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前回の企画書に引き続き、今回は地域経済の計測システムの実際の運用局面に関する企画書です。
「地方経済活性化」は日本経済の大きなテーマですが、その現状把握や景況推移を計測することが重要です。そこで非常に参考になるのが、農林水産業や資金循環、財務状況、海外との取引状況を把握できるKPI設定のための具体的指標と各自治体へのヒアリング内容です。
ビックデータ分析のためのシステムに対する各地方自治体の見解は、非常に興味深い内容です。
【地域経済の調査について】
・全国企業短期経済観測調査
・環境経済観測調査
・衛星データ活用の潜在的ユーザ抽出及び地上ビックデータの利用可能性調査
・公的統計におけるビック・データの活用に関する調査研究
・ビックデータの活用が促す成長の可能性
・ビッグデータで地域を“見える化”!~地域経済分析システム(RESAS)活用入門~
・ビッグデータを使った地域経済の分析方法を知りたい!
【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2. 『平成26年度企業取引情報等による地域活性化事業(地方自治体による地域政策策定のためのデータ分析・調査事業)』から学ぶ
3. 表紙
4. 事業の計画
5. 事業の内容
1. 今回の企画書の特徴
平成26年9月に首相官邸で発足した「まち・ひと・しごと創生本部」。そのベースとなる地域経済分析に必要となるデータ指標など、各論の詳細が記載されている今回の企画書。そのポイントを、以下に記します。
・人口減少による需要縮小傾向にある地域経済
・ビックデータ分析
・企業間取引情報
・携帯電話の位置情報
・情報支援ツールの地域経済分析システム
・計10自治体と有識者4名へのヒアリング
・データ同士を掛け合わせて新たな見方を提案するマッシュアッシュ手法
・RESASを活用した地方版総合戦略及び分析事例
2. 『平成26年度企業取引情報等による地域活性化事業(地方自治体による地域政策策定のためのデータ分析・調査事業)』から学ぶ
では、帝国データバンクが作成した企画書を以下具体的に見ていきましょう。
3. 表紙
第1章 事業の計画
1. 事業の目的
我が国経済、とりわけ地域経済は、人口減少等による需要縮小という、容易に反転しづらい厳しい構造問題を抱えている。
地域経済の活性化のためには、地域経済を構成する産業構造やサプライチェーン、企業間取引、ヒト・モノ・カネの流れ等を正確に把握した上で、当該地域の産業群や企業群の強み・弱み・今後の方向性等を踏まえた総合的かつ戦略的な政策立案が、国や地方自治体には求められる。
経済センサスや工業統計等の政府統計を用いることである程度地域の実情を捉えることはできるが、地域の経済・社会状況をタイムリーに把握し、分析を行うための手法・ツールが整備されているとは言いがたい状況にある。
こうした問題意識を踏まえ、「平成26年度我が国の地域産業構造の把握のためのビッグデータ分析に関する調査に係る委託事業」を実施した。当該事業においては、地域経済を活性化するため、全国規模の様々なデータを基に、地域経済に資金をもたらす地域中核企業候補を抽出するとともに、地域の産業構造を把握することを目指し、様々なビッグデータ(企業間の取引情報、携帯電話の位置情報等)を取引実態や人口動態に即した形で、かつ、データ処理可能な状態に整理した上で提供してもらうとともに、具体的な活用方法の提案も実施した。
平成26年9月、首相官邸に「まち・ひと・しごと創生本部」が発足し、オールジャパンで地方創生のための種々の施策に取り組んでいるところである。その一環として今般、全自治体がそれぞれ主体的に自地域の活性化に取り組むため、「地方版総合戦略」を策定することとなったが、その際の国からの情報支援ツールとして、上記提供データを用いて構築した、地域経済構造等の可視化・解析を可能とする「地域経済分析システム」が位置付けられることとなった。
本事業は、今後、地域経済のみならず、客観的なデータに基づく地方版総合戦略の策定及び効率的かつ効果的なPDCAサイクルを確立する情報支援ツールとして地域経済分析システムをより有用なものとするために、経済分野に限定せず、種々のデータ、具体的には、地域経済循環に関するデータに加えて、農業や医療、介護、教育等に関するデータについて、実態に即した形で、かつ、データ処理可能な状態に整理した上で提供するとともに、地方自治体における活用方法の提案も行った。
2. 事業の対象
(1) 地方版総合戦略の策定に必要な情報の収集・調査
