商機拡大のナノテクノロジー!技術と世界の法整備が分かる企画書です

ナノテクノロジーには、産業的に大きな可能性があると同時に、人間の人体に対するリスク管理も重要なテーマです。ナノテクノロジーは、1959年12月の米国物理学会で、リチャード ファインマンが1個の原子までスケールダウンしたデータストレージへの応用に関する技術を提案したことに始まっています。

具体的に、ナノテクノロジーがどのような市場にどのような発明を生む可能性があるのかを見てみましょう。

ナノテクノロジー
①ナノデバイス
・分子エレクトロ二クス
・MEMs&バイオMEMs
・バイオデバイス
・バイオセンサー
・薬剤治療
・データスストレージ(巨大磁気抵抗効果)
・触媒
・デバイス小型化

②ナノツール
・製造技術(CVD、3次元プリント、分子自己組織化)
・分析・計測機器
・シミュレーションソフトウェア

③ナノ構造材料
・ナノ粒子(セラミック、金属参加物ナノ粒子)
・ナノチューブ化合物)
・ナノファイバー、ナノワイヤー
・有機ハイブリッド構造化合物(デンドリマー他)
・ナノ複合体(粘土、高分子他)
・ナノ構造膜、ナノ分散液、高表面積物質、超分子構造

このように非常に将来性の高いナノテクノロジーですが、一方ではEUでのナノ材料の届出・登録の義務化の動きや、安全性データの届出が義務付けられています。今回の企画書は、ナノテクノロジーの全体像を把握する格好の資料となっています。

 

【ナノテナノテクノロジーとは】
ナノテクノロジー
産総研・サイエンス・タウン 未来の科学者のために「ナノテクノロジー」
ナノテクノロジーとその材料
ナノテクノロジーにおける近未来医療の可能性
ナノテクノロジーとは?-ナノテクノロジープラットフォーム
nano tech 2020 超スマート社会を実現するナノテクノロジー
ナノテクノロジーで新しい“物質”をつくる―SPring-8 Web Site
ナノテクノロジー・物質・材料分野:文部科学省

【ナノテクノロジーのビジネスチャンス】
ナノテク産業の最新動向と注目ナノテク企業群
ナノテクノロジーの動向と中小企業のビジネスチャンス
食品分野におけるナノテクノロジーについて―食品安全委員会
ナノテクノロジー最前線―東芝
海外のナノテクノロジー技術政策の動向―Nedo
諸外国のナノテク政策および科学技術力の国際比較―文部科学省

 

【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2. 『平成27年度化学物質安全対策(ナノ材料等に関する国内外の安全情報及び規制動向に関する調査)』から学ぶ
3. 表紙
4. 海外規制動向
5. 国際機関におけるガイダンス・テストガイドライン・規格等の動向
6. ナノ材料に関する情報
7. OECD/WPMN
8. 添付資料

 

1. 今回の企画書の特徴

今回のナノテクノロジーに関する企画書は、アメリカにおける法案制定の動きなど、ナノテクノロジーを巡る各国の政府の動きが詳細に調査されているのが、大きな特徴です。生産するメーカーだけでなく、輸入や投資を行う事業体にも参考になる情報が満載です。重要なキーワードを、以下に挙げます。

・シリコンウェーハ加工用研磨剤
・ナノコンポジット
・リチウム電池の電極添加剤
・ナノ材料のリスク評価
・安全性データの届出
・テストガイドラインの新規策定
・エンドクリン
・内分泌かく乱物質クライテリア
・ナノカーボン3物質(フラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)

 

2. 『平成27年度化学物質安全対策(ナノ材料等に関する国内外の安全情報及び規制動向に関する調査)』から学ぶ

では、JFEテクノリサーチ株式会社が作成した企画書を以下具体的に見ていきましょう。

3. 表紙

はじめに
ナノ材料は、日用品の抗菌加工から、食品、日焼け止めなどの化粧品、コピー用トナー、シリコンウェーハ加工用研磨剤、ナノコンポジット、リチウムイオン電池の電極添加剤等の産業分野に至るまで幅広く使用され、今後のさらなる応用の拡大、量的増大が期待されている。

一方、そのリスク評価がまだ十分になされていないことから、各国において予防的対応が取られている。欧州連合(EU)においては、ナノ材料の届出・登録が各国で義務化の動きを見せており、フランスでは既に一昨年、デンマークでは2014年から実施され、ベルギーでも 2015年から実施されている。

さらに、EUにおいては2013年より化粧品規則が改訂、施行され、化粧品中に含まれるナノ物質に関し、安全性データの届出、表示等が義務づけられた。殺生物剤、食品においても同様の規則が実施されている。安全性に関する科学的知見の蓄積の面では、有害性に関する研究論文が飛躍的に増加している一方、OECD工業ナノ材料作業部会(WPMN)での有害性情報を収集するスポンサーシッププログラムにおいて、情報の公開が2015年から始まり、また、テストガイドラインの新規策定、改訂や、ナノ材料のカテゴリー化の議論が進む等、ナノ材料の安全性を取り巻く状況は着実に進展しつつある。

また、ナノ材料同様に有害性が懸念され、科学的検討が進められているエンドクリンについては海外、特に欧州において関心が高く、EU においては内分泌かく乱物質のクライテリアを作るべく議論が進められているところである。米国でもEPAが内分泌かく乱物質の試験法のガイドライン化やスクリーニングに取り組んでいる。

こうした中、弊社は、ナノ材料に関する直近の海外の規制動向等の情報収集・分析を行い今後の我が国のナノ材料等の管理のあり方を検討する上で必要となる国外の情報を整理するとともに、ナノ安全に係る国際的な取組に貢献するため、OECD工業ナノ材料作業部会(WPMN)の活動への支援を行う事業を委託されることとなった。具体的に本事業では、EU及び米国を始めとした各国におけるナノ材料や内分泌かく乱物質の規制動向の把握、国際機関におけるガイダンス・テストガイドライン・規格等の調査、ナノ材料の安全性に関する情報の収集等を行うとともに、OECD/WPMN 試験プログラムへの我が国の対応として、我が国が共同スポンサーを務めるナノカーボン3物質(フラーレン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ)のドシエとその概要版の作成等に係わる実務を行った。

ここに、本事業で実施した調査等をまとめて報告書とした。本報告書が、我が国のナノ材料の安全な管理、ナノ材料の安全性に対する国際的貢献、ひいては我が国のナノテクノロジーの発展の一助となれば幸いである。

平成28年3月
JFEテクノリサーチ株式会社

1. 海外規制動向
1-1 ナノ材料
(1)米国およびEUの規制動向
1) 米国
①TSCA 改正の動き
米国の化学物質管理の法律の中心となるのは、環境保護庁(EPA)が管掌する有害物質規制法(TSCA)である。TSCAは、新規化学物質の登録と既存化学物質のリスク評価がその主要部分である。

TSCAは1976年に制定され、既に30年が経過しており、現状にそぐわないと考えられ、有志の議員が改正に向けて動いていた。

2013年から審議された「化学物質安全性改善法案(Chemical Safety Improvement Act:CSIA)」は、会期中に成立せず、2015年1月3 日、米国連邦議会では新たな会期(第114回議会)が始まり、3月10日、連邦議会上院のユーダル議員(民主党)はヴィッター議員(共和党)とともに超党派のTSCA改正法案を、環境公共事業委員会に提出した。今回提出された新法案、「21世紀の化学物質安全性法案(以降「新・上院TSCA改正法案」と表記)」は、CSIAを強化したものと提案者は述べている。

また、下院においても前回気において TSCA改正法案が審議されたが成立に至らず、新たに「TSACA近代化法案」が提出された。

連邦議会下院でTSCA改正法案(ドラフト)の回覧と公聴会の開催
連邦議会下院エネルギー・商務委員会(Committee on Energy and Commerce)の環境・経済小委員会(Subcommittee on Environment and the Economy)は、2015年4月7日、同小委員会のジョン・シムカス委員長(John Shimkus:共和党、イリノイ州選出)が策定した、「TSCA 近代化法案(TSCA Modernization Act、以下、『下院 TSCA 改正法案』と表記)」のドラフト(未提出)を議論する公聴会を開催した。

