日本で今後Googleは生まれる?世界のイノベーション取組REPORT研究

人しか資源のない日本が、今後も発展するための重要なキーワードがイノベーション(技術発明、新基軸)です。

戦後の日本は、手先が器用で勤勉で教養もそこそこある国民性が幸いし、優れた製品を次々と開発し、世界の一流国の仲間入りをしました。特に政府の保護を受けなかったメーカーは世界的な競争力がつき、ソニー、トヨタ、ホンダといったブランドが育ちました。

しかしインターネット革命が起き、市場構造が大きく変化し、企業の誕生、成長、衰退のスピードが速まる中、その変化への対応が遅れた日本は大きく立ち遅れました。アップルのiPhoneのセンサーや基盤は作れても、利幅の大きいiPhoneのような完成品では勝てない国になってしまいました。またGoogleやアマゾンといった、GAFAと呼ばれる巨大なプラットフォーマーの脅威にも晒されています。

日本から今後、GoogleやFacebookのような企業は誕生するのでしょうか?世界各国も同様の危機意識を抱いており、公的研究機関を絡めたイノベーションへの取り組みを推進しています。その状況を今回のレポートは、詳しく説明してくれています。

 

新しいモノを生み出すことが求められている

 

【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2. 『平成30年度産業技術調査事業(海外公的研究機関等における地域イノベーション創出のための活動状況等に関する調査)』から学ぶ
0.表紙
1.目的と概要
2.産業技術総合研究所の現状と課題
3.諸外国における公的研究機関の現状と取組
4.調査結果のまとめと示唆

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、今後の日本の国力の維持、経済の成長に大きなヒントになる要素が満載です。ポイントとなるキーワードを、以下に記します。

・国立研究開発法人 産業技術総合研究所
・国際的な産学連携
・地域拠点機能
・エネルギー・環境
・生命工学
・情報・人間工学
・材料・化学
・エレクトロ二クス
・異なるステークホルダーの目標の共有
・KPIs
・インセンティブ
・キャリアパス
・イノベーションコーディネーター

 

2. 『平成30年度産業技術調査事業(海外公的研究機関等における地域イノベーション創出のための活動状況等に関する調査)』から学ぶ

では、三菱総合研究所が作成した企画書を見ていきましょう。

0. 表紙

0-1. 目次1

【1.目的と概要】
1‐1.目的
1‐2.調査方針と調査の仮設の設定
1‐3.調査内容
1‐4.調査項目
1.4.1 調査対象組織(産総研)
1.4.2 調査対象組織(諸外国)
1‐5.調査方法
1‐6.報告書の構成

【2.産業技術総合研究所の現状と課題】
2‐1.沿革
2‐2.組織構成
2‐3.人員・予算規模
2.3.1 人員
2.3.2 予算規模
2‐4.研究領域・研究内容
2.4.1 エネルギー・環境領域
2.4.2 生命工学領域
2.4.3 情報・人間工学領域
2.4.4 材料・化学領域
2.4.5 エレクトロ二クス・製造領域
2‐5.中長期目標・中長期計画の概要
2‐6.研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
2.6.1 目的基礎研究と橋渡し研究とのバランス
2.6.2 研究活動の時間軸と中期計画の時間軸
2.6.3 本部組織の取組
2.6.4 KPIの把握とインセンティブ付与
2‐7.人材のマネジメント
2.7.1 人事制度
2.7.2 研修制度
2.7.3 キャリアパス
2.7.4 イノベーションコーディネーター(IC)
2‐8.地域拠点の役割・機能
2.8.1 地域とつくば本部の役割分担
2.8.2 地域拠点の意義
2‐9.国際的な産学連携活動

0-2. 目次2

【3.諸外国における公的研究機関の現状と取組】
3‐1.Fraunhofer Cesellschaft(FhG、ドイツ)沿革
3.1.1 沿革
3.1.2 人員・予算規模
3.1.3 組織構成
3.1.4 研究領域・研究内容
3.1.5 中長期目標・中長期計画の概要
3.1.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
3.1.7 人材のマネジメント
3.1.8 地域拠点の役割・機能
3.1.9 国際的な産学連携活動

