レアアース(英:rare earth)は、一般的にランタノイド15種とイットリウム(Y)とスカンジウム(Sc)を含めたものです。日本語では「希土類元素(きどるいげんそ)」と呼ばれています。
銅や鉛と同じく鉱床に広く分布しているものの、鉱石からの抽出が難しいのが大きな特徴です。レアアースの用途としては、永久磁石やガラス研磨材、触媒などがあります。例えばテレビやパソコン、スマートフォン、EV車の製造には欠かせない物質です。
また少量加えるだけで、製品の強度や耐熱性を高めることができます。そのためレアアースは「産業のビタミン」と呼ばれています。例えばネジウム磁石はモーターの効率を高め軽量化を図れます。そのため、電気自動車のモーターやバッテリーには必要不可欠といわれています。
レアアースは、今後も需要が高まることが予想されています。本記事では、そのポイントを解説します。
Contents
1. レアアースとは

1-1. レアアースの定義と代表的元素について
レアアースは、一般的にランタノイド15種に化学的性質が近いイットリウム(Y)とスカンジウム(Sc)を含めた総称です。1794年にスウェーデンで発見され、「希少な(レア)土類」として名付けられましたが、一部の元素は地球上に比較的多く存在します。「レア」とされるのは、採掘や精製が難しく、その過程で環境負荷が大きいこと、また特定の地域に偏在していることに由来します。代表的な元素と特徴を、下記に記します。
1-1-1. ネオジム(Nd)
ネオジム(Nd)はレアアースの一種で、金属元素です。磁石の原料として活用されており、多くは原石となる鉱石を精製して使用します。主な産出国は中国で、世界の生産量の6~7割以上を占めるといわれています。例えば中国内モンゴル自治区の白雲鄂博(バヤンオボー)鉱山は、世界最大級の希土類鉱床です。
1-1-2. プラセオジム(Pr)
プラセオジム(Pr)は銀白色の金属です。炭酸塩のマグマが冷えて固まったカーボナタイトというバストネス石に含まれて産出します。合金製造や、光ファイバの増幅器で励起光の波長制御のため添加使用されます。
1-1-3. セリウム(Ce)
セリウム(Ce)は、銀白色の軟らかい金属です。空気中で酸化しやすく、150℃で燃焼するという性質があります。用途としては、ライターの発火石やガラス研磨剤、自動車の触媒コンバーターなどがあります。また電池電極材料や自動車の窓ガラスの紫外線吸収剤にも使われています。
1-1-4. ランタン(La)
ランタン(La)は銀白色の金属で、空気に触れるとゆっくり錆びます。また用途としては、セラミックコンデンサや光学レンズの材料などがあります。ハイブリッド水素電池正極成分や、電子カソード、シンチレーターにも使用されます。
1-1-5. ジスプロシウム(Dy)
ジスプロシウム(Dy)は、明るい銀色で軟らかい性質があります。例えば電子機器の材料や赤外線分野、データ保存応用などに使われます。また原子炉の中性子吸収に関する制御棒の製作にも使用されます。
1-2. レアアースとレアメタルの違い
レアアースとレアメタルは、定義と含まれる元素の種類が異なります。レアメタルは希少な金属の総称で、レアアースはその一部です。具体的にはレアアースは17種類の元素を指し、レアメタルはレアアースを含む31種類の鉱種になります。
2. レアアースの埋蔵量と産出量、市場の状況
世界のレアアース埋蔵量は、約1億10百万トンと推定されています(2023年時点)。国別の埋蔵量では、中国が最も多く、次いでブラジル、ベトナム、ロシアなどが続きます。また生産量は、中国が1位で2位米国、3位がオーストラリアと続きます。
特にレアアースの採掘量と精製能力において、中国は世界の9割以上を占めており、事実上独占状態です。この中国の優位性は、地政学的な問題を引き起こすことがあります。そのため、各国は供給源の多様化や代替技術の開発、リサイクルに力を入れています。
3. レアアースの用途
3-1. 永磁体(Nd、Pr、Dyなど)

永磁体とは、外部からの磁場がなくても磁力を長期間維持できる材料です。一般的には磁石の多くが相当します。例えばレアアースが永磁体として使われる場合、電気自動車のモーターや風力発電の発電機、ハードディスクやドローンなどが挙げられます。
電気自動車のモーターは、ハイパワー希土類磁石が小型高性能モータを実現しました。またて駆動メカニズムがシンプルになり、車体の軽量化も可能になりました。
3-2. 自動車の排ガス浄化(Ce)

