星野リゾート他有名企業事例付!外国人採用の最前線模様とは!?

人口減少問題は、日本が直面している深刻な課題です。世界的に著名な投資家ジム・ロジャースの「日本の将来を考えた時、ものすごい勢いで子供を増やすか、移民を受け入れるか、とんでもないスピードで借金を減らすかしない限り、日本の長期低迷は不可避です」と指摘しているように、今の日本の経済を維持するためには外国人採用は避けることのできないテーマです。

今回ご紹介する企画書は、人口減という危機に直面する日本においてどう外国人採用に向き合うべきか、様々なヒントに満ちています。またP107以降に参考資料として、日本GE株式会社、味の素株式会社、株式会社LIXILグループ、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社、三井化学株式会社、双日株式会社、株式会社ローソン、株式会社星野リゾートなどの有名企業の外国人採用の取組み事例が掲載されているので、参考になると思います。

 

【外国人採用の求人状況】
外国人東京都関連の求人検索結果
外国人採用の求人|Indeed(インディード)
外国人の求人・転職・中途採用情報―doda
外国人 求人 日本最大級の外国人就職情報サイト NINJA

【外国人人材のマネジメント関係】
外国人を雇用するには?/外国人の募集から入社後の労務管理To Doリスト
現場での外国人マネジメント~5つの大事なこと・注意点とコツ~
マネジメント|外国人雇用のすべてがわかる!
日本就労者の本音 外国人材の定着率向上に必要なマネジメントやコミュニケーション法

【外国人材採用の成功事例】
外国人採用の成功企業事例7選!-HR Force
外国人の活用好事例集―厚生労働省
企業における取り組み事例|一般社団法人 留学生支援ネットワーク

【外国人採用のトラブル関係】
外国人採用にまつわるトラブルと対策まとめ―jopus.biz
外国人採用後にトラブルや問題に発展してしまう会社の7つの特徴

 

世界規模で優秀な人材を採用する味の素

 

【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2. 『平成27年度アジア産業基盤強化等事業(「内なる国際化」を進めるための調査研究)』から学ぶ
3. 表紙
4. 調査の目的と方法
5. 外国人材の能力を活用する労働環境作り
6. 外国人材の能力を活用する労働環境づくり
7. 外国人材を惹きつける生活環境づくり及び在留資格に関する課題
8. 終わりに
9. 参考資料

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、日本経済にとって重要なテーマである外国人採用というテーマについて、興味深い指摘と豊富な事例が掲載されています。重要なキーワードを、以下に挙げます。

・世界の人材獲得競争
・新卒一括採用
・長期雇用と年功賃金
・仕事範囲の不明確さ
・キャリアパスの不透明さ
・長時間労働問題
・留学生の関心喚起と適切なマッチング
・海外大学からの採用
・入国管理制度の現状と課題

 

2. 『平成27年度アジア産業基盤強化等事業(「内なる国際化」を進めるための調査研究)』から学ぶ

では、EYアドバイザリー株式会社が作成した外国人採用をテーマにした企画書を以下具体的に見ていきましょう。

3. 表紙

第1章 調査の目的と方法
1.1 調査の目的
ヒト、モノ、カネ、情報が国境を越えて激しく行き交い、ITやバイオ・テクノロジー等の技術革新が急激に進む現代社会においては、企業を取り巻く競争環境も変動が激しい。

そのため、欧米をはじめとする世界のグローバル企業は、その高い競争力に慢心することなく、常に新たな競争環境に対応すべく、マネジメントのあり方を再考し、変革に取り組んでいる。また、新興国企業はその急速な経済発展と技術力の向上により、日本企業の競争相手として台頭してきている。

日本企業の多くはこれまで大規模で安定的な国内市場を背景として、「ガラパゴス」とも揶揄されるような、グローバルな競争とは一線を画した独自の商品開発や経営を続けてきた。しかし、人口減少及び少子高齢化に伴う国内市場の縮小を前に、グローバル市場での競争環境に身を投じる必要性がますます高まっている。激化するグローバルな競争環境における競争力を維持・強化するため、様々な取組が求められているところである。

高度外国人材の受入れは、外国人材がもたらす価値観や情報、スキル等の多様性による、イノベーションの創出等、日本企業の競争力強化に資するものと考えられる。しかしながら、我が国は他の主要先進諸国と比較して外国人材の受入れにこれまで概して消極的であり、企業も後述するように「メンバーシップ型雇用」と言われるような独特な雇用慣行を背景に、主に国内の労働市場から人材を調達してきた経緯もあることから、世界的な人材獲得競争において他国企業より出遅れていると考えられる。

こうした遅れを取り戻すためには、企業における外国人材の能力を活用する労働環境づくりから、国の入国管理制度に至るまで、さまざまな領域で改善のための取組が必要であるとともに、逆に外国人材に対してアピールできる点についてはより積極的にアピールすることが必要である。これら官民がなすべきことを明らかにするため、本調査を実施する。

1.2 調査の背景
1.2.1 世界のグローバル企業の現状
(1)グローバル企業における人事の機能
世界の産業は2010年代に入り大きな転換期を迎えている。ドイツでは2011年から産学官による製造業の改革プロジェクト「インダストリー4.0(第4次産業革命)」がスタートした。

米国では2012年、GEが「インダストリアル・インターネット」として“製造業のサービス化”を打ち出し、ものづくりの大変革が進められている。欧米のグローバル企業は、これらに代表されるようなグローバルなビジネス環境の変化にいち早く対応し、自社の競争力をさらに高めるために、人事の持つべき機能を見直し、組織構造や評価制度の改革等を進めている。

日本企業における標準的な人事部は、人事のプロセスごとに発生するタスクをベースに人事組織が形づくられているといわれる。一方、欧米のグローバル企業は、人事は本来、どのような役割を担うべきとの観点から、人事の持つべき機能の見直しを進めてきた。

人事は「事業、ビジネスリーダーにとって信頼できるアドバイザーやコンサルタントとしての役割」が求められ、グローバル企業の人事は、概ね4つの機能に集約されつつある。なかでも人事機能の中心とされるのはビジネスパートナーであり、各事業部門の成功を支えるパートナーとしての役割である。

◆グローバル企業の人事に求められる4つの機能
・各事業部の成長と戦略実行を、人材面から支えるビジネスパートナー
・組織風土、経営理念の浸透や、将来の経営幹部の育成など全社一気通貫で行う活動(イニシアティブ)を推進する組織開発
・採用のプロ、処遇制度構築のプロ、能力開発プログラム設計のプロ、など、具体的な個別課題に特化したソリューション集団をまとめた専門センター(センター・オブ・エクセレンス)
・給与計算や給与支払い業務、入退社の管理などの事務部門を統括するオペレーションズ

(2)人事評価制度の見直しの動き
前述のように、グローバル企業では人事部はあくまでアドバイザーであり、実際に人事権を持ち、その責任を負うのは、各事業部のリーダーである。リーダーは、全社の経営戦略に基づいて事業計画を策定するとともに、それを達成するために人材の採用・育成計画の最適化を行っている。

また近年、急速な事業環境の変化に追随すべく経営戦略の転換を進める欧米企業では、人事評価制度の見直しが始まっている。例えば、目標管理制度(MBO)はこれまで多くの企業で導入されてきたが、これを廃止する欧米企業が増えている。

その背景には、評価点を上げるために目標設定が低くなる、仕組みを回すために時間がかかる、評価のための評価になるといったことから、急速な事業環境の変化への対応の遅れや、イノベーションの創出の阻害等の懸念がある。MBOによる画一的な評価から脱し、迅速にビジネスを展開するため、決められた成果の達成度を評価するのではなく、ビジネスのリーダーがメンバーと適切にコミュニケーションを図ることで、ビジネスに対する付加価値を評価できるよう、MBOをコミュニケーションのツールとして活用するようになってきている。

例えば米GE は、これまで多くの日系企業が参考にしてきた人材評価ツール「9(ナイン)ブロック4」を含む、従来の人事評価制度をやめる予定である。

こうした、人事制度の変革には、多大なコストが掛かる一方で、変革の効果の定量化は難しい。それでも世界のグローバル企業は、事業環境が急速に変化するなか、自社にとっての最適な人事制度のあり方について模索し、変化しようとしている。

◆日本GEにおけるカンパニーのファンクションリーダーの役割と人事評価制度の見直し
・各カンパニーのファンクションリーダー(財務部・営業部等の部門長)にオーナーシップを持たせ、カンパニーの経営戦略に基づく事業計画・採用計画の立案、人材の採用・育成等すべてを任せている。各ファンクションには人事部からHRパートナー、財務部からファイナンス・パートナーがついて、ファンクションリーダーに対して人事面、財務面からのサポートを行っている。
・ファンクションリーダーに人事権を持たせ、人材育成、優秀な人材の見極め方、人材に要するコスト等について、自身の問題として考えさせている。人事はHRパートナーとして各部門を担当する。人事のプロとしてアドバイザーに徹し、積極的に現場や会議の場などに参加してビジネスと社内の人材に対する理解を深め、ビジネスの成功に貢献するよう取り組んでいる。
・デジタル・インダストリアル・カンパニーへの変革を加速するなかで、人事制度の見直しを行っている。人材評価ツールによる評価レーティング付けをやめ、日々の業務のなかで上司と部下が対話することで、一定の評価を定めていく方法に切り替える。急成長しているITスタートアップ系企業をベンチマークし、硬直化した評価の仕組みからの脱却を図ろうとしている。

1.2.2 世界の人材獲得競争における日本企業の現状
本項においては、世界の人材獲得競争における日本の現状について分析するため、主要国の学生、MBA在学生、研究人材の3つの高度人材の就業先について分析するとともに、日本に留学している外国人材の日本企業への就職実態についても明らかにする。

(1)海外の高度人材の獲得と日本の現状
①主要国の学生の獲得と日本の現状
世界主要12カ国の理工系(IT/技術)学生及びビジネス系学生を対象としたUniversum社の調査を主に参考とし、日本企業の現状を示す。Universum社の調査によると、就職志望先企業トップ50社のうち、日本企業は理工系で3社、ビジネス系で2社にとどまり、国別企業数で比較すると、日本はそれぞれ4位と6位であった。

企業の総収入をもとに世界の企業をランキングした Fortune Global 500に含まれる企業数で日本は世界第3位である点と比較すると、下位にとどまっている。

◆主要国の学生が選んだ就職志望先企業トップの国別企業数
【理工系】
1. 米国/26社
2. ドイツ/8社
3. オランダ/4.5社
4. 日本/3社
4. フランス/3社
6. 英国/2.5社
7. 韓国/1社
7. スイス/1社
7. スウェーデン/1社
7. 中国/1社
【ビジネス系学生】
1. 米国/23社
2. 英国/7社
3. ドイツ/6社
4. オランダ/4社
5. スイス/3社
6. フランス/2社
6. 日本/2社
8. 韓国/1社
8. ベルギー/1社
8. アイルランド/1社
【参考/Fortune Global 500に含まれる国別企業数】
1位 米国/128社
2位 中国/98社
3位 日本/54社
4位 フランス/31社
5位 英国/29社
6位 ドイツ/28社
7位 韓国/17社
8位 オランダ/13社
9位 スイス/12社
10位 カナダ/11社

また、世界主要国の理工系・ビジネス系の学生の就職志望先企業をみると、トップ50社に入っている日本企業はソニー、トヨタ自動車、日産自動車の3社でBtoC企業に限られている。

③研究人材の獲得と日本の現状
研究人材の獲得における日本の競争力については、エルゼビア社が提供する、Scopus(科学・技術・医学・社会科学・人文科学の抄録・引用文献データベース)に論文が掲載されている研究者(scientific authors)の移動実績を用いて分析した。

研究者の移動とは、研究者が論文を出版した際の所属がA国からB国の研究機関へと変わったことを指し、その流出入数の差(各年の流出入数の差の合計)を示したものである。

1999~2013年の間に、米国・中国には 9,000人超の流入超過である一方、日本は約8,700名が流出超過となっている。研究者のグローバルな流動の中で、日本からは研究者が流出するばかりで獲得できていない。諸外国への流出が大幅に上回り、米国・中国に研究者が集中する傾向にあることがうかがえる。

学術論文の被引用回数は、研究者の能力をはかる上でひとつの目安となることから、被引用回数を、研究者の所属機関の所在国ごとに集計することは、優秀な研究者の獲得状況を比較する手がかりとなる。最近10年間の論文の引用動向データを収録するトムソン・ロイター社のEssential Science Indicatorによると、被引用回数が最も多い、すなわち質の高い研究者が多く集まっていると推察されるのは米国、次いで英国、ドイツ、中国となっており、日本は世界第6位にとどまる。

(2) 外国人留学生の就職における日本の現状
外国人留学生については、約6~7割が日本での就職を希望するものの、実際に就職できるのは約3割であり、日本を理解している外国人材を国内に留めることができていない。

一般社団法人日本国際化推進協会が実施した留学生及び元留学生を対象とした調査では、日本に住むことについては8割以上が魅力的と回答している一方、日本で働くことについては約5割が魅力的でないと回答している。

同調査では、日本企業で働いた経験のある元留学生も調査対象として多数含んでいるが、こうした日本企業を良く知る外国人材も、日本企業で働くことに魅力を感じていないことから、日本企業における外国人材の活用には課題があると考えられる。

1.2.3 調査の仮説
前項で示したとおり、日本は人材獲得競争において、欧米、アジア諸国と比較し、優位にあるとは言えない。本項においては、今後、日本がより外国人材を呼び込み、多様な人材が活躍できる国とするため、企業および公的機関が改善すべき3つの主要な課題をあげるとともに、調査方法について示す。

(1) 企業における課題
日本企業において外国人材の獲得と定着が難しい要因として、留学生、企業の双方からみた課題を検討した調査では、以下の点が指摘されている。

◆外国人留学生の就職及び定着に関する主な課題
【就職に関する課題】
・留学生は、日本の就職活動の仕組みを理解していない
・(特に中小企業は)募集の仕方がわからない
・留学生は大企業や大都市での就職志向が強く、地方圏、中小企業においては採用が困難
・企業は高い日本語能力を求めるのに対して、留学生はそれへの対応に苦慮している
・仕事の内容やキャリアパスについて、企業は留学生にうまく説明できない
【定着に関する課題】
・キャリアパス等に関して、企業と外国人社員との間にギャップがある
・配属される職場が、外国人社員の受入れに慣れていない
・組織のビジョンの共有が難しい
・定着する外国人は日本人と同質化してしまい、職場の活性化等につながらない
・(初めて外国人を採用する企業は)在留資格等の行政手続きがわからない

外国人留学生は、日本の新卒一括採用への理解が浅く、中堅・中小企業に十分アプローチできておらず、また、企業側は明確な業務範囲やキャリアパスを好む外国人材に対して、自社の仕組みなどを十分に説明できていないことが分かる。

キャリアパスについては、入社後の定着に関する課題としても指摘されている。日本企業の雇用慣行が外国人材の就職や定着を阻害しており、ダイバーシティを高める効果を十分に発揮できていないことがうかがえる。

(3) 本調査で検討する主要な課題
以上の既存調査結果などを踏まえ、本調査では、以下の3点が日本企業において外国人材の獲得・活用を困難にしている主要な課題と考え、これらについて、次項で述べる調査・検討手法を通じて検討する。

課題1:日本的労働環境・慣行と外国人材の就業観とのギャップ
課題2:中堅・中小企業と外国人材の採用段階における志向のミスマッチ
課題3:入国管理制度・生活環境のさらなる改善が必要なこと

また、外国人材を受け入れている企業は、外国人材の受入れ体制(人事制度の傾向)と、経営戦略及びそれに応じて求められる外国人材のタイプが明確か否かによって、以下の3タイプに分類できる。

上図の第一の軸は企業規模に関する分類で、大企業か、中堅・中小企業かという分類である。
第二の軸は、企業の経営・事業戦略に基づき求めている外国人材像が明確か、不明確かという分類である。
上記二軸から、企業を以下の3タイプに分類する。

タイプⅠは、必要な外国人材像が明確な大企業であり、グローバルで共通化された人事制度の導入など、グローバルな人材活用への取組が進んでいる企業である。この類型には、一部のグローバル企業や、オーナー色が強い企業が該当すると考えられる。

タイプⅡは、必要な外国人材像が明確な中堅・中小企業であり、海外事業の展開・拡大に乗り出している地方の中堅・中小企業等が該当すると考えられる。このタイプの企業においては、上述の課題2(中堅・中小企業と外国人材の採用段階における志向のミスマッチ)への対応が重要であり、この点は第3章で検討する。

タイプⅢは、必要な外国人材像が不明確な大企業である。既存の人事制度に外国人材をあてはめ、総合職として採用している大企業が該当すると考えられる。このタイプの企業においては、上述の課題1(日本的労働環境・慣行と外国人材の就業感とのギャップ)が発生しやすく、その対応が重要である。この点は第2章で検討する。

なお、課題3(入国管理制度・生活環境のさらなる改善が必要なこと)はすべてのタイプに影響する社会・制度に関する課題であり、この点は第4章で検討する。

1.3 調査の方法
1.3.1 有識者ヒアリング及び研究会の開催
学識経験者、日系企業・外資系企業の人事担当者、中小企業経営者、民間研究機関、日本社会で活躍する外国人材他により構成される研究会を3回開催した。研究会は、様々な領域の専門家や企業の多面的な見地から、自由にアドバイス、ご議論いただく場として設定した。

【研究会委員】
青山 伸悦/日本商工会議所 理事 事務局長
石原 直子/リクルートワークス研究所 主任研究員
入山 章栄/早稲田大学大学院商学研究科 准教授
エンピ・カンデル/株式会社トモノカイ 留学生支援事業部門
大津留 榮佐久/公益財団法人福岡県産業・科学技術振興財団 プロジェクトディレクター
佐野 哲/法政大学経営学部 教授
白木 三秀/早稲田大学政治経済学術院 教授 <座長>
谷本 美穂/日本GE 株式会社人事部 組織人材開発リーダー
ツィスマリ・クシュタシュヴィリ/一般社団法人日本国際化推進協会 事務局長代理 兼 留学生支援室長
龍造寺 健介/本多機工株式会社 代表取締役社長
山田 泰雄/株式会社日立製作所人材統括本部 部長代理
(五十音順、敬称略)

◆ヒアリング内容
1. 外国人を採用する理由
・外国人材を採用する理由、貴社が必要とする外国人材像
・外国人材採用を始めた動機、これまでの経緯
2. 外国人材受入れの現状と課題、今後に向けた意向や要望
・採用方法(貴社の取組、地域での取組)
・定着に向けた課題(人事制度、労働慣行・職場環境等)
・制度・生活環境に関する課題(ビザ、医療、子供の学校等)
3. 外国人材受入れのメリット、成果
4. 海外事業所・現地法人における採用活動・人事制度
(現状、これまでの経緯、今後の課題)
5. 国の制度に関する課題、要望(在留資格、社会・生活環境等) 等

1.3.3 外国人材への調査
外国人材受入れの問題点に関する、外国人材側の見解を把握するため、外国人材に対するインタビュー(30名)及びアンケート調査(127 名)を行った。以下に該当する、国内在住及び海外在住の外国人材を対象とする。

・2015年12月現在において外国籍を有する者及び過去3年以内に外国籍を有していた者
・日本企業に就業中の者、日本企業に一度就職して離職した者、日本企業でインターンシップ等を行ったが日本企業に就業しなかった者

インタビュー・アンケートの調査結果、対象者のプロフィール等については、「第6章 参考資料」に掲載する。なお、第2章から第 4章中に記載している外国人材ヒアリングの【 】内の番号は、6.3.4のインタビュー参加者の属性と対応している。

第2章 外国人材の能力を活用する労働環境づくり(主に大企業のケース)
本章では、大企業における外国人材受入れに係る課題と、外国人材受入れを先行的に進める企業におけるそうした課題への対応方策について、企業や外国人材へのインタビュー調査結果等から整理し、それら及び研究会での検討を踏まえて、今後の政策的対応について提言する。

2.1 大企業における課題~日本的労働環境・慣行(メンバーシップ型雇用)と外国人材のミスマッチ~
第二次大戦後、特に高度経済成長期以降の日本企業(特に大企業)においては、新卒一括採用、終身雇用、年功賃金を前提とする雇用形態が一般的であった。

こうした雇用形態は、企業への忠誠心が高まる、同質性が高く相互の理解も深まった社員間の団結が高まる、仕事の中身も場所も時間も限定されずに企業の指示通りに働く「モーレツ社員」を多数抱えられる、といった(企業にとっての)メリットがある。こうしたメリットは、企業経営が目指すべき方向が明確な欧米キャッチアップ型の時代であり、かつ経済の拡大が続き慢性的に労働者が不足していた時代には、日本企業の競争力強化に有効であったと考えられる。

このような日本型雇用の特徴は、職務の範囲を限定することなく、その企業の一員(メンバー)となる雇用契約を結ぶものと考えられる。そこでこうした雇用形態を、本報告書では「メンバーシップ型雇用」と総称する。これに対し、アジアを含む他国に本社を置く外資系企業は、職務の内容を明確に定めた雇用契約を結ぶことが一般的である。本報告書ではこれを「ジョブ型雇用」と総称する。メンバーシップ型雇用のメリット・デメリットは次のとおりである。

以下では、このような日本的労働環境・慣行と外国人材のミスマッチが外国人材受入れの主要な阻害要因になっているという観点から、5つの課題を紹介する。

2.1.1 新卒一括採用に伴う課題
メンバーシップ型雇用においては、「新卒一括採用」を行うことが一般的である。日本経済団体連合会は、多くの企業が新卒一括採用を行っていることを前提として、日本国内の大学・大学院等に在籍する大学卒業予定者・大学院修士課程修了予定者を対象とする「採用選考に関する指針」において、採用選考活動開始時期、採用内定日について定めている。

これは、学業への影響や企業間の公平性から、採用活動の時期を限定するものである。こうした新卒一括採用の仕組みは、留学生や海外大学生に馴染みのないものであり、日本企業に就職するうえでの阻害要因の一つとなっている。例えば、外国人材へのヒアリン
グ調査では、外国人留学生が日本の就職活動のスケジュール等を十分に理解していないことや、修士課程から来日した留学生は、来日から就職活動開始までの期間が短いことから、活動が遅れ、十分な就職活動ができていない等の意見が提示された。

◆外国人材ヒアリングより ※【 】内の番号は、6.3.4 のインタビュー参加者の属性に対応
・修士課程の場合は入学してすぐに就職活動が始まる。また2年目には修士論文の執筆と並行して行わなくてはならないのが大変だった。日本人学生は就職活動のスケジュールを把握しているが、留学生の私はそれを知らなかった。就職活動の解禁時期というものがあることを知ったのは働き始めてからである。
・大学院の2年間ですべての単位を取って論文を出すのは大きなプレッシャーなので、就職活動をしている余裕はなかった。そのため、就職活動を始めたのは卒業間際であった。

新卒一括採用においては、就職活動の期間が限定されることから、企業と学生の間で十分な相互理解を図る時間が取れない。そのため、外国人学生にとっては、何が評価されているのか明確でなく、就職に不安を抱えることになりがちである。また、新卒一括採用では、学生時代における専攻や経験よりも人材の「ポテンシャル」を重視する傾向がある。そうした「ポテンシャル」評価は、学生の専門性に基づかないため、就職後にミスマッチが明らかになりがちである。

◆外国人材ヒアリングより
・面接の時間が短い。その数分だけで、人の良さを正しく判断できているのか、疑問に思う。
・面接の際、人事担当者にプログラマーとしての経験がゼロとして扱われたことに納得がいかなかった。コンピュータ専攻の博士課程であれば、海外の企業ではプログラマーとして扱われるのが普通。

また、特に外国人留学生のなかには例えば母国等での就業経験があるなど、その経歴は多様である。しかし、多くの日本企業においては、大学卒業直後の就職においては一律に新卒一括採用の対象とされ、入学前の経歴は原則として考慮されない。そのため、既に数年の就業経験を持つ外国人材であってもその経歴や経験は考慮されず、他の新卒採用者と同等の処遇を受けることになり、そのことが外国人材の不満を招き、定着を阻害することが懸念される。

研究会委員のコメント
・留学生のなかには、母国で一度就職し、貯金で貯めた「自費」によって日本の大学及び大学院に留学するケースが増えてきている。
・就業経験を積んだのちに日本の大学で博士課程を取得した留学生でも、日本企業に入社する際は「新卒採用」の対象となり、過去の就業経験が評価されない処遇を受けることがある。
・諸外国においてはインターンシップを1年以上経験している学生や、兵役を経験している留学生もいる。大学等において「飛び級」がある国もある。このような多様なバックグラウンドを理解せずに、一律に新卒採用として採用することは、その後の離職リスクを高めるのではないか。

多くの企業が新卒一括採用で人材を獲得し、その人材を長期雇用するため、日本の中途採用市場は小さい。そしてそれ故に、企業には新卒一括採用の時期を逃すと適切な人材を必要数獲得することが困難になるとの懸念があり、新卒者を大量に一括採用することが望ましいと考える。こうした循環が生じていることが、新卒一括採用が日本企業の人材獲得の中心となっている背景と考えられる。

2.1.2 長期雇用及び年功賃金に伴う課題
メンバーシップ型雇用を取る日本企業においては、社員の「ジョブ」に基づく雇用ではなく、「メンバー」としての終身雇用(長期雇用)であることを前提とする。

そのため処遇は、職務の内容や実績に基づくだけでなく、個人の属性(年齢、資格等)に基づいて決定される。つまり、年齢や勤続年数に応じて給与は増加していく傾向があり、入社してから高い給与を獲得できるまでに時間を要することも特徴である。また、全社員(特に若手社員)には等しくポテンシャルがあると考えられ、個人の能力よりもチームワークによる業績が重視されることから、個人の成果に応じて社員の間に処遇差をつけることは一般的でなく、昇進スピードが遅いことも特徴である。

一方、(若い)外国人材は、日本企業において昇給や昇格が遅い点、能力や成果に応じた評価が行われない点について、不満を感じている。外国人材は昇給・昇格に時間がかかることを望まず、早い段階で能力や成果に応じた正当な評価を受けて高いポジションに配属され、自らの能力や経験を活かして活躍する機会を得て、高い給与を獲得することを望む傾向が強いが、そうした点で多くの日本企業は彼らの期待に応えていないといえる。

さらに、入社前の段階で昇格や昇給について明確に説明していないことも、外国人材の不満が高まる背景にあると考えられる。

外国人材ヒアリングより
・会社の昇進制度に対して、不満がある。成果主義を導入してほしい。昇給に時間がかかる点、長期間休職していた人や仕事の質が低い人も年功序列で昇進している点、賃金の増加の見込みに対して不満・不安がある。

2.1.3 ジョブの範囲が不明確であることに伴う課題
ジョブ・ディスクリプションを定義しないのは、メンバーシップ型雇用の大きな特徴の一つである。

職務を過度に明確化することは、個人よりもチームとして仕事することを重視する点や、高い専門性よりも広く柔軟な総合性を人材に求める点など、メンバーシップ型雇用が目指す組織像・人材像と相容れないことと考えられる。

特にタイプⅢ企業(既に海外展開しているが、各現地法人の独立性が高い大企業)では、「今後のグローバル展開に必要」や「ダイバーシティの向上が必要」というような抽象的な位置づけで外国人材を採用しているため、企業が外国人材に期待する役割を説明することができない。

こうした状況下にあっては、外国人材自身が期待される役割を理解しておらず、また配属先の部署と人事部との間で外国人材をどう活用するかのコンセンサスも得られていないため、結果として、外国人材が思うような成果をあげられず、会社への不満
を生じさせることになる。

外国人材ヒアリングより
・就職活動時の面接では自分が話すだけで、企業担当者が何を自分に望んでいるのか、まったくわからなかった。そして現在、「主任」の職位であるが、自分の役割から仕事の進め方まで、すべて明確ではない。

2.1.4 キャリアパスが不透明であることに伴う課題
メンバーシップ型雇用においてはジョブに基づいて雇用されるのではないため、組織の状況に応じて多様なジョブに対応することが求められ、ジョブ・ローテーションが行われることが一般的である。

