くが相当します。例えばレアアースが永磁体として使われる場合、電気自動車のモーターや風力発電の発電機、ハードディスクやドローンなどが挙げられます。

電気自動車のモーターは、ハイパワー希土類磁石が小型高性能モータを実現しました。またて駆動メカニズムがシンプルになり、車体の軽量化も可能になりました。

2-2. 自動車の排ガス浄化(Ce)

排ガス 触媒

セリア(Ce)はジルコニアを添加すると、触媒浄化率が著しく向上する効果があります。これは浄化反応中のOSC作用を模擬し、水素還元による酸素放出や還元後の酸素吸収でのOSC量測定が実施されています。

また実用上の触媒化の観点からは、添加方法や混合方法などの作成プロセスの研究開発が進んでいます。

2-3. テレビ・スマホの赤青蛍光体(Eu)

レアアース スマホ

ユーロピウム(Eu)は、カラーテレビの赤色を真の赤色にした発光元素です。これはユーロピウム蛍光体の線幅が極端に狭く、赤色のみを発光しているからです。そのことにより、カラーテレビの赤色の明るさや色の再現性が大幅に改善されました。例えば蛍光体にユーロピウムやイットリウムが使用された「キドカラー」は、一世を風靡しました。

現在は液晶ディスプレイのバックライトや、スマートフォンの赤青蛍光体に使用されています。また発光イオンと有機分子を組み合わせた希土類錯体の研究も進んでいます。

2-4. 光学材料・医療(Gd)

ガドリ二ウム(Gd)は、1880年にジュネーブで発見されました。酸化しない場合は銀白色で、酸化すると黒のコーディングを形成します。光学の分野では、イットリウムやアルミニウム、ガーネットの製作に使われます。これはマイクロ波のアプリケーションがあり、色んな種類の光学製品や光学フィルムの基板材料に使用されます。

また次世代のがん治療法としての中性子捕捉療法(NCT)にも使用されています。NCTでは、核反応による放射線を活用しがん治療に役立てます。

2-5. ミサイルや原子力潜水艦など軍事兵器

レアアース ハイテク兵器

左は、米国とイスラエルが共同開発した新世代の長距離精密誘導ミサイル『ブルズアイ』。右は、ステルス戦略爆撃機として有名なアメリカ空軍の『B-2』。

レアアースを含むレアメタルは、スマートフォンや電気自動車だけではありません。実はハイテク兵器の生産にも欠かせない重要素材です。ここでは、そのポイントを解説します。

2-5-1. ミサイル

ミサイルの燃料材料には、ジルコニウムやベリリウム、ボロン等が使われています。またミサイルの構成部品材料として、タングステンやモリブデン、各合金や、Ti-DSSが使用されています。その他の部品や機器用として、タングステンは熱遮蔽材やノズルの基質、ノズルスロート及び推力ベクトル制御部品(ベーン等)の表面に使われています。それ以外には、小型衛星等の姿勢制御用DCアークジェットスラスタの電極としても用いられます。特にアンチモンは、赤外線ミサイルや核兵器、ロケット用難燃剤などに使われています。

2-5-2. 原子力関連

ジルコニウムは、原子炉における核燃料棒の被服管や圧力管に使われています。またコバルトやモリブデン、チタンは、ウラン濃縮用遠心分離器筒材用の合金に使用され、タンタルはレーザーウラン濃縮施設用途から管理品目となっています。ちなみに原子力関連技術は、軍事用途として原子爆弾用の濃縮ウランやプルトニウム製造や原子爆弾等に直結します。そのため、物資や技術を対象に原子力供給国グループが組織されています。

2-5-3. 通常兵器

テルビウムは、ジスプロシウムや鉄との合金で単結晶超磁歪材料になります。その結果、応答速度の速い高耐久性で高性能のアクチュエータやセンサーとして活用されます。また同性質により、対潜水艦ソナーやアクティブ制振等にも用いられます。また多くのレアメタルは、ミサイル照準用レーダーや、ソナー、ステルスコーティング、ジャミング装置、暗視装置に不可欠です。

3. 世界のレアアースの埋蔵量と産出量、市場の状況

レアアースの生産量と中国のシェア

レアアースの生産量と中国のシェア(※JOGMEC作成)

3-1. 現在の埋蔵量と採掘量、精製能力1位は中国

世界のレアアース埋蔵量は、約1億10百万トンと推定されています(2023年時点)。国別の埋蔵量では、中国が最も多く、次いでブラジル、ベトナム、ロシアなどが続きます。また生産量は、中国が1位で2位米国、3位がオーストラリアと続きます。