2014年1月始めに終了した前会期(第113回議会)では、シムカス委員長は、商業用化学品法案(Chemicals in Commerce Act:CICA)について、複数のドラフト(未提出)を策定し、公聴会も頻繁に行った。

今回の公聴会の冒頭で、シムカス委員長は、下院TSCA改正法案を最終化する小委員会(mark up)を、2015年5月14日頃に開催することを計画していると述べ、同法案が同小委員会で最終化され次第、エネルギー・商務委員会全体での審議をできるだけ早く開始するよう申請するとした。

また、公聴会に同席したエネルギー・商務委員会のフレッド・アプトン委員長(Fred Upton:共和党、ミシガン州選出)は、下院TSCA改正法案は昨年の法案よりさらに狙いを定めたものとなっていると述べ、今年は意味のある改正の年になるだろうとコメントした。

法律事務所Bergeson&Campbellによると、同小委員会のランキングメンバー、ポール・トンコー議員(Paul Tonko:民主党、ニューヨーク州選出)は、シムカス委員長の論調や協力しようとする姿勢に感謝を示し、下院TSCA改正法案は、上院で審議中のTSCA改正法案を発展させたもの(departure)であり、前会期の下院 TSCA 改正法案(CICA)とは大きく異なるとする意見を述べた。

さらに、同委員会のランキングメンバー、フランク・パローン議員(Frank Pallone:民主党、ニュージャージー州選出)は、下院TSCA 改正法案は、思慮に富んだ革新的なアプローチをとっており、化学物質規制を推進する可能性をもっているとした。パローン議員によると、下院TSCA改正法案は、十分に改正されたTSCAという目標を目指すのではなく、現行法を複数の点で改善している、とした。

しかし、最近カリフォルニアなどから出されていた、連邦の州に対する優先権の点での異論がミネソタ、マサチューセッツ、バーモントといった州からも出されており、議論を呼んでいる。また、米国最大の連合組織AFL-CIOは提出された法案に対して、現行TSCAを改善している点は認めるが、連邦法の優先権をはじめとした、欠点や欠陥は重大であり、化学物質への暴露から労働者と公衆を守る有効な規制の枠組みになっていないとして反対を表明している。

連邦議会上院および下院で TSCA 改正法案を審議、それぞれ委員会と小委員会を通過
2015年4月28日、連邦議会上院の環境公共事業委員会は複数の法案を審議する公聴会を開催した。この中で、有害物質規制法(TSCA)改正法案も審議および修正し、超党派で可決した。

今回可決されたのは、2015年3月にトム・ユーダル議員(Tom Udall、民主党、ニューメキシコ州選出)とデイビッド・ヴィッター議員(David Vitter、共和党、ルイジアナ州選出)が超党派で提出した、「21世紀の化学物質安全性法案(S697、以降「上院TSCA改正法案」と表記)」の修正版。次は上院本会議で審議される。

公聴会前日の4月27日、ユーダル議員は他の民主党議員と共に、「関連する共和党議員との協議の結果、上院TSCA改正法案の下での各州政府の権限を強化すると共に、企業にとっての不確実性を取り除く妥協案に、超党派で合意した」と発表している。翌28日の公聴会では、ヴィッター議員が、この超党派の合意にもとづく修正版法案(substitute bill)を提出し、この修正版が審議、可決された 。ヴィッター議員は、公聴会後に発表したプレスリリースの中で「市民と環境を保護するために州政府が重要な役割を果すことを認めつつも、企業にとっての不確実性を取り除く、バランスのとれた法案になっている」と述べた。同法案の原案からの改善点として以下を挙げている。

・各州政府は、現行の連邦TSCAに沿った州法を、州内で継続して実施(co-enforce)できる(ただし、罰則が発生した場合は連邦政府か州政府のいずれかが課し、連邦政府よりも重い罰則を州政府が課すこともできない)。なお、2015年8月1日以前に成立している州の化学物質規制法は、恒久的に有効とする(公聴会前の案では、この日付が、2015年1月1日だった)。
・連邦環境保護庁(EPA)にTSCA申請を行う際、企業は動物実験以外の試験方法も検討することを要請している。
・州の大気・水質防止法よりも、改正後のTSCAが優先されないことを明示している。
・企業秘密情報(confidential business information:CBI)について、対象の化学物質が使用禁止された場合に、関係するCBIへの一般からのアクセスを許可するという変更を明記している。

ヴィッター議員は上記プレスリリースの中で、超党派合意について、ユーダル議員の功績を讃えるとともに、「時代遅れで、効力の無い米国の化学物質規制プログラムに対し、上院TSCA改正法案が常識的な改正をもたらすだろう」と述べた。

今回の環境公共事業委員会の公聴会では、冒頭演説の中で、ジェームス・インホフ委員長(James M. Inhofe:共和党、オクラホマ州選出)と、ランキングメンバーのバーバラ・ボクサー議員(Barbara Boxer:民主党、カリフォルニア州選出)が共に、超党派による上院 TSCA改正法案の策定を評価した。しかし、ボクサー議員は、「今回の修正案でも、多くの欠陥があり、支持することはできない」とし、複数の修正を提案したが、いずれも今回可決した法案には盛り込まれなかった。

法律事務所 Bergeson & Campbell は、TSCA改正法成立に向けた、これらの動向を分析し、「もしボクサー議員や他の議員が、今後多くの改定案を提出して法案通過を妨げるようなら、合意が得られるまで、上院本会議での決定が先延ばしになる可能性もある」としている。また、「仮に同法案が上院と下院の本会議で可決したとしても、統合法案を審議する両院協議会(Conference Committee)の民主党メンバー指名、議題決定、議事進行などにおいて、上院環境公共事業委員会ランキングメンバーのボクサー議員が強い影響力を行使するだろう」と見ている。

また、下院でも、既に述べた通り、エネルギー・商務委員会(Energy and Commerce Committee)の環境・経済小委員会(Environment and the Economy Subcommittee)ジョン・シムカス委員長(John Shimkus:共和党、イリノイ州選出)が「TSCA近代化法案(未提出、以下『下院TSCA改正法案』と表記)」のドラフトを発表していたが、2015年5月12日にその修正版を発表した。下院エネルギー・商務委員会の、フレッド・アプトン委員長(Fred Upton:共和党、ミシガン州選出)とランキングメンバーのフランク・パローン議員(Frank Pallone:民主党、ニュージャージー州選出)、環境・経済小委員会のランキングメンバーであるポール・トンコー議員(Paul Tonko:民主党、ニューヨーク州選出)らの支持を得た超党派法案であるとされている。

5月14日には、同小委員会が下院TSCA改正法案を最終化する審議会(markup)を開き、全会一致で同法案を可決した。次はエネルギー・商務委員会全体での審議に移る。

法律事務所Bergeson & Campbellは、上院においても下院においても、TSCA改正への超党派での動きが予想以上にスムーズに動いていると分析している。ただし、いずれの審議においても、両党間や関連する産業界、環境団体との意見交換が盛んに行われていることがうかがえるが、規制を実施する立場にある連邦政府機関(特にEPA)の意見が含まれておらず、今後の審議で反映していく必要がある点も指摘している。

連邦議会下院がTSCA改正法案を可決
2015年6月23日、連邦議会下院本会議にて、「TSCA近代化法案(HR2576、以下、『下院TSCA改正法案』と表記)」に関する審議・投票があり、398対1(不投票34名)の賛成多数で可決された。なお、同法案については、下院エネルギー商業委員会(Committee on Energy and Commerce)が、本会議での審議に先駆けた6月2日から3日にかけて、字句修正(mark-up)のための審議会を開き、修正を加えた後に 47対0(不投票1名)のほぼ満場一致で採択していた。