それゆえ、キャリア形成や人材育成は社員ではなく企業主導で進められることとなり、キャリアパスが不透明となるほか、キャリアを自分で決定できるという感覚が低いため、外国人材の納得感が低くなりがちである。

外国人材ヒアリングより
・事前に入社後の育成やキャリアパスについての話はなかったが、知りたかった。入社後も将来のキャリアパスが明確に示されないため不安を感じる。日本に留学した友人にもキャリア・プランが見えなくて辞めようと考える人が多い。中国の企業で働く友人にはキャリアパスが明確に示されている。
・現場が忙しくなると、3週間ほど前に突然異動を命じられる。異動の意図について会社から説明はない。人事部とキャリアに関して相談する機会もない。
・ジョブ・ローテーションが頻繁にあったため、キャリア・パスが見えなくなった。

2.1.5 長時間労働に伴う課題
メンバーシップ型雇用においては、個人が特定の職務を遂行するということではなく、企業の一員として働くことが基盤となった雇用形態であり、チームとしての一体性が強調されがちである。そのため、他のメンバーが残業しているなか、早く仕事を終えることは、チームとしての一体性を崩す行為と認識され、チームのメンバーとして認められない、といったメンタリティが生じる。

こうしたことから、「上司が帰るまでは、部下は帰らない」といった職場の雰囲気や、遅くまで残業していることが上司から評価されるという風潮を生みがちである。このような残業のあり方は、外国人材にとっては非合理的な長時間労働として、理解し
がたいものとされる。また、日本企業が長時間労働であるというイメージは、外国人材の日本企業への就職の阻害要因ともなっている。

外国人材ヒアリングより
・忙しく、残業が多かった。夜遅くまで仕事するのは当たり前で、誰に言われるでもなくみな遅くまで働いていた。社員はみな、無理をして働いていたように思う。仕事が終わっても周りの日本人社員が残っていると帰りづらく、ストレスになった。
· 先輩が帰らない限り、自分も帰れない職場の雰囲気だった。

2.2 企業における対応策
前項で示したメンバーシップ型雇用の課題は、これまでも指摘されてきたところであり、外国人材の採用・活用に取り組む先行企業では何らかの対応策が取られていると考えられる。本項では、そうした課題に対する対応策について、企業へのヒアリング調査をもとに示すとともに、それを踏まえたさらなる課題についても検討する。

2.2.1 新卒一括採用に伴う課題への対応
新卒一括採用に伴う課題としては、就職活動期間が限定されることから、企業と外国人材の双方がお互いを十分に理解できない点が指摘されている。こうした課題に対して、外国人材の採用に取り組む企業では、短期または長期間のインターンシップを実施している。

こうした企業では、インターンシップを実際の業務や企業文化、日本企業での働き方などについて理解を深める機会として活用している。また、外国人材へのアンケート調査によると、実務体験が中心のインターンシップは、企業に入ってからの具体的な仕事内容や雰囲気を知る場として評価されている。つまり、インターンシップは、企業と外国人材の双方がお互いを理解するうえで有効な手段と言える。

◆企業ヒアリングより
・エンジニアについては、職種・部門のポジションごとにインターンシップ・プログラムを設け、国内外の大学からインターン生を受け入れている。期間は最低1ヶ月以上、3ヶ月以内で、当社としては業務上必要な成果が得られ、学生は働きながら高いスキルを学ぶことができ、両者にwin-winの関係が成り立っている。インターンシップを通じて、日本企業の良さや労働環境、生活環境などを体験してもらう方が、世界の優秀な人材の獲得につながると考えている。特に欧米からはインターンシップなしには採用は難しい。【F社】
・留学生向けのインターンシップ・プログラムは、技術職がメインであり、受入れ先は社内のデザイン部門や研究所で、期間は 1-2ヶ月程度である。主に大学や公的機関が主催しているプログラムに参加する形で実施している。留学生が、自身の持っている技術やデザインのスキルが、企業で実際にどのように使えるのかを見てもらうことが目的である。デザイン部門・研究所等から求人に近い形でリクエストを出してもらい、それに基づいてプログラムを設計しているため実践的であり、会社側と留学生で互いの理解も進む。【サラヤ】
・海外からの採用は、特にミスマッチが生じやすいと考えている。そこで日本企業や日本という国について体験して理解してもらうため、特に日本での生活経験、渡航暦がなく、日本語でのコミュニケーションに難のある学生を対象として、インターンシップを実施することにしている。期間は4週間で、費用(日当、家賃、携帯代、交通費等)は同社が負担、三食の食事代相当の日当を支給するが、給与は出さない。初めてこのインターンシップの受入れを行ったときは、英語でのコミュニケーションが前提となるため、負担が大きいとの考えから社内の抵抗が大きく、受入れ部署の開拓に苦労したが、実際の受入れを通して、日本人とは異なる人材の価値(モノの見方、思考プロセス、発想等)が認識されたことにより、2度目以降の受入れでは受入れ希望部署が大きく増加している。【D社】

他方、長期のインターンシップ実施に当たっては、現場の受入れ負担が大きいことや、在留資格面での課題(第4章参照)も指摘されている。今後、インターンシップをより広く活用していくためには、企業の負担感の軽減が必要である。こうした負担感が大きい背景には、インターンシップのメリットが実感できないことがあげられる。

現状ではインターンシップは、学生の就業体験を目的としており、採用に直結しないことが原則7とされている。つまり、労力を掛けて受け入れた学生を自社で採用できるかわからないため、インターンシップの受入れはコストとして認識されてしまうのである。

◆企業ヒアリングより
・IT業界は変化のスピードも速いため、早い段階で育成を行って一人前の社員として活躍してほしいと考え、給与カーブの立ち上がりを比較的早い段階に設定している。30~40代から給料を緩やかに上がるようなカーブでは、人材獲得が難しい。【F社】
・いわゆる年功制は撤廃しており、一般層には3階層、マネージャー層には2階層に分かれるのみである。各階層の中で2~3年程度で期待される専門性を発揮できるよう、成長曲線を描いている。実力がある社員なら速いスピードで昇格できる。【B社】
・職階の数が多く、非管理職(一般職)についてはすべての職階に昇進試験があるため一つずつ上がらなければならず、マネージメント職までの昇進のスピードは遅い。特に外国籍人材はキャリアパスが見えないと感じて辞める人もいるため、現在、人事制度を変える必要性を感じている。外国籍人材からは、昇進が遅いために母国の同年代の学友等との役職の差や年収の差を懸念する声も出ている。従って、優秀な人材がもっと早くマネージメント職に就けるよう、階級をいくつかまとめることも検討課題としている。【C社】
・特に海外からの直接採用者に関しては、新卒採用と同じ処遇で正社員として採用しているため、今後、欧米系企業との待遇の差が、彼らの不満の種になる可能性が懸念される。【E社】
・新卒採用者については、4月の入社以降、UFLP(「ユニリーバ フューチャー リーダーズ プログラム」:新卒採用者を管理職として育成するための世界共通のプログラム)に沿って、OJT、OffJTを含む原則4年間の集中的なトレーニングが行われ、短期の海外赴任 (STA:Short-Term Assignments)もしくはグローバルのプロジェクトに参加する機会が与えられる。【ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス】
・学部の新卒採用の場合、入社後約10年間は職能資格をベースとした制度が適用され、キャリアに差がつきにくい。外国人社員は短期間でのキャリアアップを望む傾向にあるが、このような会社の方針については、採用時から繰り返し丁寧に説明することで、外国人社員の認識とのギャップの解消に努めている。例えば、エンジニアにとって、海外のプラント建設に携わることは憧れであるが、その派遣者の選定にも年次が重視される傾向にある。そのことに外国人エンジニアが不満を持ったとしても、職場の育成方針を丁寧に説明し、納得してもらうようにしている。また「同期社員は大切な仲間である」とのメッセージを繰り返し伝えており、日本人社員が良き相談相手となることで、外国人社員が同社での働き方に対して理解を深めることを期待している。【三井化学】
・外国人社員との雇用契約は、正社員や契約社員等、人によって条件は異なるが、基本的にポジションの要件に基づくものである。特定のプロジェクトに採用するケースでは、雇用期間はプロジェクト期間となる。有期雇用のポジションは、概して本人のパフォーマンスが会社の業績に大きく影響する重要なポジションであり、処遇条件も高くなる(ハイリスク・ハイリターン)。【LIXIL グループ】
・外国人材は在留資格の期限に合わせた有期雇用としており、形式上は年に一回、契約を結ぶ形にしている。1年ごとに面接をして、過去1年間を振り返ったうえで次年度の目標を設定する機会となっている(同様の面接は日本人正社員についても実施)。ただし長期雇用という思いで雇用しているということは伝えている。【本多機工】
・外国人社員は全員、入社後3年間は1年更新の嘱託契約とし、その後双方が合意すれば正社員となることとしている。嘱託契約であること以外は、処遇や育成・配属など、すべて正社員と同等である。1年ごとの契約更新の際に配属先の上司が継続の意思を確認するほか、3年後に正社員に切り替わる際に、上司と面談をして継続の意思を確認するとともに、今後の働き方について話し合う。外国人社員の場合は特に、日本企業における働き方やキャリア形成の時間軸について、理解し納得したうえで働き続けるのか確認が必要であり、それを定期的に確認して合意する機会をもつことが重要という考えが背景にある。【G社】

また、中堅・中小企業においては、個々の人材を経営者自身が評価して登用したり、昇進させたりするこで、外国人材に対して柔軟に対応している企業もみられた。

◆企業ヒアリングより(※中堅・中小企業の取組み)
・営業職に関しては業績が上がれば基本給が上がり、受注や売り上げに対する手当を支給し、さらには報奨金も支給するなど、成果主義的要素を取り入れた評価制度としている。【本多機工】
・国籍とは関係なく、高度な職に就く人材であれば給与の設定は柔軟に行い、優秀であれば理由を示して昇進させている。【サラヤ】

2.2.3 ジョブの範囲が不明確であることに伴う課題への対応
外国人材の採用・活用に取り組む企業では、企業の方針として外国人材に対してどのような役割を期待するのかを明確にし、それを外国人材に伝えることで、離職を防止している企業や、(海外からの)外国人材採用にあたって例外的にジョブ・ディスクリプションを示している企業があった。

タイプⅡの企業(海外事業の展開・拡大に乗り出した地方の中堅・中小企業)においては、具体的な進出地域や事業領域を見据えたうえで、その専門性を備えた人材を求めており、比較的明瞭な人材像が設定されており、採用段階及び採用後に外国人材に対して丁寧な説明が可能である。

こうした取組はあるもの、前項で述べたとおり、ジョブ・ディスクリプションの定義は、メンバーシップ型雇用が目指す組織像と相容れない部分があることや、企業が変革段階にあっては、外部環境の変化に対応するため、職務が流動的になりがちであることから、対応が難しい課題と考えられる。

そのため、ジョブ・ディスクリプションの策定や運用が困難であっても、企業のビジョンや経営戦略、または中期経営計画目標等と連動する形で、外国人材の採用・活用の目的や外国人材に期待される役割を明確化し、それらを採用時及び採用後に、外国人材側や社内に対して、説明、アピールする必要がある。

◆企業ヒアリングより
・ジョブ・ディスクリプションについては、特段提示していない。ただし、海外からの採用の場合はポジションとそのジョブ・ディスクリプションを提示し募集している。インターンシップ後に採用する場合にも、基本的にはジョブ・ディスクリプションを作成してオファーする。(簡易的なもので代替することもある)【E社】
・ジョブ・ディスクリプションは作成しておらず、新卒採用時は提示していない。ポジションが多く、技術革新が速いので、ジョブの内容のアップデートも常に必要であることも背景にある。一方、キャリア採用者や外国人を出向で受け入れる際は、ジョブ・ディスクリプションを作成して明確に説明している。【B社】
・ジョブ・ディスクリプションは明示していないが、世界の各法人共通でジョブ・グレードを定義する動きに合わせて、国内でも基幹職(課長職以上)については職務記述書を整備しているところ。【味の素】

◆企業ヒアリングより(※中堅・中小企業の取組み)
・中国法人立ち上げ後に採用した外国人材は何かに役に立つという漠然とした思いで採用したが、結果的に全員退職した。一方、近年の採用ではこういう仕事をやってもらいたい、という外国人材への期待を明確にしてから採用している。例えば中国事業に関する経理を担当してほしい、韓国市場の開拓を任せる、といったことである。こうしたことにより、自分のキャリアが見えやすくなる効果はあったとみられる。【西部技研】

2.2.4 キャリアパスが不透明であることに伴う課題への対応
キャリアパスの不透明さにおける課題については、外国人材が自らの意思が反映できているという納得感が重要となることから、人事異動について、立候補制・公募制を取り入れキャリアの自己決定感を高めている企業がある。

その背景には、社員本人がキャリア形成に主体的に取り組むことが重要との考え方がある。またジョブの範囲と同様に、採用時及び入社後にキャリアパスに関する説明(研修、面談等)を丁寧に行う必要があり、特に、キャリアに悩むタイミングでの企業側(上司及び人事)と人材側とのコミュニケーションを図る取組が重要と考えられる。

◆企業ヒアリングより
・入社後3~4年が経過した外国人社員を対象に、年に1度、今後のキャリアを考える研修を行ってきた。同研修にはこれまで店長は参加していなかったが、店長になる頃(入社2年目)にキャリアに悩む人が多いということがわかってきたので、今年の研修からは店長以上の職位の外国人社員を対象に実施する。【ローソン】
・職種別採用ではなく、また様々なキャリアパスがあり、そのことを採用ホームページで掲載しているほか、丁寧に説明している。全社員が年に1回、キャリア開発面談を行って、本人のキャリアプランを把握したうえで、人事部や上司が適性やタイミングを考慮して異動について決定している。【味の素】
・外国人社員を集めた懇親会を一度開催したが、そこでは先輩社員の話を聞くことができるなどキャリアを考えるよい場となったこと、外国社員同士の縦横のつながりを促進する効果もあったことなどから、今後もこうした取組を継続する意向である。ロール・モデルがまだいないため、こうした取組が重要。【E社】
・大半の社員は同じ部門の中でキャリア形成をするが、希望をすれば他部門への異動も可能である。異動するためにはポスティングシステム(社内公募制度)に応募し、面接を受ける必要がある。ただし希望者と受入れ側で直接話を進めることは許されず、平等性の観点から、空きのポストがあれば、全社員が見られるように7日間社内公募を出さなければならない。ポスティングシステムを経由することで、グループの海外法人の公募に応募することも可能である。スペシャリストとしてのキャリアを重ねるうえで、異動も基本的には各社員の選択に委ねており、“キャリアは自分で
作る”ということを徹底している。【日本GE】
・将来どのようなキャリアを築きたいか、どのような人生を歩みたいかについて、管理職やメンターのアドバイスを受けながら、社員本人に徹底的に考えさせ、各社員の育成プランを策定している。年2回、直接の上司と話し合う機会を設け、実現したい将来像に必要となる職務内容や研修について、具体的な計画を立てるようにしている。社員と上司の認識にずれが生じる場合には、人事が話し合いに同席し状況に適したサポートを行う。【ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス】

◆企業ヒアリングより(※中堅・中小企業の取組み)
・管理職への昇格は立候補制であり、現場(特に総支配人等の責任者)と、全施設につながるテレビ会議でのプレゼンテーションを聞いていたスタッフのアンケートなどにによって合否が決まる。新卒2年目から、中途入社は本採用になった段階から挑戦することができ、性別や国籍も関係なくフェアに評価される。こちらの立候補を利用し、現在マネージャー職を務める外国人スタッフもいる。このような、キャリアを主体的に描ける仕組みについては、外国人材の関心が高いため、留学生への説明会等において、こうした仕組みをアピールしている。【星野リゾート】
・入社目的が明確な留学生も多いが、必ずしも希望通りにならないことは、面接時に伝えている。海外の大学での会社説明では、寮があり食事が提供できること、正月やゴールデンウィーク等の長期休暇があり帰国が可能であること、終身雇用であること等、日本独特の雇用慣行等を丁寧に説明して理解を得る努力をしている。【C社】
・上司と面談をする機会を設けており、そうした面談の機会に海外の工場に赴任する機会など、キャリアパスに関する説明が行われている。【常石造船】
・これまで国籍を問わず人材を配置してきた結果、留学生の特性を考慮した配属やジョブ・ローテーションが十分にできておらず、留学生出身者の能力を活かすことができていないことが課題となっている。そのため、日本人社員を含め、将来のキャリア・パスを明確に示して適切な配属を行えるように、社内制度の改革を進めているところである。ツールの一つとして、各社員の情報を収録した人材データベースを構築する予定である。データベースには、入社時の配属先の希望、面接時の成績、評価、性格分析の結果等を収録し、人事異動や評価について、人事と各部署が議論をするためのツールにしていきたいと考えている。【H 社】

一方、企業ヒアリングからは、日本企業が長時間労働である、休暇が取りにくいというイメージが、海外においても人材採用の阻害要因となっていることが指摘されており、長時間労働の是正や長期休暇の積極的な取得に取り組む企業においては、そうした取組を対外的に発信していくことも重要である。

企業ヒアリングより
・海外の大学からの採用活動も2011年から行っている。アジア諸国では日本は働きたい国の一つでもあり、優秀な学生を採用することは可能と認識している。ただし、日本の企業文化に対して「残業が多い、休みが取りにくい、昇進が遅い」等のネガティブな印象を持たれている点、総合商社という業態が知られていないのでその説明が重要である点が課題である。【双日】

企業ヒアリングより(※中堅・中小企業の取組)
・以前は残業が多く有給休暇も取得しにくい雰囲気があったが、5~6年前からそうした文化を変えていく取組を行っており、今では残業は減り、有給がとりやすくなってきている。また9連休がとれる「ポジティブオフ」と呼ばれる取組も始めている。【西部技研】
・当社の生産現場は、かつては作業手順やマニュアル等がほとんどなく、職人的な「勘」に基づいて個々の社員が黙々と作業を行う、という状況だった。しかし、外国人材が作業できる環境を整えるために、マニュアルの作成や、手順や注意事項を写真や英語表記で掲示するなどの「見える化」が進められた。また、外国人社員らから様々な疑問や意見が出ることも多くなり、それを受けて日々の業務を客観的にとらえ、改善を行っていくという意識が次第に社員間で醸成されるようになった。その結果、生産性が向上して労働時間が減少した。【栄鋳造所】
・外国人材に対しては長期休暇取得を認めており、各国の旧正月や国慶節などの連休に、1~2週間の休暇を取るのが一般的となっている。現状では、インバウンド業務の業績が好調で、外国人社員の頑張りが社内に認められ理解されている状況である。【I 社】

2.3 政策的対応への提言
研究会での検討を踏まえ、今後の対応について以下の通り提言する。

2.3.1 今後に向けた問題提起
2.1 の冒頭で見たように、メンバーシップ型雇用、ジョブ型雇用にはそれぞれメリット・デメリットがある。しかし重要なことは、それらの一長一短を踏まえつつ、企業の競争力を高めるために最適な形を選択することではないだろうか。中堅・中小企業の中には、生き残りをかけてジョブ型を選択している企業が存在する。他方で、部分的にジョブ型に転換している企業はあるが、全面的に導入している日本企業は少ない。その背景としては、以下の点があると考えられる。

第一に、企業においては依然としてメンバーシップ型のメリットが評価されている。メンバーシップ型雇用は、個人主義よりもチームワークを重視するなど日本の企業文化や強みとの親和性が高いと認識されている。

また、企業へのロイヤルティが高くなり離職率が低い、企業の都合に合わせた配置転換が比較的容易であるなど、企業にとってのメリットは高いと考えられる。

さらにメンバーシップ型雇用は、企業内の人事上の様々な制度や仕組みが関係する構造的な問題であり、その転換に要するコストが大きい。そしてその割には転換することのメリットが不明瞭である。メンバーシップ型からの転換を図るには、これを前提とする人事制度すべてを一新する必要があり、多大な手間がかかることになる。

また、メンバーシップ型雇用のなかで昇進してきた経営層や中間管理職にとって、メンバーシップ型雇用の転換は昇進の蓋然性が下がること、またその他の社員(特に正社員)にとっては雇用の持続の蓋然性が下がることを意味し、そのためにその転換には抵抗が予想される。

第二に、メンバーシップ型雇用は、新卒一括採用に伴い中途採用の労働市場が小さいなど、日本の労働市場の構造的問題とも一体不可分である。そのため、他の大多数の日本企業が現状を維持し、中途採用市場が小さいといった日本の労働市場の特質が変わっていないなかで先行して転換すると、むしろ新卒一括採用をやめたことで優秀な日本人の獲得が困難になるといったリスクが大きくなってしまう。

したがって、外国人材採用に関してはジョブ型雇用の方が望ましいとしても、日本企業にとっては、部分的にジョブ型を導入することが当面の対応策になっている。

また、外国人材(特に留学生)の採用において、キャリアパスや昇進・昇格等の説明が不十分であるという指摘がある(2.1.2 参照)。メンバーシップ型であれ、ジョブ型であれ、納得感をもって働くためにはこれらの説明がなされることが必要であるが、ジョブ・ローテーションが多いメンバーシップ型においては、特にこうした説明が重要であると考えられる。

また、企業側からの説明に加えて、採用時及び入社後において、自身のキャリアパスを会社側と議論できる機会が必要ではないだろうか。そして、社員自らキャリアパスを描き、会社側と議論していくためには、入社後に社内の研修等で各部署がどのような業務を行っているのかを学べる機会をつくることが有益ではないだろうか。

2.3.2 対応の方向性
メンバーシップ型雇用に起因する問題のなかには、雇用の流動性が低いといった労働市場の構造的問題に関わるものもある。こうした問題に対して、公労使によるアプローチによって検討していくことが今後は必要である。しかし、こうした構造的問題は解決までに長期的な取組が必要なことから、短期的には個々の企業の取組を政策的に後押しすることが求められる。

(1) ジョブ型雇用への部分的な転換の後押し
前項で見た外国人材の活用する企業においては、ジョブ・ディスクリプションやキャリアパスの明確化、人事部の見直し等に取り組んでおり、多くの企業は部分的にメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に転換している。

今後、大企業がメンバーシップ型雇用の限界を乗り越え、外国人材を活用するために、先行している企業の事例を踏まえ、自社において何が必要か社内の議論を喚起することが求められる。そして本報告書では、研究会での議論や企業インタビュー結果等から、そのヒントの一つは中堅・中小企業の成功事例にあると考えている。

中堅・中小企業においては、経営陣と人事担当部署と外国人材の受入れ現場との間のコミュニケーションが容易で、経営者の理念や経営上の目的、外国人材を受け入れる目的等が人事や現場に浸透しやすく、社内の認識ギャップが小さいと考えられる。そのため、中堅・中小企業で外国人材を活用している企業においては、経営者が中核となって、経営戦略を明確に打ち出し、それを踏まえて経営者自らが主導して必要な外国人材を採用し、明確な目標設定と評価を行っている。

そのことが彼らのモチベーションを高め、成果を上げさせることによって、企業のけん引役を担わせる、ということが実現している。経営者がフットワーク軽く動くことによって、経営戦略から外国人材の活用まで、首尾一貫して動くことができているのである。

企業ヒアリングより(※中堅・中小企業の取組)
・海外事業の拡大という経営戦略の下に、経営者主導で外国人材の獲得を継続しており、外国人材を海外営業等に配属し、彼らが好成績を上げれば高い処遇で応え、またそのことを社内でアピールして、「スター」として認知させ、外国人材のモチベーションを高めることで、さらに海外事業の業績が拡大するという好循環につなげている。【本多機工】
・優秀なエンジニアとして初めて採用した中国人社員に対して、中国法人の立ち上げとともに責任ある職務を徐々に与えて本人の成長を促し、その活躍によって中国事業の拡大に成功している。また、その後も中国法人の経理担当、韓国市場の営業担当といった役割を明確にして、外国人材を採用・活用している。【西部技研】

一方、大企業であっても、経営者の意図を現場組織に明確に伝えた上で、組織内のマネージャーが「オーナーシップ」を持って、あたかも中小企業の経営者のようにふるまうことができれば、外国人材がより活躍し、それが企業の成長に貢献できるのではないか。

そのためには、そうした組織内分権が進む仕組み、すなわち組織内リーダーが中小企業の社長のようなメンタリティを持てるような仕組みとして、例えばマネージャー層の評価の仕組み、マネージャー層を登用し育成する仕組み、経営戦略を各組織の目標にブレークダウンする仕組み、マネージャー層への権限移譲、人事責任を人事部ではなく各組織のマネージャーが負い人事部が人事のプロフェッショナルとしてサポートする仕組みなどが必要と考えられる。

企業ヒアリングより
・各カンパニーのファンクションリーダー(財務部・営業部等の部門長)にオーナーシップを持たせ、カンパニーの経営戦略に基づく事業計画・採用計画の立案、人材の採用・育成等すべてを任せている。各ファンクションには人事部からHRパートナー、財務部からファイナンス・パートナーがついて、ファンクションリーダーに対して人事面、財務面からのサポートを行っている。(再掲)【日本GE】

研究会委員のコメント
・自社に中小企業の要素を採り入れようとしている企業は欧米・アジアの企業のみならず日本企業でもあり、バックオフィスを含め各部門が独立採算としている企業もある。多様な人材を活用していくためには、日本の大企業においてもこうした取組を行っていくことが重要かもしれない。

(2) 採用を前提としたインターンシップ導入など新卒一括採用見直しの後押し
通年採用の導入や、インターンシップの活用など、企業・学生の双方が自由な就職・採用の活動ができるよう環境を整備することが重要と考えられる。

そのためには、まず新卒一括採用に過度に依存する採用のあり方の見直しが必要と考えられる。

インターンシップに関しては、現在は採用活動とは一線を画し、あくまで教育・学習の一環として、また企業側にとっては情報の受発信の機会として実施されることが文部科学省・厚生労働省・経済産業省「インターンシップ推進に当たっての基本的考え方」において示されている。

他方、インターンシップによって、求職者が企業内で具体的な就労の体験を行うことは、求職者・企業の双方が将来の就職・採用に向けた具体的な情報を得て、就職・採用をするにふさわしいのかどうか、具体的な判断を行うことを可能とするものであり、就職後のミスマッチ発生を防ぐのに有用と考えられる。そのため、インターンシップを現状以上に外国人留学生等の採用に活用できるようにすることが必要である。

さらに、インターンシップを受け入れる企業を支援するための事業の実施・拡充や、特に海外からインターンシップ参加のために来日する外国人材のための在留資格の見直し(第4章参照)が必要である。

既に諸外国においては、採用に直結する形でインターンシップを実施している企業が多い。例えば米国の大手グローバル企業へのアンケート調査においては、インターン生の半数以上に正社員採用のオファーを出す企業の割合が、学士課程の学生で計56.7%、修士課程の学生で計48.5%であった。日本企業が外国人材を採用し、またインターンシップを活用しようとする際、こうした外国企業との争奪戦となっている現状を踏まえたうえで、インターンシップについての取組を進める必要がある。

第3章 外国人材の能力を活用する労働環境づくり(主に中堅・中小企業のケース)
本章では、中堅・中小企業の外国人材受入れの課題として採用段階にフォーカスし、課題とそれに対する先行企業の対応状況について、企業や外国人材へのインタビュー調査結果等から整理し、それら及び研究会での検討を踏まえて、今後の政策的対応について提言する。

3.1 中堅・中小企業における課題(採用段階における志向のミスマッチ)
既存調査によると、企業の外国人材受入れに係る課題のうち、中小企業においては外国人材の募集の仕方がわからないという点、地方企業においては地元大学で必要な人材が見つからない(外国人留学生は首都圏の大企業への就職希望が高い)という点が、特に課題であるとして示されている。また、本研究会においても、地方の中堅・中小企業における外国人材の獲得が課題として指摘された。