3‐2.Fraunhofer Institut fur Solare Energiesyateme ISE(FhG ISE、ドイツ)
3.2.1 沿革
3.2.2 人員・予算規模
3.2.3 組織構成
3.2.4 研究領域・研究内容
3.2.5 中長期目標・中長期計画の概要
3.2.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
3.2.7 人材のマネジメント
3.2.8 地域拠点の役割・機能
3.2.9 国際的な産学連携活動

3‐3.Eidgegenossische Materrialprufungs und Forschungaanstalt(Empa、スイス)
3.3.1 沿革
3.3.2 人員・予算規模
3.3.3 組織構成
3.3.4 研究領域・研究内容
3.3.5 中長期目標・中長期計画の概要
3.3.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
3.3.7 人材のマネジメント
3.3.8 地域拠点の役割・機能
3.3.9 国際的な産学連携活動

3‐4.The Netherlands Organization for Applied Scientific Research(TNO、オランダ)
3.4.1 沿革
3.4.2 人員・予算規模
3.4.3 組織構成
3.4.4 研究領域・研究内容
3.4.5 中長期目標・中長期計画の概要
3.4.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
3.4.7 人材のマネジメント
3.4.8 地域拠点の役割・機能
3.4.9 国際的な産学連携活動

0-3. 目次3

3‐5.Agency for Science,Technology and Research(ASTAR,シンガポール)
3.5.1 沿革
3.5.2 人員・予算規模
3.5.3 組織構成
3.5.4 研究領域・研究内容
3.5.5 中長期目標・中長期計画の概要
3.5.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組
3.5.7 人材のマネジメント
3.5.8 地域拠点の役割・機能
3.5.9 国際的な産学連携活動

4.調査結果のまとめと示唆
4.1 調査結果のまとめ
4.1.1 組織の位置づけ・ミッション等
4.1.2 人員・予算規模、資金源
4.1.3 中長期目標のKPIs
4.1.4 研究領域
4.1.5 研究のポートフォリオ
4.1.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに係る取組
4.1.7 研究者・事務職のキャリアパス
4.1.8 地域拠点の有無・機能
4.1.9 海外拠点の有無・国際産学連携活動の目的
4.2 調査結果から得られた示唆
4.2.1 ミッションに基づく研究のポートフォリオ・KPIsの設定
4.2.2 ミッションの実現プロセスを把握するためのKPIsの設定
4.2.3 研究組織や研究者の行動を促す仕組み
4.2.4 異なるステークホルダーとの目標の共有、対話及び連携の促進
4.2.5 人材流動の促進
4.2.6 研究職以外のポジショニングに対する若手人材の採用
4.2.7 地域の大学や自治体との連携強化
4.2.8 戦略的な国際連携

0-4. 目次4

図 1‐1 調査の基本方針
図 1‐2 本事業における調査フロー
図 2‐1 産総研設立の沿革
図 2‐2 産総研の組織構成(2018年11月1日現在)
図 2‐3 領域別の研究職員構成(2018年7月1日現在)
図 2‐4 第4期中期目標期間における「橋渡し」機能強化
図 2‐5 産総研の外部資金獲得額推移(上)、運営費交付金の推移(下)
図 3‐1 FhGの財務推移
図 3‐2 FhGの職員数の推移
図 3‐3 FhG全体の組織構成
図 3‐4 FhG本部の組織図
図 3‐5 ドイツの研究システムの概要
図 3‐6 FhG‐ISEの財務推移
図 3‐7 FhG‐ISE組織構成
図 3‐8 ETHドメインの構成
図 3‐9 Empaの財務推移
図 3‐10 TNOの雇用職別人員構成
図 3‐11 TNOの組織構成
図 3‐12 TNOにおけるFlywheel of Innovationのイメージ(5つのドメインと9つの優先分野)
図 3‐13 イノベーションプロセスにおけるTNOの4つの役割
図 3‐14 TNOの優先事項,2018‐2021
図 3‐15 TNOの財務モデル
図 3‐16 ASTARの職員数推移
図 3‐17 ASTAR 組織構成
図 4‐1 職階別人員構成
図 4‐2 雇用種別人員構成
図 4‐3 公的研究機関における全収入の財源別構成比