特に採掘量と精製能力で中国は世界の9割以上を占め、事実上独占状態です。かつて鄧小平氏は「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と述べました。実は中国は1980年代からレアアースを戦略物資と位置づけ、40年以上かけて国家一丸で生産・技術開発を進めてきたのです。この中国の優位性は、地政学的な問題を引き起こしています。そのため各国は、供給源の多様化や代替技術の開発、リサイクルに力を入れています。

3-2. レアアースの鉱床について

レアアースの鉱床

世界の主要なレアアースの鉱床(※△は漂砂鉱床、〇はの他鉱床/Castor and Hedrick, 2006)

レアアースの初期は、花崗岩質ペグマタイトから小規模に生産されました。その後19世紀後半から20世紀前半にかけて、特にアメリカ合衆国南東部の海岸から採取されました。例えば1968~1985年の期間では、世界の生産量の多くはカリフォルニア州のマウンテンパス カーボナタイト鉱床および世界各地の砂鉱採取の副産物でした。

また漂砂鉱床の多くは、西オーストラリアや東オーストラリアの一部、インド半島南、アメリカ東海岸などでした。漂砂鉱床とは、風化によって母岩から分離した比重の重い鉱物が水で流され、河川や海岸などに堆積した鉱床のことです。そして1988年以降は、中国の生産量は世界の80%を超えています。

4. 日本のレアアースの埋蔵量と品質について

4-1. 発見の経緯とEZZ海域について

排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ)

2013年東京大学大学院の加藤・中村・安川研究室は、レアアース泥を発見しました。場所は、南鳥島沖のEZZ海域における水深約6,000mの海底です。EZZ海域とは、排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ)のことです。沿岸国の基線から200海里(約370km)までの海域(領海を除く)を指します。この水域では、国連海洋法条約に基づき沿岸国が漁業や天然資源(石油、鉱物など)の探査、開発、保存、管理、海洋環境の保護などに関する主権的権利と管轄権を持ちます。

日本は四方を海に囲まれており、領海とEEZを合わせた面積は約447万㎢に及びます。これは国土面積の約12倍にあたり、世界で6番目の広さです。特に沖ノ鳥島や南鳥島周辺のEEZは、それぞれ約42万㎢、約43万㎢と、日本の国土面積を上回る広さを持っています。

4-2. レアアース泥と埋蔵量、品質について

南鳥島沖の南西約310㎞の海底で採取されたレアアース

南鳥島沖の南西約310㎞の海底で採取されたレアアースを含む夢の泥(※産経新聞)

レアアース泥とは、海中に溶け出したレアアースが魚の骨が由来のリン酸カルシウムに付いて海底に堆積したものです。南鳥島のレアアースの推定資源量は15種類1,600万トンです。この量は世界3位の量で、世界需要の数百年分といわれています。

しかも南鳥島のレアアースは、放射性物質を殆ど含まないという特徴があります。例えば地上のレアアース鉱石は、トリウム232やウラン同位体などの放射性物質を含んでいます。そのため、採掘や製錬過程で放射性廃棄物が大量に発生します。その点、南鳥島のレアアースは環境への負荷が少ないのです。

5. 日本のレアアース採掘について

日本周辺の海底資源の分布図(※JAMSTEC公式サイトより)

5-1. 2022年揚泥と環境モニタリングに成功

2022年日本の海洋探査の歴史において、極めて重要なプロジェクトが実施されました。国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部探査船ちきゅうが、将来の資源確保に向けて革新的な実証試験を主導しました。

水深約2,470mにおよぶ深海域には、コバルトやニッケルを豊富に含んだ「コバルトリッチクラスト」などの鉱物資源が存在します。そして、これらを効率的に船上へと運び上げる「揚泥(ようでい)」技術の確立が重要です。この実験では、海底から採取した資源を泥状にしてパイプで吸い上げるプロセスが検証されました。

同時に重要視されているのが、生態系への影響です。本試験では、大規模な環境モニタリングが並行して行われました。具体的には、泥の濁りの拡散の生態系への影響です。

5-2. 2026年1月11日から2月14日までの試験

レアアース探鉱システム概念図

この期間では、水深6,000mの海底にレアアース泥を採鉱する揚泥管や機器等を接続しながら降下させます。そして採鉱機を海底に貫入させる一連の作動を検証します。

また同時に採鉱作業中の海洋環境モニタリングも実施します。具体的には、海底に「江戸っ子1号COEDO」、環境DNA自動採取装置、ハイドロフォンを設置します。そこで海洋環境の観測と、汚染監視システムなどの観測装置の性能試験も実施します。