地方版総合戦略を策定するために、必要なデータについての調査として、計10自治体と有識者4名へのヒアリング調査を実施した。対象地域等は、「福井県」「石川県」「富山県」「長野県」「愛媛県」「京都府」「滋賀県」「群馬県」「福島県」「鳥取県」「宮城県」、有識者として、東京大学坂田一郎教授、東京大学柴崎亮介教授、東京工業大学高安美佐子准教授、一橋大学岡室博之教授、関連する団体として、地域金融機関として、「八十二銀行」「京都銀行」「京都北都信用金庫」「京都中央信用金庫」「京都信用金庫」、である。
(2) データの整理・集約
以下のデータについて、地域経済分析に必要なデータ内容を精査し、システムに搭載できるように経済産業省の指示に基づき、株式会社帝国データバンク(以下、「帝国データバンク」という)で研磨作業を実施した。
<対象データ>
・農林水産業の実態を把握できるデータ(農林業センサス:2000年、2005年、2010年)
・地域経済の資金循環を把握できるデータ(産業連関表等:2010年)
・地域内の企業の財務状況等を把握できるデータ(民間データ:2005~2014年)
・外国との取引関係を把握できるデータ(貿易統計:2009~2013年)
・小売業・サービス業などの商業に関するデータ(経済センサス:2009年、2012年、その他)
・外国人及び国内観光客の動きを把握できるデータ(民間データ等)
・国内外の宿泊客の動向を追うことのできるデータ(宿泊旅行統計調査:2010~2014年)
・外国人観光客の消費動向を把握できるデータ(訪日外国人消費動向調査:2010~2014年)
・自動車での交通量や流入経路等を把握できるデータ
・通勤圏、買い物圏など、圏域を分析することのできるデータ(国勢調査:2000年、2005年、2010年、電話帳データ 2012~2014年)
・生活コスト(家計収支、暮らしやすさ)に関するデータ(家計収支等:2014年)
・金融機関の貸出し状況を把握できるデータ(民間データ:2009~2014年)
・学校数、生徒数などが把握できるデータ(民間データ:2008~2014年)
・病院数、病床数などが把握できるデータ(民間データ:2011~2014年)
・大規模災害時における交通状況や人の移動に関するデータ(民間データ)
・知的財産権に関するデータ(特許情報等:2014年時点)
・補助金採択企業に関するデータ
(3) データセットの活用方法、分析の枠組み提案
ビッグデータセットの活用方法としてデータ同士を掛け合わせて新たな見方を提案するマッシュアップ手法を取り入れた地域経済分析システムのプロトタイプ開発を実施した。開発したプロトタイプは、マッシュアップしたビッグデータの表現方法検討のほかに、地域経済分析システムの完成前に、本事業の取り組みの周知、理解のために石破茂地方創生担当大臣、小泉進次郎政務官、経済産業省審議官、他へデータセットの活用方法、分析の枠組み提案として活用された。
データの活用方法の提案等は、「福井県」「石川県」「富山県」「長野県」「愛媛県」「京都府」「滋賀県」「群馬県」「福島県」「鳥取県」「宮城県」に実施した。
各地域の自治体職員及び金融機関から RESAS を活用した地方版総合戦略及び分析事例等をそれぞれ説明していただくとともに、現在のデータ及びシステムの使い勝手について意見交換を行った。
<主な意見>※詳細は議事録をご参照ください。
(自治体)
・工場単位での取引関係や取引金額を知りたい(石川県)
・滞在人口は、ビッグデータならではの有用な情報(石川県)
・グラフ上に数値を表示することは出来ないか(石川県)
・グラフなどの図表を画像データとして保存できるようにならないか(石川県、富山県)
・各省庁におけるRESASの活用事例が知りたい(小松市)
・今までは欲しいデータを探すことも難しかったが、RESASのおかげで必要なデータを取得することが容易になり大変助かっている(能登町)
・新たに加えて欲しいデータには下記のようなものがある(長野県)
→住宅土地統計調査、学校教育基本調査、消費動向について示したデータ
→社会生活基本調査、宿泊統計調査、厚生労働省の都道府県別生命表(厚生労働省)
・地域合算ではなく、地域比較も行えるようにしてほしい(富山県)
・「取引額上位 10 位以内」といった区切りで、データを抽出し、別ウィンドウでグラフやランキングできる機能があると良い(福島県)
・特化係数だけでなく、スカイライン図のような産業別ウェイトも考慮したグラフにすると、視覚的に分かりやすくなると考える(福島県)
・県内の高校生、大学生がどれくらい県内企業に就職しているのか、県外へ進学した学生がどれくらい県内に戻ってきているのかが分かるデータがあると有り難い(福島県)
・長野県の特徴をひとくくりにするには、県が南北に長いので、地域経済圏で分けて観光客数を集計できる分析が出来たらいいと思う(飯田市)