既に述べたた通り、同法案は下院エネルギー商業委員会の環境経済小委員会(Subcommittee on Environment and the Economy)のジョン・シムカス委員長(John Shimkus:共和党、イリノイ州選出)が草案を策定したもの。同小委員会が4月7日に同草案を公聴会で取り上げた後、シムカス委員長が正式な法案として、5月26日に議会に提出していた。

6月3日の下院エネルギー商業委員会の公聴会では、これまでも争点となってきた連邦法と州法の優先順位ついて、連邦法よりも厳しい化学物質規制を実施しているカリフォルニア州のアナ・エシュー議員(Anna G. Eshoo:民主党)が修正案を提案したが、最終的に取り下げた。6月23日に最終的に本会議で審議・投票された法案では、この点について、「例外を除いて、同法が、州政府が州法の下に2015年8月 1日以前にとった措置よりも優先されると解釈されない」と定めている。

米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science:AAAS)のニュース記事によると、上院法案では連邦EPA が特定の化学物質を「優先度が高い」と認定して、その安全性を評価している間は、州政府がその物質に関する新しい規制を発行することができないが、今回可決した下院法案ではそうした条項はみられない。

また、同じAAASのニュース記事では、上院法案に盛り込まれているが下院法案にない主な措置として、以下を挙げている。

・連邦EPAが、化学物質に優先順位を付ける
・企業や政府機関に対し、可能な限り動物試験以外の手法を検討するよう義務付ける
・連邦政府が支援する、環境に優しい化学物質の研究開発プログラムを新規設置する
・連邦EPA内に、化学物質の安全性確保に詳しい科学者で構成する諮問委員会を新規設置する

23日、下院法案が可決した直後、環境団体の環境ワーキンググループ(Environmental Working Group:EWG)は、同法案が明確な安全性基準を持たないことや、企業が追加料金を払うことで特定の物質の評価・承認の期間を短縮できることなどを挙げ、米国内に流通する化学物質の安全性を保証するには不十分であると指摘した。

それとは対照的に、米国化学工業協会(ACC)、全米化学流通業者協会(National Association of Chemical Distributors:NACD)、化学品製造者・関連業者協会(Society of Chemical Manufacturers and Affiliates:SOCMA、前・合成有機化学品製造者協会)などの業界団体は、揃って下院TSCA改正法案の可決を称え、上院での早急な可決を促すプレスリリースを発表している。

一方上院では、環境公共事業委員会(Committee on Environment and Public Works)が「21世紀の化学物質安全性法案(S697、以降「上院TSCA改正法案」と表記) 」を可決し、本会議での審議が待たれている(6月24日現在、同法案の共同提出者は民主党・共和党20名ずつの合計40名)。

そうした中、6月2日、米国イノベーション同盟(American Alliance for Innovation:AAI) は、上院のミッチ・マコーネル共和党院内総務(Mitch McConnel:ケンタッキー州選出)に対し、8月に連邦議会が休会となる前にTSCA改正法案を本会議で審議・投票するよう要請する書簡を約150企業連名で送付した。

なお、上院法案に反対する有力議員、バーバラ・ボクサー前・環境公共事業委員長(Barbara Boxer、民主党、カリフォルニア州選出)は、23日の下院による法案可決についてプレスリリースを発表し、下院法案は上院法案よりも州政府の権限を保障しており、上院でも検討するのに相応しい法案である、と述べた。

TSCA改正法案の可決・施行後の実施方法について専門家が提言
ブルームバーグ社傘下の Bureau of National Affairs 社(BNA)による会員制環境ニュース配信サービス、Daily Environment Report は、連邦有害物質規制法(TSCA)改正法案の可決後の実施方法に関する化学物質規制・法規の専門家による意見を、7月23日付で掲載した 。「ナノマテリアル等の新規技術により開発された化学物質の登録・監視方法を検討していく必要がある」としている。

連邦議会の上院と下院がそれぞれのTSCA改正法案の可決を目指している状況の中、将来、仮に可決したTSCA改正法の施行について提言を示した形。ナノマテリアル・化学物質規制を専門とする法律事務所Bergeson & Campbellの所長であるLynn L. Bergeson氏ら3名の専門家 が執筆した。

本意見の中で専門家らは、「上院案および下院案ともに、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど新規技術により製造される化学物質の利用などの促進と規制を同時に実施するための最善策を示していない」と指摘した。また、これら複雑な新規技術は、連邦政府機関による規制も複雑で、これらの技術を使った製品の安全性の評価の有無や程度を一般市民が知ることや、法規制の順守の方法を零細企業が理解することは難しいとの見解も示している。

3人の専門家は、続けて、「TSCAの下、過去10年間で、170件以上ものナノスケールの新規化学物質の通知をEPAが受領していることは、ナノマテリアル分野の目覚ましい革新を意味し、注目に値する。

同時に、EPAは、既存化学物質をナノスケールに加工した物質を、(特定の化学物質の製造業者に記録保管と報告義務を課す)TSCA8(a)条を適用して規制する上で、過去7年間、困難を強いられている。この事実は、ナノマテリアル分野は、法的にも政策的にも困難な面があり、EPA も注力する分野だということを示唆している」と述べた。

そして、「我々は、TSCA改正法案発効の遅滞を望んではいないが、国民の健康と環境を守りつつ、米国が化学と商業分野で世界のリーダーであり続けるためにも、新規技術に関する問題を議会が熟考し、法案を更に改正することは非常に重要であると考える」と結んだ。

上院議会のTSCA改革案が議事妨害を阻止できる支持者数を獲得するも、審議待ち
上院本会議での審議が待たれている「上院TSCA改正法案(21世紀の化学物質安全性法案:S697)」が、2015年10月2日に、共同提出者(cosponsor)の数が、議事妨害の阻止を可能にする60名に達し、同法案通過の可能性が高まった。

今回、同法案の支持者数が60名に到達したのは、エド・マーキー議員(Ed Markey、民主党、マサチューセッツ州選出)とディック・ダービン議員(Dick Durbin、民主党、イリノイ州選出)の2名が、共同提出者として同法案に署名したため。両議員は、以下を法案賛同の条件にしていた。

・現法案で毎年1,800万ドルに設定されていた、企業から環境保護庁(EPA)に支払われるTSCA関連費用の課金上限を、毎年2,500万ドルにまで引き上げるなど、TSCA施行のための十分な資金を確保すること
・連邦法であるTSCA改正法を州法よりも優先して適用する条項(pre-emption)について、(連邦法よりも厳しい規制を課している場合など)州政府が例外措置を申請できるプロセスを、明確化・効率化すること。なお、今年初めにマーキー議員と共同で同法案への対抗案を提案し、強い反対姿勢を示してきたバーバラ・ボクサー議員(Barbara Boxer:民主党、カリフォルニア州選出)も、同法案への賛同が近いと言われている。

10月6日には、同法案の共同執筆者であるトム・ユーダル議員(Tom Udall、民主党、ニューメキシコ州選出)とデイビッド・ヴィッター議員(David Vitter、共和党、ルイジアナ州選出)、この法案を支持するその他の議員、業界団体の米国化学工業協会(ACC)や、国際環境団体の環境防衛基金(EDF)を含む様々な団体が連邦議会に集まり、記者会見を開いて法案への支持を示した。

このように可決が間近に思われた上院TSCA改正法案であるが、2015年10月24日現在、投票・可決には至っていない。主な原因として、10 月5日に、リチャード・バー議員(Richard Burr、共和党、ノースカロライナ州)とケリー・アヨッテ議員(Kelly Ayotte、共和党、ニューハンプシャー州)が、新たな条項をTSCA改正法案に加えるよう求めていると発表したことが挙げられる。

ユーダル議員は、同法案への修正を1件でも許せば、他の議員も修正案を提出する懸念があるとして、同法案を迅速かつ確実に可決するためにバー議員との交渉を進めているという。