3.1.1 留学生の関心喚起と適切なマッチング
平成26年度の経済産業省調査によると、外国人留学生の約8割は、大手企業への就職を希望している。こうした大企業志向の背景には、家族・親類の納得を得るために本国での知名度の高さが求められること、その後のキャリアを考えた時に大手企業での就業経験の方が高く評価されること等がある。

このように外国人材は、中堅・中小企業、特にBtoB企業への関心が低いが、他方、前章でみたように、中堅・中小企業には、経営者が主体的に外国人材の獲得・活用に関わることで、ジョブの範囲が明確になることや、大胆な人材登用が実施されることから、結果として大企業よりも、外国人材にとって魅力的な働く環境が実現されているケースもあり、そうした中堅・中小企業と外国人材との間で、ミスマッチが起きていると考えられる。

3.1.2 海外の大学等からの採用
国内での新卒一括採用とは別に、海外の大学等から直接ないしインターンシップを介して人材を採用する動きがみられる。こうした動きは大企業が中心であるが、海外に事業所を有する中堅・中小企業においても、国内の留学生だけでは不足する人材を、海外の大学から採用しようとする動きが出てきている。

しかし、特に海外事業所を有さない中堅・中小企業にとっては、費用負担の大きさ、新たな取組に割くマンパワーの不足、コストに見合った成果に対する懸念等があるため、そうした取組を行う企業は限定的である。また、海外では日本以上に中堅・中小企業の知名度が低いことや、そもそも日本語や日本の企業文化を理解している人材が少ないことも課題である。

3.2 企業における対応策
本項では、前項で示した課題に対する先行企業の対応方策と、それに伴う問題点を検討する。

3.2.1 留学生の関心喚起と適切なマッチング
中堅・中小企業の抱える主な課題は、外国人材からの認知度と、採用にかけられる経営資源が大企業と比べて限定的であることの2点である。外国人材の受入れを進めている中堅・中小企業は、そうした課題に対応するため、地域における取組や、地元大学との共同研究の実施等を通じ、外国人材を獲得している。

例えば、共同研究の実施では、その企業が必要とする専門性を有する学生と早期に接点を持ち、その後、インターンシップで受け入れることなどにより、互いに適性であるかどうかを丁寧に見極める取組がなされている。また、比較的低コストで参加が可能であり、地域的な親近感から関心を持ってもらいやすいと想定される、近隣地域の留学生との交流イベント等を活用している企業もある。

また、留学生は、採用実績のある企業や、母国で事業を展開している企業に興味を持つことから、これまで継続的に留学生の採用に取り組み、そうした外国人材が活躍している中堅・中小企業においては、留学生に対して特別なアプローチをしなくても応募を得ることができており、知名度に関わる問題を克服していると言える。

他方、前項で指摘したように、中堅・中小企業においては、コストやマンパワー、人脈等が限られていることや、外国人材を活用することに対し漠然とした不安を抱えていることから、外国人材に関心はあるものの、採用に積極的に取り組めていない企業も多い。今後、そうした中堅・中小企業による外国人材の採用を後押しするためには、地域ぐるみで複数の企業が共同で参加できるイベントや、採用実績のない企業でも気軽に参加できるイベント等の実施が望まれる。

しかしながら、外国人材との接点をつくるだけのイベントでは具体的な採用にまではつながらないため、単なる交流にとどまらない活動も含め実施することが課題と言える。

企業ヒアリングより
・新卒は、主に西日本の大学を卒業する留学生の応募が多い。設計部門の採用は、造船学科がある大学からの採用も多い。共同研究先の大学のゼミ所属の学生が応募してくることもある。造船学科がある大学や地元の大学とは連携し、夏休み期間中に2週間のインターンシップを実施している。【常石造船】
・共同研究等のつながりを活かして地域の大学の研究室と連携して専門人材を早めに紹介してもらい、インターン生として受け入れるなどして、お互いにマッチするかどうかを確認するようにしている。また、地方団体等が実施する工場見学やマッチング・イベントにも積極的に参加している。同社が留学生を積極的に採用していることが知られるようになったため、現在では大学から留学生の紹介を受けることも増えている。一方、多くの中小企業経営者は今後の海外展開のために外国人材の受入れに関心を持っているものの、多くはそうした経験がないため、外国人採用に不安を感じている。そのため、中小企業に合った留学生とマッチングする仕組みが必要であり、就職活動開始前のインターンシップ実施や、インターンシップ前に留学生と中小企業とが知り合うきっかけとなる出会いの場を提供し、中小企業側の外国人材受入れに対する不安や抵抗感を軽減する工夫が必要である。【本多機工】
・マッチング・イベントや工場見学会等には積極的に参加している。ただし、単に交流を図るだけでは企業と留学生の間の有効なマッチングは難しく、社員と留学生が話す機会を設けるなど、入社後の仕事等について理解を促す取組が必要。【西部技研】
・留学生の新卒採用は10年ほど前から行っており、留学生のためのイベントやセミナーに参加している。留学生の採用実績も多いことから一定数の申込みがある。【サラヤ】

外国人材ヒアリングより
・地域の留学生向け就職支援イベントに参加したが、セミナーや工場見学等だけで、最後まで面倒をみてくれるわけではない。

3.2.2 海外の大学等からの採用
一部の中堅・中小企業では、海外の大学との共同研究や、大学と提携した長期インターンシップの実施、資格取得への支援等を通じて、企業にとって必要な専門性の高い人材を確保するための取組を始めている。

大企業においても、単独で海外の大学を訪問したり、海外で開催される就職フェアに参加したり、インターンシップを受け入れたりしている企業がある。

また、今回ヒアリングを実施した企業からは、海外から直接採用する際に、日系以外の海外企業との給与・報酬の差が採用時の課題としてあげられた。欧米企業のみならずアジア企業とも人材獲得において競合が生じており、日本企業が優位な報酬金額を提示できていないことがわかった。

このような報酬に関する課題については、前章2.1.2(長期雇用及び年功賃金に伴う課題)においても指摘しているが、海外企業と競合することの多い海外での直接採用においては、この課題が顕著に表れるものと考えられる。

その一方で、海外大学から人材を採用している大企業へのヒアリングでは、長期雇用や自己成長の機会、企業の理念やビジョンへの共感が、日本企業へ就職する理由となっているとの意見もあった。つまり、外国人材に対して日本企業の仕組みや自社の強みについて、丁寧に説明することで、報酬とは異なる視点で自社が評価されるようにするための取組も重要と考えられる。

企業ヒアリングより
・海外展開にあたってはグローバルに活躍できる料理長の確保が重要であることから、米国の四年制料理専門大学と提携して、同大の学生向けの3か月間の調理のインターンシップを実施。【星野リゾート】
・現在、フィリピン、韓国、フランスの大学と協定を結び、大学の単位として認定される有給のインターンシップを実施している。インターンは「特定活動(インターンシップ)」の在留資格で来日し、2~3ヶ月同社で働いている。今後も他国の大学との協定締結を進め、インターンシップを通じて、各国の学生に出合い、同社のビジョンと合致するようであれば、採用につなげていく考えである。【栄鋳造所】
・中国の福建省内の師範大学をはじめとする日本語専攻の学生に対して沖縄県地域限定通訳案内士の試験対策を支援して、合格者が希望すれば同社で受け入れる、という取組を始めている。【I社】
・海外の拠点や共同研究先の大学等から紹介を受ける等、常に人材探しのアンテナを張り、マッチする人材が見つかったら、採用できるように工夫している。結果として、海外大学の学生を採用することもあるが、その場合には中途採用として通年入社で受け入れている。【サラヤ】
・特に終身雇用等、日本企業の雇用の特徴については理解できない外国人留学生もいた。そのため、日本型雇用の理解を深めるための活動が必要ではないか。【常石造船】
・海外においては、日本企業は昇進が遅い、年功序列といったイメージを持たれがちであるが、中小企業は大企業と比較して、フラットな組織、自由な雰囲気、ジョブ・ローテーションがない、といった特徴が若い外国人材には魅力であり、そうした点を発信していくことが、人材獲得のために必要。【栄鋳造所】

企業ヒアリングより(※大企業)
・海外の大学からの採用活動も行っている。対象はアジアのトップ大学(シンガポール、香港、上海等)や今後重要と考える国(タイ、ベトナム、インドネシア等)のトップ大学。日本語能力は問わずに採用し、入社後に半年間、日本語研修を実施する。【双日】
・シンガポールで開催されている、ASEANの上位大学の学生と日本企業向けの就職フェアに参加している。海外から採用する場合は、採用前に日本の生活スタイル、日本特有の働き方、昇進のスピード感を伝えている。それに加えて、特に日本での生活経験、渡航暦がなく、日本語でのコミュニケーションに難のある学生を対象として、インターンシップを実施することにしている。海外からの直接採用の場合は特に海外企業と競合になる。給与面では欧米企業に対抗することは難しい。シンガポールなど東南アジアの人材もジョブ・ディスクリプションが明確であることや高い報酬を望んで欧米企業を選択する人材が多い。一方で、個人主義的な欧米企業ではなく、日本特有のチームとして動くこと、自己成長の機会に恵まれていること、最先端技術を持つ企業で刺激的な環境で働くこと等を望む人材が、当社に魅力を感じて入社してきている。【D社】
・エンジニア職は昨今では外国人材を海外から直接採用するケースが多くなり、アジアや欧米でも採用活動を行っている。エンジニアについては、職種・部門のポジションごとにインターンシップ・プログラムを設け、国内外の大学からインターン生を受け入れている。欧米ではITエンジニアの収入は高騰しており、競争が熾烈であるが、当社では新卒採用者はあくまで長期雇用を前提としているため、欧米企業のように入社時に極端に高額な年収を提示することは難しい。今後は中国やインド、ASEAN諸国でも賃金が上昇する可能性があり、当社が優秀な外国人材が獲得できなくなることが危惧される。一方で、一部の外国人材は、長期雇用を魅力に感じている。【F社】
・米国の大学からの新卒採用を実施しており、米国で開催される就職イベントや、日米の就職エージェントに依頼して現地の大学での説明会を通じて採用活動を行っている。新卒でもエンジニアとして高い待遇でオファーを出してくるシンガポール、マレーシアといったアジア企業も人材を獲得にきており、競合する。そこで、給与等の条件面は不利であっても人材育成の充実や自己成長・鍛錬の場として日本企業のほうが優れていることをアピールするとともに、日本のメンバーシップ型雇用の特徴について十分に説明し、日本式のゆっくりした昇進・昇格を理解し、長く働き続ける意向があるかどうか、見極めて採用している。【G 社】
・(海外からの新卒採用者に関しては)欧米企業等と競合することになるが、当社に入社を決めた人材に理由を聞くと、処遇面ではなく理念やビジョンに共感した、やりたいことができる、日本という国が好き、という回答が多い。【E社】
・海外の大学での会社説明では、終身雇用であること等、日本独特の雇用慣行等を丁寧に説明して理解を得る努力をしている。(再掲)【C社】

3.3 政策的対応への提言
3.3.1 留学生の関心を高め、適切にマッチングを行う取組
前項までの分析から、外国人留学生と中堅・中小企業の相互に関心を高める情報の提供や、企業での具体的な業務体験をする機会の創出により、学生の関心を喚起し、適切なマッチングを行う取組を、現状以上に積極的に行うことが必要と言える。

そのための具体的な取組として、第一に彼らの関心を高めるために、工場見学や気軽に参加できる交流イベントの開催など、能動的に中堅・中小企業の情報発信をしていくことが必要である。

有識者研究会では、留学生は中堅・中小企業に関する情報が少ないことから、中堅・中小企業への就職に不安を感じており、「グローバルニッチトップ企業100選」のような、政府による表彰を積極的に広報することで、留学生の中堅・中小企業に対する不安を緩和することができるとの意見が提示された。

第二に、アンケート調査結果によると、外国人材、日本企業の双方が、就職活動の課題として、仕事の内容や働き方への理解不足を上位にあげており、具体的な企業での体験を通じた理解促進を支援することが必要である。

前章で見たとおり、外国人材の活用に成功している中堅・中小企業では、経営者が主体的に外国人材に関わることで、大企業と比べても魅力的な環境を提供しているケースがある。また、上記の「グローバルニッチトップ企業100選」に選定された企業は、世界のマーケットで高いシェアを確保している。

そうした中堅・中小企業での仕事や働き方等について、外国人留学生が具体的に知り、体験できるような取組が必要である。

例えばインターンシップの実施は有効と考えられるが、経団連の定める「採用選考に関する指針」では採用を目的としたインターンシップの実施が認められていないため、上記指針の対象外である中堅・中小企業にとっても、インターンシップを採用活動に活用しづらい環境となっている。研究会ではこうした状況に対して、中堅・中小企業が外国人留学生の採用にインターンシップを活用することを推奨する等、国からの後押しが必要ではないかとの意見が提示された。

第三に、大企業と比べ、中堅・中小企業が外国人留学生の採用にコストを掛けることは難しいため、中堅・中小企業を対象としたジョブフェア等のマッチング支援が必要である。

なお、具体的なマッチングを行う際には、企業及び外国人材双方の希望に応えられるよう、選択可能性を高める観点から、自治体毎の取組のみならず広域的な支援が有用と考えられる。

例えば、広島県内の産学官の連携による「広島県留学生活躍支援センター」では、「企業と留学生の交流サロン」といった気軽に参加できる交流イベントから合同企業説明会、就業体験学習(インターンシップ)まで、多段階で企業と留学生の交流を支援する取組を行っている。

こうした取組を参考として、今後の支援を検討することが必要である。

3.3.2 海外の大学等からの採用
海外大学からの採用を促進するため、海外でのジョブフェア開催や、海外からのインターンの招へい、海外大学に出向いての採用活動等を積極化する必要がある。大企業は単独でそうした活動に取り組んでいるが、海外での知名度が低い中堅・中小企業もそうした取組ができるよう、現地の大学等とのネットワーク形成や具体的なマッチング機会の創出等の支援が必要と考えられる。

また、具体的なマッチング支援をする際には、現地で日本企業や日本語に対して興味を持つ人材の発掘や育成をすることも必要であるが、海外においては、日本企業のメンバーシップ型雇用や「総合職」という形態が知られておらず、「長時間労働」や「昇進が遅い」といったネガティブなイメージが持たれている。こうした状況に対して、海外で採用活動をする日本企業は、前項でみたとおり、外国人材に日本企業の仕組みや企業理念等を丁寧に説明することで、日本企業の雇用形態に納得した外国人材を採用している。

今後海外大学からの採用を推進するためには、こうした個社による対応にとどまるのではなく、企業横断的に、日本企業の特質や、第4章で述べる日本の在留資格・生活環境等について、発信・アピールする場を創出していくことも必要ではないか。

例えば、今回のヒアリング調査では、日本や日本企業を理解してもらうために、日本でのインターンシップを実施している企業や、日本語の話せる技術者を増やすために、海外大学での寄付講座を検討している企業もあった。

こうした取組は、必ずしも受益と負担が一致するものではないため、取り組む企業は限定的であり、今後、より積極的にこうした取組を展開するためには、政府による支援が必要と考えられる。

企業ヒアリングより(※大企業)
・毎年、香港や韓国、東南アジア諸国を採用のために訪問しているが、求める人材像は、技術系+日本語能力試験N1~N2レベル以上と考えているため、交換留学などを通じて、数か月間日本で学んだ経験がある学生を採用するケースが多い。多言語を話せる人材は日本企業だけではなく、米国企業なども就職先の選択肢となり競合することになる。技術系かつ日本語人材を増やすため、海外大学での寄付講座を検討したことがあり、こうした取組に対して国からの支援があるとよい。【C社】
・日本の企業文化に対して「残業が多い、休みが取りにくい、昇進が遅い」等のネガティブな印象を持たれている点、総合商社という業態が知られていないのでその説明が重要である点が課題である。(再掲)【双日】

第4章 外国人材を惹きつける生活環境づくり及び在留資格に関する課題
日本企業において外国人材の獲得と定着が難しい要因については、既存の調査において、入国管理制度や生活環境もその一つと指摘されており、外国人材の受入れを促進するための改善方策が示されてきたところである(「1.2.3 調査の仮説」参照)。
本章では、入国管理制度と生活環境における指摘事項とこれまでの対応策を整理して示す。また、依然として残されている未解決の課題、改善が必要な点を、ヒアリング等を通じて抽出した。

4.1 入国管理制度に関する現状と課題
4.1.1 これまでの取組
我が国の成長戦略である「日本再興戦略」では、「外国人材の活用」が具体的なアクションプランのなかに位置づけられ、そのために必要となる入国管理制度上の改善点が示されてきた。

「日本再興戦略」(平成25年6月14日)では、「高度外国人材ポイント制」について、「高度外国人材の認定に係る年収基準の見直し」、「永住が許可されるための在留歴の短縮」が挙げられ、同年12月に見直しが行われた10。続く「日本再興戦略 改訂 2014」(平成26年6月24日)では、「ポイント制度の効果的な周知」と、同制度が「外国人材の視点に立った分かり易いものになるよう見直しを図ること」が示され、同年6月の出入国管理法及び難民認定法の改正法案成立を受けて、平成27年4月1日より高度人材を対象とした新たな在留資格「高度専門職」が創設された(本項(1)「在留資格「高度専門職」の創設」参照)。

「日本再興戦略 改訂2015」(平成27年6月30日)では、訪日外国人旅行者の増大を経済成長につなげるために、「観光分野における外国人材の在留が認められる要件の明確化やその周知等」を行うことが明記された。

日本再興戦略–JAPAN is BACK-(平成25年6月14日)
第Ⅱ.3つのアクションプラン
一.日本産業再興プラン
⑧高度外国人材の活用
高度な技術や経営ノウハウを持つ海外からの人材の日本での活躍を促進するための総合的な環境整備推進の一環として、高度外国人材ポイント制度を見直す。
○ 高度外国人材ポイント制度の見直し
・高度外国人材の認定に係る年収基準の見直し(年収として認める報酬の範囲に係る見直し等)、永住が許可されるための在留歴の短縮(現行の5年を3年とする等)といった高度人材に対する優遇制度の見直しを行い、本年中に新たな制度を開始する。
二.国際展開戦略
3.我が国の成長を支える資金・人材等に関する基盤の整備
①対内直接投資の活性化
○高度外国人材の活用【再掲】

日本再興戦略 改訂 2014 –未来への挑戦-(平成26年6月24日)
2.雇用制度改革・人材力の強化
2‐2.女性の活躍推進/若者・高齢者等の活躍推進/外国人材の活用
(3)新たに講ずべき具体的施策
iii)外国人材の活用
(高度外国人材の活用)
① 高度外国人材受入環境の整備
(前略 )高度外国人材の定着促進のため、「高度人材ポイント制」について内外における効果的な周知を図るとともに、実際に利用する外国人材の視点に立った分かり易いものとなるよう手続等の見直しを行う。

日本再興戦略 改訂2015–未来への投資・生産性革命-(平成27年6月30日)
1.未来投資による生産性革命
(3)個人の潜在力の徹底的な磨上げ
i)少子化対策、労働の「質の向上」及び女性・高齢者等の一層の活躍促進
(略)訪日外国人旅行者の増大に積極的に対応し、経済成長につなげていくためには、観光分野における外国人材の活用も重要である。外国人固有の習慣や考え方等を熟知し、一方で日本らしいおもてなし文化に根差した接客等も行える外国人材など、外国人材の活用ニーズを的確に把握し、その能力の最大限の発揮を後押ししていく。
○外国人材の活用
・ホテル・旅館、スノーリゾート、通訳案内などの観光分野において、訪日外国人旅行者へのサービス提供のための専門的知識や技能を要する業務について、在留が認められる要件の明確化やその周知等を行う。

「日本再興戦略」(平成25年6月14日)に盛り込まれた施策を実現し、我が国の経済発展に寄与する外国人の受入れを促進する目的で、平成26年の通常国会において、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」(平成26年法律第74号)が可決・成立、平成26年6月18日に公布され、平成27年4月1日より施行された。

改正のポイントとして、①在留資格の整備、②上陸審査の手続の一層の円滑化のための措置等が講じられた。在留資格の整備に係る主な改正項目として、「(1) 在留資格「高度専門職」の創設」、「(2) 在留資格「経営・管理」への変更」、「(3) 在留資格「技術」と「人文知識・国際業務」の一本化」の3点が挙げられ、それぞれ本項にて紹介する。

また、国の指定を受けた一部の特別地域(特区)においては、高度外国人材や外国人起業家の受入れ促進を目的とした規制緩和の特例措置が講じられており、本項「(4) 特区における規制緩和の事例」において紹介する。

(1) 在留資格「高度専門職」の創設
高度の専門的な能力を有する外国人材の在留資格として、「高度専門職」が新たに創設された。

① 制度の概要・目的
平成24年5月7日より、我が国の高度人材外国人の受入れを促進するため、高度人材外国人に対しポイント制を活用した出入国管理上の優遇措置を講ずる制度として、「高度人材ポイント制」が導入されている。ポイント制では、高度人材外国人の活動内容を、「高度学術研究活動」、「高度専門・技術活動」、「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの特性に応じて、「学歴」、「職歴」、「年収」などの項目ごとにポイントを設け、ポイントの合計が一定点数(70点)に達した場合に、出入国管理上の優遇措置を与えることにより、高度人材外国人の我が国への受入れ促進を図ることを目的としている。

平成27年4月1日から改正法が施行される前は、ポイント制による高度人材は「特定活動(高度人材)」の在留資格が付与されていた。改正法においては、これらの高度人材を対象として新たな在留資格「高度専門職1号」が設けられ、この在留資格をもって一定期間在留した方を対象とした、活動制限を大幅に緩和し在留期間が無期限の在留資格「高度専門職2号」が設けられた。

「特定活動(高度人材)」の在留資格を有している人は、引き続き従前の在留期間の満了日まで「特定活動」の在留資格をもって、従前と同じ範囲の活動を行うことができ、このような人は一定の基準を満たせば、「高度専門職1号」の在留資格を経ることなく、直接、「高度専門職2号」の在留資格への変更許可申請をすることができる。

高度専門職(高度人材)が行う3つの活動類型
高度学術研究活動/「高度専門職1号(イ)」
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究、研究の指導又は教育をする活動
高度専門・技術活動「高度専門職1号(ㇿ)」
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
高度経営・管理活動「高度専門職1号(ハ)」
本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動

(3) 在留資格「技術」と「人文知識・国際業務」の一本化
従来、在留資格「技術」と「人文知識・国際業務」は、大きく「自然科学の分野に属する技術または知識を要する業務」(技術)か、または「人文科学の分野に属する知識を要する業務」(人文知識)かで分けられていた。在留資格の審査上、申請人が従事しようとする業務が、大学等の専攻分野に基づく知識・技術を必要とする業務である必要があるが、知識を要する業務の区分が自然科学系・人文科学系に分けられていることが、関連性を必ずしも明確に示せない要因となるケースが存在していた。

そのため、平成25年、経団連は、企業における専門的・技術分野の外国人材の活動を幅広く認め、優秀な産業人材を育成・確保するための措置として、いわゆる「総合職」に適した在留資格の創設を規制改革ホットラインに提案した。

これを受けて、外国人材の受入れに関する企業等のニーズに柔軟に対応するため、業務に要する知識等の区分を廃止した包括的な在留資格「技術・人文知識・国際業務」が創設されることとなった。ただし、当該在留資格の審査においても引き続き、申請人が従事しようとする業務が、大学等の専攻分野に基づく知識・技術を必要とすることが求められる。

(1) 特定分野の高度人材への在留資格や永住権取得を優遇する制度がない
諸外国と比較し、日本は制度そのものあるいは制度の改正の方向性において、特定の人材を優遇する姿勢が見えづらく、発信力が弱い。

高度人材ポイント制の創設にあたっては、我が国が積極的に受け入れるべき高度外国人材は、「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」とされた(平成21年5月29日高度人材受入推進会議報告書)。

これを受けて、高度人材(在留資格「高度専門職」・「特定活動(高度人材)」)の3つの活動類型「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」が示されたが、対象が幅広く、求めている分野・人材像がわかりにくい。

永住権申請においても①素行善良、②独立生計を営むに足る資産・技能、③日本国利益に合致、といった審査要件で一律に審査され、起業家等を優遇する仕組みにはなっていない。一方、英国では起業家のビザに人数制限を設けず、「卒業生起業家」のビザを新設するといった起業家を優先する方針、韓国では先端科学技術分野における高度人材を優遇する等の優先分野が明確であり、永住許可取得においても、申請に必要な在留年数を優遇するなどの措置を講じている。

(2) 資格の要件の判断基準があいまいでわかりにくい
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の規準は、「従事しようとしている業務について、必要な技術又は知識を修得していること」とされている一方、「留学」からの変更許可のガイドラインによると、「大学における専攻科目と従事しようとする業務の関連性については柔軟に判断」とあり、どのように解釈すべきかが不明瞭である。

この在留資格の下で行うことができる業務については、「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」14に記載されているが、典型的なものの例示にとどまる。

また、永住許可申請における「永住許可に関するガイドライン」では、法律上の要件のひとつに、「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」とあり、例えばそのなかの「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと」については具体的にどのような内容なのか不明瞭である。

結果として、審査が透明性・明確性に欠けることが指摘されている。

4.1.3 その他の課題
既存の各種調査報告書・提言・戦略等の公開情報をもとに、高度外国人材の受入れに関する課題で、未解決のままの課題を、外国人及び企業ヒアリング結果を踏まえ、抽出した。

以下に、新たな就労形態や成長産業に適した在留制度になっていない点、起業準備が困難である点、在留資格の専門性の審査基準、「企業内転勤」、「高度専門職」、「インターンシップ」の在留資格に関わる課題を挙げている。

(1) 新たな就労形態:フリーランス人材、短期雇用などの雇用形態に適合していない
①「本邦の公私の機関との契約」の緩和(フリーランス人材)
「専門的・技術的分野」の在留資格の者のうち「研究」・「技術・人文知識・国際業務」・「技能」・「特定活動(特定研究活動・特定情報処理活動等)」の在留資格で本邦において行うことができる活動は、「本邦の公私の機関と契約に基づいて行うこと」が要件となっている。

一方で、社会のグローバル化等に伴い、特定の組織に所属せずに活躍する専門家が増加していくことが想定されるため、機関との契約を要件とすることは、優秀な人材の受入れを阻むことが懸念される。ウェブエンジニア等がフリーランスで働くケースなど、優れた能力を有する専門家が必ずしも組織に所属しているとは限らないため、当該要件の緩和や新たな在留資格の設置を求める声は多い。

フリーランス人材の典型的なプロフィールは、ウェブエンジニア、プログラマー、デザイナー、編集者等の IT やクリエイティブ関係のほか、個人で自宅を拠点に海外企業の連絡員等として活動している外国人材等である。

(2) 成長産業(観光産業、サービス産業)において、適切な在留資格がない
①活動に適合した就労資格がない(観光・交流・おもてなし人材)
観光・サービス分野では特に、通訳のみならず多様な業務を担う外国人材が求められているが、接客のみであると専門性が求められる現行の在留資格と整合しない面がある。

「日本再興戦略 改訂2015」(平成26年6月24日)では、訪日外国人旅行者の増大を経済成長につなげるために、観光分野における外国人材の在留が認められる要件の明確化やその周知等を行うことが明記された(再掲)。

再興戦略等の記載を受け、平成27年12月には、法務省入国管理局から、「ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について」が出されたが、依然として、業務範囲は制限されている。

例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」でホテル・旅館等の宿泊施設で働く場合には、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」又は「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」に従事すると判断されなければならない。

既存の調査よりニーズがあると指摘されている職種である、アウトドア・スポーツのインストラクター、ホテルのコンシェルジュ、レストラン・マネージャー、ホテル・チェーンの給仕長、ショップ店員、リゾート産業の海外マーケティング等では、専門的技術・知識または外国文化に基づく思考・感受性を要さない業務とみなされることがある。

(6) 高度専門職の年収要件等が厳しすぎる
本年4月に新設された在留資格「高度専門職」は、「配偶者の就労」「3年以上の滞在で在留期間が無期限」「親の帯同」等の優遇措置を得られるが、これに該当するためには、学歴、職歴、年収及び年齢に応じたポイント70点以上が必要である。