・地域経済循環度を飯田市が独自で計算している地域経済自立度と合わせて新しい使い方はできるか(飯田市)
・都市特性としては、JR立川駅付近に集客施設が多い。おおよそ有楽町と同じくらいの乗降客数がある。交流人口はRESASリリース前だったが、リリース後にRESASにて交流人口分析をやり直している(立川市)
・RESASは使う人しか使っていない。若手職員向けで勉強会をやっている。マイナンバー関係でセキュリティが強くなってきている。日常的に使える端末が少ない(日野市)
(金融機関)
・行内向けレポートの発行(総研レポート、RESASを用いてのレポート)を作成している(京都銀行)
・インバウンドについて関心がある。VISAデータはありがたい(京都銀行)
・実際のところは活用できていないのが現状。信金中央金庫から説明があり、早速人口についてはテリトリー内のデータは出して参考にしている(京都信用金庫)
・平成27年石破大臣の説明を聞いてからスタートしている。自治体に4府県、23市町村に訪問し、協力を申し出ている。その後、地方創生支援チームを立ち上げた。支店長に趣旨を説明し、理事長以下全員参加で意思統一を図った(京都中央信用金庫)
・信金中央金庫から11月に研修があり、それに基づいて分析をした資料を出した際の自治体の感想は、評価はいいが、これに対して信金としてどう支援してもらえるのかという問いかけがきている(京都北都信用金庫)
・分析の仕方については、当信金は人的な余裕がなく、信金中央金庫の支援をもらってやっている。分析の雛形の提供があればと考えている(京都北都信用金庫)
・自治体は、産業連関表を調べたい。特に宮津市は独自にコンサルに頼んでやっている。域内調達がどの程度あるのかをみてみたい(京都北都信用金庫)
・多摩信用金庫の地方創生の取り組み。東京にある多摩地域は特殊な状況と認識から取り組みを開始。5月に研究会を開催し、29市町村が参加(1町のみ不参加)。RESASの使い方として、地方創生スクールを実施。毎週木曜日をRESASの日として実施。各市役所のキーポジションの部署がバラバラだった。複数部署から参加してもらった(多摩信用金庫)
2. データの整理・集約
経済産業省の指示に基づき、「2.データの整理・集約」に記載された具体的に想定しているデータの整理・収集を実施した。整理・集約に際しては、民間データホルダーとの権利関係を整理した上で提供した。また、市町村合併の考慮やシステム化を念頭に入れた出たフォーマットに研磨を行い提供した。その他、データを組み合わせるマッシュアップを想定し、組み合わせを発生させる際の接続コード(都道府県・市区町村コード、メッシュコード、等)を設定し、納入した。
最終的に研磨した対象データおよび仕様については、別紙「地域経済分析システムに搭載データ仕様書」を参照されたい。
また、経済産業省の指示に基づき、今回の地域経済分析システム開発ではデータ搭載できなかったものの、有用なデータの仕様の検討をした。システムへは未搭載となったデータは下記である。
<未搭載データ>
・自動車での交通量や流入経路等を把握できるデータ
・生活コスト(家計収支、暮らしやすさ)に関するデータ(家計収支等:2014 年)
・金融機関の貸出し状況を把握できるデータ(民間データ:2009~2014 年)
・学校数、生徒数などが把握できるデータ(民間データ:2008~2014 年)
・病院数、病床数などが把握できるデータ(民間データ:2011~2014 年)
・大規模災害時における交通状況や人の移動に関するデータ(民間データ)
・補助金採択企業に関するデータ
3. データセットの活用方法、分析の枠組みの提案
「2.データの整理・集約」で作成したデータセットを使用し、具体的な経済・社会構造の分析のための枠組みや、データの活用方法等について、地域経済分析システムのプロトタイプで、ビッグデータ組み合わせた結果を可視化した。データの組み合わせにあたっては、統計家の西内啓氏の知見を活用した。対象データは帝国データバンクの「企業財務データ」×特許庁「知的財産権に関するデータ」、Agoopの「携帯電話位置情報データ(メッシュデータ、滞在人口データ)」×「国勢調査」×電話帳データ(日本システム販売)とした。
とりわけ、知的資産が企業利益に貢献しているかどうかという分析は、研究論文等では実績があったものの、すべてのデータを用いての分析実績はなく、特許が企業の利益と相関があるという結果は、今後のマッシュアップにおける可能性を強く感じたという意味で地域経済分析システムへの搭載時の検討情報収集に役立てた。開発したプロトタイプはMacパソコンのみの稼働に留まることを注意点として、開発したプロトタイプのイメージを参考までに下記に掲載する。