セリア(Ce)はジルコニアを添加すると、触媒浄化率が著しく向上する効果があります。これは浄化反応中のOSC作用を模擬し、水素還元による酸素放出や還元後の酸素吸収でのOSC量測定が実施されています。
また実用上の触媒化の観点からは、添加方法や混合方法などの作成プロセスの研究開発が進んでいます。
3-3. テレビ・スマホの赤青蛍光体(Eu)

ユーロピウム(Eu)は、カラーテレビの赤色を真の赤色にした発光元素です。これはユーロピウム蛍光体の線幅が極端に狭く、赤色のみを発光しているからです。そのことにより、カラーテレビの赤色の明るさや色の再現性が大幅に改善されました。例えば蛍光体にユーロピウムやイットリウムが使用された「キドカラー」は、一世を風靡しました。
現在は液晶ディスプレイのバックライトや、スマートフォンの赤青蛍光体に使用されています。また発光イオンと有機分子を組み合わせた希土類錯体の研究も進んでいます。
3-4. 光学材料・医療(Gd)
ガドリ二ウム(Gd)は、1880年にジュネーブで発見されました。酸化しない場合は銀白色で、酸化すると黒のコーディングを形成します。光学の分野では、イットリウムやアルミニウム、ガーネットの製作に使われます。これはマイクロ波のアプリケーションがあり、色んな種類の光学製品や光学フィルムの基板材料に使用されます。
また次世代のがん治療法としての中性子捕捉療法(NCT)にも使用されています。NCTでは、核反応による放射線を活用しがん治療に役立てます。
4. レアアースの鉱床について

世界の主要なレアアースの鉱床(※△は漂砂鉱床、〇はの他鉱床/Castor and Hedrick, 2006)
レアアースの初期は、花崗岩質ペグマタイトから小規模に生産されました。その後19世紀後半から20世紀前半にかけて、特にアメリカ合衆国南東部の海岸から採取されました。例えば1968~1985年の期間では、世界の生産量の多くはカリフォルニア州のマウンテンパス カーボナタイト鉱床および世界各地の砂鉱採取の副産物でした。
また漂砂鉱床の多くは、西オーストラリアや東オーストラリアの一部、インド半島南、アメリカ東海岸などでした。漂砂鉱床とは、風化によって母岩から分離した比重の重い鉱物が水で流され、河川や海岸などに堆積した鉱床のことです。そして1988年以降は、中国の生産量は世界の80%を超えています。
5. 日本のレアアースの埋蔵量・採掘方法・環境問題
5-1. 世界第3位規模の1,600万トンの埋蔵量

南鳥島沖の南西約310㎞の海底で採取されたレアアースを含む夢の泥(※産経新聞)
日本の最東端に位置する南鳥島沖のレアアース有望海域は、2500㎡といわれています。その有望海域だけでも、レアアースの埋蔵量は1,600万トン超とみられており、これは世界第3位の規模です。
2018年4月10日の産経新聞では、東京大学の調査結果が報告されています。そこでは、南鳥島の排他的経済水域(EEZ)内の海底の泥に含まれるレアアースの埋蔵量は、世界需要の数百年分に及ぶことが判明しました。深さ5,700m前後の25地点で採掘した泥を詳しく分析した結果、15種のレアアースが1,600万トン存在することを突き止めました。
5-2. イオン吸着型鉱床からの採掘
土のような状態の鉱物に、硫酸アンモニウムなどの酸性溶液を流し込み、レアアースを溶かし出して回収する方法です。これは比較的簡単で安価な技術ですが、環境への影響が大きいという問題があります。例えば廃液が土壌や地下水を汚染してしまいます。その結果、生態系や住民の健康に深刻な被害をもたらすことが報告されています。
5-3. 海底からのレアアース泥の採掘

