経済産業省作成の『バイオベンチャーの現状と課題』から学ぶ

アンジェス、サンバイオ、オンコリスバイオファーマ、ブライトパス・バイオ、窪田製薬ホールディングス…。これらは最近新興市場であるマザーズで話題になっているバイオ系ベンチャー企業です。

ただYahooファイナンスの掲示板や市況かぶ全力2階建を見る限り、日本における株式投資がまだまだ投機の域から脱せず、充実した公開情報に基づく投資が根付いていないというのが現実です。

今回ご紹介する企画書実例は、経済産業省が作成したものです。日本のバイオベンチャー企業の現状と課題という視点で、財務状況、世界の投資家から見た問題点など豊富なデータをもとに考察しており、今後のあるべき方向性を示唆している貴重な資料になっていると思います。

 

【目次】
1. 今回の企画書の特徴
2. 経済産業省『バイオベンチャーの現状と課題』から学ぶ
0. 表紙
1. 創業のパラダイムシフトとバイオベンチャーの役割
2. 上場後バイオベンチャーの実態
2‐1.上場後の資金調達環境
2‐2.機関投資家との対話
2‐3.日本の上場市場の課題

 

1. 今回の企画書の特徴

今回の企画書は、日本におけるバイオベンチャー企業と海外と比較することで、様々な問題点が浮き彫りになっています。そのポイントを、以下に記します。

・医薬品開発は、長期化・大規模化が進行しており、その原因は開発コストの増加、治験の大規模化である
・医薬品の上市には、数百億円の資金が必要である
・そういった背景があり、世界の医薬品企業はM&Aにより30社から6社へ、日本は30社から17社へ変遷した
・現在は技術発展に伴い、特定患者群に対し、効果の高い医薬品の提供が可能に
・小回りの利くバイオベンチャーが開発主体になりつつあるというプレーヤーの変化が生まれている
・低分子以降の新たな医薬品材料の探索は、Spark社、Kite社、Sarepta社などバイオベンチャー企業が主役になっている
・このような創薬のパラダイムシフトにより、バイオベンチャーの存在感は増している
・それらを背景に、2017年10月に医薬品における条件付き早期承認制度が導入された
・一方で、創薬シーズのバリューアップには、非臨床から上市まで継続的な資金調達が重要である
・バイオベンチャーの後期フェーズの資金調達手段としては、M&AとIPOが考えられる
・国内主要ファーマは、開発後期段階でのライセンスインの割合が大きい

 

2. 経済産業省企画書実例『平成29年度 バイオベンチャーの現状と課題』から学ぶ

では、実際に経済産業省が作成した企画書を見ていきましょう。

0. 表紙/『平成29年度 バイオベンチャーの現状と課題』

1-1. 創薬のパラダイムシフトとバイオベンチャーの役割

1-2. これまでは「大勢の患者に安全な医薬品」を提供するため、医薬品開発は長期化・大規模化

◆医薬品上市には、数百億円の資金が必要…①基礎研究 ②前臨床(数千万~数億円‐創業者の出資金、公的研究費、エンジェル投資等)③フェーズⅠ、フェーズⅡ(数億~数十億円‐VC等の投資、事業会社の出資等)④/フェーズⅢ、承認申請、製造販売(数十~数百億円‐製薬企業とのライセンス契約等、株式上場後の調達)◆治験の大規模化が開発コスト増加の要因/国内における開発ステージ別被験者数(自社品目)‐前回調査2001 600名 本調査1191名)

1-3. そのため、投資の長期・大規模化に対応すべく、製薬企業はM&Aによる規模拡大を重視

◆世界の医薬品企業の合従連衡/ファイザー(米)、グラクソスミスクライン(英)、ノバルティス(スイス)、サノフィ(仏)、ベーリンガーインゲルハイム、アストラゼネカ(英)◆医薬品企業の合従連衡(日本)/MSD、鳥居薬品(JT)、田辺三菱製薬、アッヴィ、アボットジャパン、UCB、中外製薬(ロシュ)、バイエル薬品、久光製薬、エスエス(サノフィ)、大正製薬、大正富山、富山化学、EAファーマ、エーザイ、アステラス、第一三共

