近年、日本のコンビニやスーパーでもよく目にするようになった「IPA」という文字。クラフトビール人気を牽引するこのスタイルですが、「実はどんなビールなのか詳しく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
クラフトビールのIPA(英:India Pale Ale)は、インディア・ペール・エールの略です。その魅力は、ビールの原材料の一つであるホップを通常より大量に使用していることです。そのためコクのある苦味と濃厚な香りが堪能できます。またアルコール度数も高いため、ガツンとした飲み応えが欲しい方向けです。もともとホップを大量に加えた理由は、輸送中にビールが腐らないようにするためでした。
ビールの種類は、主にエールとラガーがあります。そしてこのIPAは、エールの一種になります。本記事ではIPAの歴史や魅力だけでなく、その種類や人気ランキングもご紹介します。ぜひ、参考にして下さい。
Contents
1. IPA(アイピーエー)とは
1-1. IPAの起源はイギリス生まれの輸出用ビール
IPA(インディア・ペールエール)は、その名の通りイギリスの植民地であったインドへビールを運ぶために誕生しました。18世紀後半は、イギリスからインドへの航海は数ヶ月を要する過酷なものでした。当時の冷蔵技術ではビールが腐敗してしまうため、防腐効果のあるホップを大量に投入し、さらにアルコール度数を高めることで、長旅に耐えうるビールが造られたのです。これがIPAの始まりです。
1-2. 鮮烈な香りと苦味のハーモニー

ホップ
IPAを語る上で欠かせないのが、その強烈な個性です。まずその圧倒的な香りです。グラスを近づけた瞬間に広がる、柑橘系やトロピカルフルーツ、あるいは松やハーブのような華やかな香りが特徴です。
また心地よい苦味もIPAならではです。大量のホップ由来のしっかりとした苦味があります。この苦味が後味をキリッと引き締め、深いコクを際立たせます。そして飲みごたえのあるアルコール度数です。一般的なビールが4〜5%程度であるのに対し、IPAは5.5~7.5%とやや高め。一口ごとの満足感が高いのもビール好きに人気が高い理由です。
2. 多彩な進化を遂げる多くの派生型
IPAは今やイギリスの手を離れ、アメリカを始め世界中で人気を博しています。そしてその過程で多くの派生スタイルが誕生しました。
2-1. ダブルIPA
ダブルIPAは、通常のIPAよりもホップとモルトを大量に使用した、非常に力強いビールスタイルです。ホップ由来の華やかな香りと、鋭く濃厚な苦味が特徴で、柑橘系やトロピカルフルーツのような風味を強く感じられます。アルコール度数は7.5%以上になることが多く、飲みごたえも十分です。一方で、モルトのコクが苦味を支えるため、意外とバランスの取れた味わいに仕上がります。IPA好きにとって、より刺激的な選択肢として高い人気を誇っています。
2-2. トリプルIPA
トリプルIPAは、IPAやダブルIPAをさらに強化した、非常に個性の強いビールスタイルです。大量のホップを使用することで、強烈な香りとシャープで厚みのある苦味を生み出します。柑橘系やパイナップル、樹脂のようなアロマが複雑に重なり、飲む前から存在感を放ちます。アルコール度数は9~12%前後と高く、ボディも重厚で一杯の満足感が非常に高いのが特徴です。その反面、造りには高い技術が求められ、バランスを欠くと飲みにくくなります。ホップ好きの上級者向けスタイルとして、クラフトビールファンから注目されています。
2-3. セッションIPA
セッションIPAは、IPA特有のホップの香りや苦味を楽しみながら、アルコール度数を低めに抑えたビールスタイルです。一般的にアルコール度数は3~5%程度で、軽快な飲み口が大きな特徴となっています。柑橘系やハーブのような爽やかな香りが立ち、苦味は控えめながらもIPAらしい個性はしっかり感じられます。長時間飲み続けられることから「セッション」という名前が付けられ、食事と合わせやすい点も魅力です。ビール初心者からIPA好きまで、幅広い層に支持されています。
2-4. アメリカンIPA
アメリカンIPAは、アメリカ発祥のホップ主体のビアスタイルで、力強い苦味と華やかな香りが特徴です。伝統的なイングリッシュIPAを基にしつつ、アメリカ産ホップを大量に使用することで、柑橘類やトロピカルフルーツ、松脂のようなアロマが前面に出ます。
アルコール度数はおおむね6〜7%、IBU(苦味指数)は高めで、ドライな飲み口が一般的です。モルトの甘みは控えめで、ホップの個性を引き立てる設計になっています。代表的なホップにはカスケード、シトラ、センテニアルなどがあり、クラフトビール文化の象徴的存在として世界中で親しまれています。スパイシーな料理やグリル料理との相性も良く、食中酒としても評価が高いスタイルです。
2-5. ヘイジ―IPA
ヘイジーIPAは、濁った外観が特徴的なIPAの一種で、「ニューイングランドIPA」とも呼ばれます。小麦やオーツ麦を使用することで、口当たりが非常に柔らかく、ジューシーな味わいに仕上がるのが特徴です。またホップ由来のトロピカルフルーツや柑橘系の香りが前面に出る一方、苦味は控えめで、従来のIPAが苦手な人でも飲みやすいスタイルとして人気を集めています。アルコール度数は5~7%程度が多く、香り重視のビールを楽しみたい人に最適です。見た目と味わいのギャップも魅力の一つです。
3. 【保存版】IPAに合う料理とは
かつては「苦すぎる」と敬遠されることもあったIPAですが、現在はクラフトビールシーンの主役です。また単「嗜好品としての楽しさ」もあり、ケータリングにも活用されています。でもここでは、そのIPAに合う料理をご紹介します。
3-1. 定番の「ガッツリ系」で苦味を楽しむ
IPAの強い苦味は、口の中の油分をさっぱりと流してくれる「カッター」のような役割を果たしてくれます。
3-1-1. 餃子