年功序列のため若手の給与が比較的低い日本企業・大学等に就職する場合、大卒・大学院卒20~30代の若手社会人や大学研究者が70点以上を採ることは難しい。企業ヒアリングでも、留学生の採用の際、「高度専門職」で受け入れるには年収等の基準が高すぎるとの指摘があった。

例えば、30代前半(年齢:10点)の若手社会人のケースで、学士(10点)、日本語能力N1以上(15点)であれば、年収900万円(35点)以上なければ、計70点には満たない。また、業種・業界・職種により平均年収は大きく異なり、優秀な人材であっても 70点以上に満たない業種もある。業種の平均年収の相違等を考慮した、年収要件の緩和が求められるところである。

4.1.4 政策的対応への提言
我が国の入国管理制度において、外国人材の定着を妨げる要因として指摘されている事項について対応策は進められているものの、依然として未解決の課題、諸外国と比較して改善が必要と思われる点が残されている。それらに対して、政策的対応が可能な事項は以下のとおりと想定される。

(1) 我が国が必要とする高度外国人材に対するさらなる要件の緩和
・IoT、再生医療、観光産業等の我が国の成長分野、特定分野の高度人材を対象として、在留資格や永住権の取得を優遇するべきではないか
・観光・サービス人材やフリーランス人材などについて、新たな在留資格や例外的措置を検討すべきではないか
・起業準備において、事業所・資本金確保の要件を緩和すべきではないか
・「企業内転勤」の現地の就労経験一年以上の要件を緩和すべきではないか
・多種多様な業務に従事してもらうため、専門知識と業務内容の関連性について、柔軟な判断が行われるべきではないか
・「技術・人文知識・国際業務」等の在留資格について、学位や10年以上の実務経験だけではなく、業界や職種に合った要件を設定すべきではないか
・「高度専門職」の対象を広げるために、年収要件の緩和を検討すべきではないか
・企業におけるインターンシップ・プログラムを充実させるために、在留資格の要件や制約条件を緩和すべきではないか

(2) 煩雑な申請手続きや、不明確な判定基準など、制度・運用面での見直し
・入国審査において、外国人材のキャリア形成や、就労ないし起業する企業の経営について、適切に評価する力を高めることが必要ではないか。そのために、審査に必要となる情報の提供や、判断が曖昧とされる要件や新たな就労形態・職種の受入れのためのガイドラインの作成等、入管職員の判断を第三者がサポートする仕組みが必要ではないか

4.2 生活環境に関する現状と課題
外国人を受け入れるうえでの生活環境に関する指摘事項は、既存の各種報告書・提言・戦略等の公開情報を基に整理すると「教育環境」「医療環境」「住宅環境」「言語」「社会保障・税制」の大きく5つに集約される。

生活環境における課題解決のための国としての取組は、主に内閣官房外国人労働者問題関係省庁連絡会議「生活者としての外国人に関する総合的対応策」、ならびに内閣府日系定住外国人施策推進会議「日系定住外国人施策の推進」によって進められており、「住宅環境」「言語」「社会保障・税制」については対応策が進められている。

一方、教育環境、医療環境についてはまだ取組が限定的であることと、上述の5つのなかでも特に国の有効な支援策が期待される領域であることから、本調査研究ではこの2つの領域を対象とし、特に、これまでの調査で外国人材が来日を決定する際の重要な要素であるとの指摘されているインターナショナル・スクール、ならびに外国人材向け医療機関の現状及び拡充に向けた動きを中心に取り上げることとした。

4.2.1 教育環境
外国人材は、転勤先に国際的認証を受けたインターナショナル・スクールがあるかどうかを重視するとの指摘があり、子供の教育環境は外国人材の来日を促進するうえで検討すべき事項のひとつである。

また現在、インターナショナル・スクールや国際化を目指す1条校においては、国際的認証のひとつである国際バカロレア認定の取得が進みつつあり、日本国内における国際バカロレア認定校の増加は、外国人材の子供の国内の就学機会及び他国大学への進学の機会を広げる効果がある。そこで本項では、インターナショナル・スクールと国際バカロレア認定の現状と課題、拡充のための取組について述べる。

(1) インターナショナル・スクール及び国際バカロレア認定の現状と課題
①インターナショナル・スクールに関する現状と課題
【インターナショナル・スクールの設置状況】
インターナショナル・スクールに法令上の定義はないが、一般的には、国際的な認証を受けている学校で、英語で授業が行われ、複数の国籍の学生を受け入れているものをインターナショナル・スクールと呼んでいる。文部科学省では、4つの国際的な認証機関(IB、CIS、WASC、ACSI)の認証を受けたもの及び日本インターナショナルスクール協会(JCIS)会員となっているもの(1 条校を除く)のほか、各種学校の認可を受けた外国人学校(主に英語等により授業を行っているもの)をインターナショナル・スクールとしており、全国で46校である。これを本報告書におけるインターナショナル・スクールと定義する。

インターナショナル・スクール一覧
北海道
北海道インターナショナルスクール
北海道インターナショナルスクール・ニセコ校
宮城
東北インターナショナルスクール
ホライゾンインターナショナルスクール仙台
茨城
つくばインターナショナル・スクール
東京
カナディアン・インターナショナルスクール東京
アメリカンスクール・イン・ジャパン
ケイ・インターナショナル・スクール・東京
清泉インターナショナル・スクール
ブリティッシュ・スクール・イン・東京
セントメリーズ・インターナショナル・スクール
東京インターナショナル・スクール
アオバ―ジャパン・インターナショナル・スクール
聖心インターナショナルスクール
・西町インターナショナルスクール
・アメリカンスクール・イン・ジャパンアーリィ・ラーニング・センター
・クリスチャン・アカデミー・イン・ジャパン
・東京YMCAインターナショナル・スクール
・ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和
・ニューインターナショナルスクールオブジャパン
・モンテソーリ・スクール・オブ・トウキョウ
・インディア・インターナショナルスクール・イン・ジャパン
・神宮前小学校国際交流学級
神奈川
・サンモール・インターナショナル・スクール
・横浜インターナショナルスクール
・ホライゾン・ジャパン・インターナショナル・スクール
愛知
・名古屋国際学校
・愛知インターナショナルスクール
・インターナショナル・クリスチャン・アカデミー・オブ・名古屋
京都
・京都インターナショナル・スクール
・京都インターナショナル・ユニバーシティー
大阪
・関西学院大阪インターナショナルスクール
・大阪YMCAインターナショナル・スクール
・コリア国際学園
・関西国際学園
兵庫
・カナディアン・アカデミー
・神戸ドイツ学院
・芦屋インターナショナルスクール
・聖ミカエル・インターナショナル・スクール
・マリスト・ブラザーズ・インターナショナルスクール
広島
・広島インターナショナル・スクール
福岡
・福岡インターナショナル・スクール
沖縄
・沖縄クリスチャン・スクール・インターナショナル
・沖縄インターナショナル・スクール
・サンタモニカ・インターナショナル沖縄校

都道府県別にインターナショナル・スクール数(全46校)を比較すると、インターナショナル・スクールがゼロである都道府県が35あり、地域的に偏在している。また、最もインターナショナル・スクール数が多い東京都は、高度外国人材(下記図表の注を参照)の人数当たりでみると全国平均レベルにとどまり、近隣の神奈川県は全国平均以下、埼玉県、千葉県はゼロ校である。

企業ヒアリングにおいてもインターナショナル・スクールの不足を訴える声があり、高度外国人材の多くが住む首都圏においても、インターナショナル・スクールの整備はまだ不足していると考えられる。

第5章 終わりに
激化する競争環境下において日本企業の競争力を高めていくため、我が国における労働人口の減少という観点からだけでなく、ビジネスのグローバル化に対応するための人材確保、ダイバーシティ向上による社内の活性化、そしてより優れた人材をより広い市場から確保するといった様々な点から、外国人材の受入れは推進すべきである。

しかし、第1章でみたように、日本は世界的な人材獲得競争において遅れをとっており、第2章及び第3章でみたように、企業内の労働環境や採用プロセスのあり方の再考とともに、第4章でみた在留資格制度・生活環境といった、社会全体での受入れ体制づくりが必要とされている。

これらの課題は、より多くの高度外国人材を惹きつけるためのみならず、日本の社会が多様な働き方に対応し、産業競争力を高めるために、解決が必要な課題でもある。外国人材の受入れは、それらを再考し、日本人の社会のあり方を問い直す契機である。

そうした大きな文脈においては、個々の課題をどれか一つだけをとって部分的に改善しようとしてもその効果は低く、すべての課題をひとつの大きな問題点ととらえ、一体的に解決を図っていくべきものである。今後の日本企業の競争力強化のため、産業界・政府の双方が、本稿で取り上げた課題や提言について、具体的な検討を進めていくことが望まれる。

第6章 参考資料
6.1 企業事例インタビュー調査結果
6.1.1 日本 GE 株式会社(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
日本GE(以下、本項では「同社」という)は、発電や石油・ガス、ヘルスケア等の分野におけるインダストリアル事業を展開する GE グループ(以下、「同グループ」という)の日本本社である。

同グループは2012年には「インダストリアル・インターネット」として“製造業のデジタル化”を打ち出し、ソフトウェア部門に巨額の投資を行い、その重要さを社員に徹底的に教育し、デジタル・インダストリアル・カンパニーへの変革を加速している。人材データベースや人材評価制度等、グローバルで共通のプラットフォームを構築し、全世界の同グループにメッセージを一斉に発信している。

(2) 採用に関する取組と課題
同社では、新卒・中途採用ともに国籍問わず職種別の募集を行っている。同グループの海外法人からの人事異動もあるが限定的で、現在同社に駐在員として滞在している外国人社員は数十名程度である。同社の職種のほとんどは日本語が必須であるため、日本語が話せることが採用の要件になっており、海外からの直接採用は行っていない。

毎年新卒一括採用で若干名採用し、その内の数名が結果的に外国人となる場合が多く、その多くは留学生である。合同説明会、就職フェアへの参加、ターゲットとする大学でのオン・キャンパス・リクルーティング等、日本人学生の採用と同様の採用活動を行っている。

職種別採用を行っており、ウェブサイトの公募情報にはジョブ・ディスクリプションを明示している。採用された職種と異なる職種に配属されることはない。ジョブ・ディスクリプションは仕事の概要を示しているにすぎず、入社後に高い評価を得るためにはジョブ・ディスクリプションの内容以上の付加価値を出す必要があるとの考えである。

中途採用は多数行っており、採用エージェント等を通さずダイレクトに候補者にアプローチを行うことが主流になっている。

【インターンシップ】
同グループでは、インターンシップは会社としてインターンの能力を見極めることができ、インターンは会社の雰囲気、仕事内容を知ることができる機会となることから、採用における失敗を減らすことのできる有効な採用手法であり、大切なパイプラインと位置付けている。

同グループの海外法人では、非常に多くの職種で導入されて採用に直結しており、インターンシップを経由しないと入社できない部署もあるとのことである。同社では、採用に積極的には利用していないが、評価の高かったインターンが改めて同社に応募し、結果として採用につながる例はあるという。

同社で行っているFMP(ファイナンシャル・マネジメント・プログラム:財務・経営リーダー養成プログラム生)では、1か月~1か月半に渡って実務に近いプログラムを行っているが、それ以外のプログラムは1週間程度の職場体験に近い内容で実施している。

(3) 定着に向けた取組と課題
【ファンクションリーダーの役割】
同社では強いチームを作るため、各カンパニー(発電、石油・ガス、ヘルスケア等)のファンクションリーダー(財務部・営業部等の部門長)にオーナーシップを持たせ、カンパニーの経営戦略に基づく事業計画・採用計画の立案、人材の採用・育成等すべてを任せている。

各ファンクションには人事部からHRパートナー、財務部からファイナンス・パートナーがついて、ファンクションリーダーに対して人事面、財務面からのサポートを行っている。

ファンクションリーダーに人事権を持たせ、人材育成、優秀な人材の見極め方、人材に要するコスト等について、自身の問題として考えさせている。公募の際のジョブ・ディスクリプションもファンクションリーダーが記載し、インターンシップを行うかどうかもリーダーの判断による。

人事はHRパートナーとして各部門を担当する。人事のプロとしてアドバイザーに徹し、積極的に現場や会議の場などに参加してビジネスと社内の人材に対する理解を深め、ビジネスの成功に貢献するよう取り組んでいるという。

【給与設定のガイドライン】
主に採用時のために、人事で標準的なジョブ・グレーディング(職種・職級の設定)と給与の目安額を作成している。各カンパニーが募集するジョブに対して、ジョブ・ディスクリプションと給与をテンプレートとして示すことで、給与設定をシステマティックに管理し、各カンパニーの採用活動の効率化を図ろうとするものである。

【キャリア形成】
大半の社員は同じ部門の中でキャリア形成をするが、希望をすれば他部門への異動も可能である。異動するためにはポスティングシステム(社内公募制度)に応募し、面接を受ける必要がある。ただし希望者と受入側で直接話を進めることは許されず、平等性の観点から、空きのポストがあれば、全社員が見られるように7日間社内公募を出さなければならない。

ポスティングシステムを経由することで、同グループの海外法人の公募に応募することも可能である。スペシャリストとしてのキャリアを重ねるうえで、異動も基本的には各社員の選択に委ねており、“キャリアは自分で作る”ということを徹底している。

同社では、経営者を外部からあまり登用していない。同グループは事業規模が大きく、かつ多様なビジネスを持っているため、優秀な人材が飽きることなく大きなチャレンジに挑み続けられる環境が整っているとのことである。

【研修】
同グループには、ファンクショントレーニング(部門ごとの研修)と、リーダーシップトレーニング(全社員が対象の研修)がある。また研修には必須のものと選択のものがある。リーダーシップトレーニングは米国にある同グループの研修施設で、グローバルから選抜された社員に対して行われる。リーダーの階層ごとにプログラムが用意されている。

参加者は、毎年行われるタレント・レビューで選抜される。同グループにはエリートを選抜して育てるという考えはなく、毎年成果を出した人が選抜され、その結果は毎年リセットされる。この研修への参加がダイレクトに昇格につながるわけではないが、リーダーシップトレーニングに選抜された社員が、世界中の人材から刺激を受けて、モチベーションが高まった状態で各国の職場に戻っていくことが期待する効果であるという。

【評価】
<ピープル・レビュー>
毎年1回、特にリーダー層の強み・弱みを掘り下げて、昇給・昇進についての議論を行う「ピーブル・レビュー」を実施している。高い評価を受ければ年齢、経験に関係なく昇進が可能である。自らの目標を設定したうえで自己評価を行い、それを上司が評価し、その結果に基づいてピープル・レビューが実施される。

まずグループの最下層のチームにおいて、チームマネージャーが上司と人事に対して部下についてのプレゼンを行う。上司はその上の上司と人事にプレゼンを行い、これが最上層の会長まで行われ、同グループ全員がレビューを受ける仕組みである。

<評価制度の見直し>
同社では、デジタル・インダストリアル・カンパニーへの変革を加速するなかで、人事制度の見直しを行っている。人材評価ツールによる評価レーティング付けをやめ、日々の業務のなかで上司と部下が対話することで、一定の評価を定めていく方法に切り替える。急成長しているITスタートアップ系企業をベンチマークし、硬直化した評価の仕組みからの脱却を図ろうとしている。

この背景には、同社が大企業化の弊害を課題として認識していることがある。すなわち、本部の影響力が強大過ぎて、動きが鈍くなっているということが懸念されている。そのため、ITスタートアップ企業のような迅速性に学び、社員の顧客志向を促し、現場を信頼しながら権限移譲を促進することを模索しており、個人の評価にとどまらず、多様性を引き出し、より顧客に与えるインパクトを評価できる仕組みを検討しているという。

【海外事業所・現地法人における採用活動・人事制度】
採用は、各国の法人ごとに行われている。同グループは、各法人のリーダーには、現地の人材を育成して登用すべきとの認識である。国をまたいだ人材の異動は戦略的なグローバル人材育成のため以外には頻繁には行われていないとのことである。

同グループでは全社員を登録したデータベースを構築しており、各職種・職位に応じたアクセス権が設定されている。登録されている情報は各社員の評価、昇進の可能性、過去に受けたトレーニング、キャリアの関心等であり、項目は全世界共通である。海外法人からの採用を検討する際に参照することはできるが、各社員の情報を閲覧するには本人の承諾が必要であり、実際に異動させるためには社内のポスティングシステムを経由する必要がある(前述)。

グローバルでの異動が必要となった場合には、給与ガイドラインが策定されており、どこの国で働いても現行の生活水準が下がらないことを目標としている。

6.1.2 A社(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
同社は重電、ITシステムなどをグローバルに展開する大手企業。外国人材採用に力を入れている背景には、リーマンショック以降、ビジネスを取り巻く環境が厳しくなったことがある。

国内マーケットだけでなく、海外で新たなビジネスを開拓する必要が生じ、同社では2011年度から、「グローバル人財マネジメント戦略」を策定・実施している。企業の成長を海外に求めることに加え、グローバル市場において総合力で戦う必要に迫られ、企業の求心力を強めるためにグローバル共通の基盤を構築し、急激に変革を進めた。

<グローバル人財マネジメント戦略>
·2011年6月、「グローバル人財マネジメント戦略」をリリース。国内・海外を問わず、共通の制度をもって優秀な人材が活躍する制度を指向する。
・2012年度より、海外で活躍することを前提とした「グローバル要員」採用をスタート。外国人の採用比率10%を目標として掲げ、対外的にも示している。
·2011年度からは、若手社員に海外経験を付与するために、1年間に約1,000人を海外に派遣。マネージャー研修も全面的に改訂し、ローカル人財、日本人、外国人の区別なく育成する方針を打ち出した。
·グループ・グローバル共通のパフォーマンスマネジメント・タレントマネジメント・職務評価基準などのマネジメント基盤を策定した。
·グローバル人財マネジメント構築は、3つのフェーズで行われている。

(2)採用に関する取組と課題
以前から外国人材の採用は行っており、現在は250名程度。日本での外国人材採用は、大学・高専卒の留学生の新卒採用がメインで、研究職以外は日本語が話せることを前提としている。2012年度より外国人の新卒採用比率10%を目標として掲げ、対外的にも示している。2014年度、2015年度ともに採用比率10%を達成している。新卒採用者に対してジョブや権限を明確に示すことで、優秀な留学生を採用したいと考えているが、日本人と同じ働き方になっているのが現状である。

現在、取締役の2/3を社外から迎えており、うち半数が外国人材で、グローバルな視点、多様な価値観を経営に反映できる形をとっている。世界4地域(米州、中国、アジア、欧州)に総代表を任命し、事業のグローバル推進体制を確立している。

(3) 定着に向けた取組と課題
【人事制度面】
グローバル人財戦略は、外国人材が活躍する素地として様々な面で影響を与えている。ジョブ・グレード制度によって、外国人・日本人の区別なくグローバル共通の職務評価基準を用いてポジションを格付けることにより、透明性と公平性が保たれるようになった。

また、「グループ・グローバル人財選抜育成システム」にアサインされると、自身が選抜者であることの自覚が芽生え、チャンスが与えられたというモチベーションにつながる。新たなグローバルでの研修は、企業理念、コアバリュー等をマネージャー以上に理解してもらうことが目的であるが、特に日本においては、上司の背中を見て育つのではなく、業務を定め、責任を明確にするという、仕事を基軸とした働き方につながる取組である。

<グローバル人財データベース>
·各社が管理している人財に関するデータを、ひとつのデータベースに集積する仕組みを整えた。個人のデータを一括して確認できるだけでなく、経営の観点からマクロな傾向の分析、リソースの配分の最適化等に利用することも可能である。
·また、ジョブ・グレード制度を活用し、適切な人材を適切なポストに国をまたがって異動させることも可能になった。

<パフォーマンスマネジメント>
·組織と個人双方のパフォーマンス(成果と行動)を継続的に確認・改善していくマネジメントプロセスで、グループの目標を、グローバル全体の社員にブレイクダウンし、個人成果と組織成果を連結させるものである。このプロセスにおける、フィードバックやコーチングなどの社員に対する働きかけもグローバル共通で行い、グローバル共通ITシステムでサポートする仕組みになっている。

<グループ・グローバル人財選抜育成システム>
·事業運営上重要となるキーポジションに「年令・性別・国籍・学歴」を問わず最適な人財を配置できる状態にするため、必要な経営リーダー人財を確保・育成する仕組み。各キーポジションに求められる役割・コンピテンシー・経験等を明確にし、国内外からその候補者を選抜し将来のリーダーとして育成する。

<グローバルベースでの人財育成>
·日本人社員中心であった経営研修について、グローバル統一の研修体系に再構築を行った。管理職に登用されたら、「マネージャー・マイルストン研修」として、全世界どこでも同じ研修を受ける仕組みで、マネージャーとしての意識づけが行われている。

<従業員サーベイ>
·従業員サーベイをグループ・グローバル共通で実施。自社について理解し課題を認識し改善に繋げるだけでなく、欧米のグローバル企業との比較も行っている。

【労働慣行・職場環境面】
日常生活における必要最低限の日本語能力を身に付けてもらうために、全社的な日本語教育制度をスタートしている。研究職であれば英語だけで業務を遂行できるが、それ以外の職種では日本語が必要で日本語能力試験N2レベルは習得してほしいとしている。

(4) 制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
高度人材ポイント制は、留学生(卒業生)に適用するには年収、就労経験等の基準が高く、「高度専門職」の在留資格ではほとんどないとのことである。

6.1.3B社(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
同社は自動車関連の大手メーカーである。同社ではグローバル展開が進展し、本社の役割が日本国内の事業の統括から、グローバルな事業の統括へと重点が移るにしたがって、日本人のみで意思決定を行うのは問題があることから、外国人材の社員及び経営陣を受け入れる必要性が高まっていった。さらに海外パートナー企業との資本提携、海外採用された優秀人財の登用といった経緯もあり、外国籍社員の日本での出向受入が増加した。

(2)採用に関する取組と課題
同社では新卒採用、第二新卒採用、キャリア採用、トップエグゼクティブの採用を実施している。以下では主に新卒採用について述べる。同社では、海外大学を卒業、または海外留学や在住経験がある日本人、日本で暮らしている外国人、ずっと海外で生活してきた外国人を「グローバル人材」と位置づけ、一定以上の比率で採用するよう意識している。

新卒採用でも職種別採用を実施している。この背景には、自動車業界では一定の専門性を持たないと社内でキャリアを形成しにくいとの考えがある。外国人材はジェネラリストとして採用されることに対して、違和感を覚える人が多く。キャリアパスや仕事内容を明確に見せることが重要であるとの指摘があった。

国内での採用のほか、海外大学の卒業生及び既卒者を通年採用している。直接ウェブサイト(英語版も作成)を通じて応募を受け付けている。エンジニアに関しては、共同研究先の大学の教授からの推薦や、インターンシップを経ての採用もある。

また、上述した一般的な採用と別に、海外のビジネススクールの学生向けの採用・育成プログラムを実施していある。対象者は欧・米・アジアのトップクラスのビジネススクールの卒業生(日本人を含む)で、年間5~10人の採用を目標としている。本プログラムを通じて採用された人材は、5年間で地域横断・部門横断でローテーションされ、早期に複数の地域や部門を経験させることで、ビジネスリーダーへの育成スピードを速めている。

(3) 定着に向けた取組と課題
【ジョブ・ディスクリプション】
同社では、ジョブ・ディスクリプションは作成しておらず、新卒採用時は提示していないという。ポジションが多く、技術革新が速いので、ジョブの内容のアップデートも常に必要であることも背景にある。

一方、キャリア採用者や外国人を出向で受け入れる際は、ジョブ・ディスクリプションを作成して明確に説明している。

【人材育成と昇格】
同社ではいわゆる年功制は撤廃しており、一般層には3階層、マネージャー層には2階層に分かれるのみである。各階層の中で2~3年程度で期待される専門性を発揮できるよう、成長曲線を描いているとしており、実力がある社員なら速いスピードで昇格できるという。

この背景には、自動車業界は安定的な業界ではなく、技術革新も市場変化も速いので、人材が常に成長し続ける必要があるという同社の認識がある。また、入社後年三回キャリアについての面談を行っている。

【マネージャーと人事部の役割】
同社では上述のように社員の成長を促すことを重視している。そのためには、現在の仕事と将来(半年~2、3年先)の仕事内容を明確に説明し、具体的な成長ステップを示して理解してもらわなければならない。こうした説明を常に求められるマネージャーの役割は重いため、人事としてはマネージャー向け研修に力を入れるとともに、データを集めたり、マネージャーに言いづらい社員の意見を集めたりするなど、マネージャーを支援する取り組みに力を入れているという。

同社では現状では外国人材が経営層に多く、一般社員には少ないのが特徴であり、今後は後者が増えることが予想されることから、外国人部下を持つ上司向けのマネジメント研修も必要になるとの指摘もあった。

また、将来のビジネスリーダー候補人材にグローバル・マネジメントのスキルを習得させるため、階層別にステップを分けて育成するプログラムを構築しているところである。また、実力ある社員には早い段階(入社3年程度)で海外でのビジネスの経験を積ませるようにしている。

【海外事業所・現地法人との関係】
同社では国を越えて社員を異動させる際は、必ず本拠地に籍を残し、出向扱いとする。グローバルでの評価・報酬制度の統一は道半ばで、地域単位で統一された制度・プロセスをグローバルに統一を図ろうとしているところであり、部長級以上については既に緩やかに統一をしている。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【生活環境】
インターナショナル・スクールが、不足しているという指摘があった。同社の場合は、一般的な入学時期である10月以外に来日する外国人材も多く、その場合は学校の申込時期が過ぎていて、空きがなくなっているケースもあるという。

6.1.4 味の素株式会社(製造業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は食品、バイオ・ファイン、医薬・健康といった分野で事業を展開する企業である。2011~2013年の中期経営計画において、真のグローバル企業を目指す方向性が打ち出されたこと等を契機として、多様性を推進するために日本人とは文化や育った環境が異なる人材が必要という考えから、新卒採用を中心に外国籍人材の受入れを増やすこととなった。

海外現地法人は、独自に採用を行っているので、日本本社で採用する外国籍人材は日本で働くことを前提として日本人と同じ基準で採用しており、日本語能力は必須としている。

(2)採用に関する取組と課題
同社では新卒採用はLコース(全国型/総合コース:海外を含む全国転勤あり)とMコース(地域型/専任コース:原則、転居を伴う転勤なし)に分けて行っている。Lコースの採用の1割程度(2015年採用では45名中4名)が外国籍人材で、国籍としては中国や韓国が多い。国籍にかかわらず採用しているが、採用ホームページで先輩社員として紹介するなど、外国籍人材を採用しているというメッセージを出しているという。

また、事業ニーズに応じて中途採用も行っているが、これは国籍に関係なく採用を行っており、日本人を採用する場合が多い。

(3) 定着に向けた取組と課題
同社では配属は国籍に関係なく行っており、国内営業に従事する外国籍人材もいる。職種別採用ではなく、また様々なキャリアパスがあり、そのことを採用ホームページで掲載しているほか、丁寧に説明している。

全社員が年に1回、キャリア開発面談を行って、本人のキャリアプランを把握したうえで、人事部や上司が適性やタイミングを考慮して異動について決定している。

ジョブ・ディスクリプションは明示していないが、世界の各法人共通でジョブ・グレードを定義する動きに合わせて、国内でも基幹職(課長職以上)については職務記述書を整備しているところ。

同社では日本語ができることを前提に外国籍人材を採用しているが、一方で四半期決算等重要な社内広報については日本語と英語で作成・配信している。

【海外事業所・現地法人との関係】
同社グループ全体では約3万人の従業員がおり、その6割以上が日本以外の国籍の社員である。海外の現地法人では採用を独自に実施しており、社長や役員が日本人でないケースが多い。また、同社グループは英語を共通語とはしていない。特に家庭用市場に関しては、食文化は国によって異なり、各国法人が現地のお客様に対して事業を展開しているため、現地社員が現地の言語でビジネスを行うことを基本としているという。