TSCA改正法案が上院を通過
上院本会議での審議が待たれていた有害物質規制法(TSCA)改正法案(S. 697) が、2015年12月17日、本会議での投票を経て、上院を通過した。

同法案を提出したトム・ユーダル議員(Tom Udall、民主党、ニューメキシコ州選出)の発表によると、次の段階として、この上院案と「下院 TSCA 改正法案(H.R.2576)」との相違点を調整し、一つの法に統合する必要がある。その後、大統領の署名を得られれば、正式に米国の連邦法として成立する。12月21日現在、法制化はされていない。

これまでも既報のように、上院TSCA改正法案はユーダル議員とデイビッド・ヴィッター議員(David Vitter、共和党、ルイジアナ州選出)が 2015年3月に超党派で提出し、10月までの間、支持者を増やしながら順調に可決までのプロセスを経ていた。しかし、10月5日に、リチャード・バー議員(Richard Burr、共和党、ノースカロライナ州)とケリー・アヨッテ議員(Kelly Ayotte、共和党、ニューハンプシャー州)が、新たな条項をTSCA改正法案に加えるよう求め、承認が難航していた。今回、同日に審議されていた別の法案にこの条項も含まれることとなったため、TSCA改正法案の可決も可能になった。

なお、同法案の共同執筆者であるユーダル議員は、多くの賛同が得られている同法案は、連邦議会の2015年の会期最終日である12月20日を前に上院を通過するだろう、との見通しを12月17日に先駆けて、発表していた。

法律事務所Keller and Heckmanによると、上院を通過した上院法案は、これまで分析されてきたものと殆ど変わらないが、主な変更点は以下の通り。

・優先的にスクリーニングされる化学物質の種類を増やした。
・化学物質の評価期間を延長する場合、EPAは公的に正当な理由づけをしなければならない。
・規制対象の化学物質が、他の機関の管轄となる使用方法で使われている場合、そうした他の機関と共同で規制に取り組むように、EPA に対して指示(directing)している。
・輸出の際の申告(export notification)対象化学物質リストを拡大する。
・機密扱いと申請されている化学物質の特定情報の公開を避ける文言を強化した。
・プログラム実施にかかるコストを、幅広くカバーするよう、料金システムに、より細分化したカテゴリーを設けることとした。
・州法に対して連邦法が優先的に適用される点について、更に文言を明確にした。
・EPAの安全評価期間に実施される、州の新しい法律や規制については、EPAが対象化学物質の安全性に関する決定を下すか、安全評価を実施する期限(3年間+制限された延長期間)が切れるかのいずれか早い方の時点以降は、連邦法が優先されるとした。上院案と下院案は一つに統合することが求められ、その上で大統領の署名によって成立するがまだその動きの詳細は報じられていない。ちなみに、両法案においてナノテクノロジーについての規定はない。

TSCA改正法案依然成立せず、行政府・産業界ら上院案支持か
2015年12月以来、米国連邦議会の上院と下院が、それぞれ可決した有害物質規制法(TSCA)改正法案の統合協議を進めている。2016年3 月16日現在、同法案に関する具体的な進展はない。

なお、こうした中、オバマ政権が各法案に関する意見を連邦議会に伝えていたことが明らかになった。米国環境保護庁(EPA)のジーナ・マッカーシー長官(Gina McCarthy)が上院環境・公共事業委員会と下院エネルギー・商業委員会の幹部議員へ宛てた1月20日付の書簡で、上院法案と下院法案について、複数の側面からの意見が記されている。2016年3月7日付けの記事で、法律事務所Bergeson&Campbell が伝えている。

同書簡では、2009年にEPAが議会に提出した「化学品規制改正における必要な理念」を基に、13項目についてEPAの意見を述べており、その内5項目で下院案よりも上院案を支持するとしている。この書簡は、2本の法案の統合について、初めて長官の意見を公的に示すものとなった。ナノテク・ナノマテリアルへの言及はないものの、新技術によって製造される新規物質の上市について、EPAの判断が下される前に流通を開始することを禁じた上院法案を支持している。

なお、2月29日には、150以上の事業者団体が所属する米国イノベーション同盟(American Alliance for Innovation:AAI)も、連邦議会宛てに書簡を提出している。書簡は、優先付けや料金徴収に関しては上院案の内容を支持している。また、国全体に適用される連邦規制を求めており、現存の州法による規制の存続には反対している。

連邦議会のTSCA改正法案は、米国の有害物質規制システムの再構築に向けて重要なステップであり、産業界と行政府も上院案に近い内容の最終法の成立に向け、連邦議会へ働きかけているといえる。

②NNI におけるナノEHSの位置づけ
NNI が2016年度予算案を発表
国家ナノテク・イニシアティブ(NNI)は、2015年3月11日付けで、2016年度大統領予算教書(2月2日発表)への付属文書を発表した。2016年度は、連邦政府予算からの国家ナノテク・イニシアティブ(NNI)への歳出として約14億9,500万ドルを要求している。2015年度の推定歳出額よりは750万ドルほど増額されているものの、2014年度の実績歳出額よりは7,900万ドル(5%)の減額となった。なお、この 2016年度予算が承認されれば、2001年の出資開始以来、累積で220億ドルを連邦政府がNNIに投資したことになる。

分野別の予算の内、環境、健康、安全性(EHS)の分野は2014年度の実績歳出額から3.2%増の1億540万ドルが要求されており、この額は2016年度のNNI予算要求総額の約7%を占める。この他、「研究基盤とツール」に対する予算も増額されているが、研究開発予算は全体的に減額されている。

米国NNIがナノセンサー、ナノインフォマティクスに関する一連のウェビナーを開催予定国家ナノテク・イニシアティブ(NNI)が、2015 年10月から12月の間に、ナノセンサー技術及びナノインフォマティクスに関する一連のウェビナーを開催すると発表した。

このウェビナー・シリーズは、NNIの運営事務局である国家ナノテク調整局(National Nanotechnology Coordination Office:NNCO) が開催する。5つあるNNIのナノテク・シグネチャー・イニシアティブ(NSI) の内、「ナノテク知識インフラ(Nanotechnology Knowledge Infrastructure:NKI) 」および「センサーのためのナノテクとナノテクのためのセンサー(Nanotechnology for Sensors and Sensors for Nanotechnology<Sensors>) 」の2件に参画している連邦省庁がスポンサーとなる。

それぞれ異なるトピックを扱う5件のウェビナーには、ナノセンサーの開発者に課せられる規制を扱うものも含む。即ち、「ナノテクを用いたインビトロ診断機器開発に関する規制ケーススタディ(Sensors)」がありその内容は、「センサーを用いたインビトロ診断機器に関して、米食品医薬品局(FDA)が要求する規制事項の概要を紹介する。

また、最近認可された、ナノテクを使ったインビトロのセンサー機器に関する提出書類を事例として取り上げたケーススタディも紹介する。」というものである。その他には、ナノインフォマティクスやナノセンサー技術の概要と応用などが予定されている。

③EPA によるナノマテリアル報告・記録管理義務付けの動き
EPA、ナノマテリアルの報告と記録保管の義務付けに関する規則提案を官報に発表米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)セクション8(a)のもとに、ナノマテリアルの製造業者および加工業者に対して報告・記録保管を義務付ける規則を提案する旨を2015年3 月25日に発表した。4月6日には連邦官報(Vol.80,No.65)上で規則案を発表している。

この規則案は、現在市場に出回っているナノマテリアルの現状を包括的に理解するための連邦政府の努力の一環として、EPAが2009年に策定を開始して以来成立を目指してきたものである。2014年10月には、規則案を行政管理予算局(OMB)に提出し、レビューを依頼していた。