まず試してほしいのが、ビールのお供の定番である「餃子」です。 IPAのホップ由来の香りは、餃子に含まれるニラやニンニクといったパンチのある香味野菜と相性抜群。
また、豚肉のジューシーな脂をIPAの苦味がキリッと引き締めてくれるため、何個でも食べられてしまう無限ループが完成します。ラー油を多めにしたピリ辛のタレで食べると、さらにIPAが進みます。
3-1-2. 豚の角煮

和食の中でIPAと合わせるなら、こってりとした「豚の角煮」がイチオシです。例えば長時間煮込まれた豚の脂身の甘みと醤油ベースの甘辛いタレは、IPAの持つしっかりとした麦芽のコクと見事に調和します。
また「イングリッシュIPA」や「ダブルIPA」は、重厚なペアリングが楽しめます。
3-2. 香りを増幅させるスパイスとハーブの魔法
IPA特有のシトラスやトロピカルな香りは、スパイス料理やハーブを使った料理と合わせることで、より一層華やかに引き立ちます。
3-2-1. カレー

IPAペアリングの王道といえば、やはり「カレー」です。例えばホップの苦味はスパイスの刺激を強調し、ホップの香りはカレーの香辛料をより複雑に感じさせてくれます。
特にクミンやコリアンダーをたっぷり使ったスパイシーなインドカレーは合います。またココナッツミルクのコクがあるタイカレーとの相性も抜群です。一口飲むごとに口の中がリセットされ、再びカレーの旨味が鮮明に蘇ります。
3-2-2. 生春巻き

意外な組み合わせとしておすすめなのが、ベトナム料理の「生春巻き」です。エビや野菜を包んだ生春巻き自体は淡泊ですが、ポイントは「スイートチリソース」や「パクチー」です。
またパクチーの独特な香りとIPAのホップ香は、同じ植物由来の成分として非常に親和性が高いのです。しかもチリソースの甘酸っぱさが、IPAのフルーティーな側面を引き出してくれます。
3-3. 旨味と発酵の驚きのペアリング
「個性の強いIPAには、個性的な料理を」。そんな発想で選ぶと、意外な食材が最高のおつまみに変わります。
3-3-1. 鰹のタタキ

魚料理は繊細すぎてIPAに負けてしまいがちですが、「鰹のタタキ」は別格です。鰹特有の血の気が混じった濃厚な旨味と表面を炙った香ばしさは、IPAの力強い苦味と真っ向からぶつかり合います。
例えば薬味としてニンニクスライスやネギをたっぷり乗せることで、IPAの香りとよりリンクするようになります。さらに醤油に少しだけバルサミコ酢を混ぜると、さらに洋風なペアリングに進化します。
3-3-2. 納豆オムライス

「本当に合うの?」と驚かれるかもしれませんが、実は発酵食品同士であるビールと納豆は、隠れた名コンビです。特にふんわりと焼き上げた「納豆オムライス」は、卵のまろやかさが納豆のクセを包み込み、IPAとの架け橋になってくれます。
納豆のコクとIPAの苦味が重なることで、コーヒーのような奥深いロースト感を感じられることも。ケチャップの代わりにデミグラスソースを使うと、よりIPAのコクとマッチします。
3-4. 手軽に楽しむ至福のおつまみ
3-4-1. ガーリックバタートースト

シンプルながら最強のパートナーが、「ガーリックバタートースト」です。 バターの濃厚な脂肪分、ガーリックの食欲をそそる香り、そしてパンの焼けた香ばしさ。これら全てがIPAの要素と噛み合います。
厚切りのバゲットにたっぷりバターとニンニクを塗って焼き上げ、仕上げに黒胡椒を振れば、IPAのホップ感を最大限に引き立てる最高のアペタイザーになります。
4. まとめ
IPAは「インディア・ペールエール(India Pale Ale)」の略称で、クラフトビールを語る上で欠かせないスタイルです。防腐効果のあるホップを通常より多く使用する製法が大きな特徴です。
IPAの最大の魅力は、何といっても個性的な香りとしっかりした苦味です。例えば柑橘類やトロピカルフルーツ、松脂のような香りを感じるものも多く、一口飲むだけで印象に残ります。苦味は強めですが、モルトの甘みとのバランスが取れており、ビール好きにはたまらない味わいです。近年ではアメリカを中心に進化が進み、IPAには多くの派生型が生まれました。例えばダブルIPAやセッションIPA、ヘイジーIPAなど、同じIPAでも風味や飲み口はさまざまです。
現在、IPAはクラフトビールブームの象徴的存在として世界中で人気を集めています。またビールの奥深さや多様性を知る入口としても最適です。そして飲み比べをする楽しさも魅力の一つです。自分好みの味を探すのも、IPAの醍醐味といえます。