0-5. 目次5

表 1‐1 調査項目の詳細
表 1‐2 調査対象組織
表 1‐3 ベンチマーク対象機関
表 2‐1 2017年度決算期(単位:百万円)
表 2‐2 産総研の研究ユニット
表 2‐3 平成30年度計画における領域毎の評価指標(KPIs)
表 2‐4 産総研の地域研究拠点別の機能整理
表 3‐1 FhGの財務推移
表 3‐2 FhGの職員数の推移
表 3‐3 FhGのドイツ国内の研究所・研究施設一覧(網掛けは今回の調査対象機関)
表 3‐4 FhG‐ISEの財務推移
表 3‐5 FhG‐ISEの職員数推移
表 3‐6 FhG-ISEの財務推移
表 3‐7 Empaの財務推移
表 3‐8 Empaで実施されている実証施設
表 3‐9 TNOの職員数の推移
表 3‐10 TNOの研究目的別収入
表 3‐11 ASTARのKPIs達成状況(百万シンガポールドル)
表 4‐1 調査対象機関の特徴
表 4‐2 海外公的研究機関に対する調査結果概要

0-6. 目次6/用語・略称の一覧

・産総研…国立研究開発法人産業技術総合研究所
・公的研究機関…海外の公的あるいは非営利の研究機関
・スタートアップ…ベンチャー企業と同義

1. 目的と概要/1.1 目的

国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、「産総研」とする。)では、平成27年度からの「第4期中期計画(~平成31年度)において、地域イノベーションの推進を含む全国レベルでの「橋渡し」機能の抜本的強化を最優先の目標に設定して取組を進めている。

平成28年度10月には、産総研は国立研究開発法人理化学研究所、国立研究開発法人物質・材料研究機構と共に「特定国立研究開発法人」に指定され、世界最高水準の研究成果を創出すると共に、制度改革等に先駆的に取り組み、他の国立開発法人等への波及・展開を先導すること等が求められた。

産総研では、研究領域に分かれて業務が推進されているが、領域によって研究開発や橋渡しの方法は多様であり、その組織運営や評価等もそれぞれ最適なものがあるはずである。

このため我が国のイノベーション・ナショナルシステムにおける公的研究機関、なかでも産総研の役割を検討する参考とするべく、各領域について、研究開発の特徴や成果普及の方法の特徴や課題などの概要を調査する。またこの概要調査を踏まえ、諸外国において、上記領域に対応する分野で特徴的あるいは先進的な取り組みや運営を実施している、あるいは顕著な成果を上げている海外公的研究機関等やその部門(それを取り巻く制度や環境など)について調査・分析を行った。

1-2,3. 目的と概要

1-4. 目的と概要

【1.基本情報】
・沿革、人員・予算規模、組織構成
・研究領域・研究内容
・組織構成
・研究所の中長期目標、中長期計画において重視する点
・中長期目標・中長期計画におけるKey Performance Indicators(KPIs)

【2.研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組】
・企業に魅力的な技術シーズを確保するため、どの様な取り組みをしているか。その研究は、国内の他大学や海外の研究機関と比較して、どういう点で強みがあるか。
・橋渡し活動として、どのような取組・組織を重視し、そのためにどのようなKPLsを置いているか。
・目的基礎研究/橋渡し研究のバランスについては、どのように考えているか。また、効果的な成果を出すために、どのような人材マネジメントの工夫を行っているか。
・研究水準・技術シーズの橋渡しに関するKPLsを設定することには、組織にとってどのようなインセンティブがあるか。
・新興・融合領域の開拓など、中長期的視点かつ全所的な研究に向けて、会議体や制度面等で、どのような取組をしているか

【3.研究者・事務職のキャリアパス】
・研究者や事務職(総合職)のキャリアパスとして具体的に何時、どのようなキャリアアップがあるか。

【4.地域拠点の役割・機能】
・地域拠点への機能配置の沿革、考え方はどのようなものか。その活動は、どの様に評価されているか。

【5.国際的な産学連携活動】
・国際的な産学連携活動のねらい、他機関との国際連携の推進に対する考え方
・国際連携による直接的・間接的効果
・国際連携を推進する上での課題とその方策