この規則案が発効すれば、既に商用のナノマテリアルを製造あるいは加工している、あるいはしようと意図している事業者は、マテリアルの特定情報、その製造量、製造や加工の方法、暴露や放出に関する情報、環境と健康への影響に関連した既存データを通知する必要がある。なお、この通知は一度きりとされており、今後も継続されるものではない。

EPAによれば、この規則案は人体や環境に悪影響を与えるナノマテリアルを特定することを意図していない。それよりも、EPAはこの報告義務を通して収集された情報を使って、TSCAのもとでさらなる措置や情報収集が必要かどうかを決定する。EPAは2015年7月6日まで、同規則案に対するコメントを受領する。また、シンポジウムも開催する予定である。

EPAが、ナノマテリアルの報告・記録保管義務付けの規則提案について公聴会開催予定
EPAが、ナノマテリアルの報告・記録保管義務付けの規則提案について2015年6月11日に、ワシントンDCで公聴会を開催する旨を、5月8 日付けの官報にて告示した。

EPAは4月6日に、TSCAのもと、ナノマテリアルの製造業者および加工業者に対して報告・記録保管を義務付ける規則提案を発表し、2015 年7月6日まで一般からのコメントを募集しており、今回の公聴会はその一環である。コメントは、規則提案全般についても募集しているが、EPAが特に意見を要請しているのは、次の6つの論点である。

・報告しなければならない化学物質の同定
(Identifying the chemical substances that would be subject to reporting)
・報告すべき化学物質のナノスケール形態間の区別
(Distinguishing between nanoscale forms of a reportable chemical substance)
・製造又は加工前少なくとも 135 日に個別の形態について報告すること
(Reporting discrete forms at least 135 days before commencement of manufacture or processing.)
・EPAの経済的な分析に関する考察(Considerations for the Agency’s economic analysis)
・電子報告(Electronic reporting)
・定期的な報告に関する将来の規則化可能性についての考察
(Consideration of potential future rulemaking regarding periodic reporting)。

EPAがTSCAに基づくナノマテリアル報告と記録保管規則提案へのコメント提出期限を延長
環境保護庁(EPA)は2015年7月2日、有害物質規制法(TSCA)に基づくナノマテリアルの報告と記録保管を義務付ける規則提案(4月6日発表)に関する一般からのコメントを、8月5日まで受け付けると発表した。元々の提出期限は7月6日とされており、今回の発表で、EPA
は意見公募の期間を30日間延長した。EPAの発表によると、今回コメント期間を延長したのは、あるコメント提出予定者の要請に応じたもので、コメントを提出することを希望する全ての人に充分な時間を与えることを目的としている。

7月20日現在、18件のコメントが提出されており、14件が閲覧可能となっている。今回のコメント提出期限の延長に関連するものとしては、米国を拠点とする国際環境団体の環境防衛基金(EDF)と業界団体の米国化学工業協会(ACC)が、6月17日と6月24日にそれぞれ提
出したコメントの中で、期間の30日間の延長を要請している。

その他のコメントには匿名のものも多くみられるが、大学、環境団体、ナノマテリアル製造業者のものもあり、例えば製造業者のnano Composixが新制度は中小企業にとって大きな負担になるとして反対している。

また、銀ナノテクノロジーワーキンググループ(銀の研究コンソーシアムのプロジェクト)は、ナノ銀の農薬以外の用途は限られており、エレクトロニクス用、薄膜など消費者への暴露は最小であることなどの理由を挙げてナノ銀応用製品を報告制度から除外するよう求めている。カリフォルニア州公衆衛生局は、EPAの提案を公衆衛生保護に向けた有用なステップと評価したうえで、ナノマテリアルの定義を厳密に定めるよう要望している。

EPA、ナノマテリアルの報告と記録保管を義務付ける最終規則を2016年10月発表予定環境保護庁(EPA)は、2015年下半期の規制アジェンダの中で、TSCAを通したナノマテリルの報告および記録保管を義務付ける最終規則を2016年10月に発表することを予定していると発表した。既に述べてきた通り、EPAは、有害物質規制法(TSCA)セクション8(a)のもとに、ナノマテリアルの製造業者、輸入業者、および加工業者に対して報告・記録保管を義務付ける規則提案を2015年4月6日に発表し、一般からのコメントを受け付けていた。

今回、EPAが発表した規制アジェンダによると、EPAは、同規則について、一般から集められたコメントを反映し、規則を最終化する段階に入っている。

EPAのナノマテリアル報告義務提案への意見で化学産業界と州政府・NGO は対照的
米国環境保護庁(EPA)は、有害物質規制法(TSCA)セクション8(a)のもとに、ナノマテリアルの製造業者、輸入業者、および加工業者に対して報告・記録保管を義務付ける規則提案を2015年4月6日に発表し、一般からのコメントを受け付けていた。その後、複数の団体からの要請により、EPAは2015年8月5日までコメント期間を延長した。その結果、2015年9月23日現在、匿名を含む69件のコメントが提出された。

これらのコメントは、環境保護団体や、州政府の環境・保健関連機関、学術機関、ナノマテリアル製造業者などをメンバーとする化学系業界団体などから提出されており、連邦政府のドケットに掲載されている。業界団体からは、報告・記録保管義務提案に対する反対意見が多くみら
れる。これらの意見では、同案の情報収集範囲を縮小して改定し、再発表するようEPAに対して要請している。

一方、環境保護関連の非政府団体(NGO)や州政府環境保護局などは、EPAの規制案を支持する姿勢を表明している。これらの意見には、同規則を更に強化すべきだとするものもみられ、業界団体の意見と対照的である。

④EPA によるナノマテリアル、ナノ製品の認可に関わる動き
EPAが銀ナノ粒子を含む抗菌製品の条件付きFIFRA登録(販売・流通許可)を発表
2015年5月19日、EPAは、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の下、銀ナノ粒子を含む抗菌製品ナノシルバ(Nanosilva)を条件付きで登録したと発表した。この登録は、2013年8月27日付けで提案されていたもので、当時一般からのコメントを同年9月26日まで募集していた。

ナノシルバは、ナノシルバ社が製造する、染みや悪臭のもととなるカビやバクテリアなどからプラスチックや繊維を保護する用途で使用される抗菌製品である。家庭で使われる電化製品、スポーツ用品、医療器具、バスルームの設備、アクセサリーなど、様々な物品に適用できる。食品には接触しないとされる。

EPAが今回登録を決めた根拠は以下の通り。

・ナノシルバには活性成分として銀ナノ粒子が含まれており、この種類の銀ナノ粒子を含む抗菌製品は、現在FIFRA下で登録されていない
・登録の条件として、ナノシルバ社に課される更なる詳細情報の収集期間(4年間)の間に、環境への不当な影響を及ぼすとは考えられない
・更なる詳細情報収集のための十分な時間が経過していない
・ナノシルバの使用は、公共利益をもたらす

また、今回の登録発表と同時に公開された、2013年に集められたコメントに関する資料によると、合計で10件のコメントが寄せられ、その内訳は、一般市民(2件)、業界団体(3件)、非営利組織(5件)であった。

EPAのナノ銀条件付きFIFRA登録に対しNGOが異議申し立て
前項で述べた、銀ナノ粒子を含む抗菌製品「ナノシルバ(Nanosilva)」の、EPAによる条件付FIFRA登録(販売・流通許可)最終決定に対し、環境保護、食品安全、先端技術評価に関わる3非営利団体(NGO)が、2015年7月27日に、異議を申立てる2つの控訴状を連邦第9巡回控訴裁判所に提出した。

控訴状の一つ目は、国際的な環境団体である天然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council:NRDC)と、消費者団体である食品安全センター(Center for Food Safety:CFS)が共同で提出したもの。2つ目は、テクノロジー評価国際研究所(International Center for Technology Assessment:ICTA)が提出したもの。この2つの訴状は、2015年5月19日に、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の下、EPAが下した「ナノシルバ」の条件付き登録許可決定を保留にするよう訴えたものである。