日本の南鳥島沖の海底には、国内消費量の数百年分に相当するレアアース泥が埋蔵されているとされています。また採掘方法として、「閉鎖系二重管揚泥方式」と「エアリフト」という技術が開発されています。これは海底に解泥機を差し込み、堆積物に海水を注入して流動性のある状態にします。そして揚泥管を通じて、洋上に引き上げる方法です。
この後揚泥されたレアアース泥からは、希塩酸を用いてレアアースを浸出(リーチング)させ、陸上工場で分離・精製が行われます。レアアース泥の採掘技術については、『レアアース泥技術で海洋資源立国へ!環境影響評価とは?』でも詳しく解説しています。こちらも参照下さい。
6. レアアースの安定供給確保
日本は、レアアースの多くを中国からの輸入に依存しており、安定供給確保が喫緊の課題となっています。そのため、以下の多角的な施策が進められています。
6-1. 中国によるレアアース輸出規制
2025年4月4日中国商務部はアメリカとの貿易摩擦が原因で、特定のレアアースを輸出管理対象とし、輸出許可を義務付けました。公告によれば、この措置は「輸出管理法」「対外貿易法」「税関法」「両用品目輸出管理条例」に基づくものです。対象になったのは、「サマリウム」「ガドリ二ウム」「テルビウム」「ジスプロシウム」「ルテチウム」「スカンジウム」「イットリウム」の7種類です。これらの金属や合金、関連製品、酸化物や混合物、化合物とその混合物を対象としています。
6-2. 供給源の多様化
6-1-1. オーストラリアのライナス社への投資・連携

ライナス社は、中国以外でレアアースを安定的に供給できる数少ない企業の一つです。日本はJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)と双日が共同で、ライナス社に追加出資しました。日本向けのジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)など、重希土類の供給契約を強化しています。
これらの重希土類は、高性能磁石に不可欠であり、供給源の多様化が特に重要視されています。また住友商事も、ライナス社が生産するNdPr酸化物およびREE金属に関し、独占販売代理店契約を締結するなど連携を深めています。
6-1-2. アメリカからの調達
アメリカのMP Materials社は、レアアースの分離精製において本格的な生産開始を予定しており、住友商事が日本向けの独占販売代理店契約を締結しています。これにより、新たな供給源の確保が進められています。
6-1-3. その他の国々との連携
フランスのCaremagプロジェクトへの参画など、欧州やその他の地域におけるレアアース開発プロジェクトへの投資や協力も進められています。また海外の休止鉱山の再開や新規製錬工場の建設などの活動が行われています。
6-2. 日本のレアアース泥開発

日本の南鳥島沖の海底で、世界最高品位の「超高濃度レアアース泥」が発見されています。これは、日本の年間需要の数十年から数百年分に達するとされています。
これにより日本はレアアースの資源国となる可能性を秘めており、経済安全保障や産業競争力の強化、環境技術の進化に大きく寄与すると期待されています。南鳥島沖のレアアース泥については、『南鳥島のレアアース泥が注目!世界需要の数百年分の埋蔵とは』で詳しく解説してます。こちらも参照下さい。
6-3. リサイクル技術の開発と「都市鉱山」の活用

使用済み磁石やバッテリーなどから希少金属を回収するのが、都市鉱山ビジネスです。レアアースのリサイクル技術の開発を強化することで、新規のレアアース調達量を削減し、供給リスクを低減する狙いがあります。例えば日産自動車は早稲田大学と共同で、廃車のEVモーターからレアアースをリサイクルする技術開発を進めています。具体的には電炉にモーターと添加剤を入れ、1500℃まで加熱することで鉄と分離したレアアースを回収します。
6-4. 省レアアース技術の研究開発
ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)といった重希土類を必要としない技術(重希土類フリー化)の研究開発支援が行われています。また特定レアアース依存度を下げ、サプライチェーンの脆弱性を克服を目指しています。
6-5. 制度・政策面での支援
経済産業省、JOGMEC、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)などが連携し、非中国産調達網構築、リサイクル技術開発、重希土類フリー化・省レアアースなどの領域を強化するための出資や補助金、研究開発プロジェクトを実施しています。南鳥島での採掘権を守るための法改正も行われています。このように、国内でのレアアース採掘に向けた法的基盤が整備されています。
7. まとめ
近年レアアースは、その重要性が増すと同時に、戦略的資源としての側面も強まっています。特に中国は、長年にわたる採掘と精製技術の蓄積によって、サプライチェーン全体を自国内で完結させる能力を持っています。アメリカとの関税戦争で取引材料として使われるのは、そういった背景があるからです。
しかし日本も様々な取り組みを通し、中国依存の体制からの脱却を図っています。例えばレアアース使用量の最適化もその一つです。代表的な例としては、トヨタのネオジム使用量低減モーターがあります。これはネオジムを減らしつつ、ジスプロシウム(高価な重希土類)を使わない設計を開発するものです。またパナソニックの高効率モーター設計も有名です。これはモーター内の磁石配置や材料構成を工夫し、レアアース使用量を最大50%削減しました。
日本の強みである「もの作り」でも、レアアースに依存しない国作りが推進されています。また同時に、周辺海域の資源の開発も重要なテーマです。
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