1-5. 目的と概要

1-6. 目的と概要

2. 産業技術総合研究所の現状と課題①

2. 産業技術総合研究所の現状と課題②

2. 産業技術総合研究所の現状と課題③

産業技術総合研究所

【役員】
理事長、副理事長、理事、監事

【研究推進組織】
・エネルギー・環境領域
・生命工学領域
・情報・人間工学領域
・材料・化学領域
・エレクトロ二クス・製造領域
・地質調査総合センター
・計量標準総合センター

【本部組織】
・コンプライアンス推進本部/監査室、評価部
・企画本部
・イノベーション推進本部
・環境安全本部/情報セキュリティ部
・総務本部

【事業組織及び研究拠点】
・東京本部
・つくば本部(つくばセンター)/つくば中央第一事業所、つくば中央第二事業所、つくば中央第三事業所、つくば中央第五事業所、つくば中央第六事業所、つくば中央第七事業所、つくば西事業所、つくば東事業所
・福島再生可能エネルギー研究所
・柏センター
・臨海副都心センター
・北海道センター
・東北センター
・中部センター
・四国センター
・九州センター

【特別組織】
・TIA推進センター

【経営戦略会議等】
・経営戦略会議
・理事会
・コンプライアンス推進委員会
・セキュリティ・情報化推進委員会
・研究戦略委員会
・人事委員会

2. 産業技術総合研究所の現状と課題④

2.3.2 予算規模

2017年度の産総研全体での収入額は1,085億円、うち、運営費交付金635億円、受託収入費は247億円(うち、民間企業受託収入は6.7億円)である。民間企業からの獲得資金額は全体で2017年83.3億円、これは全体の8%程度で、海外の橋渡し研究機関と比較すると低い水準になっている。

領域別の支出額では、エネルギー・環境情報が173億円、情報・人間工学領域が126億円、材料・化学領域が119億円となっている。人員数の割合と比べると、エネルギー・環境領域、情報・人間工学領域への支出額は高い。

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑤

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑥

◆産総研の研究ユニット

【エネルギー・環境領域】
・創エネルギー研究部門
・電池技術研究部門
・省エネルギー研究部門
・環境管理研究部門
・安全科学研究部門
・太陽光発電研究センター
・再生可能エネルギー研究センター
・先進パワーエレクトロ二クス研究センター

【生命工学領域】
・創薬基盤研究部門
・バイオメディカル研究部門
・健康工学研究部門
・生物プロセス研究部門
・創薬分子プロファイリング研究センター

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑦

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑧

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑨

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑩

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑪

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑫

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑬

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑮

2. 産業技術総合研究所の現状と課題⑯

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組1

◆3.1 Fraunhofer Gesellschaft(FhG、ドイツ)

ドイツは連邦制国家であり、連邦憲法で連邦の権限を欠かない限りは州の権限になる。ドイツでは、日本と同様、研究開発費の使用・負担割合共に企業が最も多くなっているが、基礎研究から応用研究までの活動は、大学の大部分を占める州立大学、基礎から応用研究までを担う様々な公的研究機関が研究システムの中心的役割を担う。

ドイツの科学技術予算は、連邦と州が共同で策定したThe Joint Initiative for Research and Innovation Ⅲ(研究イノベーションのための共同イニシアティブ)に基づき、2016年から2020年にかけて、連邦政府からの予算が年3%増加する計画となっている。

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組2

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組3

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組4

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組5

◆3.1.3 組織構成

全所的な研究戦略は、プレジデントやボードメンバーを筆頭に、本部が検討している。現在、第10代プレジデントであるProf.Dr-Ing.Reimund Neugebauer氏は2012年より現職であり、企業政策研究、技術マーケティング、ビジネスモデルを専門とする。FhGのボードメンバーには、政府職員は含まれていない。

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組6

◆3.1.4 研究領域・研究内容

FhGでは、応用研究を活動の中心に据え、企業との連携により、独自のアイデアをイノベーションに変え、ドイツ及び欧州の経済を強くすることをミッションとしている。

基本的な構造として、民間企業は応用研究、大学は基礎研究に注力しており、公的研究機関はその中間である。ドイツでは公的研究機関間でも差異はあり、FhGは応用研究が中心であるに対して、マックス・プランク研究所は基礎研究が中心でFhGと最も離れている。両者の中間に大学、ヘルムホルツ協会(ドイツ航空宇宙センター、ドイツがん研究センター、カールスルーエ工科大学等)、ライプニッツ協会などが位置づけられる。