なお、NRDCは、2011年にも、銀ナノ粒子を含む製品(繊維製品であるHeiQ )の条件付き登録を許可したEPAの決定に対して、異議申し立てをし、登録の再検討を要請していた。連邦第9巡回控訴裁判所は、2013年11月7日に、NRDCによる申し立てを部分的に認める(granted in part and denied in part)判決を下している 。

EPA、銀ナノ粒子含有抗菌剤「ナノシルバ」に関する控訴に対する弁論趣意書を提出
2016年3月8日、EPAは、銀ナノ粒子を含有する抗菌製品の条件付き販売・流通許可決定に反対するNGOによる2件の控訴について、弁論趣意書を連邦第9巡回控訴裁判所に提出した。これらの控訴は天然資源防衛協議会(NRDC)ら3つのNGOが提出したもの。銀ナノ粒子を含有する抗菌製品「ナノシルバ(Nanosilva)」を、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)下で、向こう4年間での詳細情報の収集・提出などの条件付きで、EPA が登録した最終決定に対し、異議を申し立てていた。

EPAは今回提出した弁論趣意書において、原告側が指摘している論点として、以下2点を挙げた。そのうえでEPAは、いずれの点についても、原告側NGOの申立てを否定し、訴えを棄却するよう裁判所に求めている。

・EPAがナノシルバ社に条件付き登録を認める最終決定を行った時点で、ナノシルバ社には詳細情報準備のための十分な時間がないとしたEPAの所見には確かな根拠があったかどうか。
―他企業の登録に際しての情報要求内容が、ナノシルバ社には当てはまらなかったか。
―過去の他のEPAによる措置を通して、ナノシルバ社に対する情報要求はなかったか
・ナノシルバを利用することで環境中への銀放出量は減少し、銀に関するリスクも減少するとしたデータや情報が示された状況で、同製品の登録が公共の利益となるとしたEPAの決定には確かな根拠があったかどうか。

特に1点目についてNGO側は、以下に挙げる過去の複数の時点で、EPAは既に情報要求を行っていると主張している。しかしEPAは、いずれの場合も2015年の最終決定における登録の条件である情報要求の内容とは異なり、ナノシルバには情報準備の時間はなかったとしている。

・2011年に銀のナノ粒子を含む別製品(繊維製品であるHeiQ)の条件付き登録を許可した時
・2010年にEPAがナノシルバ社とデータに関する意見交換を行った時
・1984年にFIFRA 登録に際してデータの提出を必要条件と定めた時

また2点目については、ナノシルバは通常の製品よりも銀放出量が少なく、銀イオンの放出も制御されており、放出量は測定不可能なレベルであったため、登録は公共の利益となるとしたEPAの決定には確かな根拠があったとしている。

EPAがグラフェンナノプレートレットにSNURを発行
米環境保護庁(EPA)は2015年6月5日、グラフェンナノプレートレットを含む22種類の化学物質に対して有害物質規制法(TSCA)のもとに重要新規利用規則(SNUR)を発行する内容の直接最終規則を官報に公示した。このグラフェンナノプレートレットは大部分が1から10の層から成り、長さや幅が主に2マイクロメートル未満のものである。

同物質に関しては、製造業者のスワン・ケミカル社(Swan Chemical Inc.)が製造前届出(premanufacture notices:PMN、番号P-14-763)を提出しているが、EPAが公開しているPMNでは、同物質の使用用途は機密情報として非公開となっている。EPAは、このグラフェンナノプレートレットに関して、TSCAのもとに防護具の使用など、次の措置を義務付ける同意命令(Consent Order)を同社に発行している(2014年12月発行・同意)。今回のSNURが発効すれば、これらの対策を講じずに製造、加工、使用することは重要新規利用と見なされる。

・不浸透性の手袋と保護服を含む個人防護具と国立労働安全衛生研究所(NIOSH)認定の呼吸保護具(レスピレーター)を使用する
・有害物質コミュニケーションプログラムを制定し、実施する
・同意命令に記されている通りの方法で製造、加工、使用する
・霧、蒸気、エアロゾルなどが発生する方法で使用しない
・一定の毒性試験結果を提出するまでは同意命令に示されている量以上を生産しない
・製造、加工、使用に際して米国の水域に予期できる放出や意図的な放出をしない

EPAによると、PMNを提出したスワン・ケミカル社は、同意命令に示されている通り、物質の特性評価を一定の期限内に提出することに同意している。この特性評価の結果によっては、更なる毒性試験の実施が課せられる場合もある。EPAはこの最終規則に対する反対意見を2015年7月6日まで受け付ける(6月24日現在、未提出)。反対意見や反対意見提出の意図がある旨の通知を受け取った場合、EPAはこの最終規則の該当部分を撤回し、改めて規則提案の公示を行うことになるが、反対意見等が提出されなければ、このSNURは2015年8月4日に発効する。

EPAが官能基が付与されたCNTについてSNURを提案
米環境保護庁(EPA)は2015年6月10日、官能基を有するカーボンナノチューブ(PMN番号P-13-793)など30の化学物質に対し、重要新規利用規則(SNUR)を提案した。

EPAはこの官能基化CNTに対して2014年10月27日にSNURを直接最終規則として発行したが、これに対して反対意見を提出する意図がある旨の通知を受け取ったためにEPAは2014年12月23日に同最終規則を取り下げていた。

官報によると、EPAはPMN提出者が提案している方法でこの物質の製造、加工、あるいは使用を行うことが健康や環境に不当なリスクをもたらす可能性があるかどうかについてはまだ結論に達していないが下記に挙げたような場合は、人体の健康や環境への深刻な悪影響を引き起こす可能性があると判断し、今回のSNUR発行に至ったとしている。

・従業員に皮膚暴露する可能性がある場合に、不浸透性の手袋を使用しない
・PMNであげられている用途(電子機器に使用する薄膜)以外ための製造
・液体以外の形態でPMN物質を製造、加工、使用すること
・ミスト、蒸気やエアロゾルを発生させる応用用途を含むPMN物質の使用
・水域への放出

EPAはこの規則提案に対するコメントを2015年7月10日まで受け付ける(6月24日現在、P-13-793に関するものは未提出)。なお、今回の官報での発表は、2014年12月に直接最終規則としての提案が取り下げられた後の再提案であるため、同規則の発効日などは指定されていない。コメント期間終了後に、EPAが提出されたコメントを検討し、コメントを反映した変更を加えた最終規則を発行するか、提案を完全に取り下げるかを決定する 。

Nano-C社が単層CNT製品についてEPAから製造・販売の承認を取得
マサチューセッツ州ウエストウッドを拠点にするNano-C社が、同社の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)技術を応用した幅広い製品について、2015年7月21日付で、EPAから製造・販売の承認を得たと発表した。Nano-C社は、カーボンナノチューブ(CNT)をエネルギー及びエレクトロニクス関連分野に応用した製品開発を手掛ける企業である。

Nano-C社は、SWCNT製造・販売許可を得る前に、EPAの有害物質規制法(TSCA)が定める新規化学物質の報告に関する規定に従い、製造前届出(Premanufacture Notice:PMN)を提出し、PMNに記した通りにSWCNTの製造・使用に際する環境・健康・安全対策を講じた。Nano-C社CEOのビクター・ヴェジンズ氏(Viktor Vejins)は、「EPAによるSWCNT製造・販売の承認は、エレクトロニクス商品のディスプレイやタッチスクリーン用透明導電体(transparent conductors)、プリンテッド・エレクトロニクス(printed electronics)、メモリーデバイスなど消費者製品にSWCNTを使用するビジネスにとって非常に重要なステップである。今回のEPAによる承認で、Nano-C社は、米国で正式に認可された、これら先端物質の製造・販売元になるのは確実だろう」と述べた。