1-4. しかし、現在は技術発展に伴い、特定患者群に対し、より効果の高い医薬品の提供が可能に

◆従来/製薬会社→PMDA→病院→薬局→患者 研究開発投資「量」が重要 事業規模の大きいメガファーマが有利◆今後/バイオベンチャー製薬会社→PMDA→医師&薬剤師→患者 研究開発投資「効率」が重要 小回りの利くバイオベンチャーが開発主体に

1-5. また、より効果のある医薬品を開発すべく、治療技術の多様化も同時に進行

◆治療技術/化学合成品(低分子化合物)~50兆円 バイオ医薬品(タンパク・ペプチド)~10兆円 バイオ医薬品(抗体)~10兆円 環状ペプチド医薬(特殊環状ペプチド)~1,000億円 核酸医薬(DNA/RNA)~10億円 再生・細胞医療(培養細胞)~500億円 遺伝子治療(DNA)~10億円◆最初の代表的医薬品とプレーヤー/アスピリン(1899年)‐バイエル社 インスリン(1982年)‐イーライリリー社 ジェネンテック社 トラスツマブ(2001年)‐ジェネンテック社 シクロポリン(1983年)‐ノバルティ社(天然物由来)ペプチドリーム社(人工設計/Phase1) Exondy51(2016年)‐Sarepta社 Kymriah/Yescarta(2017年)‐ノバルティス社 Kite社(Gilead社が買収) Luxturna(2018年予定)‐Spark社

1-6. これら創薬のパラダイムシフトにより、バイオベンチャーの存在感は増加

◆20161223 Nusinersen…Ionis Pharmaceuticais/20161219 Rucaparib…Pfizer/20161214 Crisaborole…Anacor Pharmaceuticals/20161021 Bezlotoxumab…Bristol-Myers-Squibb/20161019 Olaratumab…ImClone Systems/20160919 Eteplirsen…Sareta Therapeutics/20160727 Lixisenatide…Zealand Pharma/20160711 lifitegrast ophtalmic solution…Sunesis Pharmaceuticals/20160628 sofosbuvir and velpatasvir…Gilead Sciences/20160527 obeticholicacid…C2N Diagnostics/20160527 Daclizumab…PDL bioPharma/20160518 Atezolizumab…Genentech/20160429 Pimavanserin…ACADIA Pharmaceuticals/20160411 Venetoclax…Abbott Laboratories/Roche/20160330 defibrotide sodium…Crinos/20160323 Reslizumab…Cel-Sci/20160322 lxekizumab…Cel-Sci/20160318 Obiltoxaximab…EluuSys Therapeutics/20160218 Brivaracetam…UCB/20160128 elbasvir and grazoprevir…Merck

1-7. さらに、患者の命を救うため、医薬品開発の変化に応じた規制改革が着実に実行されている

1-8. 他方で、創薬シーズのバリューアップには、非臨床から上市まで継続的な資金調達が重要

1-9. バイオベンチャーの後期フェーズの資金調達手段としては、M&AとIPOが考えられる

1-10. としては、M&AとIPOが考えられる

1-11. 他国メガファーマと比較して、国内主要ファーマは開発後期段階でのライセンスの割合が大きい

1-12. 米国では、成功モデルの1つとしてオーファンドラッグを契機としたバイオベンチャーの成功事例が増加/オーファンドラッグ‐希少疾病用医薬品

1-13. さらに、バイオベンチャーであっても、対象疾患の拡大を軸に成長したケースも存在

1-14. 新規事業者(バイオベンチャー)が医薬品を上市し更に成長することも可能な時代へ

2-1. 上場後バイオベンチャーの実態

2-2. 新規ヘルスケア領域には大きく3つ(創薬型、創薬支援型、ヘルステック)あるが、現状で企業数が多いのはバイオテック(創薬型)