なお、大学内または大学周辺に設立されているアンインスティチュートと呼ばれる産学連携機関は、州や連邦政府が資金援助を行う形で、基礎~応用の研究を実施している。大学教授が研究所長(ディレクター)を兼務し、大学院生が給与を得ながら、企業からの委託研究や共同研究する形をとっている。

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組7

研究分野(Forschungsfelder)は、以下の6分野となっている。72の研究所が、それぞれの領域について研究している。

●健康・環境(Gesundheit und Umwelt)
●安全・セキュリティ(Schutz und Sicherheit)
●モビリティ・交通(Mobilitat und Transport)
●生産・サービス(Produktion und Dienstleistung)
●コミュニケーション・知識(Kommunikation und Wissen)
●エネルギー・資源(Energie und Rohstoffe)

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組8

◆3.1.5 中長期目標・中長期計画の概要

FhGでは、2022年までの長期計画として機構全体で戦略的に取り組むべき優先7分野(Prioritare Strategische Initiativen(PSI))を定めたAgenda Fraunhofer 2022:Langfristig zukunftsfahigを推進している。PSIは以下のとおり。

●電池技術/製品(Batterietechnologie/Batteriezellproduktion)
●コグニティブシステム/データ主催(Kognitive Systeme/Datensouveranitat)
●プログラム可能な材料(Programmierbare Materianlien)
●量子技術(Quantentechnologie)
●トランスレーショナル医療(Translatinale Medizin)
●公衆安全(Offentliche Sicherheit)
●生物学的変換(Biologische Transformation)

従来のKPIsとしては、論文と特許がある。論文と特許は相反するアウトプットであり、従来のFhGのプレジデントは論文を嫌い、特許を重視するとしてきた。

しかし、FhGは論文と特許のバランスにジレンマを抱えている。大学とは異なり、論文の質と量に関するランキングは、組織全体や個人の業績評価としても、FhGでは重視されておらず、KPIとなっていない。ただし、修士や博士号の取得を目指している場合など、研究者によっては重要視していることもある。

KPIsではないが、FhGは、企業からの収入割合に応じて基盤的資金が配分されるフラウンホーファーモデルを1970年代から採用している。企業からの収入額が25‐55%の間、企業との契約金額の40%(それ以外では10%)が基盤的資金として加算される仕組みとなっている。民間資金獲得が25%に満たない場合、本部からの予算も減額となり、結果としてその組織の存続は難しくなっていく。

◆3.1.6 研究力の強化・技術シーズの橋渡しに関する取組

産業への橋渡し成果として、特許導出やスタートアップ創出などのいずれに注力するかについては、本部ではなく各研究所が定めているため、明確な目標はない。各研究者が裁量を持って研究目標を設定している。

産業のニーズに応じてテーマを変更しており、産業動向で民間企業からの収益は変動している。例えば、太陽光発電を研究しているFraunhofer-Institut fur Solare Energiesysteme ISE(太陽エネルギーシステム研究所)は、ドイツ国内産業の低迷により維持が苦しい時期があったが、現在は、中国や米国などの国外企業から資金を得て研究活動を続けている。中国企業とのプロジェクトは増加している。

領域の枠を超える横断的研究や、融合研究に関しては、「アライアンス」の機能を取り入れている。「アライアンス」とは、「領域横断的な研究所のグルーピングで、社会的課題を特定しその解決を資する研究を目的とした組織」である。

このような本部主導の横断的取り組みはあるものの、基本的には各研究所が中心となって、プロジェクト収益に応じて各研究所内の方針を決定している。本部としては、各研究所の方針を変えて研究所を配属させていくような機能は持っていない。