CNTをベースにしたメモリーデバイスを製造するNantero社の共同創立者兼CEOのグレッグ・スキマーゲル氏(Greg Schmergel)は、Nano-C社が、EPAによるSWCNT製造・販売承認を受けたことに対し、「Nano-C社が高品質SWCNTで、世界トップレベルの企業となるマイルストーンであり、SWCNTの消費者向け製品への応用を促進する大きな一歩だ」と評価した。そして、「超高速、高密度の新世代メモリー機器を開発・販売するにあたり、(Nantero社は)Nano-C社と協力する機会を待ち望んでいる。」とのコメントを寄せている。

表1-1-1に2014年度後半から2015年度に発効したSNURの一覧表を示した。

⑤ナノマテリアルに関するガイドライン、ガイダンス(EPA、FDA)EPAが産業排水ガイドラインの対象として工業ナノマテリアルを初検討、今後も継続
2015年8月4日付でEPAが、産業排水中の工業ナノマテリアル調査結果も含んだ「2014年次産業排水ガイドライン・プログラム・プラン最終版(Final 2014 Effluent Guidelines Program Plan)」を発表した。

EPAは、水質浄化法(Clean Water Act:CWA)の下、必要に応じて各産業の排水ガイドラインを策定している。さらにEPAは2年毎にこのガイドラインを審査し、一般のコメントも募集し、既存ガイドラインの改定や新規ガイドラインの策定を検討した結果を発表している。

2014年にEPAが行った既存産業排水ガイドラインのレビューの結果、新規ガイドライン策定や既存ガイドラインの改定が必要とはみなされなかった。しかし、EPAは今回初めて「工業ナノマテリアル」を新たにガイドラインが必要となり得る廃棄物質として指定し、検討を開始した。今回発表された調査結果のうち、ナノマテリアルに関わる事項を以下に摘要する。

・ナノマテリアルを扱う製造過程で、排水が生じる場合が想定されるが、その量と排水処理方法の排水業者による記録が無い。
・工業ナノマテリアルの有害性は、実験室で確認されているが、実際の環境とヒトの健康へのリスクは、不明な点が多い。
・産業排水に含まれる工業ナノマテリアルの環境における運命(最終経路)と暴露について研究されていない。
・極小で固有の性質を持つ、複雑な工業ナノマテリアルは、環境への影響やリスク評価、規制が困難である。
・産業排水のような複雑な混合物中にナノマテリアルを検出・同定する方法は、現在開発中である。
・水中のナノマテリアルをサンプリング、検出、測定する EPA 認可の標準方法は存在していない。
・都市下水処理施設で採用されている典型的な汚水処理方法で、排水からナノマテリアルを除去できることが研究によりわかっている。しかし、除去されたナノマテリアルが汚泥に蓄積する可能性があることが指摘されている。

EPAは、工業排水中に放出された工業ナノ物質の有無と、ヒトや環境への影響について更に調査研究が必要な4分野を挙げた。

・産業排水中のナノマテリアルを検出、同定するのに基準となるサンプリングや検査の方法。
・産業排水中の工業ナノマテリアルの形状と蓄積を考慮した上での、有害性の影響とそれが生成される可能性についての評価方法。
・工業ナノマテリアルを扱う施設の種類、それらの施設におけるナノマテリアルの生産量、排出物の特性や廃棄物量。
・産業排水中の工業ナノマテリアルの特質と環境中に排出された時の運命(fate)と変換(transformation)、処理方法についての評価方法。

EPAは、引き続きこの分野の研究のモニタリングを年次レビューに組み入れ、工業ナノマテリアルの排出に関する新しい情報を可能な限り収集する計画だという。

FDAが動物用飼料に使うナノ材料最終ガイダンスを発表
米食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration:FDA)獣医学センタ-(Center for Veterinary Medicine)は、2015年8月4日付で、「動物用飼料におけるナノマテリアル使用のガイダンス(Guidance for Industry: Use of Nanomaterials in Food for Animals)」最終版を発表した。FDAが2014年6月27日付で発表したドラフトに、当時提出されたコメントを反映した最終版となるが、ドラフト版から大きな変更は加えられていない。

このガイダンスは、動物用飼料の製造・取扱関連企業を対象にしたもので、動物に与える飼料の内、ナノマテリアルを含むものや、製造過程でナノテクを使用しているものについて、安全性や規制に関する問題を特定する手助けをする目的で策定されている。ドラフト版同様、法的拘束力はない 。

FDAによると、同ガイダンスは、動物用飼料の成分が以下のものに適用される。

・全てナノマテリアルでできている
・一部にナノマテリアルを含む
・製造過程で、ナノテクを利用している

FDAは、「現在のところ、ナノスケールの材料が使われており『概ね安全である(generally recognized as safe:GRAS)』と判断するに足る十分なデータが存在する動物用飼料は把握していない」との見解を示している。しかし、ナノテクは、幅広い応用分野を持ち、ナノ粒子の化
学的、物理的、生物学的影響も、大きな粒子を持つ物質とは異なる可能性がある。

そこで、同ガイダンスでは、動物用飼料製造者が、ナノマテリアルを動物用飼料に添加する前に、「食品添加物許可申請(Food Additive Petition:FAP)」を提出することや、FAP提出以前の早期にFDAに相談することなどを勧めている。

尚、このガイダンスは、最終版であるが、2015年8月21日現在、関係者・専門家、一般市民から9件のコメントが提出されている。

環境保護庁が、ヒト暴露評価ガイドライン草案へのコメント募集
米環境保護庁(EPA)は、暴露評価ガイドライン更新版 のピアレビュー(査読)用ドラフト(以降、ドラフト・ガイドラインと表記)を発表し、パブリックコメントを募集する旨を、2016年1月7日付の官報(Federal Register)に発表した。

今回発表されたドラフト・ガイドラインは、1992年版(現行ガイドライン)が含むトピックを受け継ぎつつ、暴露評価に、ヒトの様々な発達段階(ライフステージ)と、影響を受けやすく懸念に値する人口(Vulnerable Groups and Populations of Concern)について、及びヒト暴露測定の計画と実行について、という新しい章も加えられている。なお、ナノナノマテリアルについては、導入章において、本ガイドラインの主な焦点が、職場以外の環境における化学物質への暴露であり、特殊な性質を持つ生物学的因子および物理学的因子(例;騒音、放射能、細菌ハザード、ナノマテリアル)はこの範疇でないことが述べられており、ナノマテリアルは対象外であることが示されている。しかし、本ガイドラインで述べられている議論の多くはそれらにも当てはまるとしている。

また、1992年版に全く言及のなかったナノマテリアルへの言及が数カ所みられる。EPAによると、ドラフト・ガイドラインは、EPAが過去20年間に実施してきた評価プログラムの実績や、全米科学アカデミー(NAS)とEPAの科学諮問委員会(Science Advisory Board)を含む外部パネルからの情報提供を反映しているという。EPAは、ドラフト・ガイドラインが「暴露評価に使われている最先端科学を反映し、EPAの現在の方針も取り入れている」と説明している。

当初予定されていたコメント期間は45日間で、2016年2月22日の受け付け終了を予定していたが、締め切り延長を求める複数のコメントに答える形で、1カ月後の3月22日に延期された。コメント期間の次に、ドラフト・ガイドラインは、独立した専門家が、組織・開催する会議で、ピアレビューを受ける。EPAは、官報に、この会議の日時と場所を発表することになっている。EPA は、2016年2月22日までに受領した全てのコメントを、ピアレビュー委員会と共有する。

⑥NIOSHの取組
NIOSHが米国産業衛生協会による工業ナノ粒子に対する個人防護具ファクトシート発表
産業衛生の知識普及に努める国際非営利団体の米国産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association:AIHA)のナノテク作業部会(Nanotechnology Working Group)が、工業ナノ粒子への暴露対策として、個人保護具に関するファクトシートを発表した。AIHAの理事会が 2015年10月24日に承認したものを、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)がウェブサイトで公表している。