2-3. 本研究会では、バイオテックとして、創薬型ベンチャー(※1 例えば以下の30社)を想定

2-4. 創薬型は基本的に赤字先行のビジネスモデル/創薬型バイオベンチャーの直近10年間の売上高と営業利益の推移

2-5. 特に、日本のバイオベンチャーは国内外の機関投資家からの関心が小さい

2-6. (参考)投資家の分類の定義

2-7. その結果、日本のバイオベンチャーは株価変動は他産業と比較して非常に大きい

2-8. 実際に、バイオベンチャーの中には資金調達に苦心、開発の遅延/中止に直面するものも

2-9. 米国はIPO(上場時)よりも、PO(上場後)による調達の割合が大きい

2-10. 資金調達方法をみても、米国では公募増資、日本は調達額・時期共に未確定な新株予約権が中心

◆米国と日本のバイオベンチャーの主な資金調達の比較
◇米国/20170906 Insmed Inc. INSM 普通株式/20170810 BeiGene Ltd 米国預託証券/20170809 Radius Health,Inc. RDUS Corporate Convertible/20170808 BioMartin Pharmaceutical Inc BMRN Corporate Convertible/20170804 Spectrum Pharmaceuticals Inc SPPI 普通株式/20170803 Spark Therapeutics Inc ONCE 普通株式/20170627 Repligen Corp RGEN 普通株式/20170627 bluebird bio Inc BLUE 普通株式/20170526 ImmunoGen,Inc IMGN Corporate Convertible/20170523 Alnylam Pharmaceuticals Inc ALNY 普通株式/20170517 ARGENX SE AGNX 米国預託証券/20170505 AMAG Pharmaceuticals,Inc. AMAG Corporate Convertible/20170427 Flexion Therapeutics,Inc FLXN Corporate Convertible/20170425 Flexion Therapeutics,Inc FLXN Corporate Convertible/20170425 Neurocrine Biosciences,Inc. NBIX Corporate Convertible/20170425 Neurocrine Biosciences,Inc. NBIX Corporate Convertible/20170418 Audents Therapeutics Inc BOLD 普通株式/20170327 Atara Biotherapeutics Inc ATRA 普通株式/20170321 Regenxbio RGNX 普通株式/20170317 Editas Medicine Inc EDIT 普通株式/20170309 BioCryst Pharmaceuticals Inc BCRX 普通株式
◇日本/20170828 アンジェス 4563 新株予約権/第三者割当/20170809 シンバイオ製薬 4582 新株予約権/第三者割当/20170622 カルナバイオサイエンス 4572 新株予約権/第三者割当/20170608 リボミック 4591 新株予約権/第三者割当/20170421 ジーエヌアイグループ 2160 新株予約権/第三者割当/20170222 ヘリオス 4593 新株予約権/第三者割当/20161219 アンジェスMG 4563 新株予約権/第三者割当/20161209 オンコリスバイオファーマ 4588 新株予約権/第三者割当/20161201 免疫生物研究所 4570 CB/国内割当/20161104 UMNファーマ 4585 新株予約権/第三者割当/20160830 カイオム・バイオサイエンス 4583 新株予約権/第三者割当/20160805 アンジェスMG 4563 新株予約権/第三者割当/20160614 メドレックス 4586 CB/国内割当/20160525 UMNファーマ 4585 新株予約権/第三者割当/20160524 グリーンぺプタイド 4594 新株予約権/第三者割当/20160524 HMT 6090 普通株式/20160406 シンバイオ製薬 4582 CB/国内割当/20150325 アンジェスMG 4563 新株予約権/第三者割当/20160212 免疫生物研究所 4570 CB/国内割当/20151214 そーせいグループ 4565 普通株式/20151120 メドレックス 4586 新株予約権/第三者割当/20150918 ナノキャリア 4571 CB/国内割当/20150909 そーせいグループ 4565 普通株式/20150821 DWTI 4576 新株予約権/第三者割当