一方で、同社グループの社員の力を最大限発揮できるよう、世界で200名くらいの次世代の経営幹部候補が国境を越えて異動できるようなプラットフォームづくりを目指している。

そのために、ジョブ・グレードの統一化や、各現地法人におけるポジションや人材のデータベース作りに先行して取り組んでいる。また、同社の5つの地域本部(ラテンアメリカ、中国、ASEAN、欧州・アフリカ、北米)から優秀な人材を選抜した研修を実施し、その中でもより優秀な人は日本へ呼んでグローバル選抜研修を行っている。

既に欧州法人で経営層として中途採用され、その後日本本社の役員(事業部長)として抜擢された人材もおり、今後、同様に日本本社に海外法人から優秀な人材を連れてくる取組が増えていく見込みであるという。

6.1.5 株式会社LIXILグループ(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
トステム株式会社、株式会社INAX、新日軽株式会社、サンウェーブ工業株式会社、東洋エクステリア株式会社の5社が統合し、2011年に株式会社LIXILグループが設立された。同社は、株式会社LIXILをはじめ、住生活産業に関わる子会社208社、関連会社85社を傘下に持つ純粋持株会社である。

メイン事業である建材・設備機器分野では、これら5社はリーディングカンパニーの地位を築いており、創業以来の歴史を引き継いで業績を上げてきたという自負がかえって災いして、統合後もひとつの体質となることは難しかった。さらにPermasteelisa(イタリア)、GROHE(ドイツ)、American Standard Brands(米国)といった海外企業のM&Aが具体化、国内5 社と海外拠点の一体化が求められ、それを実現するためには「グローバル企業」という一つの「船」を新たにつくることが唯一の選択肢であったという。グローバル化を進めなければ、国際競争で勝てないとの強い危機感もあった。

グローバルな経営に携わる人材を社内で育成した経験がないため、同社では、外部から海外経験のある人材を中心に採用することとなった。現在、外国人役員は3名で、それぞれパブリックアフェア(広報・CSR)、法関連、キッチン分野を専門とし、株式会社LIXILグループもしくは株式会社LIXILの役員に就任している。このほか、同社のテクノロジーカンパニーのうち、ウォーターテクノロジー及びビルディングテクノロジーについては、M&A先のドイツ及びイタリア企業の人材がトップについている。

同社が必要とする外国人材は、特定領域に専門性を有するスペシャリストで、かつ同社での働き方を理解できる人材とのことである。また、将来の変化に対してチャレンジできる人材でないと、同社には適さないと考えている。同社は継続して組織変革を行っているため、環境への適応力働き方が求められている。

(2) 採用に関する取組と課題
中途採用の外国人社員は2014年度で9名、2015年度29名、これらに加え役員3名の合計41名が在籍している。日本人の中途採用者数は、外国人の2倍程度。役員以外では、経営企画部門などを中心に採用しており、戦略系などコンサルティング業界経験者等が多く、今のところ技術系の採用は若干名に留まる。中途採用者の年齢層はポジションによって異なるが、最も多く採用しているのは課長クラスである。

外国人社員の大半は、LIXILグループのうち、4つの事業体を除いた本社機能(人事、財務、法務他)に所属している。中途採用者は、エージェントからの紹介が大半を占める。外国人であることを条件として紹介を依頼してはいないが、今は日本語を話せることを条件としている。ただしこの点は今後変わっていく見込みとのことである。

留学生の新卒採用も、始めている。日本人の新卒採用と同じプロセスで行っており、留学生採用に特別な要件は設けておらず、インターンシップ、入社後のトレーニング等すべて日本人と区別なく実施しており、一定の日本語能力が求められている。今後は、海外に留学している日本人学生や、海外大学の優秀な外国人学生にも目を向けて、採用を検討すべきと考えている。

(3) 定着に向けた取組と課題
外国人社員との雇用契約は、正社員や契約社員等、人によって条件は異なるが、基本的にポジションの要件に基づくものである。特定のプロジェクトに採用するケースでは、雇用期間はプロジェクト期間となる。有期雇用のポジションは、概して本人のパフォーマンスが会社の業績に大きく影響する重要なポジションであり、処遇条件も高くなる(ハイリスク・ハイリターン)。

正社員については、日本人と処遇体系は同じものを使用している。新卒採用の留学生は、日本人社員と同様にジョブローテーションを行うが、スペシャリストになるためには、一定期間、同じ部署で経験を積むことが不可欠と考えており、フレキシブルに対応したいと考えている。

外国人の処遇における最大の課題は、従来の処遇体系の限界であるという。現在人事改革を進めているが、目標としている処遇体系に急激に変化させることは不可能で、徐々に移行せざるを得ない。中途採用者の前職の給与は、外資系企業、業種としては金融・コンサルティング業界は概ね高収入であるが、日系の事業会社から採用する人材とのバランスをとる必要があるため、結果として高収入の人材と交渉を重ね、多くの人材が年収を下げて入社している。

同社の魅力、ならびに日本企業における収入は低いが長期雇用という、ローリスク・ローリターンのメリットを理解できる人材が入社している。同社は組織変革の途上にあり、ジョブ・ディスクリプションが変わり得るため、フレキシブルに働いてほしいということを、採用時に昏々と説明している。入社後のトラブルを避けることがその理由である。

しっかりとした組織運営ができるようになれば、ジョブ・ディスクリプションによるトラブルの可能性もなくなり、職務記述書が明確な方が、優秀な人材を採用できると考えている。

また、特にコンプライアンス遵守を徹底しており、「Code of Conduct」という全世界統一の冊子を作成し、適宜見直しを行っている。グローバル化に伴い、多様な人材が集うことによって生じる意識のずれが、差別やセンシティブな問題への配慮不足につながることを危惧したものである。

【海外事業所・現地法人との関係】
海外拠点における採用は、各拠点に任せている。

(4) 制度及び生活環境に関する課題
【生活環境】
海外に居住していた外国人が採用を機に初めて来日するケースもあるが、日本での衣食住について、個人の事情に立ち入った支援は行っていない。住居については、同社の借り上げ住宅に入居させている。学校については、相談があれば対応しているが、本人が自主的に情報を収集しており、たいていはインターナショナル・スクールを利用しているとのことである。

家族がいる場合、単身で日本に赴任するということはなく、必ず家族を帯同するため、今後、日本が外国人材を多く受け入れるようになると、インターナショナル・スクールが足りなくなるのではないかとの指摘があった。

【在留資格】
在留資格の取得・切替の支援を行っており、場合によっては行政書士に依頼している。同社は欧米国籍の外国人社員が多いが、国籍によっても手間などはかなり異なるとの指摘があった。

【海外所得に関する課税・社会保険料の負担】
外国人社員は、国内外の双方で所得税が課税されるケースがあり、その場合は手続が非常に煩雑である。以前は、会社側で手続きを行っていたが、会社側の負担が大きいため、現在では本人に納税手続を任せており、個人契約で税理士に依頼するなど苦労しているようだとの指摘があった。

また、外国人社員も厚生年金制度に加入する必要があるが、国籍によっては、自国と日本の加入期間を通算できず、保険料が掛け捨てになってしまう場合がある。米国等では加入期間の通算が認められるが、さらに多くの国で通算が認められるようになれば、外国人材に来てもらいやすくなるのではないかとの指摘があった。

6.1.6 C社(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
同社は2003年に設立された、精密機器、輸送用機器等の開発、設計、製造、販売を行う大企業である。

将来の同社の海外取引比率の増加予測から、2008年頃に大学卒業者の新卒採用において、外国人を採用する方針が打ち出された。2009年前後から外国籍の学生の応募が増え、海外でも採用活動を行うようになった。

面接の際には、適性、専攻内容、日本語や英語等の力をみて合否を決めるようにしている。配属においては、理系のエンジニア職は海外顧客向けの開発、文系は海外顧客向けの営業職といった担当になることが多い。

同社は制御機器を取り扱うことから、機械系、電気・電子系の人材を多く採用している。できるだけ多様な国籍の人材を確保しようとしているが、海外事業の展開先も考慮されている。

結果として、母数が多く、漢字の理解ができる東アジアの人材、特に中国人の採用実績が多くなっている。

海外営業職の場合には、英語はビジネスレベルがあれば望ましく、これに加え外国籍社員は母国語を駆使できるため大いに戦力になる。中国の鉄道産業や航空機産業に携わりたいなど、入社目的が明確な留学生も多いが、必ずしも希望通りにならないことは、面接時に伝えている。

(2) 採用に関する取組と課題
同社の新卒採用数(大卒)は、多くて年間30名程度である。2016年度の新卒採用者に占める外国人材は2割であった。外国人材では中国籍が最も多く、次いで韓国籍、ベトナム籍となっている。人事部の役割は各カンパニーのサポートであり、各カンパニーからのニーズを満たすよう、人材を確保している。

【国内・新卒採用】
留学生向けの就職イベントに参加している。

【国内・中途採用】
人材紹介サービスを利用し、新卒採用と同数程度、又は、より多くの人数を中途採用で確保している。明確な要件を人財紹介会社や募集サイトに提示し、ニーズに即対応できる人をピンポイントで採用している。ニッチかつ高い技術レベルが必要となるため外国人材はあまりいない。

【海外・新卒採用】
同社のビジネスは、仕様に従って開発を行う受託開発が主であり、MRO(Maintenance,Repair and Overhaul)も重視している。

ほとんどの研究開発部門は日本にあり、業務を遂行するには社内でのコミュニケーションが重要となるため、日本語能力が必要とされる。一方、海外顧客とのコミュニケーションは、英語かその国の言語がビジネスレベルであることが望ましいと考えている。

毎年、香港や韓国、東南アジア諸国を採用のために訪問しているが、求める人材像は、技術系+日本語能力試験N1~N2レベル以上と考えているため、交換留学などを通じて、数か月間日本で学んだ経験がある学生を採用するケースが多い。

海外の大学での会社説明では、寮があり食事が提供できること、正月やゴールデンウィーク等の長期休暇があり帰国が可能であること、終身雇用であること等、日本独特の雇用慣行等を丁寧に説明して理解を得る努力をしているが、インドネシアの大学で終身雇用について説明したところ、日本の法律では60歳まで仕事を辞めることができないと解釈されたこともあった。

外国籍社員の中には、四か国語(英語、日本語、タミール語、母国語)が話せる者もいる。多言語を話せる人材は日本企業だけではなく、米国企業なども就職先の選択肢となり競合することになる。技術系かつ日本語人材を増やすため、海外大学での寄付講座を検討したことがあり、こうした取組に対して国からの支援があるとよいとの指摘があった。

【インターンシップ・プログラム】
日本人学生、留学生を問わず参加できるインターンシップ・プログラムを実施している期間は1週間程度で、機電系人材のみの研修としている。これまでの実績として、日本に留学して間もない人材を受け入れたこともある。

工場は地方に所在するため、学生を受け入れる場合には、衣食住すべてをサポートする必要がありインターンシップにはコストがかかる。また、インターン生には丁寧に指導をすることが必要であり、現場の従業員にとってかなりの負担となるため、期間は長くても2週間が限度である。

1~2週間と短いとはいえ、同社に対する学生の志望度を高められる効果もあり、よい機会ととらえている。

(3)定着に向けた取組と課題
【定着率】
同社の社員は定着率が高いが、最近外国人材の離職が目立つようになった。自分の想定外の部署に配属となったり、一定期間働く中で、あらためて日本の企業の仕事の進め方等に違和感を覚えたりすることが離職の原因になっていると認識している。

人材育成の一環としてローテーション制度があるが、日本人社員を含め、キャリアパスを明確に提示でき、異動もその一環であることが認識できなければ納得感は得られないと考えている。

【新卒採用者の育成、研修】
採用後3年間はトレイニ―扱いとなり、配属先の先輩社員が教育担当となって、OJT主体で業務知識を吸収してゆく。外国人向けの特別な研修はないものの、特別にリクエストがある場合は、例外的に日本語学校に通わせたことはある。

【ジョブローテーション】
同社にはジョブローテーション制度がある。特にマネージメント職以上に昇格させる人材には、カンパニー内の 2 職種、もしくはカンパニーをまたぐ経験を要件としている。ローテーション先は主に会社が決める。当然ながら、社員本人の希望も聞くものの決定要因とはならない。

【昇進制度】
職階の数が多く、非管理職(一般職)についてはすべての職階に昇進試験があるため一つずつ上がらなければならず、マネージメント職までの昇進スピードは遅い。この階級は7級に分かれており、主に学歴で入社時の職階が決まる。

中途採用者は、前職の経験値や業務知識に応じて職階を調整するが、前職の年収がキーになり階級が決まることもある。

特に外国籍人材はキャリアパスが見えないと感じて辞める人もいるため、現在、人事制度を変える必要性を感じている。外国籍人材からは、昇進が遅いために母国の同年代の学友等との役職の差や年収の差を懸念する声も出ている。

従って、優秀な人材がもっと早くマネージメント職に就けるよう階級をいくつかまとめることも検討課題としている。昇進試験は適性試験、レポート、面接の三部構成になっているが、試験はすべて日本語で実施しており、今後は見直しが必要と考えている。

【労働時間】
各部署によって仕事のピークは異なる。例えば人事部門で考えると、採用で忙しい時期と旧正月が重なり帰国もできないため、
ゴールデンウィーク等に合わせて年次有給休暇も取得してもらい、バランスをとっている。

【海外事業所・現地法人との関係】
日本本社と海外現地法人の採用活動・人事制度は、完全に異なっている。しかしながら、グループ企業の一体感を高めるために、現地のカンパニーの経営層や優秀な若手エンジニアに「企業内転勤」という形で日本に異動してもらい、同社のビジネス
を習得してもらうことで、モチベーションを高めることを試みている。

(4) 制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
資格更新の際、入国管理局は土日祝日が休みであるため、平日に手続に行かなくてはならない。同社は業務外出として経費も時間も配慮しているが、せめて土曜は営業日にしてほしいとの要望があった。

また、海外法人から「企業内転勤」で日本に招へいする際、特に大卒でない若手人材の場合に認められることが難しいとの指摘があった。

【生活・環境】
子供が日本の幼稚園・保育園に馴染めず、離職、帰国する外国籍社員がいたことから、インターナショナル幼稚園や、ベビーシッターを安く頼める制度があるとよいとの指摘があった。

6.1.7 D社(製造業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスを提供する企業である。

2006年ごろから、本格的に外国人材を受け入れている。その理由としては、日本人とは異なる環境で育ったことによる着眼点や発想、思考プロセスの違いを持つことが重視されている。特に同社の属するICT業界は変化が激しいため、そうした人材が日本人社員と関わる中で組織を活性化し、新しい価値の創造やイノベーションを促進することが期待されている。

(2) 採用に関する取組と課題
同社では、外国人材は主に新卒採用を通じて受け入れている。新卒採用者約500名の1割程度を外国人材とすることが目標としており、実績としては最大で年間40名程度を採用している。大半は日本への留学生からの採用であり、留学生向けのフェアや合同説明会に参加してアプローチしている。

海外の大学へのアプローチとしては、シンガポールで開催されている、ASEANの上位大学の学生と日本企業向けの就職フェアに参加している。以前、米国でオンキャンパルリクルーティングにより、有期雇用(嘱託)として同社(日本本社)で採用し、入社 3年目に日本に残るか海外法人で働くかを選択させるプログラムを実施したことがあるが、その際に採用した外国人材は 3 年経過する前に全員やめてしまっている。

この背景には、日本企業の雇用形態やワークスタイル、日本の社会・生活習慣を知らない外国人を直接受け入れたために、入社後に様々なギャップが生じてしまったと同社では考えている。

このように海外からの採用は特にミスマッチが生じやすいと同社は考えている。そこで同社では海外から採用する場合は、採用前に日本の生活スタイル、日本特有の働き方、昇進のスピード感を伝えている。それに加えて、日本企業や日本という国について体験して理解してもらうため、特に日本での生活経験、渡航暦がなく、日本語でのコミュニケーションに難のある学生を対象として、インターンシップを実施することにしている。

期間は4週間で、費用(日当、家賃、携帯代、交通費等)は同社が負担、三食の食事代相当の日当を支給するが、給与は出さない。初めてこのインターンシップの受入れを行ったときは、英語でのコミュニケーションが前提となるため、負担が大きいとの考えから社内の抵抗が大きく、受入れ部署の開拓に苦労したというが、実際の受入れを通して、日本人とは異なる人材の価値(モノの見方、思考プロセス、発想等)が認識されたことにより、2度目以降の受入れでは受入れ希望部署が大きく増加しているという。

なお、新卒採用は一部の学校推薦採用による特定技術の専門家を除けば、特定のスキルや知識を期待するのではなく、いわゆるポテンシャル採用であり、外国人材に関しても同様である。また、日本語能力は入社後でも身に着けられるという考えから、入社段階では考慮されない。本人の日本語レベルや、配属先の必要度に応じて、入社前後に日本語教育を行っている。

海外からの直接採用の場合は、特に海外企業と競合になる。同社では、給与面では欧米企業に対抗することは難しい。シンガポールなど東南アジアの人材もジョブ・ディスクリプションが明確であることや高い報酬を望んで欧米企業を選択する人材が多いが、その一方で個人主義的な欧米企業ではなく、日本特有のチームとして動くこと、自己成長の機会に恵まれていること、最先端技術を持つ企業で刺激的な環境で働くこと等を望む人材が、同社に魅力を感じて入社してきているという。

(3)定着に向けた取組と課題
同社では新卒一括採用を行い、長期雇用を前提に採用した人材の育成に企業が投資し続けることは、社員の企業へのエンゲージメントを高める点で有効な仕組みと考えている。

なお、ジョブ・ディスクリプションは作成していない。また、FA制度を通じて職種を変えることは可能であるが、職種を越えたジョブ・ローテーションは少ない。

しかし今後は、高い能力を持つ「尖った」人材を、役員級の報酬を与えて有期雇用とすることも検討する意向を持っているという。また、選抜した幹部リーダー人材に対しては、他部門・海外を含む多様な職務経験を意図的に付与することを計画している。

【グローバル共通の人材マネジメント】
同社では経営方針の実現に向けて、グローバルな人材活用・人材マネジメントの基盤づくりを進めており、グローバルな組織・人材の見える化や人事的インフラ整備に取り組んでいる。

具体的には、グローバル共通の職責レベルを導入のうえ一定レベル(日本本社の本部長クラス以上やグループ会社の社長)以上をグローバルキーポジションとして明確化し、報酬制度の一部や育成等において共通人事施策の導入を進めている。

こうしたインフラ整備を通じ、グローバルに“適所適材”の人材配置を進めたいと考えている。一方で、日本から海外現地法人への出向者は多いが、海外法人から日本への出向者数はまだ少ない。ビジネス慣習を含む労働環境、業務内容等の違いが大きな壁となっており、加えて、海外では一度そのポジションを離れるとすぐに替わりの人材がアサインされ、戻り先がなくなってしまうという問題もある。

国際間のローテーションに関するルールづくりを進めながら、グローバルなローテーションの活性化を図っていきたいと考えている。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
(海外からの採用の場合)在留資格認定証明書を申請する際に代理人が窓口に行く必要があるが、同社はこの申請をウェブ経由で可能にしてほしいと考えている。また、同証明書発行までの期間が1~3ヶ月と不明確であるため、同社からは追加費用を出せば早期に審査する仕組みを導入してほしいという要望があった。

在留資格「特定活動(インターンシップ)」については手続きに時間がかかる、との指摘があった。また、永住権の取得に関して、いったん帰国すると、永住権取得に必要な在留期間がリセットされてしまうのは問題との指摘もあった。

【生活環境】
駐在員やその家族を含め、日本語が話せない人材の場合は英語で対応できる医療機関が少ないことが問題となっているという。また、入社当初は寮に入る外国人材が多いが、退寮後に住居を借りる際に外国人材は保証人が必要である場合が多く苦労しているという。

【その他】
社会保障協定を締結している国が15か国にとどまり、それ以外の国の出身者は年金の二重支払いや受給資格を得られない(掛け捨てになる)等の問題が生じることが問題との指摘があった。

6.1.8 E社(製造業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は電子・通信機器製造、通信ネットワーク構築、ITソリューション等を提供する企業である。

同社の外国人材採用は、以前は全体の数%程度であったが、2012年度から採用活動を強化しており(後述)、現在は10~15%程度を占めるようになっている。その背景には、同社の中期経営計画(2013~15年度)において、国内マーケットの成長が鈍化するなか、海外、特にアジアでビジネスを拡大することが必要であると示したことがある。

日本と現地との懸け橋になる人材、ダイバーシティという観点で日本人とは異なった考え方を持つ人材、国籍問わずにバイタリティがあり優秀な人材を希望し採用をしているという。特にアジアに注力するという考えから、アジアの人材が多く、さらに社内の多くのポストでは日本語ができることが求められるため、結果的に漢字圏の外国人材が多くなっている。

特定の事業や職務を念頭に外国人材を採用しているわけではなく、日本で採用した人材は、国籍を問わずあらゆる部門に配属される。ただし、海外から直接採用した人材は、英語のみで業務が可能な研究職、グローバルビジネスのマーケティング職やプランニング職、海外営業への配属が主となっている。

外国人材採用の強化が始まって日が浅いため、そのメリットは明確に整理されていないが、同社内からは、多様性という観点で刺激になっている、アグレッシブな人が多い、活性化の起爆剤になっている、といった意見が上がっているという。

(2)採用に関する取組と課題
【新卒採用】
同社は2013年度から、国内での新卒採用に加え、アジアでの現地採用やインターンシップを通しての採用も始めた。それ以降、外国人採用の割合が新卒採用全体300~400名のうち10~15%を占めており、過去3年間だけで180名程採用をした。

アジアでの現地採用は毎年数名程度であり、具体的にはアジアのトップ校として、シンガポール及びインドの上位大学の学生を対象とする採用活動を行っている。募集職種は研究職とグローバルビジネスのマーケティング職やプランニング職である。正社員として日本での新卒採用と同じ処遇であり、特別待遇はない(ただし日本語能力に関しては、日本語能力試験N4~N3レベルまでの教育は会社としてサポートする)。

欧米企業等と競合することになるが、同社に入社を決めた人材に理由を聞くと、処遇面ではなく理念やビジョンに共感した、やりたいことができる、日本という国が好き、という回答が多いという。

【インターンシップ】
上記とは別に、インド、シンガポール、タイ、米国の学生を対象に、インターンシップの受入れも実施している。期間は 6~8 週間程度で、実際に業務を行ってもらう。単位認定などは大学や学生の要望に柔軟に対応している。

受入れ部門は英語でビジネスができる部門であり、具体的には研究所、海外営業部門、全社の企画・マーケティング部門、海外
展開しているSEの部門等である。生活費補助のための手当は出すが、給与は出していない。在留資格は「特定活動(インターンシップ)」を申請している。採用を前提としたものではないが、インド及びタイの泰日工業大学の学生はインターンシップ後に採用した実績がある。

【中途採用】
事業ニーズにあわせて毎年数名程度の外国人材を中途採用している。募集元としては全社の経営方針を検討する部門、営業、事業計画・販売戦略の策定部門など幅広く、必要な日本語レベルは募集元によって異なるが、採用者のほとんどは日本で就労経験があり、日本語がある程度できる。

(3)定着に向けた取組と課題
同社の外国人材の定着率は3年で10%強であり、全社員平均よりもやや高い程度である。同社では入社2年後に社員全員と面談をする機会を設けている。同社に入社してくる外国人留学生はある程度日本企業について理解していると思うが、それでも面談の場において外国人材から本国にいる友達に比べると昇進が遅い、責任を持ったポジションに就けない、といった悩みを聞くことはあるという。また、特に海外からの直接採用者に関しては、新卒採用と同じ処遇で正社員として採用しているため、今後、欧米系企業との待遇の差が、彼らの不満の種になる可能性が懸念されている。

また、外国人社員を集めた懇親会を一度開催したが、そこでは先輩社員の話を聞くことができるなどキャリアを考えるよい場となったこと、外国社員同士の縦横のつながりを促進する効果もあったことなどから、同社は今後もこうした取組を継続する意向である。ロール・モデルがまだいないため、こうした取組が重要という。

【ジョブ・ディスクリプション】
同社の新卒採用は基本的に職種別採用であり、特に理系は職種に加え事業分野もある程度マッチングさせて決めている。しかし、ジョブ・ディスクリプションについては特段提示していない。ただし、海外からの採用の場合はポジションとそのジョブ・ディスクリプションを提示し募集している。インターンシップ後に採用する場合にも基本的にはジョブ・ディスクリプションを作成して、オファーする。(簡易的なもので代替することもある)

【海外事業所・現地法人との関係】
同社では、段階的にグローバル人事システムを導入することを計画している。グローバルの全社員の情報を本社から参照できるシステムは、2016年に導入予定である。また、数百のキーポジション(本社の事業部長以上、関係会社社長、海外法人の社長及び経理・人事担当等)を定義し、そうした人材をバイネームでグローバルで管理する仕組みづくりや、キーポジション候補者に職種を越えて異動させ、様々な経験を積ませて育成する仕組みも検討している。

国境を超えた異動の場合、転籍はなく、出向扱いとなり、日本から、海外からの双方向でありうる。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
同社の外国人材の中には在留資格を「高度専門職」への切り替えを希望する場合がある。その場合に申請に必要な書類の 1 つである「収入見込証明書」があるが、同社は支払った給与の証明書しか作成ができないため、要件を緩和してほしいとの指摘があった。

また、在留資格が「技術・人文知識・国際業務」の場合は大企業であれば簡易な書類で申請ができる特例措置があるが、「高度専門職」は特例措置がないため必要書類が増える。そのため、「高度専門職」に関する特例措置や、各ポイントの証明に必要な書類の簡素化についても要望があった。

また、「特定活動(インターンシップ)」の申請に関する問題点として、大学の休暇期間でなければインターンシップに参加できないこと、書類の審査が厳しいこと、審査の時間が長いことなどが指摘された。

【生活環境】
同社では、住宅賃借に必要な連帯保証人については、会社として肩代わりしている。医療環境に関しては、外国人社員が救急車で病院に搬送された際には英語対応が可能であったが、診療所レベルの場合は英語対応は難しいのではないかとの指摘があった。

また、首都圏以外の地域での外国人材受入れの促進のために、日本語がわからない外国人に対して、生活環境を案内する英語の文書やウェブサイトが公的に整備されていると、企業側の負担が軽減されるとの指摘があった。

6.1.9 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社(製造業、大企業)
(1) 外国人材を受け入れる理由
同社は、世界最大級の日用品・食品メーカーであるユニリーバ・グループ(以下、「同グループ」という)の日本の持株会社である。2005 年、同グループは「ワン・ユニリーバ」という方針を打ち出し、各国のグループ会社の名称を「ユニリーバ」に統一し、世界共通の組織構造や人材育成、給与等のシステムを導入した。これを機に同グループの一体化が進み、各国間の交流がより盛んになり、多様な国籍の社員と働くことが次第に当たり前になっていったという。

同社では、国籍を問わず、業務で必要となる能力や資質を有する人材を採用している。特に外国人社員に期待しているのは、まったく異なる文化の中で培ってきた価値観や考え方がもたらすダイバーシティの効果である。日本人が当たり前と思っていることに意見を出してもらい、気づきを得たいという。

(2)採用に関する取組と課題
現在、ユニリーバ・ジャパン(同グループの日本法人5社)に在籍する外国人社員は、全社員約600名のうち10名弱で、半数以上は同グループの海外法人からの転籍・出向者で、それ以外は日本本社の新卒・中途採用者である。

同社では、新卒・中途採用ともに、国籍を問わず、カスタマーディベロップメント(営業)、ファイナンス、マーケティング、R&D(研究開発)、サプライチェーンの5つの部門を中心とした職種別採用を行っている。

人材の採用については、各部門のリーダーと人事部が共同で責任を負うとの考え方で、リーダーが中心となって人事と協働し、各部門にどのような人材が必要かを考え、その人材に求められるスキルを明確化し、適切な候補者を示す等のサポートを行っているという。