ファクトシートでは、工業ナノ粒子を、「少なくとも一つの次元が1~100nmのサイズ範囲にある人為的に製造された個体粒子」と定義し、8ページにわたり、職場におけるナノマテリアルへの暴露への優先順位を付けた段階的なリスク対策や、個人保護具のうち、呼吸保護具(Respirator)、耐化学物質防護衣料(Chemical Protective Clothing)、手袋、目の保護具(Eye Protection)、などについての有効な使い方や、それらの使用済み個人保護具の廃棄時の注意事項などが記載されている。

ファクトシートによると、「従来の暴露対策は、職場の包括的な安全健康計画の一部として実施された場合、工業ナノ粒子の暴露対策にも有効であるという最近の研究結果がある」として、ナノマテリアルへの暴露リスク管理にも、従来の優先順位を付けた段階的なリスク対策である、産業衛生ヒエラルキー(industrial hygiene hierarchy of controls)アプローチを踏襲することを奨励している。また、最も効果的なのは、製品の製造実験計画、製品開発、製造工程のデザインなど、ごく初期段階からナノマテリアルへの暴露リスクの対策を講じることであり、そうすることにより、最適なコントロール手段を選択し、リスク対策を化学製品製造プロセスに組み入れることができる。

特に、ファクトシートでは、個人防護具が、暴露対策の「最後の砦(last line of defense)」であるとして、個人防護具の重要性を強調している。また、PPEは、他の暴露対策と共に、更に安全を期すために使用することも奨励しており、職場での包括的なPPEプログラムの一環として、使用されるべきだと述べている。

NIOSH が銀のナノマテリアルへの職場での暴露の健康への影響について報告書を発表
疾病予防管理センター(CDC)傘下の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、銀ナノ粒子への暴露がおよぼす健康への影響に関する報告書(最新情報広報;CIBとして発行)のドラフト版を発表した。

2016年1月21日付の官報にて公示し、パブリックコメントの公募を開始した。コメント期間は3月21日までで、3月23日にはオハイオ州シンシナティのNIOSHナノテク研究所(Nanotechnology Research Center:NTRC) で、政府機関、企業、労働組合などの関係者を招いた一般公開の公聴会(パブリックミーティング)も開催する。

同報告書は、実験動物や細胞組織を用いた銀ナノ粒子への暴露に関する研究や、職場における銀の粉塵(dust)・煙霧(fume)への暴露が労働者の健康におよぼす影響に関する研究について、最新の文献を収集・分析した結果をまとめたもの。この分析の中でNIOSHは、粒子サイズが銀の毒性へ与える影響に特に重点を置いたとしている。

また、銀(粉塵および可溶性化合物)に関するNIOSHの推奨暴露限界(REL) が十分であるかも観点に含めて分析が行われた。その結果NIOSH は、銀ナノ粒子への暴露を現行のREL以下に抑えれば、労働者が皮膚などへの銀沈着症(argyria)を引き起こす可能性は低いと結論づけた。また、銀ナノ粒子がヒトの肺などへの深刻な影響を引き起こしたとする研究、文献は見受けられないとしたうえで、実験動物の肺への影響を示す研究結果から、ナノ粒子を扱う職場では細心の注意が必要であると勧告している。

同報告書ではこうした分析を基にした、銀ナノ粒子の安全な扱いに関する勧告と、現在知識が不足している今後研究が必要な分野を掲載している。

パブリックコメントおよび公聴会では、特に以下の分野について意見を求めるとしている。

・銀および銀ナノ粒子に関する、健康への危険性(ハザード)の特定、リスクの推定、健康への影響に関する議論は、最新の科学的文献を十分に反映しているか否か
・銀および銀ナノ粒子への暴露が起こり得る職場や職業
・職場における銀の粉塵・煙霧への暴露の健康への影響に関する研究
・銀および銀ナノ粒子への暴露を防止・管理する現行の手法
・銀および銀ナノ粒子への暴露を測定する現行の手法とその課題
・将来の協力(研究、情報配信、測定・管理手法の開発など)が考えられる分野なおその後コメント期間は 4月22日まで延長された。

2) EU
①ナノマテリアルの定義を巡る状況
欧州委員会の共同研究センター(JRC)がナノマテリアルの定義見直しに関する報告書の第3弾を発表
JRCは2015年7月10日、欧州委員会のナノマテリアルの定義の見直しに関するJRCの3つ目の報告書(6月付け)を発表した。この報告書はJRCが 2014年3月から欧州委員会のナノマテリアルの定義の見直しに向けて発表してきた報告書シリーズ(3回完結)の第3弾である。

欧州委員会は2011年に発行した「ナノマテリアル」の定義に関する勧告(2011/696/EU )の中で、その定義を用いた経験や科学技術の発展に鑑みて2014年12月までに同定義の見直しを行うとしていた。今回の報告書発表は、定義見直しの予定期限より約半年遅れた形。

以前発表された2本の報告書では、2011年の勧告の適用を通して得られた経験や知見を収集・分析したが、今回はその分析結果を基に、実際に欧州委員会勧告の中のナノマテリアルの定義に変更を加えなかった場合や、加えた場合に想定し得る影響が述べられている。

例えば、同報告書の中でJRCは、ナノマテリアルの定義の対象範囲に含まれる、物質の発生源について、自然(natural)、非意図的(incidental)、人工(manufactured)、の全てを含める既存の考え方を変えるべきではないとの見方を示した。また、物質の粒子サイズを、ナノマテリアルを定義づける唯一の特性とすることや、ナノスケールを1ナノメートルから100ナノメートルの範囲とすることに、変更を加える理由となる十分な科学的根拠がないとした。

また、これまでの2本の報告書では、定義の中で更に明確にする必要がある点が、ステークホールダーから指摘されている。この内、今回検討された項目の例は以下の通り。

・定義内で使用される用語の意味
「粒子(particle)」「粒子サイズ(particles size)」「外径(external dimension)」「構成粒子(constituent particles)」などの用語の意味を明確にする必要がある。
・個数濃度の粒子径分布による閾値に、規則間での相違の余地を与えることの是非現行定義では、ナノマテリアルを定める閾値は50%と定め、特に人体の健康や環境への影響が懸念される分野では、1%~50%の間の閾値を別途設定できるとしている。このことによって、欧州圏内の規制間の一貫性が保てないと懸念されている。
・体積比の表面積(volume-specific surface area: VSSA)の考慮の是非
現行定義では、VSSAを考慮することによって同定義がより効果的に適用できる場合もあるとしており、VSSAの考慮を示唆している。考慮すべきかどうかを明示し、現行の不明瞭な言い回しを削除すべきである。
・ある物質がナノマテリアルではないと証明する方法
現行の定義では、ある物質がナノマテリアルでないことを証明することが難しいため、新たな条件を加えるなどの施策の必要性が指摘されている。
・ナノマテリアルではない物質を明確に定義の範囲から外す言い回し
「ナノサイズの粒子を含む製品(products)は、全てナノマテリアルと認識される」という誤解が生じており、これを防ぐ言い回しが必要である。
・定義内に示された、確実にナノマテリアルとされる物質リストの一貫性
現行定義の中では、1つ以上の外径が1ナノメートル未満であっても確実にナノマテリアルであるとされる物質が列挙されているが 、カーボンナノチューブに構造が似た炭素以外の物質が含まれないなど、一貫性に欠ける。物質リストの変更か削除によって、一貫性を向上する必要がある。

今後のステップとしては、ガイダンスを新たに作成するか、既存のガイダンスを改善することによって、上記に挙げられた点について明確にすることが可能であるとしている。ただし、定義の解釈においてガイダンス文書に頼る部分が増えると、規則の実施や意思決定にばらつきが出てしまう可能性があるため、定義自体に明確な変更を加えることも、1つの解決方法であるとJRCは考えている。

欧州委員会は定義見直しの原案について、2015年の末頃にステークホルダーの意見を募集後、2016年に見直し作業を終了する予定である。

 

おすすめ記事一覧