今回の試験は、2027年2月の本格的な採鉱試験に向けての取り組みです。日本のレアアースサプライチェーンの構築の第一歩として注目されています。

6. 日本のレアアースの製造とサプライチェーンについて

6-1. あらゆる電子機器に搭載される永久磁石の重要性

レアアースはハイテク製品には不可欠な素材です。特にEV自動車のモーターや風力発電用の永久磁石として、重用されています。永久磁石は、一旦外部からエネルギーをかけると磁力を永続的に保ちます。そのため、様々な機器で用いられています。

日本におけるレアアースの採掘から磁石製造までのサプライチェーンは、以下になります。地上で採掘されたレアアースの分離・精製では、放射性元素の処理と管理が必要です。しかし南鳥島沖のレアアースは、放射性物質を殆ど含まないという優位性があります。

日本のレアアースサプライチェーン

※独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構『レアアースの供給と課題』より引用

6-2. 日本の精錬技術の優位性

精錬技術

日本製鉄の精錬技術(※公式サイトより)

精錬とは、電気分解や化学処理によって金属の純度を高めることを指します。日本の精錬技術の高さは世界的にも評価が非常に高く、特にレアアース(希土類元素)分野では「資源を持たない国でありながら、技術で支配力を持つ」代表例とされています。

そのポイントは、「不純物を極限まで除去する技術力」と「プロセス制御と職人技の融合」です。これらは、半導体や磁石、電池材料などの性能を左右する核心の技術です。例えば住友金属鉱山や三菱マテリアルには、「溶媒抽出法の高度化」と「イオン交換技術」、「不純物選択除去技術」という技術があります。これらを活用することで、特定のレアアースだけを高効率で取り出すことに成功しています。

7. 中国依存を脱却する供給源の多様化

7-1. オーストラリアのライナス社への投資・連携

オーストラリアの地図

ライナス社は、中国以外でレアアースを安定的に供給できる数少ない企業の一つです。日本はJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)と双日が共同で、ライナス社に追加出資しました。日本向けのジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)など、重希土類の供給契約を強化しています。

これらの重希土類は、高性能磁石に不可欠であり、供給源の多様化が特に重要視されています。また住友商事も、ライナス社が生産するNdPr酸化物およびREE金属に関し、独占販売代理店契約を締結するなど連携を深めています。

7-2. アメリカからの調達

アメリカのMP Materials社は、レアアースの分離精製において本格的な生産開始を予定しており、住友商事が日本向けの独占販売代理店契約を締結しています。これにより、新たな供給源の確保が進められています。

7-3. その他の国々との連携

フランスのCaremagプロジェクトへの参画など、欧州やその他の地域におけるレアアース開発プロジェクトへの投資や協力も進められています。また海外の休止鉱山の再開や新規製錬工場の建設などの活動が行われています。

8. リサイクル技術の開発と「都市鉱山」の活用

使用済み磁石やバッテリーなどから希少金属を回収するのが、都市鉱山ビジネスです。レアアースのリサイクル技術の開発を強化することで、新規のレアアース調達量を削減し、供給リスクを低減する狙いがあります。例えば日産自動車は早稲田大学と共同で、廃車のEVモーターからレアアースをリサイクルする技術開発を進めています。具体的には電炉にモーターと添加剤を入れ、1500℃まで加熱することで鉄と分離したレアアースを回収します。

9. 省レアアース技術の研究開発

ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった重希土類を必要としない技術(重希土類フリー化)の研究開発支援が行われています。また特定レアアース依存度を下げ、サプライチェーンの脆弱性を克服を目指しています。

10. 制度・政策面での支援

経済産業省、JOGMEC、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などが連携し、非中国産調達網構築、リサイクル技術開発、重希土類フリー化・省レアアースなどの領域を強化するための出資や補助金、研究開発プロジェクトを実施しています。南鳥島での採掘権を守るための法改正も行われています。このように、国内でのレアアース採掘に向けた法的基盤が整備されています。

11. まとめ

近年レアアースは、その重要性が増すと同時に、戦略的資源としての側面も強まっています。特に中国は、長年にわたる採掘と精製技術の蓄積によって、サプライチェーン全体を自国内で完結させる能力を持っています。アメリカとの関税戦争で取引材料として使われるのは、そういった背景があるからです。

しかし日本も様々な取り組みを通し、中国依存の体制からの脱却を図っています。例えばレアアース使用量の最適化もその一つです。代表的な例としては、トヨタのネオジム使用量低減モーターがあります。これはネオジムを減らしつつ、ジスプロシウム(高価な重希土類)を使わない設計を開発するものです。またパナソニックの高効率モーター設計も有名です。これはモーター内の磁石配置や材料構成を工夫し、レアアース使用量を最大50%削減しました。

日本の強みである「もの作り」でも、レアアースに依存しない国作りが推進されています。また同時に、周辺海域の資源の開発も重要なテーマです。

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