同社の社員には英語力は必須であり、TOEIC720点以上を基準としている。外国人材は日本語をある程度話せることを前提としており、面接を通じて日本語のコミュニケーション力を確認しているという。

【新卒採用】
ユニリーバ・ジャパンへの入社を希望する学生は、「ユニリーバ フューチャー リーダーズ プログラム(UFLP)」へのエントリーを行う。UFLPは、新卒採用者を管理職として育成するための世界共通のプログラムである。

学生はUFLPへのエントリー後、書類、数学的思考力、論理的思考力、面接等の選考を受ける。同グループの海外法人では、UFLP
とそれ以外の採用の2つのコースが設けられているが、日本法人の新卒採用はUFLPのみとのことである。

【インターンシップ】
マーケティング部門及びカスタマーディベロップメント部門において、大学3年生を対象としたインターンシップ・プログラムを実施している。マーケティング部門は5日間、カスタマーディベロップメント部門は約3週間のプログラムで、社員とともに実務に携わる。インターンシップへの参加がきっかけとなって入社につながる場合もあるという。

(3)定着に向けた取組と課題
【ジョブ・ローテーション】
ローテーションは、原則、部門の中で行われるが、本人の希望によっては、他部門に移ることも可能であり、フレキシブルに対応しているとのことである。

【研修】
日本で実施するトレーニングに加え、グローバルで開発された階層別全世界共通のトレーニングプログラムを活用する形で、社員に対する研修を実施している。

新卒採用者については、4月の入社以降、UFLPに沿って、OJT、OffJTを含む原則4年間の集中的なトレーニングが行われ、短期の海外赴任(STA:Short-Term Assignments)もしくはグローバルのプロジェクトに参加する機会が与えられる。5年目から管理職に就くことが期待されているが、各社員の特性等に合わせて、さらに時間をかけて育成するケースもあるという。

中途採用者についても、トレーニングの機会は公平に与えられ、本人が希望すれば管理職に就く道も拓けているという。

【キャリア形成】
<IDP(Individual Development Plan)>
将来どのようなキャリアを築きたいか、どのような人生を歩みたいかについて、管理職やメンターのアドバイスを受けながら、社員本人に徹底的に考えさせ、各社員の育成プランを策定している。年2回、直接の上司と話し合う機会を設け、実現したい将来像に必要となる職務内容や研修について、具体的な計画を立てるようにしている。社員と上司の認識にずれが生じる場合には、人事が話し合いに同席し状況に適したサポートを行うという。

【人事評価】
評価は年に1度行われ、社員は各自が設定した目標に対し、どのように取り組んだかとそれぞれの達成度について自己評価を行い、最終的に上司が5段階評価を行う。

なかでも特に高いポテンシャルを有する社員は、「判断力」「推進力」「影響力」に基づく9つの項目について上司の評価の上、推薦を受けてプロモーションの候補者リストに掲載される。

一方、なかなか成果の上がらない社員に対しては、上司や人事が積極的にコミュケ―ションを図ってその原因を検討し、職務内容や職場環境等による改善を試みるという。

【グローバル・アサインメント(海外赴任)】
同グループでは、ダイバーシティの加速を主な目的とし、各国法人間を異動するグローバル・アサインメントを積極的に行っている。本人の視野が広がることに加え、自身の体験を自国に持ち帰って、周囲に刺激を与えることを期待しているという。

グローバル・アサインメントは、半年~1年程度の研修目的の滞在(STA)と、管理職以上の役職で数年間勤務する2つのパターンがある。

【海外事業所・現地法人における採用活動・人事制度】
採用は、各国の法人ごとに行われている。国をまたいだ人材の異動は、長期間にわたる場合には原則転籍となる。異動先での処遇はグローバルで設定されたガイドラインに基づいて定められ、現地の物価や国をまたいだ異動によるハードシップ(生活環境の差)を勘案した内容となっている。

6.1.10 三井化学株式会社(製造業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、ヘルスケア事業、機能樹脂事業、石化事業等を展開するグローバル企業である。外国人社員の大半は外国人留学生の新卒採用者で、それ以外に海外大学からの直接採用者、同社の海外関係会社からの出向者が在籍している。

留学生については、海外関連業務に携わることに加え、異なる文化的背景により「内なるグローバル化」の推進に寄与することを期待している。一方で「外国人社員は特別扱いしない」という方針で、採用や配属、育成等は、日本人社員とまったく区別なく行っているという。

同社では2011年より、「グローバル人材マネジメント戦略」として、次世代の経営人材の育成、ならびに海外関係会社のマネジメント層の現地化を推進しており、評価項目や報酬の決め方等のグローバルでの共通化が進められている。将来的には、同社と海外関係会社の間での人材のローテーションを積極的に行うことで、グローバル経営に携わることのできる人材を多数育成し、経営層にも外国人材を登用していきたいとのことである。

外国人採用に積極的に取り組む三井化学

(2)採用に関する取組と課題
同社では、2005年度より外国人留学生の新卒採用を本格化しているが、採用ルートは日本人学生と同様で、毎年約50名の新卒採用者のうちの10%程度を留学生が占めるという。

採用は大きく事務系、技術系に分けて行っている。同社では、新卒採用の社員は「グローバル人材」と位置付けており、今後は特に事務系に関しては海外経験や語学力を重視していく方針である。

【海外大学向けインターンシップ】
中国、シンガポール、インドの有力大学から、MBAや、化学工学や機械工学等の生産技術を専攻とする学生を受け入れ、事業部、研究所や工場で1~2ヶ月程度のインターンシップ・プログラムを実施している。

これまで数名の採用実績があるが、現状では海外大学卒業生の配置ニーズが大きくないことから、今後は海外からの直接採用は縮小する見込みとのことである。海外からのインターン受入れは、CSR的な要素もあり、受入れ職場の活性化にもつながるが、一方で職場の負担も大きく、採用に直接つながりにくいこともあり、今後は国内での採用を主体に実施していくとのことである。

(3)定着に向けた取組と課題
新卒採用者は採用時点で、事務系は営業とアドミニストレーション(経理、法務、人事等)、技術系は研究開発と生産技術に分けられる(ゆるやかな職種別採用)。

そして、特に事務系の社員に関しては、時に部門を超えたジョブ・ローテーションも行いながら、時間をかけて人材の育成を行っている(ただし、専門職としての色彩が強い経理系、法務系については部門内でのローテーションが中心となる)。また学部の新卒採用の場合、入社後約10年間は職能資格をベースとした制度が適用され、キャリアに差がつきにくい。外国人社員は短期間でのキャリアアップを望む傾向にあるが、このような同社の方針については、採用時から繰り返し丁寧に説明することで、外国人社員の認識とのギャップの解消に努めているという。

例えば、エンジニアにとって、海外のプラント建設に携わることは憧れであるが、その派遣者の選定にも年次が重視される傾向にある。そのことに外国人エンジニアが不満を持ったとしても、職場の育成方針を丁寧に説明し、納得してもらうようにしているとのことである。

また同社では「同期社員は大切な仲間である」とのメッセージを繰り返し伝えており、日本人社員が良き相談相手となることで、外国人社員が同社での働き方に対して理解を深めることを期待している。

【新卒社員向け研修】
新卒採用者に対しては、2週間程度の導入研修を行っている。同社についての理解を深めることに加え、合宿やグループワーク等を採り入れて、同期社員のつながりを深めることを重視している。導入研修に続いては1-2ヶ月の工場研修が行われ、実際に交代勤務に携わること等を通じて、ものづくりの現場を理解する機会を設けている。

【研修】
同社の研修プログラムのうち「海外実務研修」や「グローバルマネージャー研修」等は、グローバル共通のメニューとしての整備を進めている。

「海外実務研修」は、同社の若手・中堅社員が海外関係会社に赴任し、実務を通じた研修を受けるもので、年間10名程度が選抜され、期間は平均1年間である。同様に海外から同社にも現地人材を受け入れ、研修を行っている。中国やタイ、インドネシア等の主に技術者を受け入れて、工場や研究所で固有技術の指導を行い、海外関係会社への技術の移転を図るといった研修が多く行われているという。

「グローバルマネージャー研修」は、海外関係会社において将来の幹部候補を育成し、現地の部長ポジションへの現地人材の登用を推進するために行われているプログラムである。

【人事評価】
評価は、目標管理制度(MBO)及び行動評価によって行われている。管理職以上については、行動評価の評価項目が「グローバルに共通なコンピテンシー」として統一されており、「戦略的思考」「チームリーダーシップ」「胆力一貫性」「機敏性」「目標必達の執念」「多様性の尊重」の6項目である。

6.1.11 F社(IT、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、インターネットサービスを展開するIT企業である。インターネットサービス企業としてグローバルに成長するために、日本人のエンジニアだけではなく海外の優秀なエンジニアも獲得しようと、数年前からインドや中国に足を運んでITエンジニアを採用するようになったのが、同社の外国人材採用のきっかけであった。

社内のすべてのポジションについて、日本語が必要か、英語のみで対応可能かが明確に示されており、例えばエンジニアのポジションはほとんどが英語のみで受入れが可能とのことである。

(2)採用に関する取組と課題
【エンジニア職社員】
エンジニア職は昨今では外国人材を海外から直接採用するケースが多くなり、アジアや欧米でも採用活動を行っている。2015年のエンジニアの採用において、相当数が外国人材(日本国内採用及び海外直接採用)である。

エンジニアはジョブ・ディスクリプションを明確にして採用し、能力に応じて給料を設定し対象者にオファーしている。欧米では ITエンジニアの収入は高騰しており、競争が熾烈であるが、同社では新卒採用者はあくまで長期雇用を前提としているため、欧米企業のように入社時に極端に高額な年収を提示することは難しい。

今後は中国やインド、ASEAN諸国でも賃金が上昇する可能性があり、同社が優秀な外国人材が獲得できなくなることが危惧される。一方、一部の外国人材は、長期雇用を魅力に感じているとのことである。

エンジニアについては、職種・部門のポジションごとにインターンシップ・プログラムを設け、国内外の大学からインターン生を受け入れている。期間は最低1ヶ月以上、3ヶ月以内で、同社としては業務上必要な成果が得られ、学生は働きながら高いスキルを学ぶことができ、両者にwin-winの関係が成り立っている。

就職活動の時期に初めて学生にアプローチするよりも、インターンシップを通じて、日本企業の良さや労働環境、生活環境などを体験してもらう方が、世界の優秀な人材の獲得につながると考えている。特に欧米からはインターンシップなしには採用は難しいという。

【一般総合職社員】
エンジニア以外の一般総合職社員は、日本人学生の新卒採用が7-8割を占め、日本語が話せることが望ましいポジションが多い。

海外で外国人材を直接採用することは少ないが、海外に留学している日本人学生や日本の大学の外国人留学生は採用している。日本では、日本人学生、留学生の区別なく、大学での説明会を実施している。一般総合職社員は総合職採用であるが、専門職としてトレーニングを積んでいる新卒社員については、一般総合職であってもそうした経験を配慮して配属を行うことが多い。

(3)定着に向けた取組と課題
【給与設定】
給与については、国籍・職種に関わらず共通の給与テーブルを設定し、入社時の各社員の能力に応じた収入からスタートし、昇給していく仕組みである。IT業界は変化のスピードも速いため、早い段階で育成を行って一人前の社員として活躍してほしいと考え、給与カーブの立ち上がりを比較的早い段階に設定している。30~40代から給料が緩やかに上がるようなカーブでは、人材獲得が難しいとのことである。

【中堅マネージャー向けの研修】
同社の場合、役員レベルと入社3-5年までの社員には外国人社員が多いが、中堅マネージャー(課長レベル)には少なく、彼らの総合的なマネジメント能力およびグローバルの異文化コミュニケーション力をあげるための研修を、OJT、Off JTを組み合わせながら、行っている。

【社内公募制度及び人事データベース】
社内公募制度によって社内の異動も積極的に支援している。社内でポジションが空いた場合には、まず社内に募集をかけて、社員は自分が期待するポジションに応募ができる。

また、グローバルに共有している人事データベースには海外の現地法人が登録されている。グループ内の人事制度・給与制度は統一されており、給与テーブルは国によって異なるが、国をまたがって同じポジションに異動する場合も、対応するグレードが示されているため、原則としてはそれに従ってその国の給与テーブルに切り替えて参照することができる。

【社内環境】
社内の食堂では、習慣的・宗教的制約にも対応した食事も提供している。また、イスラム教の社員等が礼拝に使用できるスペースも設置している。

【海外事業所・現地法人との関係】
日本法人と海外現地法人は、一般職社員の採用については、それぞれ別個に採用活動を行っているが、将来的には協力していきたいとのことである。また、エンジニア職の採用については共通の採用プラットフォームを用いたグローバルでの採用活動をすでに開始している。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
外国人学生をインターンシップで受け入れるにあたり、さらに長い期間で、幅広い人材を対象とするために柔軟に対応してほしいとの要望があった。海外の外国人学生は、「特定活動」の在留資格で参加するため、3ヶ月を超えて日本に滞在することができない。

またすでに大学を卒業している場合には、就労ビザを取得する必要がある。また大学が正式な休みの期間でないと「特定活動」の要件を満たさない。

エンジニアの在留資格については、大卒でない場合には、10年以上の実務経験が求められるが、大学中退や短大卒で実務経験 5-6年程度でも、十分に高いスキルを有する外国人材は多い。本人が有する資格によっては、実務経験の期間が異なる場合もあり、柔軟な対応とともに資格との関係を明確にしてほしいとの要望があった。

在留資格の交付については、申請から交付までに約2ヶ月程度を要するため、もっと迅速に対応してほしいとの要望があった。

【生活環境】
外国人社員の来日の際、飛行機を手配、住居を提供し、生活が軌道に乗るまでの支援を行っているが、こうした窓口は英語対応が不十分なところが多いとの指摘があった。日本に不便さを感じると優秀な外国人材の流失につながってしまうため、外国人材が不安を感じないように、国として何らかの対応を考えるべきではないかとの指摘があった。

また、最近では、東京に限らず大阪や福岡などにもウェブ会社の開発拠点が増えてきており、このような地域でも外国人材が不自由なく生活できる環境の整備が望まれるとの指摘があった。

6.1.12 双日株式会社(商業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、国内6か所、海外83か所の拠点を有する総合商社である。同社はこれまでも海外でのビジネスを行ってきたが、その担い手は本社の日本人社員と現地法人の外国人社員であった。

しかし、総合商社のビジネスが広がり、日本を介さない輸出入や事業投資が主流になるにつれ、日本企業としてのビジネスモデルと、現地のビジネスの状況をともに深く理解できる人材を採用し、定着させる必要が高まってきた。そうした役割を担える人材として、本社で外国人材を受け入れるようになっている。

(2) 採用に関する取組と課題
同社では、新卒採用に関しては約1割が外国人材である。このうち日本の大学への留学生は、特に外国人枠は設けず、日本人学生と同じ基準で採用しており、概してこうした外国人材は日本語が堪能である。

これに加え、日本語は話せないが優秀な外国人留学生を対象とした採用活動を行っているが、これまでの実績は少ない。インターンシップについては日本の学生向けのインターンシップに留学生が参加するケースはあるが、外国人向けのインターンシップは実施していない。

【海外での新卒採用】
海外の大学からの採用活動も、2011年から行っている。対象はアジアのトップ大学(シンガポール、香港、上海等)や今後重要と考える国(タイ、ベトナム、インドネシア等)のトップ大学で、毎年6~7名採用をしている。

将来的には現地職員と日本人社員との懸け橋になることを期待しているが、採用した国・地域のビジネスに関わってもらうとは限らない。日本語能力は問わずに採用し、入社後に半年間、日本語研修を実施する。アジア諸国では日本は働きたい国の一つでもあり、優秀な学生を採用することは可能と認識している。ただし、日本の企業文化に対して「残業が多い、休みが取りにくい、昇進が遅い」等のネガティブな印象を持たれている点、総合商社という業態が知られていないのでその説明が重要である点が課題であると同社では認識している。

(3)定着に向けた取組と課題
処遇や配属については、原則日本人社員と同様であるが、海外で採用した社員については、海外との取引が多い部署等、そのタレントが活かせる部署へ配属すべく、留意している。かつて組織内の変革を促すことを目的に、高いレベルの日本語能力や日本式のマナーを求めるドメスティックな部署にあえて配属したこともあるが、部署と本人双方にとって負担が大きいため、現在は行っていない。

また、通常は入社後5~7年目で海外に配属されるケースが多いが、海外採用の外国人社員は日本でのビジネスが中心の本社では力を発揮できないとの考えから、海外駐在の希望が強いため、前倒しで海外駐在にするキャリアプランも検討している。

日本企業の特色である入社後の処遇や、賃金カーブの実状、ジョブ・ローテーションや勤務の実態などについては、会社説明会や採用面接時に説明し、それで納得した人材を採用しているという。さらに入社後も海外から採用した外国人材には個別のフォローをより頻繁に行うこととしており、入社1年目は年4回、2年目以降は年に2回、人事と上司との面談を行っている(通常の社員は年に2回、上司と面談)。2年目以降の面談では特に将来のキャリア形成を中心に話しているという。

外国人材は入社後すぐに即戦力として活躍できると考え、数年間は育成期間であるということをなかなか理解できない傾向があるため、こうした面談の機会を通じて、丁寧に説明しているという。海外からの採用はまだ日が浅いため、今後ロール・モデルをつくっていくことが課題となっている。

同社では外国人材を配属する部署に対しては、配属前に配属先の課長に外国人を採用した趣旨や、過去の経験から留意して欲しい点等を伝えるとともに、外国人材が配属された他部署での経験談も紹介している。

(4)制度及び生活環境に関する課題
同社では海外採用の外国人社員に日本語教育を行っているが、費用対効果の高い適切な日本語学校や日本語教育プログラムをみつけることが課題となっている。その背景として、日本語講師のレベルを担保する統一された資格がないことが原因の一つであるとの指摘があった。

また、同じクラスで学ぶ日本語学校のほかの生徒たちは必ずしもビジネスパーソンではなく、日本語を学ぶ目的が異なる事から、同社の外国人社員がともに学ぶ環境としては最適な環境とは言えず、日本企業で働く外国人ビジネスパーソン向けの日本語教育プログラムの整備が必要との指摘もあった。

また、市町村によっては外国人材の生活に必要な情報提供が不十分であるとの指摘があった。年金に関しては、政府による英語の説明資料があるとよいとの指摘があった。

6.1.13 株式会社ローソン(商業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、コンビニエンスストアのフランチャイズ(FC)チェーンを国内外に展開する大手企業である。外国人材の採用は新卒・中途を問わず、国籍に関係なく同社で活躍してくれる人材を採用することを目的としており、日本人の持っていない能力だけを求めて外国人材を採用しているわけではない。

留学生の新卒採用については、海外事業に携わる場合にはブリッジ人材としての活躍、かつダイバーシティを生み出す原動力として機能してほしいと考えている。また、社内でダイバーシティが定着しつつあり、国際社員を活用する次のステップとして、インバウンド需要の対応など、彼らが持つ知識と経験を活かした活躍が期待されている。

中途採用では即戦力を求めており、ポテンシャル採用は行っていない。中途採用で外国人材を経営層に入れることもあったが、現在、経営層に外国人社員がいないことは、同社のひとつの課題でもある。

同社はリテイラーのビジネスでサービス業であるため、基礎的なコミュニケーションを日本語でできることは入社のための必須条件であり、留学生の新卒採用、中途採用いずれも日本語を話せることが必要である。

(2)採用に関する取組と課題
【新卒採用】
留学生の採用方法は、日本人学生と同様であり、留学生向けの就職イベントや、留学生を多く受け入れている大学での合同就職説明会などにも参加している。

日本のコンビニエンスストアのフランチャイズビジネスを理解するうえで、店舗を経験することは必要であるため、同社では、新卒採用で入社した人がすぐに海外に行ける可能性は低く、基本的には一定期間は日本にある同社の店舗で働いてもらっている。

そのため、すぐに海外で活躍したい希望が強い学生は、残念ながら同社とはマッチしない。また、留学生には短期スパンで働きたいという気持ちが強い学生も多いが、同社では中長期の人材育成を考えており、将来にわたり活躍する人材を育てるためには、ある一定のスキルと社会人の基礎は入社後にじっくり学んでもらう必要があると考えている。

従って、そうした視点をもっていない外国人材は同社に来てもミスマッチが生じるので、短期スパンで働きたいと思う人を採用できないことは特段ジレンマに感じてはいない。

【中途採用】
必要となったポストについて、国内外・国籍を問わず、適切な人材を採用するというスタンスであり、定期的な採用は行っていない。

海外での直接採用については、海外事業部から現地人材の紹介を受けて、本社での採用に至るケースはあったが積極的には行っていない。中途採用の処遇は、前職の年収、職位等を加味したものとなっており、生活のレベルは下げないことなどに気を払っている。

【グループ・ディスカッション】
新卒採用のプロセスでグループ・ディスカッションを行っており、以前は日本人学生と留学生を分けていたが、2014年からは分けずに行っている。日本人学生だけでは阿吽の呼吸で合意形成をしてしまう、留学生だけでは日本の市場に思いが及ばないなどのデメリットがあったが、それぞれが異質な人にどのように接し、コミュニケーションをとろうとするのかを見ることができるようになったという。

(3)定着に向けた取組と課題
【定着率】
同社における留学生出身者の3年目定着率は、約70%。外国人社員は20代で転職を考える層が一般的に多いと捉え、定着率が日本人社員に比べて低いこと自体はさほど問題視していないが、採用の段階から同社におけるキャリアパスを丁寧に説明している。
中途採用で入社した外国人社員は、基本的には定着している。

【雇用形態】
現段階では、同社の事業展開は国内が主流であり、海外の売上は国内と比べるとまだまだ低く、社員の構成人数も国内のほうが多い。部分的には「ジョブ型雇用」になりつつあるが、グローバルな視点からみるとまだまだ「メンバーシップ型雇用」を保持している。

【研修制度】
コンビニエンスストア事業の中核を担うのはスーパーバイザー(SV:店舗経営指導員)であり、SVを希望する社員は多い。新入社員は全員、入社1年目は店舗に配属になり、2年目には店長を任され、3~4年目でアシスタントスーパーバイザー(ASV)になるまでは全員がほぼ同じパスを進むが、その後は、国籍に関係なく公平な評価を受けて能力に応じた職務に就く。

入社後3~4年は不安を感じる時期でもあるため、自らの将来のビジョンについて改めて考える機会として、研修を行っている。入社後 3~4年が経過した外国人社員を対象に、年に1度、今後のキャリアを考える研修を行ってきた。同研修にはこれまで店長は参加していなかったが、店長になる頃(入社2年目)にキャリアに悩む人が多いということがわかってきたので、今年の研修からは店長以上の職位の外国人社員を対象に実施する。

日本で働くうえで最低限知っておくべきビジネスマナーを教えるとともに、外国人としての個性を発揮し、価値を生み出してほしいというメッセージを伝えようと考えている。

【新たな評価制度の導入】
外国人社員や若手社員等からの指摘を受けて、今年の3月から新しい評価制度を導入した。各職務に必要となるスキルを一覧として示したうえで、そのスキルを使って各職責としてどのように行動したかを評価するものである。数値では評価できない定性的な部分は、不透明になりやすいため、できる限り言語化し透明に評価できる仕組み作りを目指している。

【海外事業所・現地法人との関係】
現地の採用は基本的に現地法人に一任しているが、現地法人から問い合わせを受けた場合には相談にのっている。国をまたがるグローバルな異動はないが、日本本社から海外法人へ、海外法人から日本本社への出向は一部ある。日本本社の就業規則を基にして海外法人の規則を統一しているが、給与制度の統合等はしばらく時間を要する見込みである。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
外国人社員が永住権を得るには連続して10年国内に居住することが求められるが、その前に海外に派遣されると、居住年数がゼロにリセットされてしまうことは問題であるとの指摘があった。日本企業に籍を置いていても、仕事の場所が変わることで永住権を諦めなくてはいけなくなるのは、日本企業に所属する魅力も薄まるし、優秀な人材を海外で仕事させづらくなるため、この要件を緩和すべきではないかとの指摘があった。

【生活環境】
同社では若い外国人社員が多いため、子供の教育環境や親の呼び寄せ等については問題になっておらず、日本語が流暢に話せる人材がほとんどであるため生活環境もあまり不便に感じていないとのことであった。

6.1.14 G社(建設業、大企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、各種プラントの設計、建設、運営、維持管理等を行うエンジニアリング企業である。同社の海外売上比率は8割以上に達しており、約20年前から外国人材の中途採用を始めていたが、定着率が低いことが課題となっていた。

そこで2007年頃、より定着しやすい人材として、新卒で外国人材を積極的に採用するという方針が策定された。全社員の10%を外国人材にすることを目標とし、中期経営計画においても外国人材の活用が掲げられた。海外プロジェクトに対応するとともに、業務運営や社内のカルチャーや仕組みをよりグローバルなものに変えていくための「触媒」としての役割が期待された。

現在では外国人材は全社員の5%、本社社員の10%に達した。同社が外国人材の上司に実施したアンケート調査によると、外国人材は英語を母国語レベルで使いこなし、欧米流のビジネス・コミュニケーションやプレゼンテーションに長けている点が評価されている。

一方、企業カルチャーの変革という意味では、社員の5%を占めるようになって社内にイパクトを与えられる規模になり、ようやく入口に立った段階と認識されている。

企業のカルチャーはなかなか変わらない。そのため、同社のカルチャーに親和性が高い外国人材の方が定着率も高いし、現場からも歓迎される。しかし、企業カルチャーを変えるという意味では、むしろあまりなじめない人材の方が望ましい。双方の人材を少しずつ織り交ぜながら、少しずつ変えていくことが必要だと同社では考えている。

(2)採用に関する取組と課題
【国内での新卒採用】
国内の採用に関しては、日本人と同一のスキーム・条件で、外国人留学生を採用している。新卒採用の約8割を占める技術職については、英語は必須だが、日本語能力は必須ではない。事務職については一定の日本語能力を求めている。

特に修士課程から日本に来た留学生は、日本の就職活動事情に対応できるまで時間がかかることに配慮し、日本人学生と留学生とで応募期間をずらしている。また、海外からの採用や、日本で採用している外国人留学生については、10月入社とすることを認めている。

【海外からの新卒採用】
米国の大学からの新卒採用を実施しており、米国で開催される就職イベントや、日米の就職エージェントに依頼して現地の大学での説明会を通じて採用活動を行っている。

米国人だけではなく、米国外からの留学生も対象だが、多様性の観点から、日本国内で外国人留学生として採用できる国以外の学生を重視している。また、事務系は採用しておらず、化学工学や機械等を専攻する学生が主なターゲットである。

米国は化学工学分野の人材が豊富であるが、その一方で中途採用が容易な市場であるため、中途採用と競合する新卒者にとっては就職が難しいという。一方で新卒でもエンジニアとして高い待遇でオファーを出してくるシンガポール、マレーシアといったアジア企業も人材を獲得にきており、競合する。

そこで同社は、給与等の条件面は不利であっても人材育成の充実や自己成長・鍛錬の場として日本企業のほうが優れていることをアピールするとともに、日本のメンバーシップ型雇用の特徴について十分に説明し、日本式のゆっくりした昇進・昇格を理解し、長く働き続ける意向があるかどうか、見極めて採用している。

【中途採用】
中途採用は、総合職としてではなく、特定のポジションについて採用する。特定の国籍や言語を前提とした募集はしていないが、結果として外国人材を採用したケースはある。

(3)定着に向けた取組と課題
外国人社員の離職率は、年4%程度。日本人社員より高いが、同業他社と比較すると低い。

【ジョブ・ディスクリプション】
ジョブ・ディスクリプションは、プロジェクト型組織において作成することはあるが、基本的には作成しておらず、それに基づいて組織構成やポジションを管理しているわけではない。採用時に外国人応募者から明確なジョブ・ディスクリプションを求められることもあるが、その際にはジョブ・ディスクリプションがないことが日本企業の強みであるとして、例えば以下のような説明をしているという。