2-11. また、資金調達期間をみても、日米には差が存在する

2-12. 米国のバイオベンチャーをみると、上場後の安定かつ柔軟な資金調達が成長を加速している

◆米国の時価総額Top10のバイオ企業/Pegeneron、Vertex、Celgene、Alexion、Gilead、Biogen、Illumina、Amgen、Incyte、Shire

2-13. 上場後のバイオベンチャーの時価総額を比較すると、日本は米欧のみならずアジア諸国にも劣る

3-1. 機関投資家との対話

3‐2. 機関投資家の短期志向化・パッシブ/インデックス運用の増加が潮流となっている

3-3. 現状の日本の機関投資家の投資スタンスでは、バイオベンチャーへ投資することが難しい

3-4. 米国では、バイオ黎明期にバイオテクノロジー指数を先行的に組成している

3-5. ナスダックバイオテクノロジー株指数(NBI)の要件等は以下の通りに定められている

3-6. 全体の7割強が赤字企業で構成されている

3-7. 米国のバイオセクターの株主構成は、機関投資家等の割合が徐々に増加している

3-8. 仮に、機関投資家が足元5年間でバイオ中心の運用をした場合、年平均20%以上のリターンが推定

3-9. 機関投資家にとって、バイオセクターの事業継続性を量るための情報開示も重要

3-10. バイオベンチャーは、英語の開示情報が少なく、海外機関投資家の障壁となる可能性

4-1. 日本の上場市場の課題

4-2. 日米の上場維持基準は異なる。バイオのような研究開発型ベンチャーに適した市場とは何か

4-3. 米国ではパイプラインの開発段階にかかわらずIPOしている

4-4. 日本のIPOはパイプラインが整い、他社との提携が進んだ後に行われる

4-5. (参考)TOKYO PRO Market上場銘柄一覧/時価総額/流動性

◆Tokyo PRO Market上場銘柄一覧/パパネッツ(9388)、翔栄(3483)、global bridge HOLDINGS(6557)、クボデラ(9261)、富士テクノソリューションズ(2336)、トリプルワン(6695)、やまぜんホームズ(1440)、ピースリビング(1437)、コンピュータマインド(2452)、歯愛メディカル(3540)、トライアンフコーポレーション(3651)、WBFリゾート沖縄(6179)、デンタス(6174)、動力(1432)、TSON(3456)、シンプレクス・ファイナンシャル・ホールディングス(7176)、イー・カムトゥルー(3693)、はかた匠工芸(3610)、中央インターナショナルグループ(7170)、アドメテック(7778)、碧(3039)、新東京グループ(6066)、五洋食品産業(2230)

4-6. 新興市場の成長/新陳代謝の促進により、日本の成長市場を活性化

※1 創薬型バイオベンチャー企業
タカラバイオ(4974)
ペプチドリーム(4587)
そーせいグループ(4565)
サンバイオ(4592)
J‐TEC(7774)
オンコセラピー・サイエンス(4564)
ナノキャリア(4571)
スリー・ディー・マトリックス(7777)
ジーエヌアイグループ(2160)
UMNファーマ(4585)
窪田製薬ホールディングス(4596)
カイオム・バイオサイエンス(4583)
テラ(2191)
メディネット(2370)
デ・ウエスタン・セラピテクス(4576)
リボミック(4591)
メディシノバ・インク(4875)
アンジェス(4563)
カルナバイオサイエンス(4572)
シンバイオ製薬(4582)
メドレックス(4586)
ジーンテクノサイエンス(4584)
ラクオリア創薬(4579)
キャンパス(4575
セルシード(7776)
オンコリスバイオファーマ(4588)
JCRファーマ(4552)
ヘリオス(4593)
ブライトパス・バイオ(4594)
ソレイジア・ファーマ(4597)

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