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組9

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組10

◆FhGのドイツ国内の研究所・研究施設一覧
・応用・統合セキュリティ研究所
・海洋バイオテクノロジー研究所
・マイクロシステム・個体技術研究所
・エルンスト・マッハ研究所
・エレクトロ・ナノシステム研究所
・組込みシステム・通信技術研究所
・有機エレクトロ二クス・電子ビーム・プラズマ技術研究所
・高周波物理・レーダー技術研究所
・応用情報技術研究所
・通信・情報処理・人間工学研究所
・オープン通信システム研究所
・ハインリッヒ・ヘルツ通信技術研究所
・応用個体物理物理研究所
・インテリジェント分析・情報システム研究所
・労働経済・組織研究所
・応用ポリマー研究所
・付加製造技術研究所
・生物医学技術研究所
・建築物理研究所
・化学技術研究所
・デジタルメディア技術研究所
・エネルギー経済・エネルギーシステム技術研究所
・メカトロニクスシステムデザイン研究所
・実験ソフトウェアエンジニアリング研究所
・生産技術・応用マテリアル研究所
・ファクトリーオペレーション・オートメーション研究所
・境界層・複合材料・プロセス技術研究所
・鋳造・複合材料・プロセス技術研究所
・コンピュータグラフィックス研究所
・大型構造物生産技術研究所
・集積回路研究所
・集積システム・デバイス技術研究所
・セラミック技術・システム研究所
・レーザー技術研究所
・分子生物学・応用生態学研究所
・物流・ロジスティクス研究所
・マイクロエンジニアリング・マイクロシステム研究所
・マイクロエレクトロニックサーキットシステム研究所
・国際マネジメント・知識経済研究所
・材料・システム微細経済研究所
・自然科学技術動向分析研究所
・応用光学・精密機械工学研究所
・オプトエレクトロ二クス・システム技術・画像処理研究所
・生産技術・オートメーション研究所
・生産システム・デザイン技術研究所
・物理計測技術研究所
・フォトニック・マイクロシステム研究所
・生産技術研究所
・空間・建築情報センター
・ケイ酸塩研究所
・太陽エネルギーシステム研究所
・システム・イノベーション研究所
・シリコン技術研究所
・ソフトウェア・システムエンジニアリング研究所
・被膜・表面技術研究所
・毒物学・実験医学研究所
・技術・経済数学研究所
・交通・インフラシステム研究所
・プロセス技術・パッケージング研究所
・風力エネルギーシステム研究所
・材料メカニズム研究所
・材料・ビーム技術研究所
・工作機械・成形技術研究所
・非破壊試験研究所
・細胞療法・免疫学研究所
・信頼性・マイクロインテグレーション研究所
・構造耐久性・システム信頼性研究所
・医用画像演算研究所
・アルゴリズム・科学計算研究所
・安全情報技術研究所
・環境・安全・エネルギー技術研究所
・ヴィルヘルム・クラウディッツ木材研究所

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組11

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組12

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組13

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組14

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組15

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組16

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組17

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組18

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組19

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組20

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組21

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組22

【NEST】
建設セクターのイノベーションを具体的に実証するためのプラットフォームで、新技術、新材料、新しいシステムを実証する。大学、産業界及び公共部門のパートナーと緊密に協力している。

取組内容は、廃棄物とリサイクル材料のみを使用した建築の実証、3Dコンクリートプリントによる型枠製造、太陽光発電を用いたフィットネス&ウェルネス施設、スイスの気候を活用した窓ガラスの調光技術、温度域が高温から低温までの熱マネジメントシステム、ドローンのビルのメンテナンスへの活用、居住空間の検証等、数多くのプロジェクトが実施されている。

BASF、スイスコム、フルムロック社、複数の大学、国内外の計23機関が参画している。

【move】
化石燃料に頼らない乗り物や移動手段の検証を行っている。短距離及び市内旅行用の電気自動車、バス及び共同車両用の水素駆動燃料電池、ならびに中型車及び配達用バン用のガスエンジンの利活用に関する実証を行っている。MIGROS、Atlas Copco、現代自動車、デューベンドルフ政府等が参画している。

【ehub】
地区レベルでのエネルギー管理の最適化を目指すプラットフォームである。NESTやmoveと連携して、モビリティ、住宅、及び作業部門におけるエネルギーの生産、変換、輸送、貯蔵のための多数の技術を組み合わせ、新しいエネルギーの概念の実証を行っている。