・ジョブ・ディスクリプションのある欧米企業では、仕事は明確に分かれ、あるポジションの人がいなくなると、それを埋める人が見つかるまで仕事全体が止まる。また、建設段階から試運転段階に移行する際、組織も責任も段階ごとに明確に分かれているので、建設段階が完璧に終わらないと次の試運転段階に移行できず、時間がかかる。

・ジョブ・ディスクリプションのない日本企業では、あるポジションの人がいなくなっても、周りの人がフォローしてその業務を継続し、全体が止まることがない。また、段階を明確に分けず、建設段階が完全に終わる前から試運転段階に移行し、不具合があれば、建設段階の担当者も含めて対応する。そのため全体として期間を短縮できる。このように、同社では日本企業の強さを残しながら、グローバルなビジネスに対応したいと考えている。欧米企業とは異なるポジションに立って戦わなければ、欧米企業との競争には勝てないという危機意識を抱いている。

【キャリアパス】
新卒は総合職としての採用である。ただし、ゆるやかに専攻の枠を想定した採用であり、採用時点で具体的な仕事内容を理解したうえで入社するよう、入社前及び入社後の新人研修において、各部門の組織や職種を説明する時間を設けている。一方で、入社後は会社として適性を判断し、社内のニーズを踏まえて配属を決めるため、異動もありうる。

ただしエンジニアリング職に関しては高い専門性が求められるため、専門分野を超えた異動やジョブ・ローテーションは一般的ではない。専門性重視の「エンジニア職」と、他分野に渡って担当し、プロジェクトを束ねる役割を担う「プロジェクト・エンジニア職」との間をローテーションする社員はいるが、これは人事部門が技術系社員個々人の志向や状況を見極めて決定している。

短期での昇進志望が強い外国人社員に対しては、時間をかけて昇進する方が効果的なキャリアパスだという考え方を、採用時、新人研修、そして面談等を通じて伝えている。

また、外国人社員は全員、入社後3年間は1年更新の嘱託契約とし、その後双方が合意すれば正社員となることとしている。嘱託契約であること以外は、処遇や育成・配属など、すべて正社員と同等である。1年ごとの契約更新の際に配属先の上司が継続の意思を確認するほか、3年後に正社員に切り替わる際に、上司と面談をして継続の意思を確認するとともに、今後の働き方について話し合う。

外国人社員の場合は特に、日本企業における働き方やキャリア形成の時間軸について、理解し納得したうえで働き続けるのか確認が必要であり、それを定期的に確認して合意する機会をもつことが重要という考えが背景にある。

【海外事業所・現地法人における採用活動・人事制度】
現状では、海外現地法人は本社から独立した人事である。人事制度も雇用市場の状況も異なるため、待遇は統一されていない。グループ経営の観点から、グローバルに人事・賃金を統一するという議論はまだ始まったばかりであり、今後の課題となっている。なお、本社と現地法人間には人事異動はあるが(その場合は出向扱いとなる)、現地法人間の異動はない。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
外国人材の在留資格取得に際して求められる書類が、入国管理局の担当者によって異なることがあり、苦労しているとの指摘があった。また、入国管理局のウェブサイトにおいて、細かい規定についての英訳が示されているとよいとの指摘もあった。

【生活環境】
特に中途採用の外国人材は家族の問題が重要であり、インターナショナルスクールの学費が高いのは問題との指摘があった。外国人材は、住宅購入に際してはローンが組めず、賃貸に際しては日本人の保証人が求められることが課題との指摘があった。同社では人事部長名で保証人になっているという。また、海外大学から採用した外国人社員は銀行口座の開設に苦労しているという。

【社会保険料の負担】
厚生年金の脱退一時金が3年分しか認められない(3年以上働いても支給額は一定である)ことを気にする外国人社員がいるという。自分や親の身に何が起きるかわからず、年金を受給できるまで日本で働き続けることができるのかどうか見込みが立てにくいので、脱退一時金の加算期間をもっと長くして、働いた期間に見合った額にしてほしい。もしくは、年金の受給権の発生をもっと短期間にしてほしい。そうでなければ、安定的に日本で働くことが難しいというのが彼らの主張である。

6.1.15 本多機工株式会社(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は福岡県に本社を置き、オーダーメイドの産業用特殊ポンプを製造・販売する中堅・中小企業である。

2003年に発表した中期経営計画において、グローバル化を経営方針として打ち出したが、当時は海外のエンドユーザーとのやり取りやアフターフォローは商社等を通じて対応しており、海外からの引き合いがあっても社長以外に対応できる人材が社内にはいない状況であった。

一方、同社は2006年に初めての外国人材であるチュニジア人を採用する。同社と付き合いのあった九州工業大学の研究室所属の博士号取得者を優秀な学生として採用しただけで、外国人材であったことは偶然であったという。しかし、このチュニジア人社員や、その後入社した中国人社員らが、海外の取引先拡大など、日本人社員が苦手な部分を開拓し
ていった。

そしてそれが、同社の海外展開を拡大させていくこととなった。その後も同社では外国人材を主に国際事業本部に配属し、海外営業を担わせている。大型案件を受注した際には、それに貢献した外国人材を評価し、社内でアピールし、彼らの成果を社内で認識させるようにしている。そうすることで、彼らを社内のいわば「スター」にしており、それが社員全体のモチベーションに好影響を与え、社内活性化につながっているという。

このように同社では、海外事業の拡大という経営戦略の下に、経営者主導で外国人材の獲得を継続しており、外国人材を海外営業等に配属し、彼らが好成績を上げれば高い処遇で応え、またそのことを社内でアピールして、「スター」として認知させ、外国人材のモチベーションを高めることで、さらに海外事業の業績が拡大するという好循環につなげている。

なお、最初に入社したチュニジア人と、次いで入社した中国人はその後それぞれ母国に帰って起業した。そして同社の代理店となって、同社の業容拡大に貢献し続けている。同社はこれを「のれん分け」と称して推奨しており、将来海外で独立したいと考える外国人材を積極的に採用している。

(2)採用に関する取組と課題
同社が採用した外国人材の多くは、九州の大学の卒業生である。九州には、留学生を積極的に受け入れる大学が多いことの好影響を受けている。

同社の専門領域である分野を専攻している学生を、特に求めている。そのため、共同研究等のつながりを活かして地域の大学の研究室と連携して専門人材を早めに紹介してもらい、インターン生として受け入れるなどして、お互いにマッチするかどうかを確認するようにしているという。

また、地方団体等が実施する工場見学やマッチング・イベントにも積極的に参加している。同社が留学生を積極的に採用していることが知られるようになったため、現在では大学から留学生の紹介を受けることも増えているという。

一方、多くの中小企業経営者は今後の海外展開のために外国人材の受入れに関心を持っているものの、多くはそうした経験がないため、外国人採用に不安を感じているという。そのため、中小企業にあった留学生とマッチングする仕組みが必要であり、就職活動開始前のインターンシップ実施や、インターンシップ前に留学生と中小企業とが知り合うきっ
かけとなる出会いの場を提供し、中小企業側の外国人材受入れに対する不安や抵抗感を軽減する工夫が必要との指摘があった。

(3)定着に向けた取組と課題
同社では、外国人材の場合は特に、採用の際に担ってほしい業務を明確に示している。そして、営業職に関しては業績が上がれば基本給が上がり、受注や売り上げに対する手当を支給し、さらには報奨金も支給するなど、成果主義的要素を取り入れた評価制度としている。

また、キャリアパスの見える化に取り組んでおり、全社員に「現在の自分」、「3年後の自分」、「5年後の自分」、「10年後の自分」について、どういう資格を取り、どういう仕事をしているのかなど、詳しい計画を作成させている。

そのうえで上司と相談し、各部門の年間計画・目標からブレークダウンした各人の目標(数値目標を含む)を設定し、1年後に上司に報告する。そしてそれを踏まえて次の1年の目標を設定する、というサイクルを回している。

また、外国人材は在留資格の期限に合わせた有期雇用としており、形式上は年に一回、契約を結ぶ形にしている。1年ごとに面接をして、過去1年間を振り返ったうえで次年度の目標を設定する機会となっている(同様の面接は日本人正社員についても実施)。ただし、長期雇用という思いで雇用しているということは伝えているという。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【生活環境】
同社の社員は日本語を一定程度話せるので大きな問題はないが、留学生を積極的に受け入れている大学の外国人教員に関しては、近くにインターナショナル・スクールや幼稚園がないことが問題となっており、外国人のための子供のケアのためのサービスが不足しているとの指摘があった。

住宅賃借の際の保証人に関しては、かつては社長自らが外国人社員の連帯保証人となっていたが、近年はそうしたことを求められることはなくなっているという。

6.1.16 株式会社西部技研(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、省エネ・環境関連機器を製造・販売する、福岡県に本社を置く中堅・中小企業である。

同社が初めて受け入れた外国人材は、熊本大学に研究生として所属していた、博士号を持つ中国人だった。同社に関係する専門分野における優秀なエンジニアとしての採用であり、外国人材であることは偶然であった。しかし、その後、同社が中国法人を立ち上げたこともあり、この外国人材は中国での学会発表に参加するなどして中国市場での同社のプ
レゼンス向上に大きく貢献することになり、現在は同社中国法人のCTOも務めるまでになった。

一方で中国法人設立にあたってその後採用した数名の中国人は、いずれも結婚や家庭の事情で退職した。

近年は、再び外国人材を受け入れている。その際、中国市場に関する経理及び営業担当、韓国市場担当の営業及び技術担当など、役割を明確にして、採用を行っている。こうした人材の活躍が、中国法人の経理担当者とのコミュニケーション円滑化による経理上の問題処理の迅速化や、韓国市場での売上増加につながっている。

このように、同社では優秀なエンジニアとして初めて採用した中国人社員に対して、中国法人の立ち上げとともに責任ある職務を徐々に与えて本人の成長を促し、その活躍によって同社の中国事業の拡大に成功し、その後も中国法人の経理担当、韓国市場の営業担当といった役割を明確にして、外国人材を採用・活用しているといえる。

また、女性、パート労働者、高齢者、障害者などを含むダイバーシティの向上による組織の活性化等を目指す同社にとって、最初に受け入れた外国人材が昇進していき、部下となった日本人社員との間に生じた様々な摩擦を解決していく過程で、異文化コミュニケーションのあり方を社員が学んでいくことが重要であった。

多様な価値観があること、多様な人々がともに働くためには互いに歩み寄る必要があること、そしてそのためには(例えば日本語堪能な外国人材であっても)丁寧にコミュニケーションをとる必要があることを、そうした過程を通じて、学ぶことができたのである。

今後はさらなるダイバーシティの向上のため、東南アジアの人材に入社してほしいと同社では考えている。

(2)採用に関する取組と課題
【新卒採用】
外国人枠を設けているわけではないが、福岡県内には留学生が多いこと、同社が中国で事業を展開していることを知って応募してくる留学生もいることなどから、現在は特別な努力をしなくても外国人材が応募してくる状況にある。

一方で、マッチング・イベントや工場見学会等には積極的に参加しているところである。また、そうした機会の拡充を望んでいるところである。ただし、単に交流を図るだけでは企業と留学生の間の有効なマッチングは難しく、社員と留学生が話す機会を設けるなど、入社後の仕事等について理解を促す取組が必要との指摘があった。なお、同社では日本語能力を重視しているため、応募も面接もすべて日本語で行っている。

【中途採用】
人材紹介会社を利用しており、ある程度欲しい人材像を明確にして採用を行っている。

(3)定着に向けた取組と課題
中国法人立ち上げ後に採用した外国人材は何かに役に立つという漠然とした思いで採用したが、結果的に全員退職した。一方、近年の採用ではこういう仕事をやってもらいたい、という外国人材への期待を明確にしてから採用している。

例えば中国事業に関する経理を担当してほしい、韓国市場の開拓を任せる、といったことである。こうしたことにより、自分のキャリアが見えやすくなる効果はあったとみられる。

また、新卒採用者は終身雇用を前提としており、社内でジョブ・ローテーションを実施しているが、全員そうしなければならないわけではない。その点を退職した外国人社員には明確に伝えていなかった。日本語が堪能だったこともあり、日本人と同様に接してしまい、こうした話もあまり説明せず、言わなくてもわかっていると思っていたという。

そのため、現在ではコミュニケーションを重視している。中途採用者は入社3か月後及び1年後に社長と面談をする機会があり、トップの意思を直接聞くことができる。新卒採用者も集合研修や面談を通じて、コミュニケーションをとっている。このような定期的なコミュニケーションの機会を設けたことが、外国人定着に寄与したと考えられる。

また、同社では目標管理(Management By Objectives)を導入しており、その結果は賞与に反映されている。

【労働慣行・職場環境面】
同社では社長主導のもとに、はっきりとした上下関係は決めず、テーマやプロジェクト毎にリーダーを変えるアメーバ構造的な組織へと移行を始めている。

また、以前は残業が多く有給休暇も取得しにくい雰囲気があったが、5~6年前からそうした文化を変えていく取組を行っており、今では残業は減り、有給がとりやすくなってきているという。また9連休がとれる「ポジティブオフ」と呼ばれる取組も始めている。

6.1.17 常石造船株式会社(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は新造船の建造及び修繕事業を展開する、広島県福山市に本社を置く企業である。同社では2003年、中国に現地法人を設立したのを機に中国人留学生を中心に外国人材の採用が増加した。また、海外展開を急速に進めた結果、内部登用だけでなく、外部から高いスキルを持つ人材の中途採用を積極的に行っているが、そのなかにも外国人材が存在する。

同社では外国人材を特別扱いはしていないが、国内志向が強いと言われる日本人学生・社員よりもグローバル志向で異文化に理解する力があることや、造船についての設計や企画に関する実力が高い点などを評価しているという。

(2)採用に関する取組と課題
同社では新卒・中途問わず外国人を採用しているが、外国人を特別扱いする枠があるわけではない。新卒は主に西日本の大学を卒業する留学生の応募が多い。設計部門の採用は、造船学科がある大学からの採用も多い。共同研究先の大学のゼミ所属の学生が応募してくることもあるという。造船学科がある大学や地元の大学とは連携し、夏休み期間中に2 週間のインターンシップを実施している。長期のインターンシップは考えておらず、実施するなら2年生など若いうちに行いたいが、その場合は採用に結び付けることが難しく、負担が大きいなどの指摘があった。

新卒採用の筆記試験は東京や大阪でも実施しているが、面接は必ず広島の本社で行うようにしているという。これは東京ではなく地方部で暮らし働くということを肌感覚から理解してもらうためである。またこうした面接の際には待ち時間等を利用して現役の社員と懇談する機会を設けている。採用段階でコミュニケーションをしっかりと取ることで、入
社後にギャップを感じないようにしている。

ただ、そうしたコミュニケーションを図っていても、特に終身雇用等、日本企業の雇用の特徴については理解できない外国人留学生もいたという。そのため、日本型雇用の理解を深めるための活動が必要ではないかとの指摘があった。

(3)定着に向けた取組と課題
同社では日本人・外国人問わず長期雇用を前提にして、総合職として採用し、ジョブ・ローテーションが行われる。設計部門に採用された人材は基本的には同部門でキャリアアップしていくが、管理部門などに移っていく人材もいる。現在、中国人が部長となっている設計の部署もある。こうしたロール・モデルが存在するためか、離職率は日本人と外国
人ではほとんど変わらない。

入社後の評価も待遇も日本人・外国人の区別はない。上司と面談をする機会を設けており、そうした面談の機会に海外の工場に赴任する機会など、キャリアパスに関する説明が行われている。

【海外事業所・現地法人との関係】
日本本社の社員が海外現地法人に駐在する場合、海外赴任手当が支払われるが、それが外国人材であっても同様である。例えば日本本社所属の中国人社員が中国法人に駐在する場合も日本本社からの社員として処遇を受け、現地法人所属の中国人とは異なる処遇となる。なお、日本法人は日本の大学の卒業者のみ採用することとしており、それにより現地法人採用の社員との処遇の違いに納得してもらっているという。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
外国人材が母国以外の第三国へ行く場合、当該国への入国のためにビザの取得が必要となる場合が多い。同社には、船舶にトラブルが生じた際にカスタマー・サービスの一環として補修工事にトラブルが発生した国に出向くという業務があるが、外国人材にはビザの問題があるため、海外へ緊急に行かなければならない事態が発生する業務には配属できな
いという。

6.1.18 サラヤ株式会社(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、大阪府に本社を置く、衛生用品、食品等の開発・製造・販売を行う中堅・中小企業である。20年ほど前に米国に合弁会社を設立、海外展開を始めたことを機に外国人材の採用をスタートした。

当初は海外業務のブリッジ人材の採用がほぼ100%を占めていたが、海外事業を展開するに従って外国人材に対する新たなニーズが生まれた。研究・開発部門で海外のニーズを踏まえた商品開発する人材、海外の各営業拠点からの専門的・技術的な問い合わせに現地語で対応できる専門人材などを求めるようになった。

外国人材の配属は、海外事業本部が最も多いが、それ以外にも商品の研究・開発、容器等のデザイン、品質管理、資材のグローバル調達等、多岐にわたる業務に配属されている。

同社では南米以外のすべてのエリアに拠点があり、海外事業本部は、各拠点と日本本社とのあらゆるビジネスの窓口となっている。留学生出身者は、各拠点と現地語でのコミュニケ―ションをとること等を通じて活躍している。

また、商品の処方は基本的には日本で開発するが、各国・地域によって、消費者の好み(例えば石けんの色や香り)が異なるため、現地のニーズを把握しつつ、本社の意図とすり合わせることが留学生出身者の重要な役割になる。また、海外での医薬品販売における基準を理解できる専門家としての役割も重要である。

(2)採用に関する取組と課題
外国人材の採用ルートは留学生の新卒採用、留学生出身者の中途採用、海外での直接採用の3つである。留学生の新卒採用は 4 月入社、それ以外は通年入社である。外国人材向けの特別な採用枠は設定していないが、採用数は毎年1-2 名程度である。

同社の正社員数約700名に対し、外国人社員は20名強。留学生出身者と中途採用の比率は、約6対4である。中国での事業が長いこともあり、国籍は中国系が外国人社員全体の半数を占める。

各事業部が採用の権限を持っており、人事部が各事業部の意向を確認しながら採用活動を行っている。

留学生出身者の日本語能力については、職場の上司や同僚とある程度のコミュニケーションが取れれば良いと考えており、明確な基準は設けていない。一方海外で直接採用される外国人材は、研究・開発、デザイン等の専門職で、日本語能力は求められない。研究所では、外国人材採用に蓄積があり、日本人研究者と英語でコミュニケーションがとることができ、業務に支障がないためである。

【新卒採用】
留学生の新卒採用は10年ほど前から行っており、留学生のためのイベントやセミナーに参加している。留学生の採用実績も多いことから一定数の申込みがある。

新卒採用では、日本人学生・留学生いずれも職種を特定せずに募集するが、面接を進めながら適性を見極め、最終選考の段階ではおおむね配属先を決めて本人に伝えている。採用のプロセスは、日本人学生と留学生で変わりはないが、留学生との面接は、誤解が生じないように、時間をかけて慎重に進めている。

【中途採用】
中途採用は、海外の拠点や共同研究先の大学等から紹介を受ける等、常に人材探しのアンテナを張り、マッチする人材が見つかったら、採用できるように工夫している。結果として、海外大学の学生を採用することもあるが、その場合には中途採用として通年入社で受け入れている。

【インターンシップ】
日本人学生・留学生を問わない一般的なプログラムと、留学生向けのプログラムを設けている。外国籍の参加希望者は、中国人学生が圧倒的に多い。

一般的なプログラムは、期間は一週間程度で内容は限定的である。

一方、留学生向けのプログラムは、技術職がメインであり、受入れ先はデザイン部門や研究所で、期間は1-2ヶ月程度である。主に大学や公的機関が主催しているプログラムに参加する形で実施している。留学生が、自身の持っている技術やデザインのスキルが、企業で実際にどのように使えるのかを見てもらうことが目的である。デザイン部門・研究所
等から求人に近い形でリクエストを出してもらい、それに基づいてプログラムを設計しているため実践的であり、会社側と留学生で互いの理解も進む。

(3)定着に向けた取組と課題
日本人社員と外国人社員で、定着率に差はないとの認識である。新卒社員向けに研修を行っているが、日本人も外国人も区別なく一緒に行っている。

【昇進制度】
同社では国籍とは関係なく、高度な職に就く人材であれば給与の設定は柔軟に行い、優秀であれば理由を示して昇進させている。外国人社員が活躍して要職に抜擢されることで、そのような考え方が社内に浸透し、各部門において、外国人に限らず思い切った人材の登用を促進する効果がある。

現段階で、留学生の新卒採用で管理職に登用されているのは、海外事業本部統括部長のウクライナ人社員、開発職のフィリピン人社員の2名である。

【労働慣行・職場環境面】
同社では一般的な日本企業同様、ジョブ・ディスクリプションがあまり明確でないため、自身の業務とそうでないところの境界が曖昧であり、「いわなくてもわかるだろう」という意識で仕事を進めようとしてトラブルになったケースがあるが、その後は、合意事項を書面に残すよう工夫し、大きなトラブルは発生していない。

【海外事業所・現地法人との関係】
採用活動は、各拠点で個別に行っており、日本本社で採用した人材を海外に派遣した実績はあるが、例外的である。原則、国をまたぐ人材の異動がないが、本部から海外拠点への出張は頻繁に行っている。現地法人の日本語がある程度できるスタッフについては、同社の方針や理念を深く理解してもらうために、日本に招へいし1年間の研修を実施するこ
ともある。

6.1.19 H社(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、めっき用薬品の開発、製造販売を行う中堅・中小企業である。同社では5年ほど前、国内市場が縮小傾向となり、台湾や香港にある販売会社の売上も伸び悩んでいたことから、タイ、マレーシア、中国国内に新しい拠点をつくり、より一層グローバルにビジネスを展開していくことを目指した。

これを機に、外国人材を採用することで社内に新しい空気を入れたいとの社長の意向から、一時、新卒採用で外国人留学生のみを採用することとした。しかし社長の交代等によって方針が変わり、現在は留学生だけではなく、国籍を問わず優秀な人材を採用しているとのことである。

同社では、身近に外国人がいることで宗教や言葉についての気配り、時間的な尺度の違い等を理解できるようになったという。異文化理解が深まれば、海外でビジネスを展開するハードルが下がると考えており、外国人材の採用が、会社全体にプラスの影響を与えることを期待している。

(2)採用に関する取組と課題
同社では新卒一括採用を行っており、以前は留学生向けの就職イベントや採用支援会社を利用していたが、現在では日本人も留学生も採用プロセスは同じで、説明会を開催したうえで面接を行っている。

また2012年度の採用からは、エントリーシートによる書類選考は行わず、面接を通じて学生と直接話をして選考を進めることを基本としている。ビジネスニーズに合わせて、戦略的に中途採用を行うことはあるが限定的である。グループ会社で管理部門を統合することを検討しており、今後は採用もグループで一括して行うようになる見込みである。

(3)定着に向けた取組と課題
【配属】
同社では現在、10名弱の外国人社員が働いており、営業部、研究部、経営企画部等、生産部以外のすべての部署に配属されている。理系人材の採用が多く技術研究所への配属が最も多い。

2014年4月に入社した新入社員(留学生を含む4名)には、同年9月までは各部署で研修を行い、様々な部署で業務を経験させた。そのうえで自分が所属したい部署を選んでもらい、いかにその部署に入りたいか経営層の前でプレゼンを行い、本人の希望に配慮して配属先を決めていたという。

しかし2015年4月の新入社員(留学生3名)に対しては、このような配属は行われなかった。また、これまで国籍を問わず人材を配置してきた結果、留学生の特性を考慮した配属やジョブ・ローテーションが十分にできておらず、留学生出身者の能力を活かすことができていないことが課題となっている。

そのため、日本人社員を含め、将来のキャリア・パスを明確に示して適切な配属を行えるように、社内制度の改革を進めているところである。

ツールの一つとして、今期中には各社員の情報を収録した人材データベースを構築する予定である。データベースには、入社時の配属先の希望、面接時の成績、評価、性格分析の結果等を収録し、人事異動や評価について、人事と各部署が議論をするためのツールにしていきたいと考えている。

【評価制度】
同社では、一年間の成果を「行動評価」と「スキル評価」で評価している。目標管理シートを用いて社員の目標設定と達成度の評価を行っており、その結果が行動評価に反映される。社員には毎年5段階の評価が付けられ、昇進・昇格が決まる。

外国人社員に話を聞いたところ、等級が上がるのが遅いことや、自分の成果に対する評価に納得できずに強い不満を抱いている社員が複数いることが判明した。同社では、昇進・昇格に要する時間が長く、自分のやりたい仕事ができないということが、外国人社員の離職につながるのではないかと危惧している。日本人社員にもこのような不満が生じているため、相対評価ではなく絶対評価を実践すること、評価の際にはきちんと本人にフィードバックを行うことを徹底し、不満の解消を図るという。

【研修】
同社では、体系的な研修制度の構築を進めているところである。これまで、部署内で専門的な能力を習得するための研修は行われていなかったため、各グループの課長に、来期の目標と人材育成の計画書を提出させ、部署内の研修メニューを検討している。

また、来期からは、マネージャー職と、各専門を極めるスペシャリストのどちらを目指すのか、各社員のキャリア・パスに応じた研修を実施する予定である。同社には9つの等級があり、監督職の5等級あたりからマネージャー職(1~3 等級)の候補者を見極める。そのため、監督職になる前の7等級以上(入社2~3年目)からは本人の希望を聞きながら各社員のキャリア・パスを作り、個別に必要となる研修を組んでいきたいと考えている。

【海外事業所・現地法人との関係】
採用は、各現地法人で個別に行っている。マネージャークラスには日本人社員を派遣しているが、将来的には、現地採用の人材を社長やマネージャーに登用したいと考えている。

同社では、タイ法人で現地採用した社員を、一年間、日本の技術研究所で受け入れ、薬品の分析やテスト方法等のトレーニングを行ったことがある。帰国後、その社員は現地社員の指導にあたっており、今後もこのような受入れは定期的に行っていきたいとのことである。

将来的には、「グローバル人材」の採用枠を設け、積極的に人材を流動させたいと考えている。国をまたぐ異動を行うと、給与の不公平感が生じる場合があるため、グローバル人材のジョブに対して、独自の給与を設定することを検討している。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【生活環境】
イスラム教徒の社員には、休憩室を使って礼拝のスペースを用意し、業務時間でも礼拝ができるように気を払っている。

6.1.20 株式会社栄鋳造所(製造業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、鋳造品や金型の製作を手掛ける中堅・中小企業である。かつて同社の売上はすべて国内市場で、約9割が自動車業界であった。しかし2008年に先代社長が急逝し、その後のリーマンショックにより国内自動車業界からの受注が一気に減少したことが契機となって、現社長は経営方針を転換、海外展開を目指すこととなった。

社長自ら欧米やアジア諸国の現地視察をするなかで、海外展開に当たっては外国人材の活用が必要と考えるようになる。その理由の一つは、海外でマーケティングができる適切な人材が日本人では見つけにくいということ。

そしてもう一つが、今後のグローバル展開に向けて社員の意識改革が必要なことであった。それまでずっと国内市場を相手としてきた同社社員は、経営方針の転換に伴うグローバル対応に対して大きな戸惑いがあり、言語の壁や「自分たちにはできない」という心の壁が存在していた。その打破のための具体的契機として共に働く外国人社員の存在が必要と考えたのだという。

先代社長のころに、既に同社は外国人技能実習生を受け入れていた。しかし、彼らは仕事を覚え、戦力になる3年後には帰国してしまうのが課題だった。同社に長く定着する外国人材を探す中で出会ったのが、後述する難民認定申請者、そしてインターン生であった。外国人材受入れの推進等の取組を経て、同社の売上は現在、7割が海外市場となっている。

(2)採用に関する取組と課題
【難民認定申請者の採用】
同社は派遣会社での勤務経験のある専門人材を役員として採用し、母国に帰国せず同社に長く定着する外国人材の採用方法を模索した。そうした中で認定NPO法人難民支援協会を知ることとなり、同会の協力の下に難民の採用を始めた。

しかし、採用した外国人材はその多くが退社に至った。そうした経験から、入社後の社内研修やOJTだけでは不十分であり、入社前の準備が必要であると考えた同社は、前述のNPO法人が立ち上げた「難民の就労準備コース」の開発と運営に協力した。同コースはディスカッション形式で外国人材が日本で働くうえで理解すべきことを学んだうえで、工場見学や企業でのOJT研修を行い、実際の技術や企業文化を学ぶとともに、経営者から会社のビジョンを聞き、また現場の社員の外国人材に対する興味関心を高める内容となっている。

同社では現在、難民認定申請者を採用するにあたっては、面接でものづくりへの興味や学習意欲の高さ、そして自社のビジョンと個人のビジョンがあっているかどうかを確認したうえで、上記コースに基づいて2週間のOJTを実施。現場との相性を確認したうえで、1年間の有期雇用に転換し、同期間が終了後に正社員としている(日本人の採用の場合も、上記コースに基づくOJTはないが、1年間の有期雇用を経て正社員となる)。

なお、難民認定申請者が持つスキル等が明確になれば、中小企業にとってのメリットが明確になり、受け入れやすくなるため、そうした調査が必要との指摘もあった。

【海外大学からのインターン受入れ】
現在在籍している韓国人社員は、韓国の大学に在学中に在留資格「文化活動」で来日し、その間に同社でインターンシップを行ったことがきっかけとなって入社に至った。この人材は日本と韓国の橋渡し役となるというビジョンを持っていた。同社では採用した外国人材が母国に帰って(同社も出資して)起業する、ないし商社等に就職することで、同社の海外マーケット拡大に寄与する、というビジョンを持ち始めており、そうした志向と合致したため、採用することとなった。

このことがきっかけとなり、同社は海外大学からのインターン受入れに取り組むことになった。現在、フィリピン、韓国、フランスの大学と協定を結び、大学の単位として認定される有給のインターンシップを実施している。インターンは「特定活動(インターンシップ)」の在留資格で来日し、2~3ヶ月同社で働いている。

同社は今後も他国の大学との協定締結を進め、インターンシップを通じて、各国の学生に出合い、同社のビジョンと合致するようであれば、採用につなげていく考えである。難民に特化した採用よりも、多様な外国人を獲得できるルートとして期待しているという。また、同様の取組が他の中小企業でも必要との考えから、他の中小企業とともにインターン受入れのために韓国の大学の日本語学科を訪問する予定である。中小企業にとっては日本語の話せない外国人材は採用のハードルが高いが、日本語を話せる人材であれば関心を持つ企業は多いとの指摘があった。

一方、海外においては、日本企業は昇進が遅い、年功序列といったイメージを持たれがちであるが、中小企業は大企業と比較して、フラットな組織、自由な雰囲気、ジョブ・ローテーションがない、といった特徴が若い外国人材には魅力であり、そうした点を発信していくことが、人材獲得のために必要との指摘があった。

また、中小企業が海外からインターンを受け入れるに当たっては、海外大学とのコネクションづくりや、内部の受入れ体制構築、在留資格申請のための専門家への手続きの依頼等にコストを要することが課題であり、そうした点に対する政府の支援への要望があった。

(3) 定着に向けた取組と課題
【社員の意識改革】
同社では先代社長の急逝より経営者が急に変わり、環境変化もあって経営方針が大きく変わることとなった。そのため、社員の意識改革を進めることが課題となった。

同社では社員が自発的に意識を変えることが重要と考え、以下の取組を行っている。まず、業務における「作業」と「管理」を区分したうえで、「作業」だけなら月給は一定額以上は上がらないという方針を明確にした。また、5年後、10年後の自分を想定し、結婚、出産などのライフイベントを踏まえて、その際に必要となる費用を試算し、「作業」だけの月給では限界があること、それまでに自分がどれだけ成長する必要があるかどうか、などを考え、自覚させるように促している。

個人の成長を促し、それを企業の成長につなげることが重要と、同社では考えている。

【労働時間】
同社の生産現場は、かつては作業手順やマニュアル等がほとんどなく、職人的な「勘」に基づいて個々の社員が黙々と作業を行う、という状況だったという。しかし、外国人材が作業できる環境を整えるために、マニュアルの作成や、手順や注意事項を写真や英語表記で掲示するなどの「見える化」が進められた。また、外国人社員らから様々な疑問や意見が出ることも多くなり、それを受けて日々の業務を客観的にとらえ、改善を行っていくという意識が次第に社員間で醸成されるようになった。

その結果、生産性が向上して労働時間が減少し、以前は全従業員(約30人)の月あたり残業時間が1000時間以上だったが、現在では100時間未満に減少しているという。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
海外からのインターン受入れに際して、在留資格認定証明書の審査時間が長期化する場合があるとの指摘があった。同社は同じ大学から繰り返しインターンを受け入れているため、同じ大学の同学部から同じ企業へのインターン受入れの場合は、審査期間の短縮が可能ではないかとの指摘があった。

6.1.21 I社(サービス業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、沖縄県に本社を置く旅行会社である。同社では主にインバウンド観光客への対応する部署として国際部とレンタカー部において、外国人材を受け入れている。

両部署において日本人社員と外国人社員が半々の割合で勤務しており、全員が日本語も話せる人材である。国際部はB2Bの業務を実施しており、現地旅行会社からの問い合わせや、トラブル発生時の処理・対応において、外国人材が活躍している。

レンタカー部門においては、B2Cの業務を実施している。外国人レンタカー利用者の110番通報時に言語対応をスムーズに行うため、同社・JAF・沖縄県警の3者が連携する覚書を締結した。県警と民間企業が連携して外国人の事故対応を進めるのは全国で初めてである。現在、アジア圏からの観光客増加に伴い、中国語や韓国語のニーズが拡大しているという。

(2)採用に関する取組と課題
採用に当たっては、地元の大学やハローワーク等に求人票を出すほか、紹介や個別に問い合わせを受けて入社に至る場合もある。

外国人材の採用は正社員として新卒採用する場合と、契約社員として採用する場合とがある。外国人材が必要な時期が同社の新卒入社の時期とずれている場合には、契約社員として入社することになる。日本人社員はほとんどが正社員であるが、外国人社員は契約社員の方が多い。同社では、仕事の内容は正社員でも契約社員でもほぼ同一である。

新卒採用時には全社で実施する入社試験を受けるが、契約社員としての採用の際は試験を受けず、面接のみで採否を決める。

このほか、海外での旅行業経験者を正社員として中途採用した実績もある。外国人材は、まだ不足していると同社は考えている。そのため、中国の福建省内の師範大学をはじめとする日本語専攻の学生に対して沖縄県地域限定通訳案内士の試験対策を支
援して、合格者が希望すれば同社で受け入れる、という取組を始めている。

(3)定着に向けた取組と課題
契約社員には賞与・退職金はないが、福利厚生は正社員と同様である。契約社員であっても実績や能力次第で昇格はありうる。契約社員が正社員になるには、新卒採用の時期に入社試験を改めて受けて合格するか、地域限定通訳案内士資格の取得することが条件になっている。入社試験には外国人用の問題も作成しており、おおむね日本語能力試験1級に準じたレベルとなっている。入社試験を受けて、正社員になった外国人契約社員もいるという。

契約社員の契約期間は、1年間の場合が多い。契約社員には原則として賞与はないが、適切な給与テーブルがないため、「特別契約」として賞与を支給している契約社員もいる。なお、同社の賞与は個人の業績に連動するのではなく、所属部署の業績に連動するものである。

入社時の事情や経緯、入社後に配属されたチームにより、正社員とほぼ同一の業務をするが賞与の有無でモチベーションや不公平感を招きかねないことから、待遇を適正化することが今後の課題となっている。

【労働慣行・職場環境等】
同社でも、社内で商習慣や文化の違いからコミュニケーションの齟齬が生じる場合もある。外国人材から差別と捉えられないようにする一方で、外国人に配慮ばかりしていると日本人社員が思わないよう、管理職が間に入って和らげるようにしているという。

なお同社では外国人材に対しては長期休暇取得を認めており、各国の旧正月や国慶節などの連休に、1~2週間の休暇を取るのが一般的となっている。現状では、インバウンド業務の業績が好調で、外国人社員の頑張りが社内に認められ理解されている状況という。また、残業も少ない。特に契約社員に対して残業ありきで仕事をさせていないため、仕事の内容が同一の正社員も含めて残業が少なくなっているという。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
旅行業は「国際業務」を申請できるため、同社の外国人社員は契約社員も正社員も「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている。

同社では外国人社員の多い部署が在留資格認定証明書の手続き等を支援しているが、手続きが煩雑で時間もかかるため負担となっている。また、外国人登録証の取得までの期間が3日~2週間程度かかるため、外国人登録証が交付されるまでは銀行の手続きも携帯電話の購入もできず、住宅も借りられない状況となる。そのため同社では社宅を使わせて対応している。

【生活環境】
外国人登録が交付された後には、住民票取得、引っ越し、電気・ガス・水道の手続き、銀行口座開設、携帯電話、クレジット・カードの発行、(子供がいる場合は)学校の手続きなどが必要になるが非常に煩雑であり、官民が連携してこうした手続きを一度の申請でまとめてできる仕組みがあるとよいとの要望があった。

病院に関する情報提供が少ない点、医療通訳が少ない(いても対応できる言葉が限られる)との指摘があった。また生活環境に関する情報全般について、外国人登録に関するウェブサイトなどからリンクが張ってあればわかりやすいとの指摘があった、また、外国人社員の配偶者に対するメンタル面のサポートも必要だが、個々の企業でそこまで対応するのは難しいという指摘もあった。

6.1.22 株式会社星野リゾート(サービス業、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、全国各地で旅館、リゾート・ホテル、ブライダル事業などを運営する中堅・中小企業である。同社では、外国人を継続的に採用している。外国人枠は設けていないが、旅館等の各施設において地元の魅力を再発見してそれをサービスに取り入れている同社にとって、日本人が気づかない日本の良さを見出す視点を持っていることや、日本人以上に日本の文化への関心が高い点が、外国人材の強みとして評価されている。

同社の顧客の約2割は外国人観光客であることから、その対応ができる点も評価ができる点も評価されている。また、同社は近年、 「Hospitality Innovator」をビジョンとして打ち出した。一人一人が気付きを持ち、さらに社員の多様性を活かすことで会社全体にシナジーが生まれると考えており、これに外国人材は大きく貢献することが期待されている。外国人材の配属先は、外国人の利用が多い施設や、ブライダル事業が多くなっている。

(2)採用に関する取組と課題
【新卒採用】
同社は、新卒採用では毎年10名程度の外国人材を採用している。選考フローは日本人と同様で、応募者には履歴書提出、筆記試験、グループ・ディスカッションとともに、「選考課題」を出している。

これは例えば「日本の温泉旅館の課題について」といった問いに自分なりに回答するもので、日本語での作成を求めているので、留学生からするとハードルが高いという。

外国人留学生向けの合同説明会に参加するだけでなく、自社開催の留学生向けセミナーも実施しており、後者では先輩外国人社員が話すなど、留学生が抱いている疑問や不安を応募段階で取り除き、同社の働き方や組織文化に関する理解を深め納得して
選考に進めるようにしているという。また、中途採用で外国人材も採用しており、電話面接やスカイプ面談など海外に居なが
らでも選考に進むことができる。

留学生の間では同社の知名度が低いこと、特に海外においては宿泊業等の接客業務のステータスが低いものと受け取られがちであり、親族が就職に反対するケースがあることが、課題となっている。

【インターンシップ】
インターンシップは以下の3種類を実施している。
・全学生向けの1日のインターンシップ:就職情報サイトで募集。
・専門学校生向けの夏季に行う1~3か月間のインターンシップ:専門学校と契約して実施。時給も発生する。採用に直結するものではない。
・米国の四年制料理専門大学の学生向けの3か月間の調理のインターンシップ:旅館において料理長は重要なポジションであり、同社の海外展開にあたってはグローバルに活躍できる料理長の確保が重要であることから、上記大学と提携。在留資格は特定活
動(インターンシップ)。

(3)定着に向けた取組と課題
宿泊業・旅行業は離職率が高い傾向にあるが、同社の離職率は同業他社より低く、離職者の割合で日本人と外国人の差はない。

【異動と昇格】
同社は職種別採用ではなく、入社後1年間はOJT期間として、会社が決めた施設に配属され、ビジネスや接客の基本を学ぶ。そして、その後働く施設(旅館等)や部署はすべて公募制である(社内選考を経て着任する)。

なお、同社は旅館等の施設において社員がマルチ・タスクで働くことが特徴である。また、管理職への昇格も立候補制であり、現場(特に総支配人等の責任者)と、全施設につながるテレビ会議でのプレゼンテーションを聞いていたスタッフのアンケートなどによって合否が決まる。

新卒は2年目から、中途入社は本採用になった段階から挑戦することができ、性別や国籍も関係なくフェアに評価される。こちらの立候補を利用し、現在マネージャー職を務める外国人スタッフもいる。このような、キャリアを主体的に描ける仕組みについては、外国人材の関心が高いため、同社は留学生への説明会等において、こうした仕組みをアピールしている。

【人事評価】
同社において、人事評価は“育成ツール”という位置づけで、結果を評価するのではなく、行動プロセス評価をするというのが特徴的である。半年間の活動を振り返り、自分の強みや課題を認識し、何を重点的に取り組むべきか考える機会となっている。年に2回評価面談があり、自己評価と施設・部署の責任者(旅館であれば総支配人)の意見を合わせ決定する。一方、施設・部署の責任者は人事責任者との面談が実施される。

【研修】
社内ビジネススクール「麓村塾」を展開しており、100 以上ある講座から、自分が受けたい講座を自由に受けることができる。ビジネス関連(マーケティング、財務情報管理、ファシリテーション、チームマネジメント等)の講義がメインであるが、ここ
2~3 年で日本文化の講義も始めた。

同社においてキャリアは自律的に描くものと考えており、それぞれのスタッフがそれぞれの目標の実現に向けて主体的に足りないものを学びに行く機会という位置づけであり、地方勤務の社員も受講できるようテレビ会議で開催しているものもある。

【外国人材受入れノウハウの社内での共有に向けた動き】
外国人材の受入れは現場(施設)側にそのための体制ができていないと難しい。そのため、現状では外国人スタッフが多い施設に新卒採用の外国人材は配属されている。今後は、外国人材受入れのノウハウを、他施設に横展開するためのプロジェクトを立ち上げようとしているところである。

6.1.23 J 社(IT、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、2005年創業、東京・筑地に本社を置き、インバウンドマーケティング導入支援、WEB サイト企画・制作等を行うベンチャー企業である。

最初に外国人を採用したのは2009~2010年頃で、日本在住のフランス人プログラマーからウェブサイトの採用情報に問い合わせがあったものだが、外国人採用を目的としたものではなかった。今はフランス人のマーケターが1名、同社のグループ会社でベトナム人のエンジニアが2名働いている。

同社では、多様性の受入による社内の活性化のためと、将来的に海外取引が増えていくことを見据えて、外国人採用を始めた。海外とビジネスを展開するという姿勢を体現する存在として、外国人材が社内にいることが重要と考えている。

エンジニアの採用については、日本でITエンジニアが枯渇していることが背景にあるが、将来、ベトナムに拠点を設置した際にビジネスを任せられる人材になって欲しいと考えており、日本のアウトプットの品質や同社の文化を学んでいる段階である。

外国人材を採用したことによって、直接的には、日本にある外資系企業との商談件数が増えた。また、彼らの疑問や意見を取り入れることで、各社員の役割を明確化したり労働時間に関する考えが変わったりするなど、日本的な働き方が一部是正されてきて良い方向に変わっていると認識している。

フランス人マーケターは海外情報の入手が早く、グローバル市場で何が主流なのかをウォッチすることに長けている。ベトナム人エンジニアは、技術に関する新しい情報を入手することに加え、彼らを通じてアジアが猛烈なスピードで成長していることを感じ、日本も頑張らないといけないという感覚を得ることができる。外国人社員と働くことで、新しい仕組みでビジネスを考えようとすることが、イノベーションにつながっているのではないかとのことである。

(2)採用に関する取組と課題
【採用】
同社の採用は、日本人、外国人を問わず中途採用がほとんどである。新卒採用は年に1~2名程度。中途採用は職務限定で行っており、新卒採用は総合職と、ネット・コンテンツ制作等の職務限定(美大出身者等を想定)の両方を行っている。

上述のフランス人は、英語が話せるマーケターとして、外国人、もしくは日本人で英語がネイティブ並みの人材を探していたところ、知人から紹介を受け採用に至った。ベトナム人は、同社が契約していた技術者派遣をしている日系企業から採用した。

今後も同社のニーズとマッチする人がいれば採用をしていきたいとのスタンスであり、エンジニア、ライター、デザイナー等で外国人材が必要になるかもしれないと考えている。

【フリーランス人材との連携】
ウェブサイト制作業務に関しては、エンジニア、ライター、デザイナー等の日本人のフリーランス人材と仕事をすることがある。制作の人手が足りない時や、特殊な能力が必要である時に、業務内容、期間を限定してピンポイントで依頼している。

海外とのビジネスが増えれば、海外のフリーランスのライター等に仕事を依頼する機会は増えるかもしれないが、日本に呼び寄せる必要はないと考えている。

(3)定着に向けた取組と課題
【配属】
日本本社では海外の会社とパートナーとなり、日本でのビジネス展開をサポートする仕事をしているが、外国人社員が入った方がビジネスを進めやすいと認識している。フランス人のマーケターは、海外のパートナーとの英語でのやり取りを担当。ベトナム人エンジニアは社内で開発の仕事をしており、対外的な仕事はしておらず、日本人顧客とコミュニケーションが発生する仕事は日本人が行っている。

【評価、処遇】
国籍を問わず、営業成績やアウトプットの質等、各社員の役割に応じた成果を評価している。国籍問わず処遇は同じであり、外国人でも長期雇用を前提としている。

【働き方】
顧客と対面するビジネスであるため限界はあるが、働き方の多様化を進めている。現時点では育児中のため遠隔で働いている社員3名、通常業務時間の10時~19時ではなく9時~18時での仕事を認めている。

【言語】
顧客の大半が日本企業であるため、クライアントとのコミュニケーションは日本語で、基本的には日本人社員が顧客との交渉を担当しており、社内でのコミュニケーションも日本語である。

フランス人は日本在住であり、日本語のコミュニケーションには問題がない。ベトナムのエンジニアは日本に来た時点で日本語能力試験N2を持っていたが、仕事で使えるレベルではなかった(一人はその後、N1に合格)。エンジニア同志であれば英語の
みで済むことは多いが、仕様の詳細が伝わらないことがあるため、エンジニアも日本語を話せたほうがよいと考えている。日本語は業務を通じて学んでおり、会社としての支援は行っていない。

6.1.24 株式会社カブク(IT、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、デジタル製造技術をコアテクノロジーとした、プロダクト・サービス開発を行うベンチャー企業で、東京・渋谷で2013 年に創業した。2014年に初めて外国人が入社、現在社員は17名、その内4名が外国人で、出身はオーストラリア、台湾、米国、ドイツである。

同社では、3Dプリンタ工場の生産効率化等を支援するクラウド型サービスを全世界に提供しているが、ネイティブの外国人がセールスをしたほうがスムーズに話が進みやすいことがあるという。

多様性を高めるということは、多様なアイディア・意見が生まれるということで、会社の“全体最適”につながる。人材のマーケットも、グローバルのマーケットをみたほうが、より優秀な人材を見つけることができるという認識である。

職種はマーケティング、セールス、エンジニア、バックオフィスの4つがあり、職種問わずベンチャーで働いた経験のある人が多い。外国人社員はバックオフィス以外、すべての職種で働いているが、主に上述のクラウド型サービス のグローバルマーケティング、グローバルセールス、システム開発等に携わっている。

外国人だからという理由で採用を行っているのではなく、国籍を問わず、その仕事に最適なスキルセットやマインドを持っている人を採用している。必要な日本語能力は、職種や、そのポストによって異なる。

(2)採用に関する取組と課題
同社では中途で即戦力の人を職種別に公募、採用している。欲しい人材には人的ネットワーク、自社のウェブサイト、ヘッドハンターの他、SNS 等を使い個別にアプローチしている。初任給は、社員によって異なる。

【インターンシップ】
同社ではインターンシップを行っており、多くの場合、大学4年生もしくは大学院修士1 年生が参加する。決まった期間はなく、人によっては1年程度働く人もいる。留学生のインターンはいないが、今後はそうした層にもアプローチする必要があると思っているという。

(3)定着に向けた取組と課題
【ジョブ・ディスクリプション】
スタートアップであることから、ジョブ・ディスクリプション(JD)はかなり幅広いとのことである。行うべき事項すべてが示されてはいないが、ジョブで達成すべき目的が明確化されており、社員にはそのために必要となる権限移譲が行われている。

マーケティングの担当者が、自分の職務に課せられた目的を果たすために必要と考えればセールスに携わることもある。会社にとっての全体最適を実現するために、“フルスタック”で自分の職務を全うすることを求めている。

【評価】
四半期ごとに、基本的には予実管理によって社員の評価を行っており、2名の創業者どちらかが、各社員の評価を行うようにしている。

ベンチャー企業の成長ステージで、シード、アーリーの時期には、個人のパフォーマンスは全社的な業績と同等で一律同じとみなすべきで、ミドルを過ぎ、レイターの時期になってビジネスが安定してからは、個人のパフォーマンスの評価を個人の給与に連動させるべきと考えている。

そのため同社は、ビジネスが安定期に入るまでは社員のパフォーマンスは会社の成績で測られ、各社員のパフォーマンスが給与に連動することはない。ただし評価をすることで改善点が見えるので、各社員のキャリアアップにはつながると考えている。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
エンジニア等専門職以外の外国人が在留資格を取ることは難しいとの指摘があった。マーケティングやセールスの担当者として十分な能力を有する人材であっても、その専門の学位を持っていないと在留資格がおりない。マーケティングやセールスの分野で10年間の実務経験を有すること、MBA等関連する学位を有することというのは、採用時の制約条件となってしまうという。

また、職種を問わず、この時期にこの範囲で仕事をして欲しいと思った時にはフリーランスの外国人と仕事をすることがあるが、日本では所属機関がないと在留資格が認められないので問題になることがあるとの指摘があった。

認定されたベンチャーキャピタルや投資機関からの出資を受けているスタートアップ限定で、上述のような在留資格の規制を緩和することで、外国人材の活用がスムーズに行えるようになるのではないかとの指摘があった。

【生活環境】
外国人にとって銀行の口座開設、携帯電話の契約、家の賃貸は難しいとの指摘があった。例えば携帯電話の契約には住所が必要で、家の賃貸をするためには銀行口座が必要で、銀行口座を開設するためには携帯番号が必要なことがあり、対処のためのノウハウは外国人社員が共有しているに留まっているという。そのため、来日時に必要となる手続きを、ワンストップで行うことが可能なサービスを提供してほしいとの要望があった。

6.1.25 株式会社トランスリミット(IT、中堅・中小企業)
(1)外国人材を受け入れる理由
同社は、ゲーム等のスマートフォン向けアプリケーションを開発する創業3年目のベンチャー企業である。

同社は「世界に響くサービスをつくる」をビジョンとして掲げ、創業当初より、日本でスマートフォン向けアプリケーションを開発し、グローバル市場から収益を得ることを目指している。これまで開発した二つのスマートフォン向けアプリケーションはいずれも95%以上が海外ユーザーであることが特徴である。

そのため、ユーザーからの問い合わせは英語など外国語が中心であり、それらに日本人社員のみでは対応しきれなくなってきた
ために、まずアルバイトとして外国人材を採用するようになった。現在では、アルバイトに加えてインターンや正社員についても外国人材を受け入れている。

同社はまた、エンジニアやデザイナーなど、スマートフォン向けアプリケーションを開発する人材を中心に運営する企業を目指し、従業員の9割はそうした人材としている。そのため、受け入れている外国人材は、外国語(英語及び母国語)でカスタマー・サポートができることに加え、プログラミングやデザインなど何らかの専門性を持つ人材としている。

同社のスマートフォン向けアプリケーションは、海外ユーザーでも使いやすいように文字をなるべく使わないようにしているため、イラストやデザインが重要となる。しかし日本人だけで制作していると、例えば「郵便ポストは赤い」といったように、その形や色は日本の常識が反映したものとなりがちである。外国人材が制作に関与することによって、国により異なる形状や色があることを前提としてデザインが行われるようになり、世界で受け入れられやすいものをつくることができるようになってきているという。

(2)採用に関する取組と課題
【アルバイト及びインターン】
同社は、外国人留学生を有給のアルバイトまたは無給のインターンとして受け入れている。インターンについては専門学校と提携し、学校の単位が認められているものとして実施している。

期間は、1か月程度である。職業体験という位置づけで、受け入れる学年も限定していないが、条件にあえば内定を出すこともありうるという。一方、アルバイトに関しては外国語での問い合わせ対応に関する即戦力であり、かつデザイン、ゲーム開発、マーケティングといった専門性を持つ、専門学校や大学の学生を採用している。

【正社員】
2016年3月に、初の外国人正社員を採用した。採用のためのツールとして、同社では複数のSNSを活用している。また、専門学校に行って説明会も開催しており、その際には必ず社長が出席しているという。経営者自身の口から、自社のビジョンについて語り、それをこれまでどう実現してきたか、これからどう実現したいのか、そしてそのなかで留学生の力がいかにして必要なのかを語っているという。

(3)定着に向けた取組と課題
【専門職としての採用】
同社は社員の9割がエンジニアやデザイナーなどであり、新卒採用でも中途採用でも原則として専門職として採用している。他の職種に変わることは原則としてないため、将来のキャリアの予想を見通しやすい点は外国人材へのアピール材料になるという。

【社内におけるビジョンの共有】
創業当初は会議等を行わなくても会社のビジョンが社員に伝わっていたが、社員数が20名を超え、インターン等も一緒に働くようになって人の出入りが多くなると、経営者の意図がなかなか社内に浸透しなくなってきたという。

そこで、現在では全社員は月に一度社長との面談の機会を設け、アルバイトやインターンについては人事担当者が同様に面談等
の機会を設けて、会社のビジョンや方向性の共有を随時図っている。また、社員に対して社長から折を見て声掛けをして、一人一人を見ているということが伝わるように工夫しているという。

【今後の課題】
同社は創業3年目の若い企業であり、給与や勤務体系等に関するルールが不明瞭だったり、あるいはその根拠や理由づけがあいまいだったりすることがある。一方で、外国人材はそうした点について、日本人以上に率直に希望を述べ、あるいは会社の方針やその根拠について疑問をぶつけてくる傾向があるという。そのため、今後優秀な外国人材の受入れに際しては、そうした疑問に的確に対応していくことが課題となると同社では考えている。

(4)制度及び生活環境に関する課題
【在留資格】
同社で受け入れたい人材は、大卒とは限らない。そのため、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で大卒以外に求められる実務経験が10年以上であるのは長すぎる、この要件が今後同社が若い外国人材を採用する際に障害になる可能性がある、との指摘があった。

 

※おススメコンテンツ
外国人採用の成功事例 7選!
外国人の活用好事例集―厚生労働省
高度外国人材活躍企業50社/経済産業省貿易経済協力局
私たちが目撃した、外国人採用に成功している企業が持つ4つの共通点
外国人採用でダイバーシティな企業を実現!押さえるべきポイントは?
外国人採用失敗事例(1):最初は良くても…
上手くいきそうだった外国人採用が失敗してしまう5つの理由
課題の多い外国人採用。優秀な人を採るためにできることとは?【前編】
日本企業が外国人労働者を上手く活用していく方法~失敗しない国際人材の雇い方、育成・活用の仕方~

おすすめ記事一覧