【dhub】
dhubは、デューベンドルフのNEST、move、及びehubをデジタルレベルで接続させ、新技術の迅速な導入が困難と言われている建物、エネルギー、モビリティを繋げる取り組みである。P2Pエネルギー取引のためのブロックチェーン技術の実証、建設における仮想現実と拡張現実、建物とエネルギーシステムの計画と運営における意思決定支援、新しいビジネスモデルの検証を行っている。マイクロソフト、オートデスク、BIM Facility等が参画している。

【self】
自給自足の生活モジュールの検証を行っている。太陽光エネルギーを活用した水素貯蔵、雨水の飲料水への活用、排水の工業用水への活用などを検証している。ETHグループのeawag、ギーベリッツ(スイス企業)、Gasser Energy(スイス企業)、Dornbirn(オーストリア企業)等が参画している。

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組23

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組24

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組25

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組26

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組27

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組28

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組29

3.4.3 研究領域・研究内容

TNOでは、9つの社会的テーマにおけるイノベーションに取り組んでいる。

●建設、インフラ及び海洋(Buildings,Infrastructure & Maritime)
●循環経済と環境(Circular Economy & Environment)
●防衛と安全(Defence,Safety & Security)
●エネルギー(Energy)
●健康的な生活(Healthy Living)
●産業(Industry)
●ICT(Information & Communication Technology)
●戦略分析と政策(Strategic Analysis & Policy)
●交通と物流(Traffic & Transport)

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組30

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組31

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組32

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組33

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組34

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組35

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組36

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組37

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組38

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組39

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組40

3. 諸外国における公的研究機関の現状と取組41

4. 調査結果のまとめと示唆1

◆4.1 調査結果のまとめ

【FhG、FhG-ISE(ドイツ)】

民間企業との連携による応用研究を強く志向した研究機関である。個々の研究所は、企業からの資金獲得目標の割合が25‐55%で達成されている限り、研究者に、研究活動上の自由度を一定程度与えている。

地域に分散して設置されている研究所は、地域大学や国外の企業と連携するなど、機関内・国内に閉じないネットワークを形成している。

【Empa(スイス)】

材料系研究に特化し、FhGやTNOと比べ小規模ながら、基礎研究から応用研究まで幅広く手掛ける。連邦政府から重点的な資金配分がある一方、高い研究力、組織及びプロジェクトのマネジメント能力を備えた少数精鋭の研究者だけがEmpaに残る仕組みになっている。

Empaは最先端材料開発のみならず、他分野との融合研究を可能にするシステム研究やプラットフォーム型の事業を手掛けている。

【TNO(オランダ)】

FhGと同様、複数の研究分野を持つ応用研究機関である。政府、企業、大学等のステークホルダーとの目標や戦略の共有を通じて、大学との連携による研究シーズの育成、政府資金の乗数効果による企業等資金の獲得、グローバルパートナーとの協業を重視した学際的アプローチを展開している。

博士号だけでなく、キャリア確立前の修士号取得者も採用し、研究系・事務系ともに柔軟なキャリアパス制度を取り入れている。

【ASTAR(シンガポール)】

ファンディング機能も併せ持つ政府研究機関であり、調査対象機関中、政府との距離が最も近いと推定される。近年は、官民連携による研究活動を強化しているとの指摘がある。米国の大型大学の様な、特定企業の担当リエゾンを置き、企業との関係強化を図っている。

良い人材を獲得するために、考えられうる全ての支援メニューを持っている。

4. 調査結果のまとめと示唆2

【FhG、FhG-ISE(ドイツ)】
◇組織の位置づけ/非営利機関
◇ミッション
企業との連携により、独自のアイディアをイノベーションに変え、ドイツ及び欧州の経済を強くする
◇政府との関係
FhGメンバーが、有識者として政府の主要戦略策定に参画
◇人員規模(人数)(2017年)
計25,327名(研究者9,792名 技術職員・事務職員8,173名、学生6,888名、研修生474名)
◇予算総額、資金源
2,286百万ユーロ(2017年)収入の1/3は政府、2/3はプロジェクトベース。後者に占める、産業界からの収入は約4割(全収入の3割弱)

4. 調査結果のまとめと示唆3

4. 調査結果のまとめと示唆4

4. 調査結果のまとめと示唆5

4. 調査結果のまとめと示唆6

4. 調査結果のまとめと示唆7

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